○谷合正明君
公明党の谷合正明です。
三位一体の改革に伴う農業近代化資金助成法等の改正案の法案審議におきまして、今回の三位 一体改革が我が国の農業や漁業の政策遂行に支障を及ぼすことがないのかどうかといったことを中心に、多少重複いたすところもありますが、基本的かつ大事な問題でございますので、何点か確認したいと思います。
まず初めに、国と地方の役割分担について、大臣にお伺いいたします。
三位一体の改革の中で、地方六団体からは、農林水産関係の分野では、農業委員会や普及事業の交付金、また今回の農業近代化資金などの補助金等の廃止、税源移譲が提案されました。国が責任を持って進める政策がある一方で、農政改革を実現していくためには地方との連携が不可欠な分野もたくさんございます。
そこで、農政面での国と地方との役割分担について、これまでの取組、また今後の考え方について大臣にお伺いします。
○国務大臣(島村宜伸君)
お答えいたします。
食料・農業・農村基本法におきましては、言わば地域の実態に即し、国と地方公共団体が適切な役割分担の下で施策を実施するとの考え方が示されております。
この考え方に沿って、例えば、国は国全体としての望ましい農業構造の姿を提示しつつ、地域の実情に即して担い手を明確にする法制度としての認定農業者制度を運用する一方、地方公共団体は、この制度に基づき、各地域の実態に即し、地域の担い手を認定農業者として認定し、経営改善の支援を行うといったように、相互に連携を取って施策の推進に努めてきたところであります。
先般、閣議決定いたしました新たな基本計画にも示されておりますとおり、地方にできることは地方にとの考え方の下で、国が基本的枠組みを示しながら、地方公共団体の適切な役割分担により、農業者や地域の主体性と創意工夫の発揮が促進されるような施策を推進してまいる、これが私どもの考え方の基本であります。
○谷合正明君
引き続きまして、大臣に近代化資金改正の意義についてお伺いいたします。
この制度の発足は既に四十年を超えておりまして、全国すべての都道府県において実施され、そういう意味で地方に定着していると言えるものでございます。そういう意味で、今回、地方の提案の中に近代化資金の税源移譲が入ったものでございますが、三位 一体の改革の趣旨から見た場合に、今回の改正の意義はどういうものなのか、簡潔に大臣の方にお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(島村宜伸君)
三位一体の改革の趣旨は、地方の自主性と裁量を大幅に拡大するため、地方に権限と財源を移譲することにあります。本法案は、近代化資金の利子補給補助を廃止しまして、その財源を都道府県に移譲しようとするものであります。
今回の改正によって、都道府県においては、まず第一に、補助金関係の事務がなくなり大幅な事務の簡素化が図られること、第二に、地域の実情に合わせ、より弾力的な運用、例えば金利の更なる引下げが可能になることとなります。言わば国の補助金の縛りがなくなると、こういうことでございます。
こうしたことにより、本事業が、これまで以上に、地域農業の実情に即した地方の自主性、裁量 性を活かしたものとなると考え、また期待しておるところであります。
○谷合正明君
そこで、度々委員の方、先ほどから質問が出ているように、農業近代化資金の今後の運営についてまず質問をさせていただきますが、今回の税源移譲によりまして地域の農業者の事業の実施に支障が生ずることがないようにする、そういう必要があるわけでございます。税源移譲後も、担い手の育成確保といった農政上の課題に対応し、農業近代化資金の農業者に対する融資に支障が生ずることがないよう都道府県が利子補給を行うことを担保する必要が、そういう措置を講ずる必要がございます。
先ほどの答弁の中に、都道府県に対してガイドラインを示していく、地域によって貸付条件など融資対応にばらつきが生じないよう措置をするということがございましたが、そのガイドラインにつきましてどこまで具体的な内容を定めるのか、貸付金利や利子補給率などを定めるのか、お伺いいたします。
また、加えまして、こうしたことがかえって、逆に国が関与し過ぎないかという、三位 一体の所期の目的、地方の自主性を損なうというような懸念はないのかといったことについて、併せてお伺いいたします。
○政府参考人(須賀田菊仁君)
税源移譲後の近代化資金の運用、先生がおっしゃいますように、一つは、地方の自主性、裁量 を損なうようなことのないようにするというのが一点大事でございます。同時に、国として最低限していただきたいことはやっていただくという双方の観点が大事だろうということで、その後者の観点から私どもガイドラインを示したいというふうに思っております。
具体的には、適正な貸付条件というものを設定するために、資金の種類、償還期限、こういう貸付条件に関する具体的な内容、これを定める。そして、金利は動くわけでございます。そういう金利動向に即した適正な水準が確保されるような貸付利率、あるいは利子補給率の基準、こういうものを示したいと、貸付利率は上限として示したいというふうに思っておりまして、その中で自治体が裁量 を発揮するということを阻害するようなことのないようにしたいというふうに思っております。
○谷合正明君
次に、農業金融関係の質問をさせていただきます。
