○谷合正明君 公明党の谷合正明です。前回に引き続きまして質問をさせていただきます。
前回、大臣御出席されておりませんでしたが、私、二〇〇三年十二月に起きたイランの大地震について、バムという都市があるんですけども、そこに仮設住宅を供与するという緊急無償資金協力が、そういう事業がございまして、その問題について取り上げました。
これは、二〇〇三年十二月に地震が起きて、約二年たった二〇〇五年、昨年の秋口にようやくこの仮設住宅約九百五十戸が完成したんだと。現在どうなっているかというと、イラン政府側がするところの、例えば電気であるとかそういった敷設ができていないので、結局住人はいないんだと。要は、二〇〇三年十二月に起きた大地震の緊急無償資金協力の事業で、今もって仮設住宅は、物はあるけれどもそこに人は入っていないという状況で、そのことを指摘させていただきました。
外務省の方の話を聞きますと、まだやはりこのニーズはあるんだと、例えば、震災の孤児であるとか未亡人の方なんかがまだ入る余地があるということは言われていたんですが、私自身は、やはり二年半もしますと、そもそも所期の目的、ニーズというものは失っているし、タイミングを逸してしまった支援ではないかと、そのように思うわけであります。そこは、素直に反省すべきところは反省して、教訓をやはり導いて生かしていかなきゃいけないんじゃないかと、そのように考えているわけであります。
今回、私が思うに、例えば電気のないところに仮設住宅を建てたと、電気がないからまだ人が入れないんだと言うんですけれども、そもそも私自身が、例えばNGOで難民支援のプロジェクト、携わっておりましたけれども、難民キャンプをつくるときには、緊急でございますけれども、そのセットアップするときには必ずそこに水源があるかどうかを確かめて、いわゆる井戸を設置して水が出るということを確保してからいわゆるキャンプであるとかそういう医療事業というのがセッティングアップされるわけでありますけれども、そういったところの何というか配慮というか知恵がこのプロジェクトにはなかったんじゃないかと。
要は、外務省さんでありますと政策レベルの専門家でございますので、こういった個別のその現地のニーズであるとかいった、そのプロジェクトレベルの専門家の知見が今回の案件にはなかなか入ってこなかったんじゃないかと、私はそこら辺に要因があるんじゃないかと、そのように考えているわけであります。
今回は緊急無償資金協力でございまして、これは外務省が実施するプロジェクトでございます。ただ、緊急性、人道性があるからこそ、私は例えばNGOだとかそういった援助のプロジェクトレベルの専門家を、やはり連携していく必要があるんじゃないかというふうに考えております。
これは、いろいろ、実施の段階でやるのか、あるいはモニタリングの段階で、評価の段階でやるのか、どういうふうな連携あるかというのは、それはまだまだ検討の余地があると思うんですけれども、いずれにしましても、こういったプロジェクトレベルの、例えばNGOなどとの連携強化というものは今後とも必要じゃないかと思うんですが、その辺り、どう考えられますか。
○国務大臣(麻生太郎君) 極めて明確です。必要です。
○谷合正明君 ありがとうございます。
やはり、その企画立案、そして完成後のフォローアップまでの種々の段階で、やはり評価あるいはそのプロジェクトレベルの専門家を入れていくということが大事だと思っております。特に、まだこのイランの事業は中間報告が正式にはなされていないんじゃないかなと。私は、まだ中間報告を見ておりません。それで、やはりうまくいってないプロジェクトであるからこそやはりそういうものをしっかりすべきだと、そういうふうに思っております。
続きまして、ODA業務実施の一元化について質問をさせていただきます。
海外経済協力に関する検討会の報告書におきまして無償資金協力についてのコメントが、記述がございました。基本的に無償資金協力についてはJICAを実施主体と位置付けると、で、必要な体制を整備すべきであると。しかしながら、効果的なタイミングで機動的に実施すべき援助は引き続き外務省が自ら実施というふうに書いてございます。
