○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
本日は、農地・水・環境保全向上対策について伺いたいと思います。
まず、対策そのものということではないんですけれども、前段として、水に対する質疑をさせていただきたいと思います。
かつて、世界銀行の元副総裁が、二十世紀は石油で戦争が起きたと、二十一世紀は水をめぐる争いの世紀となるだろうと言われました。本年三月にはメキシコで世界水フォーラムが開催されまして、そのうちのテーマの一つとして食料・環境のための水管理というものがございました。世界人口を養うための食料、またその食料を生産するための水をいかに確保できるかが今世界的に大きな懸念となっているところでございます。実際に世界の水資源の約七割から九割は農業用のかんがい用水だと言われているわけでありますが、つまり農業を他国に顧みることは水資源を他国に顧みることにつながると、間接的にですね、つながると言われているわけでありますが。
実際、昔は水と安全はただだと言われておりましたが、今やもう水も安全もお金で買う時代に入りました。例えば、ミネラルウオーターでございますが、二〇〇五年の統計で出荷額で約一千四百億円あると、そのうちの二百六十億円は海外からの輸入のミネラルウオーターだと、もうそういう時代に入ってまいりました。
そこで、初めに、経済産業大臣として石油を取り扱ってこられた大臣に、この水という資源に対しての認識、御所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(中川昭一君) 谷合委員の、水を取り上げられたということは、私は極めて、私自身政治家としても大事なポイントだというふうに思っております。
今御指摘のように、日本は資源はないけれどもせめて水ぐらいはというふうに思われがちでありますけれども、日本は世界一の水輸入国であります。バーチャルウオーターという話を前提にいたしますと、日本は世界じゅうから農産物を輸入している、つまり世界じゅうから水を輸入している。一キロの穀物を作るのに、あるいは一キロの鶏肉、豚肉、牛肉を作るのに一体何トンの水が使われているのかということを考えますと、日本は食料を輸入しているというよりも世界じゅうから水を、まあある意味で奪っているというふうに私は常日ごろ思っております。そして、日本は水ぐらいはと言っておりますけれども、日本の一人当たりの水確保量というのは世界の平均よりもはるかに低いという事実もあるわけであります。
今御指摘のように、先日、メキシコで世界水フォーラムがございまして、皇太子殿下が江戸時代の関東の水状況ということで講演をされましたけれども、大変すばらしい内容でございました。いかに水、水路が江戸の生活、あるいは江戸の食料を支えているかという講演でございました。前回は関西地方で、滋賀、京都、大阪ですかで、日本で行われたわけでございます。日本においても、日本においてすら水というものは大変デリケートな資源である。まして世界じゅうになりますと、満足な水を確保できている人たちは世界の中でも四分の一ぐらいしかいない、安全な水、これが確保できない、まして食料すらということになるわけであります。排水においても同じであります。
そういう意味で、経済産業省時代にエネルギーについてやっていただろうというふうに御指摘がございましたけれども、私は、エネルギーをやればやるほど実は、食料と並んで根源である水の問題に疑問を、疑問というか問題意識を持つようになったところでございますので、大いにこの後の谷合委員のお話あるいは御質問を通じて水の問題について考えていくことが、この食料問題あるいはまた地球の貧困、飢餓、病気の問題にもかかわってまいりますので、私としてもこの問題には極めて大きな問題意識を持っているということをまず申し上げさせていただきたいと思います。
○谷合正明君 先ほど、今大臣の認識の中で、決して日本は水資源に恵まれているとは言えないとありました。私も調べて驚いたわけでございますが、年間降水量の世界平均というのは九百ミリであると。日本は約二倍あると。それだけ考えると確かに水は豊富だろうと思うんですが、一人当たりの利用可能な水の量、これを水資源賦存量と言うそうなんですが、これは国土交通省の調べによると、一人当たり年間で三千三百立米。これがどれくらいのものかというと、フランスだとかイタリアだとか、そしてイラクと同じ程度だということでございまして、決して恵まれているとは言えないと。
