○谷合正明
公明党の谷合正明でございます。
私は、公明党を代表して、ただいま議題となりましたJR西日本福知山線列車脱線事故について、北側国土交通 大臣に質問をいたします。
まず、今回の事故により犠牲となられた方々の御冥福をお祈り申し上げるとともに、御遺族の方々に衷心よりお見舞い申し上げます。あわせて、負傷された方々の一日も早い回復を切望いたします。
さて、今回の列車脱線事故は、現時点で犠牲者九十一名、負傷者四百五十六名を数える大惨事となりました。私も、昨日、公明党の調査団の一員として尼崎の事故現場に参りました。先頭車両がマンションの一階の駐車場に完全にのめり込む形で原形をとどめていない様子に、事故のすさまじさを思い知りました。まだ車内には閉じ込められている方が十数人いると現場で聞き、涙が出る思いがいたしました。私の知人の関係者も負傷者の中におりました。
今回の事故に関しては、安全軽視の速度超過や、オーバーランの距離を偽って報告していたことが判明されるなど、言葉に尽くせないほどの憤りを覚えました。JR西日本は、御遺族の方々、そして負傷され、今なお傷のいえない方々に対して、その補償問題に誠心誠意取り組むことが必要であります。
そこで、鉄道事業者を監督する政府においても、被害者への支援のため、JR西日本に対して力強い指導力を発揮していただきたいと要望するものであります。監督官庁である北側国土交通 大臣の決意をお聞かせください。
また、あわせて、安全を最優先した鉄道行政への取組と再発防止策について納得のいく御説明をお聞かせください。
今日の巨大な技術システムは、いったん事故を起こすと、そのシステムの巨大さゆえに、正に大惨事と言うべき事態に陥ります。システムがいかに高度かつ複雑になっても、その事故原因は案外身近で日常的な側面 を持っていて、こんなささいなことでと驚かせることが少なくありません。
一件の重大事故には、二十九件の軽微な事故と三百のささいな事例があると言われます。今回の事故では、従来から従業員や経営者の心構えの緩みがあったのではないかと思わざるを得ません。安全にかかわる技術システムが巨大で複雑になるに従い、かえって基本的なところに盲点や落とし穴が生じ、往々にしてシステムの新しさや高度な仕組みに目を奪われる余り、その危険性を見落としがちであると思いますが、この点についての御見解をお伺いします。
鉄道の事故といえば、近くは平成十二年の地下鉄日比谷線の列車脱線衝突事故、平成三年の信楽高原鉄道の衝突事故が脳裏によみがえります。
政府は、日比谷線の事故について、鉄道事業者は、他社の事故事例を基に自社の安全対策を再点検する目を持つことが重要である、また、事故情報の周知、適切な安全対策の策定及びその徹底を図ることが重要であると指摘しております。信楽高原鉄道の事故の原因は、列車運行に最も重要な安全の確認に関する基本ルールを守っていなかったことにあるとの報告を行っております。
正に安全対策の再点検、安全の確認に関する基本ルールの遵守の必要性が指摘されているにもかかわらず、本件を含めた列車事故は、このような極めて初歩的な基本ルールに違反して起きているのではないかと言わざるを得ません。大臣の御所見をお伺いします。
十九世紀の鉄道事故の多くは、車両や線路の構造上の弱さと材料の欠陥及びシステムの不完全性に求められました。二十世紀に入ると、安全システムが整う中で人間のミスによる大事故が目立ち始めたところであります。二十一世紀においては、安全にかかわるすべての技術システムにおいて、あくまでも人間を核心に置いた体系的、戦略的な安全対策が必要であること、そして安全対策には終わりがないことを肝に銘じるべきであります。
最後に、この点について国土交通大臣の御所見をお伺いして、私の質問とさせていただきます。
○国務大臣(北側一雄君)
谷合議員にお答えいたします。
被害者の方々への補償に関するお尋ねがございました。
今も事故現場では、消防の皆さん、警察、自衛隊、医療関係者の方々など、先頭車両に残された乗客の皆様の救出、救援に懸命に今取り組んでいるところでございます。政府といたしましても、関係省庁等が一丸となりまして、被害を受けられた方々の救出を最優先とした事故への対応を現在行っているところでございます。
