○谷合正明君 公明党の谷合です。
先週に引き続きまして、質問をさせていただきます。
本日は、我が国の林業施策について、中心に質問をさせていただきたいと思います。
まず、質問に入る前になんですけれども、若干、林業に携わっている方からいろいろ話もお伺いしてまいりましたので、その話をちょっと紹介したいと。
先週末に実は常田先生の御地元であります鳥取県に行ってまいりました。鳥取県は杉の産地である智頭町というところに行ってまいりまして、そこでいろいろ、森林組合長さんでありますとか林業に携わる方のお話を聞いてまいりました。元々ここはもう杉の産地として大変有名であったわけでありますけれども、実際聞いてみますと、林業に携わる方というのは周辺産業を含めると大体百人ちょっとだと、人口は九千人ぐらいの町なんですけれども、しかも専業で林業としてやっている方も二人から三人だろうというような話を聞きました。いずれにしても、生計を立てていくことが非常に難しいという話とともに、新しく、例えば緑の雇用などを使って新規に林業へ携わりたいという方も、まあ手は挙がってくるけれども、冬季の、雪が降る間どうやって賃金を確保したらいいのかとか、そんな悩みも聞いてまいりました。
また、一方では、私の岡山の県北にある森林組合で現場作業員として従事される方のお話を聞きました。その方は、一昨年になりますかね、台風被害で風倒木が大変激しかった地域で風倒木処理に携わっているんですけれども、今年、まあ昨年の話なんですけど、二〇〇五年に入ってからでも県内で死者がその方によると十名ほどになっていると。なかなか風倒木処理の危険さだとか厳しさというものが世の中に浸透していないというふうに訴えられておりました。こういった作業はこれから四年間も続いていくんだと、激甚災害指定したからといってそれで事は終わるわけじゃないということを切に訴えられておりました。実際働いている方々にとってみると、例えば風倒木処理など危険な作業をしたとしても、給料が上がるどころか下がるという現実もあるんだと。実際、四十代でも実際年収は三百万円で本当に大変だというような話を聞いてまいりました。
いずれにしましても、本当に林業の現状というのは、そこに携わる人にとってみれば本当に大変な中でやっているんだなと。
ここで質問ですけれども、政府はここ数年、財政構造改革を進めていると。林野予算も年々圧縮されるところとなっておりまして、そのため森林・山村の現場で実際林業従事者のリストラさえ懸念される厳しい局面に立たされているのではないかと思っております。先ほども紹介しましたけれども、そういう厳しい経済環境に耐えながら必死に頑張ってきている、頑張ってきたこの数少ない林業従事者をここで失うわけにはいかないと私は思っております。特に、危険な作業を伴うようなものなんというのは簡単に一年、二年でできるものじゃないということを私も身にしみて感じたわけでありまして、ここでいったん失ってしまうと、この林業、日本の林業というのは再生というのは難しいんじゃないかと。この数少ない林業従事者を失わないために林野庁としてどう対応されていこうとするのか、その辺りをお伺いしたいと思います。
○政府参考人(川村秀三郎君) 今委員の御質問の中にございましたとおり、なかなか林業経営をめぐる状況は厳しいものがございます。特に、端的には木材価格が低迷をしておりまして、なかなか採算性が悪いということがございます。そのために、ただ、価格が非常に落ちたということで、一方では国産材を使おうという動きが広がっておりまして、実際、合板でありますとか集成材への利用がだんだん増えてきております。これはある意味では新しい風だと思っておりますが、これに対応して、では山元でどういうふうに対応していくかとなりますと、やはり経済ベースでの採算性をできるだけ向上さしていくということがやはり一番ある意味では近道じゃないかということで、低コストで持続可能な林業経営をいかに実現していくかということが大事だろうと思っております。
私どもとしては、大きくはこのために二つの柱を立てておりまして、一つは、実際、林業の生産活動に携わる方々は森林組合等の林業事業体でございますけれども、ここの施業をいかに集約化するか、つまり規模を大きくして生産効率を上げていくかということがまず一点ございます。なかなか、不在村の森林所有者とかもありまして、なかなかまとめるのが大変な状況は現実としてありますけれども、これを何とか打破しないと道が開けないと思っておりますので、まずここを力を入れてやりたいというのが一つございます。