さらに、日本を地域別に見ていくと、北海道はアメリカと水資源賦存量は同じ程度と。東北、北陸、四国はギリシャ。東海、中国、九州はメキシコと。沖縄はイラン。近畿は韓国。関東に至ってはエジプトと同程度であるということでございます。私は、これ国土交通省の出している資料でございますので、本当にただ単に危険をあおるようなレポートでもございませんので、しっかりとしたデータに基づいた話だと思います。
そこで、数字を確認させていただきますが、日本国内での年間総水資源使用量というのはどのくらいあるんでしょうか。
○政府参考人(山田修路君) ただいま国内の年間の水の総使用量についてのお尋ねでございます。
これは先生お持ちの資料と一緒だと思いますが、国土交通省の土地・水資源局が公表している資料、これ十七年度版の「日本の水資源」という資料でございますが、これによりますと、平成十四年の数字でございますが、全国の水使用量は約八百五十二億トンというふうになっております。
○谷合正明君 そのうち農業用水はどのくらい占めているんでしょうか。
○政府参考人(山田修路君) 同じ資料でございますが、農業用水としての使用量は約五百六十六億トンということで、全体の約三分の二程度になっている状況でございます。
○谷合正明君 全体の六割が農業用水だということでございますが、これ以外にもカウントされない例えば養魚用水というんでしょうか、そういったものも五十四億トンほどあるということでございます。
先ほど大臣の方からバーチャルウオーターという言葉が出ましたけれども、日本語で仮想水、この仮想水ということですが、平成十六年度版の食料・農業・農村の動向の報告書の中にコラム記事として載っておりましたが、まずこの仮想水量、これは東大の生産技術研究所の助教授の沖先生が研究されているそうですが、この仮想水量、バーチャルウオーターというのはどういう考えなのか、改めて説明いただけますか。
○政府参考人(山田修路君) このバーチャルウオーターという考え方でございますが、ある国が輸入をしている食料ですとか、あるいは工業製品もあるんですけれども、そういった食料や工業製品をもし仮に自分の国、自国内で作るとしたらどれだけ水が掛かるかというものを計算をしたものでございます。したがいまして、そのバーチャルウオーターというのは、ほかの国で作ったものの水そのものではなくて、それを国内で作ったら幾らの水が必要であるかという計算に基づくものでございます。
○谷合正明君 つまり、例えば小麦を作る際に、アメリカでは、一キロ当たり水が日本と使う量というのは違うわけで、そういった意味の説明だと思うんですが、果たして一体日本は年間どのくらいこのバーチャルウオーターを輸入しているのか、数字ございますでしょうか。
○政府参考人(山田修路君) これも国土交通省が発表いたしました「日本の水資源」という資料でございますが、平成十四年に今のバーチャルウオーターという、平成十四年ベースのものを計算をしておりますけれども、農作物五品目、これはトウモロコシ、大豆、小麦、米、大裸麦、それから畜産物の四品目、これは牛、豚、鳥、牛乳・乳製品、それから工業製品について試算をしておりますけれども、総輸入量、仮定の輸入量でございますが、総輸入量としては年間約六百四十億トンの水が輸入されているという推計になっているということでございます。
○谷合正明君 そのうち農産物、また畜産というのはそれぞれどのくらいあるんでしょうか。
○政府参考人(山田修路君) 今の試算によりますと、農作物については年間約四百四億トン、それから畜産物につきましては約二百二十三億トンというふうになっております。
○谷合正明君 水の自給率という言葉があるんだとすれば、私は勝手に計算しましたけれども、今言われた日本国内で使う農業用水、そしてバーチャルウオーターで、入ってくる農産物と畜産物に掛かる水の使用量、これを分母でして、分子に日本国内の農業用水の使用量をしてみますと大体まあ五〇%だと。日本の食料自給率は四〇%でございますので、若干それよりは高いんですけれども、それだからいいというわけじゃなくて、いずれにしても水もそれくらい海外に依存しているということだと思います。
