○谷合正明君
公明党の谷合正明です。
まず、攻めの農政についてお伺いいたします。農林水産物の輸出促進についてであります。
昨日の食料・農業・農村政策審議会におきまして、新しい基本計画の工程表に、平成二十一年までに輸出額を倍増ということが明記された、そのことが明らかになりました。先ほど午前中の質疑の中でその目標達成に向けての支援策ということがありましたので、その質問を省かせていただきます。
青森のリンゴなど、以前から欧米中心に輸出されてきた農産物もありますが、ここに来て国産農産物の輸出機運が高まっているのは、確かに、中国を中心とします東アジアの経済発展により、これらの国や地域の購買力が高まっていることがあると思います。また、中国や台湾がWTOに加盟したことで輸入制限が緩和され、輸出しやすくなった、そういう環境も大きいと思われます。私の地元であります岡山県におきましても、切り花や特産のピオーネを輸出しようという取組もございます。
これまでは、GATやWTOの農業交渉といいますと、外国からの農産物をもっと輸入しろと言われて、それに対していかに最小限にそれを抑えるかというきゅうきゅうとした議論ばかりされてきた感じもありますけれども、我が国も自由貿易体制をしいておりますし、ルールにのっとり、工業製品だけでなく農産物も積極的に輸出していくべきだと思っております。
先ほど大臣より、輸出額を倍増のみならずそれ以上を目指すというような趣旨の発言もございました、将来的にですね。そこでの輸出を増やすということで、単純にその分だけ国内の生産量が増えれば農家の手取りも増えるということなのか、あるいは実態として生産量が増えることで自給率も向上するということなのか。あわせて、農産物の輸出を促進する意義について伺いたいと思います。
○政府参考人(伊藤健一君)
農林水産物の輸出の拡大が実現しますと、今、先生から御指摘がありましたように、まず国内生産の拡大につながるわけでございますので、農林漁業者の所得の向上にもつながると、そういった直接的な意義を有するというふうに思っております。
ただ、それにとどまらず、自分が生産した農林水産物が海外で高い評価を受けるということになってまいりますので、農林漁業者の発想の転換あるいは勇気と活力にもつながるという意味でも農林水産業の活性化にとって大変大きな意義があるというふうに思っております。
またさらに、食生活あるいは食文化といった面も海外で逆に評価されるということにつながっていくんではないかという期待もしておりますので、そういった意味では、日本型食生活あるいは食文化ということの国内での見直しにもあるいはつながってくるんではないかという、そういう期待も持っております。
○谷合正明君
我が国は、生産が過剰のため生産調整している農作物があります。代表的なものが米であります。また、畜産におきましても、脱脂粉乳の過剰在庫が今非常に問題になっております。食料自給率の向上、また食料安全保障の観点からいえば、これら国内において生産に余力がある農作物、農産物、こういうものを積極的に輸出していくことも考えてもいいのではないかと思います。
我が国の米につきましても、以前は国際価格との価格差が大きく輸出が難しいとされてきましたけれども、現在では海外でも非常においしいということで高評価を受けております。また、輸出用の米は生産調整からも外すということも聞いております。
今後、我が国が農産物を輸出する有望な相手先として中国が挙げられると思いますが、現在、その中国には、我が国からはリンゴ、そしてナシのみが輸出されております。米を含めまして、国産の農産物を輸出するために解決しておくべき課題というものはどういうものがあるか、伺いたいと思います。
○政府参考人(伊藤健一君)
農産物の輸出拡大にとりまして中国が大変潜在的に大きなマーケットであるということは委員の御指摘のとおりというふうに認識しております。また、課題も幾つかあるのも現実と思っております。
今、先生から御指摘ありましたような植物検疫の関係でございますけれども、まず、中国におきましては二〇〇三年の二月に輸入植物及び植物生産物のリスク分析管理規定というものが施行されておりまして、こちらの方でまだ輸入実績がない品目ですとかあるいは輸入数量が極めてわずかな品目につきまして、事前に病害虫の侵入がないかどうかというリスク分析を受けなければならないという問題がございます。