この効果的なタイミングで機動的に実施すべき援助というものが、解釈次第では現状と変わらないのではないかという指摘もございますが、外務省として、今回の一元化ということで、この辺りどのように考えていらっしゃるのか。
○国務大臣(麻生太郎君) この件につきましては、無償資金協力については実施機関ができるものは実施機関に任せるというこの間の答申、答申というか諮問に対するお答えとしてというのをいただいておりますんで、その考え方に基づきまして、いわゆるJICA、国際協力機構を実施主体として位置付けておりまして、そのためには必要なJICA法の改正を行わねばならぬと思っております。
他方、無償資金協力というのは、御存じのようにこれは外交政策上極めて重要なものでもありますんで、戦略的に実施していく必要もあろうと思いますんで、こういったことを考えますと、いわゆる時期とか、まあ機動性とか緊急性とかいろいろな表現はあるんだと思いますけれども、柔軟性が求められるものにつきましてはもとよりですけれども、もう一点、これ危険地域というのがくっ付いてきますんで、例えばイラクでNGOといったって、イラクにいる方がおられぬわけですから、そういった意味につきましては実施機関にかかわることは困難というものもあろうと思いますんで、一概に一律というわけにはいかないと思いますけれども、適切な判断が必要だと思っておりまして、具体的な制度設計というのを今後どうやってやっていくかというのを目下詰めておる最中というふうに御理解いただければと存じます。
○谷合正明君 そうしますと、具体的に外務省が引き続き実施をするプロジェクト、無償資金協力というのはまだはっきり決まってないということですか。今、一般プロジェクト無償だとか水産無償とかノンプロジェクト無償、いろいろございますけれども、具体的にどういうふうに整理されようということでございますか。
○政府参考人(佐藤重和君) 先ほど大臣より答弁のございましたとおりでございますけれども、具体的にどういうものについてJICAに実施をゆだねるか。これは基本的な考え方は、当然実施機関、JICAにできるものはこれはもう基本的にJICAに移すというのが基本的な考え方でございますが、その下でなお、こういった報告書に盛り込まれておりますように、一部のものについて外務省が引き続き実施をすることが適当であるものというもの、これはあり得るであろうということでございまして、具体的に今お話ございましたような、どういうスキームはJICAに基本的に実施をゆだねる、どういうものについては外務省というところを、これは言わばこれから具体的な詳細設計というものを詰めていくということでございますので、先ほどのその緊急性とか機動性ということにのっとって、この部分はやはりどうしても引き続き政府・外務省として実施をしていく必要があるという、言わばそういう特別なグループというもの、対象というものがあれば、そこのところは引き続き外務省が実施をするということでございまして、基本的にはJICAに実施をゆだねるということでございます。
○谷合正明君 分かりました。
続きまして、評価について質問をさせていただきます。
この評価の重要性についてはもう久しく言われているわけでございます。特に、無償資金協力の評価につきましては、一層なお一層強化するべきだということは言われているわけでございます。
そこで、確認でございますけれども、外務省がこの実施まで引き継ぐところの無償資金協力というのはだれがこの評価の責任というものを持つんでしょうか。
○政府参考人(佐藤重和君) それは当然、外務省として評価の責任を持つということになると思います。
○谷合正明君 やはりそこですね。やはり先ほどの一番冒頭に質問をさせていただきましたイランのような緊急無償資金協力、こういった外務省が実施していると、そこはJICSさんが調達代理機関として入っておりますけれども、なかなかこの評価を見ようにも国民が見る機会もないと。やはりそこはしっかりオープンに、できるところはしっかりしていただきたいということを要求させていただきます。
続きまして、国際協力の専門家のキャリア支援ということについて質問をさせていただきます。