そこで、問題は、例えば水が入ってくる先のアメリカだとかあるいは中国におきましても、今水問題が発生しているということでございます。こういう食料安全保障を考えたときに、こういった視点というのは大事だろうと私は思うわけでございます。
細かい話をさせていただきますけれども、小麦一キロを作るのに約二千リットルの水が必要だと。牛肉一キロを作るのに約二万リットルの水が必要だと言われているわけでございますが、大体これは牛丼一杯当たりどのくらいかというと、二立米ですから二千リットルですか、牛丼一杯で二立米の水が必要だと言われてございます。これは、牛肉、牛はたくさん水を消費しますですし、またその飼料にもたくさん水が必要だということで、こういうオーダーになるわけでございますが。こういう水、この資源というのは、ある程度日本では当たり前だと思ったけれども、やはりある意味危機感を持って接しなきゃいけないものだと思います。
私はこれを考えたときに、日本には森林がたくさん豊富にあると。国土の六割以上、七割近くが森林に覆われていると。しかし、森林の木材自給率は一八%だと。日本にこんなにたくさん資源があるのに実際使われていないと。それだけじゃなくて、実際に山が荒廃しているじゃないかと。こう考えていきますと、日本には水がたくさん豊富にあると。しかし、他国に食料を依存するということで、回り回って水管理が果たして適切に行われるのだろうかという疑問も持っているわけでございます。
今回の対策でございます農地・水・環境保全向上対策でございますが、私はいろいろ大綱も読ませていただきましたが、ここに欠けているのは、水はあって当たり前だと、危機意識がないんじゃないかと。もう一つは、ほかの省庁との連携というのはどうなっているのかということでございます。
今回、水はあって当たり前だというような意識があるんじゃないかと指摘させていただきましたけれども、実際、日本国内の水資源を実際に多く使うのは農業用水でございます。それだけ農林水産省の役割というのは大きいと思います。
もう一つ、他省庁の連携ということでございますが、水資源の管理、今も国土交通省のこのレポートによっていたわけでございますが、一義的には国土交通省がダムなんかをたくさん持って管理もしておりますけれども、国土交通省だけじゃなくて環境省もやはり関連していると。水に関連する法律が六十本ぐらいあるそうなんでございますが、環境省が二十三本、国交省が十八本ぐらいあると。農林水産省はどのくらいあるかということは分からないんですけれども、いずれにしても、それぞれが互いの専門性を発揮して連携していけばいいんですが、今のところ私は縦割りのままじゃないのかなと、この水資源をめぐるこの戦略的な扱いですね、そう思っているわけでございます。
そこで、改めて水資源の管理について他省庁との連携をどうしていくのか、そしてまた農水省自身としてどう取り組んでいくのか、大臣に伺います。
○国務大臣(中川昭一君) 御指摘のように、水というのはほとんどが海水、ほとんどというか多くが実は海水であり、そして真水においても、地球上に存在する真水のうち人間が利用している量はたしか〇・〇〇一ぐらいしか人類は利用していない。その中で、先ほど申し上げたように不足している人たちも大勢いるという状況でございます。
それから、日本の場合には、先ほど谷合委員もおっしゃいましたけれども、意外と水の保有量は少ない。しかし、日本では、ある統計の、これは記憶でございますけれども、一トンの水を何日で使うかという統計がたしかあったんですけれども、アメリカ人は二日で一トン使う。日本人は三日で一トン使うと。欧米の人は四日ぐらいで一トン使うと。中国になりますと二十日で一トンの水を使うと。アフリカの飢餓地帯になると、一トンの水で一年間暮らさなければいけないというぐらいに水に困っている人たちも地球上には大勢いるという前提になると、本当にこれは水、農業用水であろうと工業用水であろうと、まして生活用水であろうと、日本においても私は水というのは大事だというふうに思います。まあ、水を制する者は中国を制するという言葉もありますし、また緑の革命という言葉もあるわけでありますから、正に二十一世紀は私は水の世紀だというふうに思っております。