それで、今現在、輸出実績があるものとしてリンゴ、ナシがあるわけでございますけれども、それ以外に我が国として輸出したいというふうに考えております米のほかに、カキですとか桃、イチゴ、ブドウ、メロン、スイカ、あるいはキウイフルーツ、サクランボ、かんきつ属、ナガイモといった、こういった十一品目につきましてこのリスク分析を受けるべく資料を提出しまして、できるだけ早いリスク分析をお願いをしているところでございます。
まずこういう検疫の問題をクリアするという問題がございますほかに、我々としては、やはり中国の市場の動向ですとかあるいは商慣習の実態ですとか、そういったものをよく勉強しておく必要があると思いますし、また、何といっても継続的に販売していけるルートを確保すると、そういったことも必要だろうと思っております。そういったことを今一生懸命準備しておるところでございます。
○谷合正明君
我が国がこれまで長年の研究によりまして育種し栽培方法を改良することでブランド化した農産物がまずは海外に輸出されることになると思いますけれども、その種や苗木が海外に無断で持ち出され、また海外で生産され、さらに加工され我が国に入ってくるという問題も起きております。また、輸出先で我が国の農産物が高価格で販売されることになれば、当然ながら日本産に偽装する現地の農産物も出てくると思います。実際に、鳥取県産のナシが台湾で偽装されて販売されたという事例もございます。
偽装問題が起これば、それまで積み重ねた努力も無駄になりかねないわけでありますが、このような二つの問題、二国間の問題ですので少々立入りが難しいところもあると思いますが、相手国とも密接に連携していく必要があると思いますが、その辺、どのようにお考えしておりますか。
○政府参考人(白須敏朗君)
前段の、委員御指摘の苗木やら種子の流出の関係、お答えしたいと思います。委員からも御指摘ございましたように、近年、せっかく育成をいたしました、例えば北海道が育成をいたしましたインゲンマメとか小豆の新品種、あるいは栃木県が育成をいたしましたイチゴの新品種などが、我が国の育成品種としての種苗が不法に海外に持ち出されまして、その品種の農産物が向こうで生産されまして逆に我が国に輸入されてくると、委員の御指摘のような事態が生じているわけでございます。
したがいまして、私ども平成十五年に種苗法を改正をいたしましてこういった事態に対処をいたしまして、育成者権の侵害に対する罰則というものを強化をいたしたわけでございます。また同時に、関税定率法も平成十五年に改正をされまして、税関におけますこういった育成者権の侵害物品の輸入のいわゆる水際の取締りというものも可能になったわけでございます。
こういった制度に基づきまして、実は、熊本県が、イグサの新品種の「ひのみどり」、これをまた中国から、せっかく日本で育成をしました新品種のイグサが中国から輸入されてくるというふうなおそれがあるということで、輸入の差止め申立てを行っておりまして、現在、税関において検査が行われておる状況でございます。
〔理事田中直紀君退席、委員長着席〕
また、委員からも、さらに加工品というふうなお話もございましたが、実は、さらにこの我が国の育成品種の更なる保護の強化を図るという観点から、私ども今回、この通常国会に育成者権の効力を更に加工品にまで拡大しようということを内容といたします種苗法の改正法案を提出をさせていただいたということでございます。ひとつよろしくお願いいたしたいと思います。
○政府参考人(伊藤健一君)
もう一点は、海外の農産物を日本産と偽装表示する問題でございますけれども、これは、我が国の農産物が大変高い評価を海外で受けておりまして、高価格で取引されるということを背景にしてそういうことが現に起こっておるわけでございます。日本の農産物をこれから輸出拡大するに当たりまして一番のポイントは、高い、値段は高いわけですけれども、高品質で安全、安心であるということが最大のポイントでございますので、ブランドの保護ということは大変、極めて大事なポイントだというふうに考えております。
このため、まず輸出先国において商標登録等を行うということが一つの考え方でございまして、それに必要な情報を収集、分析して、関係者の方にそれを提供するということをまず実施しております。また、実際に偽装表示問題が発生した場合には、その輸出先国に対しまして調査、それから取締り強化を要請するということの対応を行ってきておりまして、今後もこれらの対応を強化してまいりたいというふうに考えております。
○谷合正明君
農産物を初めて輸出する場合、相手国の情報不足や商習慣の違いによる取引リスクも考えなくてはなりません。農産物の輸出を支援するに当たりまして、現地情報の収集、取引先との打合せなどする現地コーディネーターを置き、輸出に関する展示商談会の開催や、テスト輸出などに行政が積極的に支援していくことも必要だと考えております。