被害に遭われた方々への対応につきましては、事故当日、私は事故現場でJR西日本の社長にお会いをいたしました。事故の被害者の方々に対して誠実かつ万全の対応を期すること、そして、調査委員会も入りますので、事故原因の究明について関係機関に対し全面 的に協力をすること、このことを強く要請をしたところでございます。被害を受けられた方々への補償につきましても、JR西日本において適切に対応がなされるものと認識をしております。
安全対策に対する鉄道行政の取組などについてお尋ねがございました。
従来より、安全は運輸サービスの基本中の基本でございます。安全性の確保が利用者に対する最大のサービスでございまして、このような考え方を基本といたしまして鉄道行政に取り組んできたところでございますが、今回のようなこのような痛ましい事故が発生したことは誠に遺憾と言わざるを得ません。
今回の事故につきましては、現在、航空・鉄道事故調査委員会において事故原因等を調査しているところでございますが、今回の事故を教訓として、このような事故が二度と起こらないよう全国の鉄道事業者に対し厳しく指導してまいる所存でございます。
事業者等の心構えについてお尋ねがございました。
御指摘のとおり、重大な事故には多くの軽微な事故やささいな事例が潜むと言われております。特に、鉄道及び航空の分野において人的要因と考えられる事故等が多発していることにかんがみ、本年三月に、輸送安全総点検の緊急実施についての通 達により、鉄道事業者に対しまして輸送の安全に万全を期すことを指示し、事業者の長自らの責任で点検、確認し、経営者から現場の輸送に携わる一人一人の職員に至るまで、安全に対する意識を高めるように指導をいたしました。
このような輸送安全総点検中にこのような事故が発生したことから、事故直後の二十五日に、改めまして、公共交通 事業者に対し、安全対策の徹底を改めて図ること、その際、本社の安全担当の責任者が直接現場に赴き確認することを強く要請をいたしました。
加えて、今後の状況を踏まえつつ、また、このような安全総点検中にこうした重大事故が起こった、こうしたことをかんがみまして、JR、また航空事業者も含めまして、主要な交通 事業者に対し、できるだけ早い段階に私自身が参りまして、輸送安全総点検の実施状況について現場での取組状況等を直接聞かしていただきたい、また確認をさせていただきたいと思っているところでございます。
安全対策の初歩的な基本ルールの遵守についてお尋ねがございました。
公共交通機関における最大の使命は輸送の安全であることは言うまでもありません。その安全を確保するためには基本ルールの遵守が不可欠でございます。今般 の事故の原因につきましては、現在、調査委員会が全力を挙げて調査をしているところでございますが、いずれにいたしましても、鉄道輸送の安全確保のためには、鉄道事業者自らがいま一度基本に立ち返り、万全の対策を講じていくことが極めて重要と考えております。経営トップから現場の職員の方々まで、社を挙げて、社全体として、安全サービスが、安全の確保がサービスの基本、それが大前提ということを肝に銘じていただきたいというふうに思っております。
今後の安全対策の継続的な取組についてお尋ねがございました。
鉄道輸送については、不幸にも発生しました事故を教訓としつつ、安全性を確保するためのシステムが構築され、安全性の向上が図られてきたところでございます。この結果 、安全性を確保するためのシステムはより高度化されたものとなっておりますが、それでもやはり、委員の御指摘のように、人間による取組も依然として重要なファクターとなっていると考えます。
鉄道の信頼性を向上させるためには、ヒューマンエラーを可能な限り減らすことに加え、仮にヒューマンエラーがあったとしても事故につながらないシステムの構築に向けた継続的で真摯な取組が不可欠でございます。
御指摘のように、安全対策には終わりがないという認識の下、今回の事故を貴重な重要な教訓といたしまして、国土交通 省といたしましても、鉄道が更に安全な交通システムとして国民の信頼を回復できるよう、全力を挙げて取り組んでまいる決意でございます。