そういう中で、基本的に日本は、もちろん森林等があるいはダムが保管している水もありますけれども、いわゆるフローでいいますと、雨として降ってきたものを山でためたりいろんなところでためて、そして川を流れて海に流れていく。そのうち三分の一は蒸発する、三分の一は地下に入っていく、三分の一が川を通って、大ざっぱにいけばそんな感じの中で、片っ方で農業用水だ、片っ方で森林用に水を使う、片っ方で工業に使う、片っ方で生活用水に使う。したがって、建設省だ、農林水産省だ、厚生労働省だということになっておりますけれども、そんな縦割りでもって我々の暮らしや生活は水に頼るということには私は限界があるんだろうというふうに思います。
したがいまして、農林水産省の中はもとより、行政全体においても水に関して、管理の問題は問題として、縦割りによって水が有効に使えないとか、あるいはまた、いろんな問題に対応できないとかいうことがあってはならないと思いますので、先ほどの世界水フォーラムが契機になって、今各省庁間、一層連絡を密になっておると思いますけれども、当然そうしなければいけないというふうに考えております。
○谷合正明君 力強い、また前向きな御答弁をありがとうございます。
そこで、農業用水の使用量でございますが、先ほど答弁の中で約五百六十五億トンですか、これはただ過去三十年間ずっとトレンドで見ていきますと、ほぼ変わっていないと思います。三十年間、農家の数も減っている、農地も水田も減ってきている、一方で農業用水の使用量というのは変わっていないということは、これはどういう理由なんでしょうか。
○政府参考人(山田修路君) ただいま農家の減少、あるいは農地、水田の減少、作付けの減少等によってなぜその農業用水の利用が減らないのか。まあ徐々には減ってきているんですが、今おっしゃったようなことに比べて減り方が少ないということなんですけれども、私ども、その農家なり農地の減少がそのまま農業用水の利用量の減少に、並行的にというんでしょうか、同じ比率でつながるというようなものではないというふうに考えております。
といいますのは、水田についていいますと、現在、水田について汎用化ということで基盤整備を進めております。汎用化というのは畑作物も植えられるようにしていこうということなんですが、そうしますと、要するに地下に浸透する量が増えていく、汎用化をすることによってですね。それから、あるいは圃場が従来よりも、水田が従来よりも乾燥化した、乾田化しているというんでしょうか、そういう状態になっていくというようなことがありまして、どうしても同じ水田でも必要な水の量は多くなっていくということになります。
それからもう一つ、水を利用するときに、特に農業上の利用の場合には一定の水位を確保して、それでその水圧で圃場に送り出す、あるいは水路の支線がありますけれども、そこに水圧で送り出すという形のものが多いわけですので、ある程度の水圧を確保するための水の量というのがやはり必要になります。
そういう意味で、例えば水田の面積が減ってきたことがイコール農業用水の減にはつながらないということでございます。
それからもう一つ、畑地についてでございますが、畑地はこれまで余りかんがいの施設が十分整備されていなかったわけでございまして、そこがまた畑作農業の一つの問題点であったわけでございますが、これからますます畑地かんがい施設の整備を進めていこうというふうに考えております。
そういったことから、そういう畑地かんがい施設の整備に伴って農業用水の利用量が増えていくということもございます。そういう意味で、水田の減少等に見合って農業用水の利用総量が減ってきているわけではないという状況でございます。
○谷合正明君 そうしますと、必要な水の量というのは今後増えてくるんでしょうか、変わらないんでしょうか。
○政府参考人(山田修路君) 今申しましたような要因、いろんな要因がありますので明確には申せませんけれども、そう大きな変化はないんじゃないかというふうに当面は見ております。