また、良い品質のものを輸出するためには、作物のしゅんや輸送方法といったことにも配慮が必要であります。そのためには、農業の専門知識を持ち、強いリーダーシップで産地と輸出先の連携、調整をしていくコーディネーターを確保していくことが重要だと思っております。
先ほど岸委員の質疑の中で輸出促進の取組について大臣より説明がありましたけれども、こうしたコーディネーターの確保の重要性については、その認識と今後の取組についてどうなのか、見解をお伺いしたいと思います。
○副大臣(常田享詳君)
谷合議員の御指摘は誠に的を突いた御指摘だと思っております。
私の経験からいきましても、つたない経験でありますが、鳥取県の二十世紀ナシ、一昨年、台湾で、今御指摘のとおり、偽ナシが出ました。私もすぐ入りまして、関係方面にその対応方をお願いし、いち早く火消しをやっていただいた。その場合、その場合は農林水産省から亜東関係協会に出ている出向職員が大変活躍してくれました。日ごろのそういう職員のネットワークが生きたという一例であります。
あわせて、昨年も行きましたけれども、台湾のデパートで二十世紀ナシを販売した場合も、例えばジェトロの、鳥取の方が同行していただいて、そういった方々が一緒にやっていただく。また、過去、そういう輸入をしていただいている台湾のバイヤーの方々とのそういうパイプ役等もしていただくというようなことで、日ごろからのそういうコーディネーターの育成というのは大変重要なことだと思っております。
実は、鳥取県の二十世紀ナシも十か国ぐらいに輸出しておりますけれども、黒字になったのは、黒字になったのはここ二年ぐらいの間で、ずうっと赤字だったんです。それを耐えに耐えて、耐えに耐えてやっとここ二年ほど黒字になったのは、台湾が、中国がWTOに加入した、そしてその輸入価格が広がった、そしてそれまでに、今、先生御指摘のとおり、いろいろ耐えながらコーディネーターを育成してきた、パイプを作ってきたということでありまして、誠に今の先生の御指摘は的を射た御指摘だと思っております。
今後とも、ジェトロを中心にして、こういった輸出先の情報の入手を始め、その人間関係の構築等も含めて、しっかりコーディネーターの育成に努めていきたいと、このことなくして輸出振興はあり得ないということは私のつたない経験でも実感しているところであります。
○谷合正明君
是非そういった輸出促進策の充実を図っていただきたいと思います。
攻めの農政につきまして国内に目を転じますが、現在、地方では様々な取組がなされております。農協におきまして、農産物を出荷するだけでなく、農産加工に取り組み、都市圏において直売所とレストランを経営することで中間のマージンを省き、消費者にはより安い価格で新鮮な農産物を提供している。そして、組合員である生産者は、そうした高付加価値が付くことによりまして高い収入を確保することに成功している事例もあります。
攻めの農政では企業による農業経営の参入を進めるということも言われておりますけれども、やる気と能力のある農業経営を重点的に支援するということであるならば、これまで農業生産者がなかなか参入できなかった加工や流通、外食という消費者に結び付く分野を視野に入れた生産をするのが重要であると考えますが、その対応について大臣の御所見をお伺いいたします。
○国務大臣(島村宜伸君)
まず、輸入農産物に対し競争力のある農業を確立するためには、やっぱり多様化している消費者の嗜好や、あるいは加工、外食など実需者の要請にきめ細かく対応していくことが重要であると基本的に考えます。
このため、強い農業づくり交付金などにより、高品質で高付加価値な農産物の安定生産に取り組む攻めの言わば産地を対象に、業務用の需要にこたえ、野菜のカットなど一次加工を行う処理加工施設の整備、あるいはまた加工需要にこたえ、収穫されたお茶のカテキン分析を行うなどの品質に応じた仕分を徹底する新たな生産システムの導入、そして、消費者や実需者の要請に対応し、産地オリジナル品種を普及するための実証試験などについて支援を行うこととしております。
加工や流通あるいは外食分野も視野に入れた生産を振興し、輸入に奪われている国産シェアの奪回を目指して国産農産物の競争力強化に努めてまいりたいと、そう考えております。
○谷合正明君
話題を変えます。
先日、私は、大手派遣会社パソナが取り組んでいる地下農場の視察に行ってまいりました。大臣も大変興味があるというふうに伺っております。
