○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
まず初めに、JAS法に関する質問の前に、牛肉のトレーサビリティー法に関する質問をさせていただきたいと思います。
先月、滋賀県におきまして、近江牛の生産履歴偽装事件が明るみになりました。本来、近江牛(静岡県産)と表記すべきところを、純粋に近江牛とだけ表記しているために滋賀県で長く飼育していたように見せ掛けたという、つまり生産履歴を改ざんしたものであります。北海道で起きました耳標偽装事件に続きまして牛肉トレーサビリティー法に違反する事件が起きました。
この滋賀県の事件を受けまして、滋賀県内のすべての肉牛農家を対象にした調査が行われました。百二十八戸の肉牛農家のうち六割以上で何らかの形で牛の飼育履歴の登録漏れが見付かったとのことです。調査した一万八千八百七十二頭のうち、出生、死亡、移動状況の未報告が九百八件、耳標の未装着が、片方しか耳標をしていないという牛を含めると千五百九十五頭にも上ったそうであります。これは本当に、一割近い数でありますので多い数だと思っております。
牛の登録、変更などのデータを扱う福島県の家畜改良センターでは、一日約三万頭のデータが送られてくると。しかしながら、ファクスなどによる登録ミスは一割にも及ぶときがあると。事務作業が追い付かないという声も上がっております。こうしたミスは故意でないにしても、システムの不備あるいはそのシステムの盲点といった状況に目を付けて生産履歴を改ざんするような、あるいは耳標を取り替えるというようなケースが今回そして北海道でも起きたんだと私は理解をしております。
問題は、そのトレーサビリティー法の信頼性をこれ以上損なわないために早急にこのシステムや耳標構造の見直しが必要であると思っております。牛肉の輸入再開の議論が行われている最中なだけに、私は、国内の体制をしっかりとしたものにすべきだということをまず訴えたいと思います。
まずは、その実態を把握するために、北海道、滋賀県以外でも、ほかの県でも全肉牛農家を対象にした、全頭検査とはいかないまでも、サンプリング調査など一斉点検をするなど、肉牛管理の徹底を図ることが必要だと考えておりますが、前回もその耳標事件のことで大臣に質問させていただきましたので、今回も大臣のまずその見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(島村宜伸君)
北海道と滋賀県における牛肉トレーサビリティー法の違反事例を受けまして、牛の管理者への指導を徹底するよう、全国の地方農政局と地方農政事務所に対してこの指示を徹底したところであります。
地方農政局と地方農政事務所においては、従来より牛の管理者に対する巡回点検を計画的に実施しておりますが、今回の違反事例の発生を踏まえまして耳標の装着や届出状況の確認を行うなど、指導の徹底を図っているところであります。
今後とも、トレーサビリティー制度の言わば的確な実施に努め、本制度、ひいては国産牛肉の信頼性の確保に努めてまいりたいと考えておるところであります。
なお、滋賀県の肉用牛の管理者に対しましては、滋賀県側から、近江牛の名誉回復をしたいと、そういうために是非協力してほしいという要請がありまして、一斉の巡回指導・点検をという形で滋賀県と合同で緊急的な指導を実施したところでありますが、その結果 、悪質な違反事例は見受けられず、まあ終わったということでございますが、引き続き言わばこれら農政事務所が、滋賀県の農政事務所が監視、指導を行っているというふうに報告を受けております。
なお、私は、前の農林水産大臣の際に各県の知事といろいろお話をする機会がありましたが、どの知事も自分のところの牛肉が日本一おいしいと、こう言うんですね。それは何も変に肩をそびやかして言うんではなくて、本当にそうだと信じているようであります。何ならいつでもと、こう言うんですけれども、それはごちそうになるわけにいきませんが、いろいろ聞いてみると本当に、肉のプロでも差別 が付かないというくらい本当に日本の肉はどこの肉もおいしいようであります。前沢牛にしても仙台牛にしても米沢牛にしても、松阪はもとよりでありますが、神戸にしても但馬にしても、それのついでに元々の本家はうちの方だと、こういうお話まで聞けるわけですが。
そのぐらいプライドを持っていいものを作って競争しようというのは非常にいいことでありますし、私は、そういう意味では日本人の良さがそこにあるんだろうと思いますから、こういう本当にわずかな事件のために全体がおかしな誤解の中に閉じ込められるというのは非常に良くないと。
ただ、今、委員から伺った数字はちょっと大きい数字でありますから、こういうことはもう決して聞き捨てなりませんので、この次にまた御質問を受ける際には、明らかに内容が変わってきていると、こういう事例を示して、更に徹底を図りたいと、こう思うところであります。