○谷合正明君 農業用水の使用量というのは、いろいろな条件、物理的条件とかもあって一概に言えないというような話だと、私もそれは理解しておりますが、ただ、一方で、いろいろその理由の中で地下浸透だとか水圧が必要だとか言われていますが、本当に忘れてはいけないのは効率的な利用ができているのかといったところだとございます。農業用水を生活用水に回してほしいとかいう声もあるぐらいでございます。
今回、農地・水・環境保全対策では、農地の経済的利益ということで七兆から八兆円ぐらいあると。森林では七十兆円あると。だから、公共財として農村をみんなで守っていこうというような話だと思うわけでございますが、これだけ水を使って、この農業セクター、効率的に利用をやはり農業セクターもしていかないと私はいけないんじゃないかなと思っているわけでございます。
そこで、改めて質問させていただきますが、社会共通資本として農業用水の資源の質を高めると今回の対策の大綱にも書いてございますが、改めて、なぜ支援が必要なのか、農地、水、環境を守っていくという支援が必要なのか、そのところを今の議論を踏まえて大臣にお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(中川昭一君) 今回の農地・水・環境対策というのは、結果的には農業生産にも大きく貢献いたしますけれども、いわゆる車の両輪といたしまして、ある意味では入口は二つに分けて考えているわけでございます。と申しますのは、先ほどからお話がありますように、水というのは、もちろん農業用水だけではなくて、水系の中であるわけでありますから、その水系を引っ張ってきて農業にも使うし、生活用水にも使うし、工業用水にも使うこともあるということでございまして、小さな単位であってもやっぱり水というのは共有の財産であるという前提で、しかも水も、先ほどからのお話もあるように、決して無尽蔵で、しかもほっておいても来るものでもないと、水管理というのは極めて大事であるというふうに考えております。
そういう意味で、今回のこの農地・水・環境対策というものが、正に持続可能な農業、持続可能な農村集落生活等に極めて大事なことでございますので、ほっておいたら少なくなってしまうとか、あるいはどこかにあふれ出て流れてしまうとか、あるいは蒸発しやすくなるとか、それによって農地も荒れていく、町も荒れていくということになりますので、そういう観点から、この対策においても水の位置付けというのは極めて大きい、きちっと対応していかなければいけないということを進めていかなければならないと思っております。
○谷合正明君 持続可能な、また循環型の日本型のこの水利用システムというのは、私は世界に誇るべきものだと思っておりますし、また、今後人口が急増するこのアジア地域において、私は一つ日本がモデルを示せるものだと思っております、食料管理における水資源の在り方としてですね。ですので、今回の対策を通じてこういった日本型の水利用システムというものを世界に是非とも大臣には発信していただきたいということを要望させていただきます。
次に、各論の話になりますが、有機農家、有機農業について質問をさせていただきます。
今回の対策におきましては、環境支払の対象者として、まずエコファーマーであることが条件になっているわけでございますが、有機農業者には、JAS法に基づいて、この有機JASを受けて有機農家だということで頑張っていらっしゃる方もたくさんいらっしゃいます。
質問は、改めて、有機JASを持っている方が改めてエコファーマーの認定を受ける必要があるのかということでございます。
○政府参考人(西川孝一君) 先進的な営農支援ということについてのお尋ねでございますけれども、この新たな土地・水・環境対策におけます先進的営農の支援につきましては、単に粗放的な栽培によりまして化学肥料、化学合成農薬の使用を低減するのではなくて、適切な代替技術の導入によって生産性との調和に配慮した生産を推進する観点から、持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律、いわゆる持続農業法と言っておりますけれども、これに基づきまして、土づくりと化学肥料、化学合成農薬の低減技術を組み合わせて行う生産方式に取り組む農業者、いわゆるエコファーマーであることを要件としているところでございます。
