○谷合正明君
公明党の谷合正明でございます。
まずは、基本的に私、この法案につきましては賛成の立場で質問させていただきますが、ただやはり配慮しなけりゃならない事項というものはたくさんあるだろうと。特に、私は中国地方を地盤としておりますので、中国地方の中山間地域、集落営農については本当にこれが維持されていくのだろうかという本当に危機感を持っております。
そうした中、早速質問をさせていただきますが、先ほどの質問の中にも、これまでの農政を総括するような反省をしっかりした上でのこの今回の新しい法案なのかというような問題提起がございました。
私も、この本委員会で、旧農業基本法以来この農政が展開してきたわけでございますが、しかしその意図してきたところと逆の状況となっていると、つまり生産構造の脆弱化などがあったわけでございますが、そこでその原因は何かということで農林水産省に尋ねたところ、担い手の規模拡大意欲が抑制されたということ、優良農地が出てこなかったということ、また機械化等の進展で兼業農家が土日農業で継続可能になったということ、また価格政策で一律に幅広い農業者を対象としたということに理由を挙げられまして、だからこそ品目横断的経営安定対策が必要だというような答えであったんですが、先ほど梶井参考人に対する質問でしたので、今回、蔦谷参考人と村田参考人に、まず、いわゆる旧農業基本法以来の農政の反省点というのは、農林水産省の見解を踏まえた上で、それぞれの参考人の御所見を伺えればと思います。
○参考人(蔦谷栄一君) 私は、やはり基本法農政で追求してきたものが十分に実現できなかったというふうにやっぱり理解をしております。ただ、その理解の仕方が、それで必然性が当然あったというふうに思っています。
既に御承知のとおりでありますけれども、畜産あるいは野菜、果樹については主業的農家が九割前後を占めているわけでありまして、水田、稲作についてだけ主業的農家が三割と。したがって、その構造改革が遅れている、特に土地利用型については遅れていると、こういう評価のされ方をしているわけでございますけれども、私は、兼業農家が残る必要性、必然性はやっぱりあったんではないかというふうに理解をしています。
現実に米の価格がどんどん下がっている、先ほどお話があったようないろんな制約条件もあるわけでありますけれども、今の兼業農家がいるからこそ水田農業が支えられているという、こういう面が非常に私は強いのではないのかなというふうに思います。むしろ、兼業農家を積極的に評価をする。言ってみれば、価格政策とは別なところで農外収入を得ながら地域を守り、お墓を守り、水田を守っていると。こういうのは、逆に言えば日本的な一つの貴重なシステムではないのかと。したがって、私はこの兼業システムというのをもっと大事にすべきではないのかなというふうに基本的に考えております。
ただし、兼業農家も代が替わるごとにどんどん面積が縮小していく、あるいは自給的農家にどんどん縮小していくと、そういう傾向があるのではないのかなというふうに思いますので、そういった意味では、いわゆる農地の出し手として、どんどん集積の必要性がやっぱり出てくる。したがって、逆に言えば、兼業農家が今水田農業を支えている間に、やはり集落営農なり法人組織をつくって、外部からも新規の参入ができるような、あるいはそういう集積をできる能力のある人たちが集まった組織をいかに早くつくるかということだろうと思います。したがって、私は、兼業農家を排除するのではなくて、兼業農家のいる間にやはりこういう集落営農やなんかをうまく活用しながら次のステップを刻んでいくことが大事ではないのかなと。
そういった意味では、新しい基本法ができた。やはりそういった持続的な農業をいかにつくるかという意味で、正に今回の措置、出し方なり運用はいろいろ問題はあろうかと思うんですけれども、大きな方向性としては集落営農、特定の担い手というのは必要になってくるのではないかと考えております。
○参考人(村田武君) 十分なお答えになるかどうか自信ありませんけれども、旧基本法以来の農政との関係で、私は、とりわけ選択的拡大品目を中心にしながら大型産地形成と大型流通、これは中央卸売市場制度整備を含めて、ねらいとするところの農家経営についても、自立経営型の今日の借地型経営と一定の、目指したものは一定の到達点まで来ているんだろうと。東アジア・モンスーン地帯農業の在り方として相当の構造変動も起こしてきていると思うんですが、ここに来てといいますか、大きく言えば八〇年代に始まるグローバリゼーション、そして一九九五年のWTO自由貿易体制の下で、旧基本法及び新基本法でつくり上げてきた農業の我が国の生産力から、農業構造の到達点が、ここに来て基幹品目のというか、選択的拡大品目を含む基幹品目の価格の総崩れ状態が起こって、これは外圧も含めて、激しくこれまでつくり上げてきた構造を転換せざるを得なくなっているということはよく分かるんですね。
