2024年06月03日 2面
■(LGBTQI)教育、理解増進が重要
このたび、私は米国務省の招聘で「IVLP(インターナショナル・ビジター・リーダーシップ・プログラム)」に参加しました。4月27日から5月5日にかけて訪米し、LGBTQIなど性的少数者の方々への人権擁護のあり方を巡り、連邦下院議員や地方政府機関、NGO、メディアなどから話を聴きました。
米国では2015年、連邦最高裁において同性婚が全州で認められました。22年には婚姻尊重法が成立し、連邦レベルで同性婚を保障。雇用などの分野において、性的指向・性自認に基づく差別を禁止しました。その結果、同性婚に対する政治的対立は解消したものの、生まれた時の性と自認する性が一致しないトランスジェンダーについて、ここ数年、後退が目立つということです。
実際、保守政治の強い州では、トランスジェンダーに対して医療、学校教育、スポーツといった分野で制限がかけられるようになっているようです。背景には政治的、宗教的な問題があると考えられています。特にトランスジェンダーを恐ろしい者に仕立てて、子どもや女性を守るという類いの「作り話」が多いとのことで、これにだまされないためにも「正確な情報の提供こそ必要」と強調していました。
米政府においては、対外政策として他国のLGBTQIの方々の人権を守ることに関心がある一方で、米NGO側からは米国発のトランスジェンダーたたきが日本を含めて他国に拡散されているのではないかと憂慮する声もありました。
■同性婚巡る議論に生かす
米国で同性婚が受け入れられるまでには、かねて家族が崩壊すると批判されてきたことに対し、当事者や関係者が粘り強く、むしろ家族の絆を強めるものだと反論してきた歴史があります。社会を変えるには、やはり教育や理解増進が重要だという声もあり、日本で昨年成立した性的少数者への理解増進法の意義を改めてかみしめました。
同性婚を導入する前に、登録パートナーシップ制度の法定化から始めた州では、混乱が生じたという失敗例も学びました。日本での同性婚の実現、また性同一性障害特例法の見直しも展望しながら、今回の訪米の経験を生かしていく決意です。