それからもう一つは、コストの低減には作業道といいますか、そういうものをやはり整備しなくちゃいけない。それから、それとセットで高性能林業機械、かなり出てきておりますので、高性能の林業機械ですね、これによりまして、例えば路網の密度が高まりますと、これまでよりもコストを半減したといったような事例がもう実例としてかなり全国でも出てきております。ですから、そういうことを念頭に、この作業道の整備、高性能林業機械の導入と、こういったことを二つ目の柱として進めていきたいということでございまして、今、川下の方で国産材の、特に間伐材を利用した集成材とか合板、こういうものが急速に伸びようとしておりますので、この期にそういった意味での転換といいますかを急速に図ってまいりたいというふうに思っております。
○谷合正明君 今二つの柱を言われましたけれども、森林組合の効率化、まあ合併等も今推進されているんだと思いますけれども、あとコストの削減といったところもしっかりと進めていただきたいと思います。
その林業、実際に林業に従事している方を守るための施策ということで今お話がありましたけれども、実際、今度新規で入ってくる方をどうもっと呼び込むかということで、よく言われておりますけれども、緑の雇用の存続についてなんですけれども、特に和歌山県なんかでは結構うまくいっているということでよく話を聞くんですが、この緑の雇用について、やはり今後も引き続き使いやすいものにしていただきたいと、そして今後もずうっと続けてほしいということを現場からよく話を聞きます。これまで、例えば対象、その対象は市町村林など研修事業に特化していたわけでありますが、それだけだとどうしても二年、三年して、じゃ林業に定着していくかというと、なかなかうまく定着しないというような声もありました。
その辺りも含めまして、この緑の雇用の存続、この事業を進めていくべきだと私考えておるんですけれども、この対応、どうなっているのかということを確認させてください。
○副大臣(三浦一水君) 林業就業者の減少と高齢化が進んでいきます中で今後の森林整備を着実に推進をしていくためには、御指摘のように、担い手の確保や育成を図っていくことが重要と考えております。
このことを実践するために、平成十四年度の補正予算から、現地で実践的な研修を行います緑の雇用担い手育成対策事業を実施しながら、担い手の確保や育成に取り組んできているところでございます。平成十八年度予算におきましては、この現行事業に引き続く新しい事業としまして、若者等を対象に林業就業に必要な技術に関する研修を、研修対象地を拡大をしながら、公有林に限定せず、その他におきましても実施できますように新事業を実施をするところでございます。
また、あわせまして、先ほど委員から御指摘もございました風倒木あるいは掛かり木の処理などのより高度な技術に関する研修を行います緑の雇用担い手対策事業を実施することといたしております。
今後とも、森林整備を担います林業就業者の確保や育成を図るため、本事業を着実に推進してまいりたいと考えております。
○谷合正明君 どうもありがとうございます。
公明党は、従来からこの林業施策というものが、どちらかというと川上対策を重視していて川下対策を軽視してきた嫌いがあるのではないかということを主張をしてまいりました。
先ほどからいろいろの川上の話が出ていたと思うんですけれども、どちらかというと従来林業施策というのは森林整備とか木材生産に特化したような川上対策があったわけでありますけれども、これからはやはりこの木材の加工、流通といった林産業などの川下対策を飛躍的に取組をしていくという必要があるんじゃないかということを公明党としても訴えてまいりました。
中でも、近年、木材の需要については、例えば柱、土台などの製材品の角類から、先ほども出ていましたけれども、構造用の集成材でありますとか、内装、外装用の板類への大きくシフトしているわけでありますけれども、ただ、この需要変化への対応というものが現場ではなかなか対応できていないと。国産材の場合は外材に比べてその対応が後れているということであります。
こういう実情に対処しまして、是非ともこの国産材が集成材や板類として広く利用されるための誘導措置というものを講じていくべきだということを訴えてまいりました。その際、用いられる素材につきましても、これまで結局見向きもされなかったような間伐材であるとかあるいは曲がり材といったものもこういった集成材には活用できるんだということで訴えてまいりました。
林野庁におきましても、こうした公明党の我が党の主張を受け入れて、また更に様々な工夫を凝らしていただきまして、平成十六年度からモデル事業を展開されておりますけれども、これが川上と川下が連携した地域材の新しい大規模な流通・加工システムという事業でございますが、これが全国で七か所モデル的に展開されていると思います。現時点でこの事業の実績をどのように評価されているのか、その点についてお伺いいたします。