○谷合正明君
国産牛肉の信頼性確保のために本当に努めていただきたいと思っております。我が岡山県も、牛肉は本当においしいんだという自負を持っている方々にたくさん接します。それはおいておきますが、JAS法とも関連しないこともありませんので、初めにこの質問をさせていただきました。
続きまして、今回の改正案でありますJAS法について質問に移らさせていただきます。
先ほど大臣が趣旨説明で述べられたとおり、消費者の視点を重視し、消費者が自己の判断で合理的な商品選択を行うことが可能となるように制度の充実を図ると言われたところであります。その方向性について私も賛成をしております。
一九五〇年に始まりましたJAS規格制度、当時多発した粗悪品やまがいものの出回りなどを防いできた、そういう制度として一定の役割を果 たしてきたことを私も理解をしております。しかし、一方で現在のように全般 的に品質が向上した時代において、率直な思いとして、JAS法がないと本当にだれか困るのかという思い、疑問というのもないわけではありません。消費者、生産者、製造業者はJAS規格に何を期待しているんだろうかと。
JAS法の今日的意義はどこにあるのか、大臣の見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(島村宜伸君)
JAS規格制度は、国が定めた品質基準を満たす飲食料品などにJASマークを付して販売することを認める仕組みでありまして、これにより農林物資の品質の向上や消費者の合理的な選択などに寄与してきたところであります。
また、社会情勢の変化に対応した取組として、例えば近年では、食の安全、安心や生産情報の開示に対する消費者の関心に対応して、有機JAS規格、あるいは生産情報公表JAS規格を制定したところであります。
このような取組は、消費者の関心にこたえるものであると同時に、意欲ある生産者あるいは製造業者の品質向上の努力を促すものとなっております。
JAS制度の果たしている重要な役割にかんがみまして、今後とも制度の適切な運用に努めてまいる所存でありますが、たまたま先ほど岸議員の御質問の際にも、自分の家内がJASの存在を果 たして知ってそのマークを確認したものを買っているだろうか。実は、私もそのとき自分の家内を思いやって、同じことじゃないのかなと、こう思ったところですが。
ただ、私が最近いただくこういう専門の業者の方々の名刺にJASのマークをわざわざ入れたものがあって、自分のところはこのマークを取っている店だと。これが非常に多いのに気が付いているわけですが、やっぱり業者の方からすればそれが大変な言わば看板になることも事実のようでありますから、こういう制度があることをもっと徹底せしめて、このマークを使える店はより確かなものだという、ある意味で社会的な権威というものが言わば確立されるように努力することも我々の一つの大事な仕事かなと、こんなふうに思っているところであります。
○谷合正明君
私も、買物をするときにこれまでそのJASマークを見ていたかというとそうでもなく、この質問をする前に、私も岸委員と同じように妻に聞いたわけでありますけれども、やはり気にしていないと、その妻の友人も気にしていないという回答でございました。ただ、今言われたとおり、差別 化規格に重点を移していくような方向性の中で、やはり消費者だけじゃなくて意欲ある生産者にもメリットをもたらすというもの、そういう御回答をいただきましたので、是非ともその方向性を明確化していっていただきたいと思っております。
次に、流通JAS規格について質問をさせていただきます。
今回の法改正の眼目の一つとされておりますこの流通 JAS規格であります。この流通JAS規格を定めることによりまして、消費者や実需者にどのようなメリットがあるのか、また現段階におきまして、流通 JAS規格の需要はどの程度あると見込んでいるのか、政府にお伺いをいたします。
○政府参考人(中川坦君)
今回導入を検討しておりますこの流通JAS規格でありますけれども、これはやっぱり消費者の方々がその商品そのもの、あるいはその商品がどのように作られたかということだけではなくて、それが作られてから手元に届くまで、その流通 過程に対しても非常に、どういうふうにハンドリングされたかというふうなことが大変関心が高まってきているということが一つございます。
その一方で、食品流通の分野におきましても、高度な品質管理技術が積極的に活用されるようになってきているという現状もあるわけでございます。こういった取組につきましては、なお一層その推進をしていくということ、それからまた消費者に対しましても特色のある方法で流通 をした商品についての情報を積極的に提供していくと、こういうためにこの新たな流通 JAS規格というものを考えているわけでございまして、具体的なそのメリットということで申し上げれば、消費者にとりましては、特色のある流通 方法で提供された商品を安心して買っていただけるということでございますし、また事業者の方にとりましては、高度な品質管理技術で流通 した商品であることを消費者の方々に積極的にアピールできていくと、そういうメリットがあるのではないかというふうに考えているわけであります。