このため、有機JAS認定を受けている農業者の方々についても、土づくりと化学肥料、化学合成農薬の低減技術を組み合わせて行う農業生産方式の導入に関する計画を作成していただきまして、持続農業法に基づくエコファーマーの認定を受けていただきたいと、そういうふうに考えているところでございます。
○谷合正明君 計画を作成してまた改めて認定を受ける必要があるということでございますが、先日、私もある有機栽培している有機農家の方から陳情をいただきまして、その一つが、今回の対策とちょっと趣旨が外れるんですが、いわゆる表示制度について陳情をいただきました。つまり、幾らコストだとか手間を掛けて、時間を掛けて有機JASの認定を受けたとしても、なかなかこれが消費者に周知されていないのでメリットがないというわけでございます。
今、そのエコファームの認定も必要だというふうな話もございましたが、これまたエコファームの認定を受けるといったところにもやはり同じような手続が要るわけでございますが、エコファーマーと有機JAS、その趣旨は違いますから同格には扱えませんが、まず、消費者にとっても、似たような言葉が並んでくると、よりまた混乱してしまうんではないかということをまた私ちょっと心配しているわけでございますが、まず有機農家から陳情を受けましたこの表示制度の在り方について、ちょっと御所見というか、見解をいただければと思いますが、よろしくお願いします。
○政府参考人(中川坦君) 有機JASの規格、これは平成十二年の一月に発足をしたものでありますけれども、その背景としましては、もう御案内のことかと思いますが、それ以前は、こういった有機の関係の表示というのはガイドラインでやっておりました、強制力もありませんでした。そういうこともありまして、この有機何々と、あるいはオーガニック何々というふうなそういう表示の中に、正直言ってまがいものも結構あったというふうな、そういうことが背景としてこの十二年に有機JASの制度ができたわけでございまして、有機JASと、そういう表示が付いているものについては、きちっとした生産行程管理が行われたそういう農産物であるということを保証するものとして、消費者の方々の商品選択に資するようにということでできたものでございます。
メリットのことを今お話しになりましたけれども、もちろん品目、あるいはどの時期によるか、取るかということで多少違いがあるかと思いますが、有機農産物は、一般の国産農産物と比べまして、市場の価格は四割とか、あるいは物によっては倍ぐらい高いというのが実態でございます。そういう一定の高付加価値の商品としての評価は得ているというふうに思っております。
ただ、有機のその認証を取るためにそれなりの手間も掛かるということで、できるだけこの有機JASの制度が普及、定着をしますように、二つの面で努力していかなければならないと私どもも思っております。
一つは、生産者の方々にできるだけ情報提供して、その有機JASの認証を得るための手間を少なくしていくということでございます。このためにハンドブックを配布をいたしましたり、あるいは事務負担の軽減や認定取得のためのいろんな情報提供に力を入れております。
もう一つは、消費者の方々に、有機のJASのマークが付いているものはどういうものだということをもうちょっと広く御理解をいただく必要がありまして、こちらの方もパンフレットを作りましたり、有機JASとはどういうものかといった面でのシンポジウムを開き、あるいは雑誌の中に、そういった広告、広報活動の一環としてそういうものを載せるという、そういう取組をいたしております。
この生産者への働き掛け、消費者への働き掛け、双方の働き掛けを行うことを通じまして、有機JAS制度につきましての更に一層の定着を図っていきたいというふうに思っております。
○谷合正明君 是非しっかり取り組んでいただきたいと思います。
続きまして、もう時間が迫ってまいりましたので、全国農地保有合理化協会、略称で全国協会と呼ばせていただきますが、この点について質問させていただきます。