○副大臣(三浦一水君) 谷合委員御指摘のように、地域材、いわゆる広義にいう国産材でありますけれども、その需要の拡大のためにはこの川上、川下をどうとらえていくかということは非常に重要であると認識をしております。なかんずく、住宅メーカーなどの最近の動向を見ますと大規模な需要が多いわけでございまして、そのような大口のロットに対していわゆる木材産業としてどうその需要に的確にこたえていくかということが非常に重要であると併せて考えております。
平成十六年度から、大規模需要者のニーズにこたえるという視点で、これまで利用が低位でございました曲がり材あるいは間伐材を取りまとめて集成材や合板にして、これらを低コストかつ大ロットで安定的に供給をしていくという目的のために広域的な流通・加工システムをモデル的に整備しているところでございます。先ほど御指摘がありましたように、全国で七か所のモデル地域をつくり、今推進をしておるところでございます。この取組につきましてでありますが、この取組の成果もありまして、近年におきましては、先ほど長官もお話をさしていただきましたが、合板あるいは集成材におけます杉材を中心としました国産材の利用が顕著に今増加をしてきております。
今後とも、このような施策の展開を通じまして国産材の供給拡大に努めてまいりたいと存じております。
○谷合正明君 分かりました。
そのモデル地域であったと思うんですけれども、国産材の利用が顕著に増えているということでございます。
この平成十八年度の予算案でございますけれども、林業再生のための新生産システムの確立という新しき事業があるかと思います。これがこれまで平成十六年度からやってこられたモデル的に展開した事業を更に大きく発展させる、そして単なる間伐材のみでなく広く一般材をも対象としたこの新生産システムの事業案だと思います。これは事業規模にしても年間五万から十万立米にも及ぶ木材を処理できる大規模な事業主体を育成しようとする、そういう画期的な内容だと私は思っております。これは国産材の市場拡大への大きな追い風になると期待するものでありますが、この事業に取り組む姿勢を大臣にお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(中川昭一君) 日本の国土の三分の二が山、森林であって、しかも日本の気象条件、あるいは地形からいうと山がしっかりしていないと日本じゅうが、都市も農村、農業も含めて安定した生活、あるいは産業活動ができないわけであります。
先ほど中国の森林状況のお話もちょっとありましたけれども、山が荒れると最終的には国は、国土は砂漠化していくと。昔のあの有名なレバノン杉なんというのは非常にいい材質だったんでしょうけれども、あれを乱開発といいましょうか、取り放題にしてキープしてこなかった結果が、あの地帯がもうほとんど砂漠化してしまったと。中国も植林をきちっとせずに、そして日本からいい木材だけを買おうというのも、これは日本にとって先ほどの御質問のようにプラスにならないだけではなくて、中国そのものが砂漠化をしていくんだと、これはもう大変な問題ですよということを私は中国の閣僚にいつも申し上げているところでございます。
そういう意味で、この山をまず守ると、守るためにはそこで暮らしをしていく人たちがきちっと暮らしていける。先ほどから谷合委員が御指摘のように、風倒木の被害というものの復旧は大変難しいわけでありますし、治山治水事業というのは極めて大事であり、また長期間にわたるわけでございます。そういう意味で、御指摘のように川上と川下がうまく連動できるように、もっと言いますと付加価値のあるものを川下サイドがこういうものが欲しいんだというものに対してきちっとこたえていく体制が、今までともすればミスマッチぎみであったということに対して、先ほど三浦副大臣からも答弁があったところでございます。
また、輸出についても、丸太だけではなくて、付加価値の付いたものをきちっとした資源管理、あるいはルールのあるところに輸出をしていくということも重要だと思います。これも谷合委員大変御熱心に取り組んでいらっしゃるというふうに伺っております。
林業関係者も、輸出というものを最近は特に意識をしながら、とにかく売れるものをつくっていこうということで、何とかこれもある意味では攻めの木材行政、森林行政ということで、これは現場はもとよりであります、また自治体、国、一体となって、また山村集落から大都市、メーカーに至るまで一体となってやっていくということが今正に問われていることだろうと思います。