それじゃ、この流通JASについて具体的にどういうものが見込まれるのかということでありますが、これはやはり事業者の方々あるいは消費者の方々が本当に、どこにどういうニーズがあるかということはこれからもう少しきちっと把握をしていく必要があると思います。私どもは、取りあえずはどうかということで考えますと、温度管理をきちっとした氷温流通 というのが一つ考えられますし、また活魚の流通、そういったものもあるかと思いますが、これは我々が今推測をしているだけでありまして、本当に事業者の方々、消費者の方々がどこにそのニーズを持っておられるかということはJASの調査会の中で具体的に検討していきたいというふうに考えております。
○谷合正明君
是非とも、消費者がその付加価値を認めて余分にお金を払ってもいいというような制度をしっかりと検討していただきたいと思います。
その流通JAS規格ですけれども、その見直しについて確認をさせていただきます。 JAS規格は少なくとも五年ごとに見直すことが法定されております。流通 分野におきましては、その技術進歩、先ほど低温流通の話もありましたが、もう五年もたてばかなり技術が進むということが言われております。そうしますと、その五年間待っていると新技術の導入というものが逆に妨げられてしまうんじゃないかとかいう意見、また一方に、逆に頻繁に改定してしまうと、JAS規格、流通 JAS規格を頻繁に改定してしまうと認定を受けた事業者に負担を掛けてしまうんではないか、あるいはJAS規格の信頼を低くしてしまうんじゃないかというような指摘もありますが、そういった技術進歩の観点から、この流通 JAS規格の制定内容、見直しというものはどのように行っていくべきなのか、政府の見解を伺います。
○政府参考人(中川坦君)
どういう具体的な規格をこの流通JASの中で設定していくかということもこれからJAS調査会の中で御検討いただくものでございます。
そういうことからいたしますと、どういう見直しの方針かということにつきまして余り具体的にお答えすることはこの段階では大変難しいわけでありますけれども、やはりこの流通 JAS、一つの新たな規格でありますので、先ほどもちょっと申し上げましたが、一つの新しい技術としてこれから普及していくというふうなもの、かつ消費者や事業者の方がきちっと求めている、そういうものを特色のあるものとしてアピールしていく、それだけの価値があるものというふうにお考えいただく、そういうものが新たなJAS規格になるわけでありますので、それが引き続き、常に、それが今、その時点その時点でそういった特色を維持しているかどうか、あるいはそういうことで流通 する商品がそれなりの価値を高めているかどうかについては、ずっとふだん、常日ごろからチェックをしていくということが必要だというふうに思っております。
それから、五年に一度の見直しというのは一つのルールでございますけれども、これは少なくとも五年に一度は見直しをするということでありまして、特別 の事情によって必要があれば、その五年を待たずとも、これまでも見直しをしてきているところでありますので、そこは余り機械的に考えずに、きちっとしたニーズあるいは世の中の流れに対応できるような形でこの制度は運用したいというふうに思っております。
○谷合正明君
分かりました。
続きまして、・種格付制度の廃止につきまして質問をさせていただきます。
今回、登録格付機関等による・種格付制度が廃止されようとしております。結果 としまして、JAS規格の格付、JASマークの貼付は認定を受けた製造事業者が行う登録認定機関制度のみにより実施されます。そこで、これまで・種格付制度を利用してきた畳表、生糸、林産物等について、この制度の廃止が畳表、生糸、林産物等に関するJAS規格の格付の減少につながる懸念はないのかという心配もあります。
畳表の場合、現在登録認定機関が存在しておりません。岡山県、広島、福岡、熊本県、県で格付を行っておりますが、今回の法改正によりましてどういう対応をしていこうと考えているのでしょうか、お伺いいたします。
○副大臣(常田享詳君)
・種格付制度の廃止に当たりましては、急激な制度の変更による混乱を避けるため、三年間の経過措置期間を設け、この間は現行の・種格付制度による格付を可能とするとしております。
また、この経過措置期間内に、畳表など・種格付を利用している製造業者や関係団体との十分な連携の下に、登録認定機関の立ち上げなど認定制度への円滑な移行が行われるよう、十分な調整を行ってまいりたいと考えております。