我が国の国際協力、外交に資する専門家というのは、例えば外務省を始めとしまして、JICAさんですとかJBICさんの中にもたくさんおります。開発コンサルタント、民間でいいますとNGOでありますとか、あるいは国連機関にも我が国の国際協力に携わる専門家というのはたくさんおります。
ただ、私がこれから今後重要となってくると思うのは、このそういう国際協力に携わる人たちのキャリア支援というものをどう考えていくのかということでございます。例えば、NGOを例に取りますと、これまで外務省さんの方でNGO向けのODA予算というのを大分充実していただきました。平成十八年度の予算だけでも、日本のNGOが使える予算というのは大体百四十一億円あると。JICAにおきましても四十九億円ぐらいあると。JBICの場合はまだそういうNGOに提供するという資金はないようなんでありますが、このように資金は大分増えてきてはいるんですけれども。
ただ、実際問題、実際NGOに携わっている方の話を聞くとなかなか、二年、三年はできるんだけれども、四年、五年、長期間にわたってそこで生活を、生計を立てることが難しいんだということでございます。家族を養うというのは難しいと。実際、NGOにもいろいろピンからキリというんでしょうか、いろんなレベルございますけれども、フルタイムで働いたとしても年収がやはり三百万円行かないという状況もございます。もう海外の大学院で留学して立派な学歴とかを持っていても、なかなかそういう実情があると。二年、三年して、やはり国際協力の道から違う道に行かざるを得ないという現状があるんだと思います。国連スタッフに聞きましても、国連でJPOで二年、三年行っても、その後の就職先で困るんだという話を聞きました。
この辺りは、援助の進んでいる北欧と比べると日本の場合は、例えば青年海外協力隊あるいは国連、NGOなどの人が、二年、三年した後、次の段階のキャリアというものが我が国では不足しているんだという指摘があります。
この辺りについて、外交に資する人材をどうキープしていくか、この辺りの考えをお聞かせください。
○国務大臣(麻生太郎君) これは谷合先生、これはもう、この海外青年協力隊を最初に、これは当時の自由民主党竹下登青年局長のときにスタートしたプログラムなんですけれども、そのときに最初に問題になったのはこれだそうです。当時は終身雇用ですから、途中で会社二年抜けて帰ってきたら、おまえどこへ行くんだといってもうそれで終わっておるわけです。それで、ここがもう非常にこれがうまく進まなかったという大きな背景がありました。これはもう事実としてそういうもんなんですが。
今、再就職に関しましては、これは今御指摘の点含めましていろいろなものが、進路カウンセラーみたいなものが海外青年協力隊の中の、JICAの中にそういったものがつくられてみたり、帰国した者が再入学したい、大学に行ってみたいという人に関しましては推薦入学制度が開設するとか、また、今ウエブサイトなんという便利なものができておりますんで、こういった、国際機関の方で、こういった経験の人材を求めています、日本人とかいうようなものに関しましての情報等々を集めることにしておりますんで、JICAの運営費の交付金の中には今この金を計上しております。
また、国際関連機関、そういったものに就職したいという人もいらっしゃいますんで、そういった若手の日本人というのを支援して、いろんな国際機関に日本人が、金だけ出すんじゃなくて人も出すと、そういったようなことはいいことだと思いますんで、職員の派遣制度というのを実施しておりますけれども、平成十八年度の今回の予算案の中におきましては、そういったものに対して約十億五千万ぐらい計上しております。