国から地方へ、また民間にできることは民間にという改革の下に、私の方から民間主体の農業金融市場の育成について質問をさせていただきます。
政策金融機関であります農林漁業金融公庫は、一般の金融機関が融通 することを困難とするものを融通することとされております。農業の特性上、不確実性、危険性、そういった特性上、民間金融だけでは十分な対応ができない、そういうことでこの公庫の役割があったと思います。その一方で、農業の構造変化、また担い手のニーズに対応して、農業金融市場の一層の活発化を図るためには、民間金融の機能が発揮できる金融市場の環境を整備していく必要がある、そういうふうに私も考えております。
農水省が昨年二月に実施した農業法人アンケートからは、農業金融について、多様な担い手の出現や経営の多角化、農業の六次産業化といった新たな動き、取組に対して融資が十分対応できていない。また、担保不足等により、必要かつ十分な融資が受けられないなどの不満がありました。
そういった中で、今後、民間金融の参入を促すという観点もあろうかと思います。効率の比較を行いつつ、民間金融に利子補給を行う仕組みの拡大についても検討する必要があるのではないかと。民間にできることは民間にゆだねるとの政策金融改革の中で、農林漁業金融公庫が今後の農業金融においてどのような役割を果 たしていくべきなのか、政府の所見を伺いたいと思います。
○政府参考人(須賀田菊仁君)
先生がおっしゃいましたように、農業融資、自然条件に左右されまして収益性が非常に低いということで、いろいろな金利リスク、あるいは価格変動リスク、それから生産量 のリスク、いろんなリスクがございまして、どうしても民間ではそのリスクをしょい切れないといった部分をこれまで農林漁業金融公庫、要するに長期低利の融資、設備資金を中心とした融資を担当してきたわけでございます。
現在、官から民へという大きな流れの中で政策金融機関の改革というのが叫ばれておりまして、民間金融機関がこういう農業の分野においても活躍しやすい環境を整えて、民間参入を促していくというのがその趣旨でございます。
私ども、基本的には今後の全体の議論にゆだねる部分が多いというふうに思っておりますけれども、取りあえず農林漁業金融公庫の方に農業融資に関するいろいろなノウハウ、データがそろっております。例えば、担保の取り方、あるいは担保を重視せずに、その経営者の資質でございますとか、あるいは事業の将来性、こういうものをちゃんと見て融資をする、そういうノウハウが農林漁業金融公庫の中に蓄積をされておりまして、現在、農林漁業金融公庫は民間金融機関との業務提携、協調的な融資でございますけども、こういうものを通 じてそのノウハウの移転というものに努めております。今後、更にそういう方向で民間金融機関の参入を促すにはどうしたらいいか、更に検討を進める必要があろうかと思っております。
いずれにいたしましても、融資を欲する農家の需要にちゃんとこたえていくということを基本に今後の農業融資の在り方を考えていきたいというふうに思っております。
○谷合正明君
最後の言葉にあったとおり、本当に今融資を受けたい農家に行き渡る制度、そのための改革でございますので、そういう意味で農政改革、そして政策金融改革、その二つの改革の課題、これを踏まえてしっかりと環境整備を行っていただきたいと思います。
次に、最後になるかもしれませんが、漁業金融制度についてお伺いをいたします。
我が国の水産をめぐる環境というのは、もう御承知のとおり、周辺水域の水産資源の水準の悪化によりまして漁獲量 が減少する一方で、漁業者が水揚げする魚価も低迷しております。漁業近代化資金や漁業経営維持安定資金の融資実績を見ても、年々減少の一途をたどっております。しかし、こういう厳しい環境の中でも、経営の改善に取り組む担い手もおります。そういう担い手に対しまして漁業金融制度はどのような対応を考えているのか、政府の方にお伺いいたします。
○政府参考人(田原文夫君)
お答えいたします。
ただいま先生が御指摘されましたように、魚価の低迷でございますとか我が国周辺水域の漁業資源状況の悪化ということで漁業経営が非常に厳しい状況にあるということは正に御指摘のとおりでありまして、そうした漁業者に対しまして必要な資金の供給を確保することは重要な政策課題であるというふうに思っております。
このため、漁業近代化資金制度に基づきます設備資金ですとか、漁業経営維持安定資金制度に基づきます借換え資金、こういった融通 をしてきたところでありますけども、今般のこの三位一体改革に伴う資金制度、まあ税源移譲をされたということで、都道府県へのモニタリングの実施、こういったことによりまして、こうした近代化資金あるいは漁業経営維持安定資金が引き続き漁業者に対しまして適切に融資されるよう、こういった円滑な融通 に対しまして指導してまいりたいというふうに考えております。
また、他方、いわゆる漁特法、漁業経営の改善及び再建整備に関する特別 措置法に基づきまして、意欲的に漁業経営の改善に取り組む漁業者に対しまして、低利で漁船ですとかあるいは設備資金、短期資金の運転資金、こういった融通 を受けられるように措置しているところでございまして、こうしたいろんな金融措置を通 じまして担い手となるべき漁業経営の育成に寄与していきたいと、かように考えている次第でございます。
○谷合正明君
終わります。