なお、新制度への移行に際しましては、地方公共団体、独立行政法人農林水産消費技術センターなどの関係機関と連携しつつ、パンフレットの配布や各種講習会における説明なども積極的に行いたいと考えております。
私どもの地元の中国地方では、今御指摘のとおり、広島県、岡山県が特にこの畳表の加工が非常に盛んなところであります。そういった方々にも昨年の九月、本年の一月、十分意見をお聴きいたしまして、このたびのことで困るようなことがないということを確認した上でこのたび決めたということでございます。
○谷合正明君
分かりました。
続きまして、今回新たに登録認定機関を設けるに当たりまして、登録基準にISOガイド65を引用することが図られております。そこで、このISOガイド65の基準について質問をさせていただきます。〔理事岩永浩美君退席、委員長着席〕
このISOガイド65では、例えば認証システムの運営に必要な財政的安定性及び経営資源を持つ、遂行する職務の種類、範囲及び量 に応じて認証機能に必要な教育訓練を受け、かつ技術的知識・経験を持つ十分な数の要員を担当する上級の経営管理者の下に雇用することが必要であるとされておりますが、具体的な数値等が示されておりません。改正の内容では、行政の裁量 の余地がない形での登録が可能となるよう定めるとあるわけでありますけれども、そこで実際どうなのかということで、今回の登録基準、現行制度と比べて具体的に何が変わろうとしていて、登録認定機関の審査に当たり農林水産大臣はISOガイド65の基準に合致しているかどうかをどのようにして判断することになるのか、その点について政府に確認いたします。
○政府参考人(中川坦君)
先生、今お尋ねのように、今回からISOガイド65というものを登録基準とするということが法律で明定をされるわけでございます。
具体的なその登録審査をこれからどのようにしていくかということでございますけれども、ISOガイドについて十分な知見のあります独立行政法人農林水産消費技術センターの知見というものを活用しながら、財務状況あるいは役職員の構成などについては書類審査を行いますし、また、認定業務の実施方針の周知状況、あるいは審査部門と判定部門がお互いに独立しているかといったようなことについては現地に出向いて審査をするということになります。こういったことを通 じて、ISOガイド65の基準に合致しているかどうかということは判断をしていきたいというふうに思います。
そこで、こういった業務を行うに当たりましては、当然のことながら、それぞれの担当職員が一定の考え方の下に統一的な運用が図られるようにしていく必要があるわけでありますけれども、今回、この法律に明定をした意味と申しますのは、従来は農林水産省の告示でこういったものが示されておったわけです。したがいまして、一定の必要性が生じた場合には農林水産省の判断でその告示を改正することができます。それに対しまして、今回、ISOガイド65というものを法律で明定したとなりますと、この法律をまた御審議いただいて改正しない限り、ISO65というものを基準にして登録審査をしていくということは、これはもう変えられないものであります。そういった点が、基本的なところが法律で示されているかどうかというのが行政の裁量 のない形で登録審査をしていくということの意味でございます。
○谷合正明君
では、続きまして、農産物に関します複数の表示制度について、これを消費者にどのように認知、普及啓蒙していくかということについて質問をさせていただきます。
野菜などの農産物に関する表示には、有機JAS規格に基づく表示、そして特別 栽培農産物の表示ガイドラインに基づく表示制度、あるいは各自治体が独自の基準に基づく認証制度による表示というものもあります。また、JAS法に基づく生鮮食品品質表示基準に基づく表示というものもあります。さらに、今後、生産情報公表農産物に関するJAS規格の導入が検討されております。適正農業機関に基づく認証制度への取組も始められております。このように述べてきただけでもかなり複雑だという率直な思いもあるわけであります。
このように、農産物に関する表示が様々な目的で制定されていることから、その表示が何を意味しているのか、これが消費者に伝わりにくくなっている原因ではないかというふうに言われております。先ほども、実際に、じゃ買物するときに消費者がどれだけそれを、マークを気にしているのかとかいう話を大臣からも聞きましたけれども、実際、今後消費者への認知だとか、普及啓蒙についてしっかりやっていかないといけないというわけであります。
どのような内容あるいは方法で情報を消費者に伝達すべきなのか、この表示制度の政策目的を十分達成させるためにどのようなことを考えているのかということを伺いたいと思います。よろしくお願いします。
○政府参考人(中川坦君)