こういった制度で、派遣して、三年なら三年終わって帰ってきて、また就職というところが、そこでまた引っ掛かるわけです。そういった意味では、国際機関に勤めて離職した言わば国際関係職員につきましては、再度、国際関係機関の別の機関へ勤務したいんですか、それとも日本にいたいんですかということは、そこに、現地へ行ったら、例えばスウェーデンならスウェーデンへ行ったら、その現地の在外公館ということを通じて言ってくださいと、そういったことに関しましては私どもとして御相談に応じるように、ネットにつなげば本省にもつながりますし、国内に行けばこういうのがある、今スウェーデンならこういうのがある、隣のノルウェーへ行ったらこんなものがあるというような情報はできる限り集めたいということで、情報機器の精度が飛躍的に向上したせいもあるんだと思いますけれども、昔に比べれば随分いろいろな支援ができるようになっておりますけれども、基本的には、途中入社、途中就職というのがなかなか難しい日本の企業土壌というものがなかなか話を簡単にはいかせていないというのが一番大きな背景だとは存じますけれども、昔に比べて、私どもが始めたこの海外青年協力隊を担当しました二十五年前に比べたら、もう格段の違いは感じておりますけれども、まだまだだと存じております。
○谷合正明君 大臣の御理解、本当に感謝申し上げます。
次に、国際機関の援助について質問なんですが、今日の大臣の予算説明の中にも国際機関についてはしかるべき予算を計上していると書いてありますけれども、ただ、国際機関のこの援助の使われ方をどうチェックするのかというのがまだまだ甘いんじゃないかと私は思っております。二国間援助だけでなくて、こういった国際機関を通じた援助にも多額の税金が使われております。平成十八年度でも約九百億円が国際機関への出資、拠出で計上されております。これらの出資、拠出がどう使われているのかというところが、余り関心がないのか、見えてこないなと。
私自身は関心がございまして、昨年は十一月にアフリカのスーダンの方へ行きまして、スーダンの南部まで行きまして国際機関等が実施しているプロジェクトを見てまいりましたけれども、国際機関におきましてもやはりこのチェック体制というのを我が国でやはりしかるべきものをしていくべきじゃないかと、あるいは国民にどう使われているかというのを説明責任を果たしていくべきじゃないかというふうに思っておりますが、この辺り、どう思われますか。
○国務大臣(麻生太郎君) おっしゃるとおり、衆議院で、分かりやすいかと思いますけれども、予算は興味あるけれども決算は余り興味がない。会社へ行ったら逆ですよ。会社は予算より決算ですよと、私はそう思いますね。決算が勝負でしょうがと私は思うんですけれども、やっと参議院では決算重視ということにこの数年なられておられますんで、ええことだと、私自身は基本的にそう思っています。
そういう意味では、経営者からこっちの世界に、実業から虚業と言うと問題起きるな、また。実業から正業、いや違うな、何か適当な言葉に。とにかくビジネスの世界から政治の世界に来た者から言わせると、この予算と決算の差だけがもう僕は正直一番驚いたものだったんですけれども、いずれにしても、どうやってやるかというのは一番大きな関心事で私もあります。
例えばこれも、国連の分担金というのはよく話題になりますけれども、こういった、例えばスーダンの例を引かれましたけれども、北と南ではあそこは全く違いますんで、南の方はキリスト教徒、北の方はイスラム教徒等々違いがあるんで、南の方に話が偏りがちというのはもう御存じのとおりですけれども。
そういったようなことになってくると、基本的には私どもは、国連分担金の比率で、これに百億出すとなったら、それに日本の比率はこれといって割り当ててきますんで、その内容については私どもは、たんびたんびプロジェクトが出ますんで、そのプロジェクトに人を入れているかというと、それは年度途中にいきなりこれに三人出せ、五人だせと言ったってとても出せるあれがありませんので、なかなかチェックが難しいという実態は確かにあります、人が中に入れていませんので。そういったところは私どもとしての組織上の問題点等はあるんだと思いますけれども。
少なくとも、国際機関等への拠出金・出資金に関する報告書というようなものを作成して、いろんな形で外務省としてこういったのはきちんと作ってはおりますけれども、じゃ細目にわたっておまえどれぐらいきちんとできているのかというと、そこに人がおりませんので、残念ながら第三者ができたものをという以外にほかに方法がありませんので、そういった意味では、何らかの形でこういったものがきちんとされるようにシステム、制度として考えるというのは今後の課題として残っていようと思います。
○谷合正明君 終わります。