この地下農場の取組自体は、そのものを普及するということではなくて、それを置いた都心の一角にある場所を通じて、多くの例えばこれまで農業に縁がなかったサラリーマンや、また若い世代に農業を身近に感じてもらう、そういったことが目的だと聞いております。
こういった雇われての就農、雇用就農を進めていくには大変新しい方向で斬新的であると私は感じましたが、まず大臣の認識を伺いたいと思います。
○国務大臣(島村宜伸君)
実は先ほどお話ありましたように、実は私、総理とこの間御一緒に行こうと約束をしておったんですが、公務で私は果たせませんで、この次、常田副大臣と行こうねとさっき約束したところです。非常に興味のあることでございますし、総理からもお話を伺いました。
そこで、株式会社パソナの取組は、都市住民が農業に対する理解を深めたり、あるいはまた最先端の農業に触れる機会や職業として農業を考える機会を提供するという点で非常に注目すべきものだと認識いたしております。
また、将来の農業の担い手を育てていく上でも、農業内外からチャレンジ精神を持った新規就農者を迎え入れ、育成していくことが重要であります。
その意味で、平成二十七年を目標年次とする農業構造の展望(案)では、将来の担い手たる法人経営を一万経営体育成することとしておりまして、その意味で雇用形態での就農はこのような動きを支えるものと考えております。これはまた、自ら経営を開始する場合の技術あるいは経営面でのハードルを低くする、できるというメリットもあることから、農林水産省としてはこのあれを積極的に応援していきたいと、こう考えております。
○谷合正明君
是非その視察へ行っていただきたいと思いますが、そこには新規就農として新たに秋田県の大潟村に研修して、今度本当にプロ農家として巣立つという若い人がおりますので、是非そういった方の声を聞いていただきたいと思います。
続きまして、森林の話題、違法伐採について伺いたいと思います。
地球環境を守る上で違法伐採の問題は非常に重要な問題であると認識しておりますが、現在、世界の違法伐採の状況がどのようになっているのか伺いたいと思います。
○政府参考人(前田直登君)
違法伐採につきましては、一般的にはそれぞれの国の法令に反して行われる伐採、これを指すというふうに考えられておりまして、違法伐採が多いと考えられている地域といたしましては、東南アジア、ロシア、アフリカ、ブラジルなどが挙げられております。
これらの違法伐採の実態の把握、大変難しい状況にあるわけでありますが、例えばインドネシアにつきましては、英国とインドネシア両政府の合同調査によりますと、生産される木材の五〇%以上が違法伐採木材であるというふうに報告されております。また、ロシアにつきましては、伐採される木材の二〇%が違法に伐採されたものであると、そういった環境NGOの報告もございます。
今後とも、二国間協力あるいは地域間協力、こういったものを通じまして違法伐採の実態の把握に努めていきたいというふうに考えている次第です。
○谷合正明君
その違法伐採について、対策でございますけれども、林野庁が今年の二月から本格的な検討を開始したと聞いております。日本はこれまでどういう対策を取ってきたのか、また今後どういう対策を取るんでしょうか。
○政府参考人(前田直登君)
違法伐採につきましては、地球規模での環境保全、あるいは持続可能な森林経営の推進にとりまして極めて重要な課題であると、そういったことで、我が国といたしましても、これまで違法に伐採された木材は使用しないといった基本的な考え方に基づきまして取り組んできたところでございます。
具体的には、一つには、二国間協力といたしまして、日本とインドネシアの間における森林現況あるいは伐採状況の把握などの違法伐採対策の協力、これは一昨年でございましたか、日本とインドネシア両大臣で合意して発表したりいたしております。また、地域間協力といたしましては、アジア森林パートナーシップ、AFPと呼んでおりますが、そういったところを通じまして合法性の基準、あるいは木材追跡システムの開発、やってきておりますし、また、多国間協力といたしましては、ITTO、いわゆる国際熱帯木材機関、ここを通じまして違法木材取引の把握などのプロジェクトへの支援、こういったものの取組を行ってきているところでございます。
御案内のように、違法伐採問題につきましては、これまでもG8サミットなどにおいても取り上げてきたところでございまして、今後、輸入国として可能な取組について検討を進めるほか、様々な国際的な場において、関係省庁とも連携しつつ、積極的に取り組んでいきたいというふうに考えている次第でございます。