こういったJASマークや品質表示基準によります表示というのは、確かに消費者の方々がそのねらいを御理解いただいていないと所期の目的が達せられないというのはもう御指摘のとおりでありますし、私どもこれまで、なかなか知恵がない中で、パンフレット、先ほども具体的に年間百万部以上作ってということ、あるいは講習会などでの場を活用してというようなことも申し上げましたが、いろいろと工夫をしながらその普及啓発に努めてきたところでございます。
それで、こういった努力のほかに、やはり消費者の方々が本当にどういうふうに考えておられるかということをやはり確認をする、そういうことも併せて大変大事なことでありますので、厚生労働省と農林水産省で二年ほど前から食品の表示に関する共同会議というものを開催いたしておりまして、この表示についての様々なルールを変える場合あるいは新たな検討を行う場合にはここの共同会議で審議をいただいて、そして、特に消費者の方、それから関係の業者の方、業界の方々の御意見をよく聴いた上で新たな取組をするというふうなことも行っているわけでございます。
何よりも分かりやすい表示をしていくというのが一番大事なことでもありますので、そういったねらいをきちっと達成するためにはどうすればいいかというふうなことは、こういった共同会議などの場の検討を通 じて、更なる工夫をしていきたいと思っております。 具体的にどうやれば即効性があるかという点について、なかなか私どもも即答のできるいい答えを持ち合わせておりません。もう常にそのことを意識して日々努力をこれからも続けたいということを申し上げるばかりでございます。
○谷合正明君
よく言われると思うんですけれども、今回の流通JASができることによって、そのマークも新たにできると。特定JASと有機JASと生産情報公表JAS、そして流通 JASの四つのマークを一度に理解できるのかなと。字が書いてないんですね、その表示には、特定JASだとか有機JASとか。商品名には有機とか書いてありますけれども。ですので、マークだけでその意味するところが分かるのかなというところが非常に難しいなということを私は思っておりますので、その辺りも含めてできるだけ簡単な、何ですか、簡単に分かりやすい方法というものを検討していただきたいと思っております。
次に、今回の法改正ではない部分なんですが、個別品質表示に基づく名称規制の在り方について質問をいたします。
個別品質表示基準に基づく名称規制の在り方につきましては、今回のJAS制度のあり方検討会の中で、重大な誤認が生ずる等の懸念がある場合を除き、原則その品質表示基準に基づく名称規制を廃止を検討すべきではないかというふうなことが提言されております。
よく言われるような、ハチみつ入りマヨネーズの事例であるとか、あるいはキムチを塩漬けと書かなきゃいけないとかだとか、タルタルソースを半固体状ドレッシングと表示しなきゃいけないとか、そういった極端な事例も見受けられたわけでありますけれども、政府はこの名称規制の廃止の提言に対してどのように対応するのか、またその重大な誤認が生ずる懸念がある場合としてどのような事態が想定されるのか、その点について伺います。
○政府参考人(中川坦君)
具体的なこの名称規制の在り方につきましては、JAS調査会の場におきまして、個別 の品目ごとにその名称規制の廃止によりまして重大な誤認が生ずる懸念があるかどうかというふうなことを消費者の方々あるいは専門家の方々の意見を十分踏まえながら検討していく、個別 個別の品目ごとに検討していく必要があるかというふうに考えておりますけれども、現時点で申し上げますと、重大な誤認が生ずる懸念がある場合として具体的にじゃどういう場合を想定しているかということをお尋ねでございますが、一つは、当該製品の類似品が数多く出回っておって消費者の方々がその区別 を行うことがなかなか難しいというふうな場合、それが一つの場合かというふうに思います。それからもう一つは、その名称を用いることによって優良誤認が懸念されるような場合、そういうことがかえってそれは非常にいいものだという、そういうふうに誤解されるおそれがある場合と。抽象的でございますけれども、こういった二つのケースというのが考えられるのではないかというふうに思っておりますが、いずれにいたしましても、これ、個別 具体的に議論をしていきませんと本当にこの規制が必要かどうかという点は即断はできませんので、今申し上げましたJAS調査会の中で具体的な検討を行っていただきたいというふうに考えております。
○谷合正明君
もう一つ、保存義務のない表示の根拠書類の在り方について、これについてもちょっと伺いたいと思います。
これも今回の法改正では引き続き検討するという項目になったと思います。特にだれだれさんの野菜であるとか、何々製法などの義務ではない表示、その場合、根拠書類がないのに販売しているケースがあると。そこで、表示義務違反の疑義が生じても、その疑義を裏付ける書類が存在しないために行政が対応できないといった問題があると。一方で、この根拠書類の保持の必要性について、これをやるというのはその中小零細事業者における負担増、コスト増にもつながるんじゃないかと、そういう難しい問題も残っております。 このことについて、根拠書類の在り方についてどのように現在考えているか、ちょっと簡潔にお願いいたします。