その転換を、今回の新法のような、言わばそれこそ選択と集中型で農業構造を改革するということに絞り込んで展開をするということについての大きな危惧を抱いていると。そういう問題ではなさそうだと。今までつくり上げてきたものを、この構造改革が迫られているにしても、どういう構造改革かというときに、欧米型の農業構造を展望した政策では展望を切り開けないだろうというのが私の主張であります。
○谷合正明君 続きまして、梶井参考人にお伺いいたしますけれども、今のいろいろな参考人から話がありましたが、ここで集落営農につきまして質問させていただきたいと思います。
私は、先ほど中国地方と言いましたけれども、特に西日本を見ていきますと、集落営農の多くというものが、効率的な農業経営を実現するというよりは、もう少し地域の地縁的なまとまりであったりだとか、地域環境財でもある集落農地を保全するという何か意識が強いんじゃないかなというふうに思っているわけでございます。こういった集落営農、必ずしも経営体でない集落営農もあるんじゃないかと、自然体というふうに呼ぶ学者の方もいますけれども、そういう集落営農の自然体としての集落営農の在り方というのもあるんじゃないかと。
今回の委員会質疑の中で、集落営農にいわゆる参加しない人はいてもできない人はいないという説明があるんですけれども、ただ、本当に別途の基準があったとしても、どこまでこういった方々を守っていけられるのかと。究極的に言いますと、農村を維持していくことというのは本当にできるのか、どういった妙案があるのかといったことをお伺いしたいわけでございます。どうぞよろしくお願いします。
○参考人(梶井功君) 正に西日本の方の集落営農に、議員おっしゃるような形のやつが随分あると思います。私は、しかし、そういうふうないわゆる自然体と表現されたような集落営農でも、個別経営でやっているよりははるかに高い生産性を上げているんですね。これは事実です、これは事実。自然体と言われるような、そういう経営体と言うには、なかなかそこまで言えないような集落営農であっても、その地域の個別経営よりははるかに生産性は上げているわけです。それは、集落営農として一つの水田をまとめて、集落としてまとめて使うということからくるメリットというのは非常に大きいわけですよね。
それから、機械の利用なんかについても、個別で使うよりははるかに効率的に使える、コスト安に使える。そういう意味で、経営体と言えないような、自然体として表現されるような集落営農であっても、その地域の中においては生産性をもっと上げていますよと、この事実を私は評価すべきじゃないかと思うんですね。その点が一つ。
そういう点を評価する観点からいえば、今は正にそういう人たちの力も結集して地域の営農をどう守っていくか、またさらに、そういった地域の営農をどう強化していくか、ここが一番のポイントであって、そういう点でいえば、今回のあれについて、この村田参考人の整理の中の二ページのところに、農用地の利用集積目標、規約作成、経理の一元化まではともかく、ここまではいいよと、その後の、主たる従事者の所得目標を定め五年以内の農業生産法人化計画の作成、これにはちゅうちょせざるを得ないと書いているんです。私もそのとおりだと思うんですね。私は、そういう自然体としての集落営農であっても、この一、二、三はみんなできるんですよ、これ。これもまたここで、例えば規約作成といっても、村は村なりに、集落は集落なりにみんないろんな決めを持っているわけです。その決めを文章化すれば、これは規約になるんです。私はそれで十分だと思うんですね。
その点に関して言えば、今、経営基盤強化法に移っておりますけれども、農用地利用増進事業ができたときに、あのときに利用改善団体をベースにして農地の利用調整を集落でやるんだという方向を初めて一九七五年の農振法改正でやりました。それが農用地利用増進法に引き継がれたんですけれども、そのときに利用改善団体を作るというので、それを、今日も何か言っていませんが、規約を作るのが条件だったわけですね。その規約に関して、当時の指導方針として、規約といったってそんな難しいことを考えなくてもいいよと、集落がみんなやっている決めをそのまま文章化すれば規約になるんですということを農水省自体が指導していたわけです。私はそれで十分だと思うんですね、ここで規約なんて言っているのは。そこまではみんなできるんです。だから、そういう形で私は地域を守っていく、これが今は非常に大事なんじゃなかろうか、そう思っております。
○谷合正明君 続きまして、川井田参考人にお伺いいたします。
今、集落営農の話をしてまいりましたけれども、鹿児島県また沖縄ではサトウキビの耕作ということが面積でも大きいわけでございます。その集落営農、今までの話も基本的には水田地帯を対象にしていたような話だと思うんですけれども、今後、サトウキビの場合は担い手の形態として集落営農はどのような形になっていくのか、どういうふうに、どのような姿があるべきなのか、この辺りについて御所見いただきます。