平成十六年度決算についての会計検査のあらましが本年の二月に公表をされました。この会計検査院からの指摘によりますと、決算剰余金が基盤特会、農業経営基盤強化措置特別会計ですね、この特会に多額の剰余金が発生していると。また、その上で、二段階として、全国協会にも滞留しているお金が多額に上っているというような指摘がございました。
ちょっと分かりづらいのでもう一度説明しますと、まず国、基盤特会があると、その基盤特会から資金補助が全国協会に行くと。全国協会が無利子の貸付け・助成を都道府県の公社にすると。そして、都道府県の公社が農家との間で農地バンクの役割をして、農地の買入れ・借入れ、売渡し・貸付けを行うというものでございますが、この基盤特会にまず決算剰余金が八百億円あったと、平成十六年度末に。一方、資金補助を受ける全国協会に四百九十四億円あったといったことが指摘されまして、効率的な資金の使われ方ができていないじゃないかという指摘だったと思います。
特に、この基盤特会の業務は、大きく四つありますけれども、そのうちの一つが農地保有合理化促進対策でございます。ほぼ、この基盤特会の歳出の九割がこの農地保有合理化促進対策に使われているわけでございます。この対策の支出というのは近年伸びていると。しかし、伸びているんだけれども、どこに支出されているかというと、全国協会に資金補助として入っていると。じゃ、全国協会の中で農地の流動化に資するための事業に使われているかというと、そうじゃないと。全国協会に四百九十四億円がたまっている状態だと。しかも、全国協会は平成十二年から平成十六年にかけて約二百四十億円が、この保有金額が増えているといったことでございます。
まず、この会計検査院の指摘を受けて、この指摘をどのように農水大臣は受け止められたのか、それについて伺います。
○国務大臣(中川昭一君) そもそも、基盤特会それから全国農地保有合理化協会、目的があるわけでございます、農政上の。しかし、だからといって膨大なお金が滞留しているということは、これはもう、日本の財政状況全体から見てもこれはもういかがなものかと。御指摘は真摯に受けなければいけないと思っております。
○谷合正明君 それで、指摘を受けてどういう改善策を講じたのか、また講じようとしているのか、この点についてお願いします。
○国務大臣(中川昭一君) 直近の会計検査院の御指摘をいただきまして、全国農地保有合理化協会の資金につきましては、平成十七、十八年度におきまして七十七億円を基盤特会に返還いたしました。基盤特会の剰余金につきましては、平成十八年度におきまして二百九十五億円を一般会計に繰り入れる、つまり戻すということにいたしました。
今後も、不必要に余っているものはどんどん戻していきたいというふうに考えております。
○谷合正明君 この数字の根拠というのも聞かなきゃいけないんだと思うんですけれども、ちょっと時間がございませんので次の質問をしますけれども、今、全国協会、財団法人の全国農地保有合理化協会という言葉が出てきましたけれども、この全国協会の果たす役割というのは、これはそもそも何なんでしょうか。
○政府参考人(井出道雄君) 農業の構造改革を推進していく上で、農業経営の規模拡大ですとか農地の集団化が重要でありますけれども、この規模を縮小する農家から農地を買い入れたり借り入れたりいたしまして、認定農業者などの担い手に売り渡したり貸し付けるという農地保有合理化事業というのを推進しております。最近では、この担い手の農地の利用集積面積の約半分、一万八千ヘクタールが農地保有合理化事業により行われているわけでございます。
全国農地保有合理化協会は、こういった農地保有合理化法人、先ほど委員から御指摘がありましたように都道府県とか市町村とか農協がやっている場合もございますが、そういった農地保有合理化法人の行います保有合理化事業を支援するという目的で設立された法人でございまして、主な業務といたしましては、都道府県や市町村の公社などの農地保有合理化法人に対しまして、この事業の実施のために必要な資金を貸し付ける、あるいは事業の啓発普及、あるいは事業従事者の研修というようなことが業務の内容でございます。
○谷合正明君 全国協会というのは、基本的には資金を貸し付けたり助成するというのが役割でございますので、この農地の流動化ということにつきましては直接は関係ないというんでしょうか、この農地の流動化については、やはり法人の方、略称で県公社と言わせていただきますけれども、こちらの方の役割というものが大事だと私は思います。