○政府参考人(中川坦君)
実はこの問題、JAS制度のあり方検討会の中で、専門家の方々に自由に、ある意味で自由に御議論いただいて、課題として提出され取りまとめられた中にこういうことが指摘をされているわけでございます。
もちろん、表示のその真正性、正しさを確認する観点から、こういった根拠書類を保存することを義務付けるということ、一つの考え方だというふうに思いますし、またその必要性も私どもよく分かるわけでありますが、他方で、本当に現場でそれがきちっと中小の方も含めて対応できるのかといいますと、実際はトロ箱のところの、例えば魚ですと、トロ箱の横にマジックでさっとどこどこ産と書いて実際は流通 しているわけであります。それを長い期間保存をしておくかということは、現実問題、今例で申し上げましたが、一律に義務を課すとなると、これまた対応、現場で非常な負担になったり、混乱が起こるということも懸念されるわけでございます。
必要性は十分理解もできるけれども、いざ具体的にやろうとすると大変難しい問題があるということもまた容易に想像できる、そういう問題でありますので、具体的にこれをどのタイムフレームの中で検討していくかという点につきましては、私ども現時点では具体的な方向性を今お示しできる段階ではございません。課題として受け止めて、鋭意これから法制的な観点も含めながら検討をしていきたいと、そういうふうに思っているところであります。
○谷合正明君
分かりました。
では最後に、大臣に、多発する表示偽装について、その取締り強化について決意を伺いたいと思います。
いろいろな事例がございます。例えば、昨年の夏には、京都の業者が青果 物の原産地の不正表示を行いました。トンガ産のカボチャ、ニュージーランド産のカボチャをそれぞれメキシコ産と、ハワイ産パイナップルをフィリピン産というように国名を変えていたと。また、北朝鮮のアサリが国産と表示されていたり、原産国の表示がないまま地域名の表示で販売されているなど、不適正なケースが多くあることが指摘されております。
昨年七月から今年一月にかけて行った農林水産省の調査におきますと、全国の約三千店の小売店の調査で百五十二の業者が実際と異なる不適正な表示をして農産物を販売していたということも分かりました。
食品表示の適正化を図ることが消費者の利益を守るものであるということを、これが今の時代だと、二十一世紀はこういう時代なんだということを業者に徹底すべきであると私は考えております。岸委員の方からもいろいろな事案を言われておりました。全農の事件もありましたが、それも含めまして、今回JAS法を改正するわけであります。多発する表示偽装について、消費者の求める安全、安心という立場から、その撲滅を目指した取組を強化すべきであると思います。
最後に、大臣の決意を伺いたいと思います。
○国務大臣(島村宜伸君)
食品表示は消費者が商品を選択する際の重要な情報でありまして、いまだに表示が偽装されている例があることは非常に残念なことと認識しております。
そこで、私も大臣就任以来、こういう話に時々出くわすものですから、ほんのわずかな人たちの不心得なやり方によって言わば全体の食の安全に対する信頼が揺らぐ、そして皆さんは全く何も間違いがないのに、そんな不安が付きまとった食事をされるのではこれは大変迷惑なことであります。
問題は、こういうことを絶滅しなきゃいけないことは当然なんですけれども、少なくもやり得を見逃すようなことをやっているとこれは一気にまたはびこりますので、ここはもう我々の努力のしどころで、徹底的にこういうものを排除していくということが肝要なんだろうと思っています。
そういう意味で、今、指示とか公表というのがございますが、これは私は言葉で聞くとちょっと手ぬ るい感じがしていたんですが、業者にすると、例えばJASの言わばマークを使用禁止されるということも痛いですが、ましてや指示とか公表されると大変なダメージを受けて、場合によっては店がつぶれるケースが結構あるそうです。そのぐらいこの専門の世界では権威あるものらしいので、これらのやり方を徹底して、要するにもうこういうことをやったら本当に損するんだと、決定的なダメージを受けるんだということを、言わばその世界の人たちにも社会にも知らしめていくと、これが取りあえず私たちの取るべきやり方だと思います。
私は就任以来、自分の在任中にせめてこういう不祥事件をなくしたいと、こういうことで強く言い抜いているわけでありますんで、幸い官僚の諸君もみんな一生懸命その趣旨を酌んでくれていますから、御指摘を受けた面 についても、これからも最善を尽くしてその趣旨の徹底を図っていきたい、そう考えております。
以上であります。