いずれにしても、山に従事している人たちが大変厳しい状況にあるということは私自身も重々承知をしておりますので、積極的な林業政策を改めてこれからもやっていきたいと思いますし、専門でございますので谷合委員のまた引き続きの御指導もよろしくお願いいたします。
○谷合正明君 ありがとうございます。
大臣に今、国産材供給拡大に向けた大きな御決意も聞かせていただきながら、その取組の姿勢を聞かせていただきまして、ありがとうございます。特に、この新生産システムのこの新しい平成十八年度予算というものをやはり私も期待をしておりますので、しっかりと見守っていきたいと思っております。
今年の秋には森林・林業基本計画の見直しが予定をされております。現時点でのその状況認識で結構なんですが、この森林・林業基本計画についてどのように認識されているのか。前回は平成二十二年度に国内の木材供給量、例えば二千五百万立米産出するというような目標もあったんですが、現実にはまあ難しいんだろうというのはあるんですけれども、現時点での認識をお伺いいたしたいと思います。
○政府参考人(川村秀三郎君) 御質問の基本計画でございますが、平成十三年に策定しておりまして、最初の策定をしておりまして、この大きくは二つの目標を掲げました。一つは森林の有する多面的機能の発揮に関する目標ということが一つ、それからもう一つは、今二千五百万立米と申されましたように、林産物の供給及び利用に関する目標というものを掲げて、関連する施策を総合的に展開すると、こういうことで進めてまいりました。
一点目の森林の有する多面的機能の発揮に関する目標でございますが、これは、より具体的にいきますと、育成の複層林、様々な年齢層の林層の森林をつくっていくと、にシフトしていくということでございましたけれども、これが正直、率直に申し上げまして、施業技術の開発の遅れとか、あるいは路網等の基盤の整備が低調であるということで、これが残念ながら低位にとどまっております。そしてまた、下草の成育が十分でないといったようなことで、森林の公益的機能の十全の発揮にやや懸念があるというところが現実であろうと思っておりますので、この点いかに進めていくかということが重要であろうというのが一つでございます。
それから、林産物の供給及び利用に関する目標の二番目でございますが、二十二年に二千五百万立米ということで目標にしておりました。ただ、全体としての需要が減少しておるものですから、平成十四年までは減少を続けたわけでございます。ただ、先ほど来御議論ございましたように、国産材がやや最近では復活の兆しがございますので、これを太い流れにしていきたいなというのが現在の認識でございます。
○谷合正明君 国産材が使われるためには、やはり消費者が国産材をやはり使いたいと思う気持ちが高まらないといけないわけでありますけれども、特に、今は小学校とか新しく造るときも、地元の木材を使って造ったりとか、やはりその地域材にいかになじむかというようなことをしながら国産材の愛着というものを高めているんじゃないかと、そういう必要があるんだと私は思っております。
国産材利用の促進に向けて、私自身、例えば先ほど自給率、木材の自給率が一八%と出ましたけれども、例えば食料の自給率であれば四〇%、現時点で四〇%だけれども、将来、将来というか十年後には四五%にしたいというような分かりやすい大きなマクロ的な指標があるんですけれども、木材、林業に関していうと、なかなかそういったものが見当たらないなというところは前から思っております。
その点は御答弁いただかなくても結構なんですけれども、要は、国民が、特に若い人たちが国産材を使おうという意識が消費行動に結び付くことを促進することが大切でありまして、国民への分かりやすい情報提供というものが必要であると思います。まだまだ国産材、木材のトレーサビリティーというのは確立されておりませんので、例えばその消費をしようと思っても、それが地域材なのかどうかというのは実際本当は地域材なのかどうかというのは分からないところも多くて、どうやったら国民に分かりやすく情報提供を伝えていくのか、そこをしっかり強化していただきたいと思います。
その対策についてお伺いしたいと思います。
○政府参考人(川村秀三郎君) 御指摘のとおり、国産材の利用をいかに拡大するかということが、ひいては林業の活性化、また地球温暖化防止に資するということでございまして、木材の利用の、特に地域材の利用の普及啓発が必要だろうと思っております。