○参考人(川井田幸一君) 今のお尋ねいただきました水田との、サトウキビとの絡みというか、サトウキビに限らず、畑作地帯は非常に集落営農の在り方というのは非常に厳しいなというふうに思っております。
と申しますのも、まず水田の場合は水系に基づくいわゆる集落が形成されている。これは日本特有のものでございますが、あわせて畑作の場合は、もうその農家ごとにというか、いろんな様々なものがつくられておりまして、そういったものが今度は逆に団地化されているところが非常に少ないというのがございます。さらには、こういう畑作地帯というか、機械化がまだ十分でないという地域、あるいは農作物ごとにその機械化も違うという面もありまして、そういう面からいきますと、今後のお尋ねのサトウキビ地帯については、やはりハーベスターの受託組織、今これを随時進めておりますが、これをしっかりとやって生産体制をしっかり維持するというか、いわゆる集落的な体制に持っていく、このような形をJAグループを中心に今強力に取り組み始めているという状況でございます。
○谷合正明君 続きまして、蔦谷参考人にお伺いいたします。
グランドデザインの具体化を早急化すべしという話でございました。先日、公明党の都市農業フォーラムで蔦谷先生に講演をいただきました。そのときも、日本的農業の特質というものをいかに発揮すべきかということが大事だということを言われておりまして、私も全くそのとおりで、日本には安心、安全に敏感な大量な消費者がいると、そしてまた消費者と生産者が近い距離にいるという、これ本当に日本の特質なんだろうと。
その中で、そのときは都市農業を切り口としての日本的モデルを説明されておりましたが、この日本的農業の特質、これを都市農業について言えば分かるんですけれども、これが果たして実際に水田農業、水田地帯に具体的にどのように反映されるべきなのか、そのビジョンをお伺いしたいと思います。
○参考人(蔦谷栄一君) 今お話ありましたように、所得水準の高い消費者が大変大量にいるという、あるいは安全、安心に大変厳しい消費者が多いというのが特徴であると同時に、やはり都市と農村の絶対的な物理的、時間的距離が短いというのは、これも日本的な特徴の最たるところではないかというふうに思います。全国津々浦々、大体東京から半日あれば行けるような状況だろうというふうに思いますけれども、それだけインフラの整備も進んできているわけでありまして、そういった意味では、都市と農村の交流といいますか、やはり地産地消ということもあるわけでありますけれども、基本的には、先ほど申し上げましたように、都市から農村の還流と同時に、やはり顔と顔の見える生産と消費の関係、あるいは食と農の分離をいかに一致をしていくのかというのがこれからの日本農業を守る場合の一つの大変大きいキーワードになってくるのではないかというふうに思っているわけであります。
そういった意味では、大陸の諸国は、近いとはいえ、なかなか物理的に遠い、あるいは日本からいえば海外というのはかなり困難性も伴う、言語も違ってくると。そういった意味では、やはり日本の中で、逆に言えば、都市農業が、正に身近なところで農的な空間を供給すると同時に、新鮮で安全な野菜供給、農産物を供給するということはありますけれども、私はその日本農業の一つの先行モデルといいますか、典型が都市農業ではないのかなというふうに思っているわけであります。
むしろ、海外からの輸入品というものがどんどん増える中で、これと差別化をしていくためにも、やはり顔と顔の見える関係、地産地消あるいは都市と農村との関係、言ってみれば生産者と消費者のコミュニティー、コミュニケーション、そういったものを重視をしたやり方というものは、むしろ全国津々浦々でやれるのではないか、あるいはそういった方向を求めていく、そういったところに地域の特性を生かしていく、地域の特産物もその中にいろいろと工夫をして売り出していくと、こういう流れになるのではないかと考えております。
○谷合正明君 そうしましたら、最後に村田参考人に、改めまして経営安定対策の品目について、確認の意味で質問させていただきます。
参考資料の中にも、経営安定対策品目は要再検討ということで書かれておりました。先ほどの質問の回答でおっしゃられたことがあったんですけれども、まだ時間がありますので、一分あると思いますので、回答いただけましょうか。
○参考人(村田武君) 本日配付いただいたところの資料の最後の辺りの提案のところもまたごらんいただければ有り難いんですが、基本は、水田農業の総合的な発展を支える作目というふうに理解することが食料自給率の引上げにとっても決定的に意味を持つ品目ではないだろうかと理解しております。
したがって、米は当然食用米に限らず、現在の産地づくり対策で助成をしてきた転作作目としてではなく、非食用米も、これも対象作目に入れるべきだろうし、麦、大豆それから是非期待するのは菜種であり、先ほど言いましたホールクロップサイレージ米ということであります。
○谷合正明君 終わります。