昨年、法改正されましたけれども、この農地の流動化を進めるためにもこの都道府県公社の役割というものが重要だと考えるわけでございますが、どのような対策を講じようとしているのか、この点について伺います。
○政府参考人(井出道雄君) 委員御指摘のとおりでございまして、県公社等の農地保有合理化法人が農地の仲介をするという機能が非常に大切でございます。
このため、昨年の基盤法の改正におきましても、この仲介機能を更に強化充実するという趣旨に出まして、この保有合理化法人が農業生産法人に農地を仲介する際に、農業生産法人の規模拡大に伴いまして必要になります農業機械などの資本装備、このための金銭出資を行える事業を創設いたしました。
また一方では、都市に住んでおります不在村の農地所有者が安心して農地保有合理化法人に農地の管理を任せることができるように、また借り手も安定的にそういった不在村農地所有者から農地を借り受けることができるような貸付信託を活用した事業を創設したところでございます。
今後とも、この農地保有合理化法人の行う保有合理化事業が円滑かつ効果的に推進されるように、その時々の要請にこたえまして適時適切にそういう新しい事業等を創設して、この農地の利用集積に努めていきたいと考えております。
○谷合正明君 是非、その法人の方のいわゆる組織面、財政面での執行体制が適切にできるかどうか、そういったものを、組織の強化であるとか財務基盤の強化だといったところもしっかりやっていただいて、この農地の流動化、農地の集積がしっかり今描いているとおりにいっていただくように要望をさせていただきたいと思います。
最後に、大臣に、これまでの法案質疑がありましたけれども、質問させていただきますが、国民に対する理解ということで質問させていただきます。
担い手経営安定法案並びに、今日、農地・水・環境保全向上対策について質問させていただきましたけれども、いずれにしても、この戦後農政を大転換させる非常に大きな意味を持つ今回の法案だということでございますけれども、その一方で、国民に対するこの理解というものが広まっていないということは大臣も言われておりました。そこでまた、今回は、私は、納税者であり消費者である国民に対して、この日本の農政を、また農業、農家をよく知っていただくための一つの機会に、きっかけとなればと思っているわけでございます。
そういう意味で、今WTOの交渉などもございますけれども、簡単には説明、国民に対して説明するのが難しいかもしれませんが、しかし国民に対してのこの理解がないと、日本の農業というのは先行きが本当に大変になっていくわけでございます。
最後に、大臣、国民に対する訴えをしていただきたいと思います。
○国務大臣(中川昭一君) 食料と水に関係のない、国民に限らず、人間はいないわけでございます。そういう中で、日本におきまして、先ほどから申し上げておりますように、将来の食料の安定供給に対して国民は不安を持っている方が多いわけでございます。また、安全、安心に関する期待も非常に大きいわけでございますので、当委員会といたしましては、水、食料について国民の期待にこたえる行政をしていかなければなりません。
そういう意味で、この法案というものはそれに貢献をしていくというふうに確信をしております。しかし、それだけでは不十分でございまして、そのためには財源というものが伴うわけでございます。財源というのはおおむねこれは国民からいただいた税金等がベースになっているわけでございますから、自分たちが納めている税金の中から自分たちのために、安全で、そして良質の、顔の見える農産物を作ってもらうために有効に使っているんだという御理解があって初めて消費者、国民に対しての御支援が前提としての施策の遂行につながると思っております。
それから、国民の一部であります、この法案の直接の対象者であります農業関係の皆様方に対しては、我々はまだまだ説明が御理解いただいていないと思いますので、今後とも更に全力を尽くして、法案の趣旨が全うできますように、その前提として関係者の皆さんの御理解を得るべく努力をしていきたいというふうに考えております。
○谷合正明君 終わります。