○谷合正明君
特にアジア諸国の違法伐採の原因については、突き詰めていくと、違法という認識があるわけでもなし、貧困がまた原因であるとも聞いております。そういった観点からも、是非国際協力、あるいは、まあ国際協力という形で、そういう視点も持って日本の取組を世界にアピールしていただきたいと思います。
我が国でも、近年、木材の良さが見直されてきたわけであります。しかし、大部分が輸入木材で、先ほども話にありましたかもしれませんが、輸入木材のうち約二〇%近くが違法伐採に関係していると推測されております。現在、国産木材の利用度は、木材自給率として計算すると一八%でしかありません。農林省は、世界の違法伐採を防ぎ、地球環境を守るためにも、この国産材の利用を高める仕組みづくりに積極的になるべきだと思っております。このことは、地球温暖化の防止のための京都議定書の目標の三・九%、先ほども話がありましたが、そういった実現のためにも必要と考えておりますが、いかがでしょうか。大臣によろしくお願いします。
○国務大臣(島村宜伸君)
国産材の利用拡大は、森林を健全に育成し、国土の保全や地球温暖化防止など各種の機能を発揮させるとともに、林業の活性化を図る上でも極めて重要と考えております。
このため、木材利用の普及啓発や公共施設などへの地域材利用の促進、木質バイオマスエネルギーなど新たな需要の開拓に努めているところであります。また、農林水産省独自でも率先して木材の利用拡大に取り組むべく、木材利用拡大行動計画を策定し、公共土木事業の安全さくを木製とするなど、その推進を図っているところであります。
今後とも、関係府省との連携の強化を図り、国産材の一層の利用拡大に努めてまいりたいと、そう考えております。
○谷合正明君
木材の場合は、食料品と違いまして、消費者に見えにくい、どの木がどこから来ているのか、私、今使っている机がどの国から来ているのか分からない、そういう問題もありまして、この違法伐採も含めまして、この森林、国内の国産木材の利用促進ということに関して言えば、もっと国民に分かりやすくアピールすることも考えていかなければならないと私は思っております。
それで、日本は一九六〇年代から木材の貿易自由化、関税引下げをしてまいりました。そのために大量に木材が輸入されまして、木材の自給率で、先ほど言いましたように、一八%に落ち込んでおります。日本で戦後盛んに行われてきました拡大造林は放置され、利用されておりません。先ほどありましたが、樹齢四十年近い人工杉でも一本が三千円程度しかなく、切れば切るほど赤字になるという現実があります。手入れをしなければ、国土保全、あるいは水資源涵養、二酸化炭素吸収など森林の多面的機能も落ちてしまうわけであります。それらを守るためにも、我が国はきちんと人工林を整備管理していく必要がございます。
林野庁によりますと、人工林だけで国内の木材消費の七割は賄える、そういう、それほど資源は充実してきているということでありますが、この人工林の整備におきましてこの間伐がなかなか進んでいないと。この重要な間伐の推進についてはどのように考えているのか、大臣にお伺いいたします。
○国務大臣(島村宜伸君)
お答えいたします。
森林は、国土の保全、あるいは水源涵養などの多面的機能を有しておることはただいま委員が御指摘いただいたとおりであります。これらの機能を十分に発揮するためには、森林の状況に応じて適切に保育やあるいは間伐を行うことが重要であります。
特に、人工林の多くはいまだ育成途上にあることから、間伐の推進は極めて重要でありまして、このため平成十二年度から緊急間伐五か年対策に取り組んできたところであります。さらに、平成十七年度より新たに間伐等推進三か年計画に取り組むこととし、年間三十万ヘクタール規模の間伐を進めることとしております。
今後とも、これらの取組を通じて健全で多様な森林の育成に努めてまいりたいと、そう考えます。
○谷合正明君
いずれにしましても、この日本の山が少しおかしくなってきているんではないかと、私はそういう認識をしております。昨年から起きている自然災害の多発の中で、山がいとも簡単に崩れてしまうような現状、あるいは野生動物が人里に下りてきているような現状、いろいろ見てまいりました。このわずかの期間だけでも様々な問題が起きておりますが、こうした山づくり、何十年と掛かる長期的な問題でございますけれども、是非とも全力を挙げて取り組んでいただきたいと私の方から強く要望させていただきまして、若干早いですけれども、質問を終わりにさせていただきます。