昨年から、国民運動としてこれを盛り上げていこうということで、木づかい運動を展開しております。そして、十月を木づかい推進月間としまして、シンポジウムでありますとか政府広報でありますとか各種メディアを通じて、地域材の利用に対する理解、意義、こういうものを直接消費者やユーザーに訴えているというところでございます。
特に、その中の一つのやり方として、どの程度貢献ができるかということで、ポイントを使って、ポイント制の評価でやっていくということで、一立方の木材を使うと一ポイントということでカウントしますと、例えば間伐材を利用した印刷用紙一枚が六ポイント、間伐材を使った割りばし一客が二十四ポイントとか、非常に木を、木造で造っていただきますと四千万ポイントにもなるわけなんですが、そういったポイントをよく理解していただく。
そして、最近、企業の森とか、企業参加型の森づくりも進んでおりますが、そういうところでもそういった、どの程度貢献をされておるかということが分かりやすく国民の皆様に会社側が説明できるような、そういう指標も作りながらやっていきたいというふうに思っております。
○谷合正明君 ポイント制度ということで、まあ、ポイントがたまると何があるのかはよく分かりませんけれども、そういう楽しく参加できるようなものをどんどんやっていただきたいなと思います。
林業については、やはりこの森林資源だけではなく、海洋資源も含めてトータルに考えていかなきゃいけないんだろうと。先週は、私はノリの問題を取り上げて、ノリは海じゃなくて山が作っているんだということをお伝えしましたけれども、やはりこの日本の山をつくっていくことはこれから大事な、本当に大事なことだと思っております。
ちょっと話題が、今度、鳥獣被害の方の話をさせていただきたいんですけれども、農作物の野生鳥獣被害について、やはりいろいろの地元、現場を回っていると、品目横断的な施策のみならず、やはりこの鳥獣被害についての訴えをよく聞きます。実際にその野生鳥獣による農作物の被害の状況だとか取組状況について、簡潔にまずお話お聞かせいただければと思います。
○政府参考人(西川孝一君) 鳥獣害の、農作物被害というお尋ねでございますけれども、平成十六年度の野生鳥獣による農作物の被害は全国で、面積で約十四万ヘクタール、被害金額は約二百六億円というふうになっております。このうち、獣類による被害が百二十八億円、鳥類による、鳥ですね、鳥による被害が七十八億円ということでございます。特にイノシシ、シカ、猿による被害が多くて、獣類の被害の約九割がこの三種で占めているということでございます。
農林水産省におきましては、野生鳥獣による農作物被害を防止する観点に立ちまして、被害防止のための技術開発というものを一つ行っていると。このほかに、強い農業づくり交付金などの各種補助金によりまして、各地域で取り組みます侵入防止さくの設置あるいは追い払いなどの自衛体制の整備、必要な知識の普及啓発などに対して支援を行っているということでございます。
また、各地域におきます取組を円滑に進めるために、この三月中旬に、現場の技術指導者が活用できますよう、全国的に被害が大きいイノシシとシカと猿につきまして生態特性と被害対策をまとめましたマニュアルを作成いたしまして、各都道府県などに配付してこの対策の参考に資するようしているところでございます。
○谷合正明君 続いて、その農作物の鳥獣被害でとりわけその県域、都道府県の県域をまたがる地域の被害防止策についてなんかはどのように対策を講じられているんでしょうか。
○政府参考人(西川孝一君) 委員御指摘のとおり、イノシシとか猿などの被害につきましては、県域を越えて複数の市町村に被害をもたらす場合もございます。そういうことで、被害を受けている市町村等が連携してこの対策に取り組むというのが非常に大事だろうと。
ただ、こうした県域をまたがります地域につきましては、既存の交付金などでの対応というのが困難なことも想定されますことから、十八年度予算におきまして、農林水産省といたしましては、関係する市町村や関係団体による県域を越えた被害防止に向けた連携対策を構築するとか、被害目撃情報、侵入防止さくの設置状況などの情報等、その個体群の行動範囲などの情報を統合した地域参加型の鳥獣害情報マップ、これは最先端のGPSとかGIS、それも活用するわけですが、そういうものを作成する。また、猿用の電気さくであるとかイノシシ用のフェンスなど最新の開発成果の導入、あるいは放牧とか忌避作物を上手に組み合わせた総合的な防除技術の体系を確立するといったこと、そういうことを内容といたします新たな対策を環境省との連携の下で実施することとしているところでございまして、関係省庁ともしっかりと連携を取って被害防止対策を総合的に推進したいというふうに考えているところでございます。
○谷合正明君 終わります。