2024年01月01日 4面
グローバル化の進展により、さまざまな課題が一国だけでは対応しきれない時代になっている。とりわけ、全人類の未来にとって最重要のテーマが核廃絶と気候危機だ。公明党は綱領に「地球民族主義」を掲げており、その視点から課題の解決に向けて奮闘している。ここでは、両テーマの背景を解説するとともに、公明党の取り組み、決意を紹介する。
■(背景)軍縮進まず実現に暗雲
広島と長崎に原子爆弾が投下され、人類が核兵器の脅威を目の当たりにした後も、米国とソ連(現ロシア)が対立する冷戦期には、し烈な核軍拡競争が繰り広げられた。米ソに加え、英国やフランス、中国も核兵器を保有し、ピーク時の1986年には約7万発もの核弾頭が世界に存在した。
そのさなかの68年6月に、核兵器不拡散条約(NPT)が国連総会で採択された。
一方、冷戦末期の85年11月、当時の米国のレーガン大統領とソ連のゴルバチョフ書記長が「核戦争に勝者はなく、核戦争は決して戦われてはならない」と訴える共同声明を発表。これを契機に、米ソは87年12月に中距離核戦力(INF)全廃条約に、91年7月に第1次戦略兵器削減条約(STARTⅠ)に調印し、核軍縮に乗り出した。
2009年1月に米大統領に就任したオバマ氏は同年4月、チェコのプラハで「核兵器のない世界」の実現をめざすと演説。オバマ政権時の10年4月には、米国とロシアが、STARTⅠの後継となる新戦略兵器削減条約(新START)に調印した。
23年1月の時点で世界には依然、1万2512発の核弾頭があるが、核廃絶の実現には暗雲が立ち込めている。
まず、NPTでの交渉が停滞している。05年に開かれたNPTの履行状況を見直す再検討会議では交渉が決裂。10年の再検討会議では、核兵器の非人道性への憂慮を明記した最終文書が採択されたが、15年と22年の再検討会議での交渉は決裂で終わった。
核保有国のインドとパキスタン、保有が疑われるイスラエルがNPTに参加していないことも問題だ。NPTから脱退した北朝鮮は核・ミサイル開発を加速している。
また、米国はトランプ政権時の19年2月にINF全廃条約を破棄。これにより、同条約は同年8月に失効した。今や米ロは、INF全廃条約で禁止されていた中距離核兵器の開発を進めている。
中国は、30年に米ロに並ぶ核保有大国になるのではと懸念されている。
さらに、ロシアは22年2月から開始したウクライナへの侵略に伴い、核兵器の使用も辞さない構えを見せている。ロシアは23年2月に新STARTの履行停止を表明。同年11月には包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を撤回し、核実験を再開する可能性も示唆している。
こうした中、17年7月に国連で採択された核兵器禁止条約(核禁条約)が、核廃絶を実現する上で重要だ。ただ、核保有国とその同盟国などが参加を拒否しており、同条約を支持する非保有国との対立が深まっている。
■(党の取り組み)保有国と非保有国、日本が橋渡しの役割を
公明党は、10年のNPT再検討会議を成功させたいとの非政府組織(NGO)関係者からの協力要請を受け、09年12月に核廃絶推進委員会を設置。NGOと政府の橋渡しをしつつ、政府に核廃絶への取り組みを訴えている。
党推進委は、核禁条約の成立に貢献し、17年にノーベル平和賞を受賞した「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)とも意見交換を重ねてきた。
核禁条約について、公明党の山口那津男代表は「わが国が一刻も早く条約を締結できるよう全力を尽くしていきたい」と強調している。
このほか、公明党は、核保有国と非保有国の有識者が核軍縮に向けて意見を交わす、外務省主催の「国際賢人会議」を後押ししている。
また、ロシアが核兵器を使いかねないとの不安が高まる中、山口代表と党推進委は22年5月と23年5月に、岸田文雄首相に対して、核兵器の使用を断じて阻止し、「核兵器の不使用の記録」を維持することや、世界が核軍縮・不拡散の潮流を取り戻すための強力な取り組みなどを進めるよう提言している。
■核禁条約の早期締結めざす/党核廃絶推進委員長 谷合正明参院幹事長
日本は唯一の戦争被爆国として国際社会に核廃絶を訴える権利と責任があります。
この点、昨年5月に広島で開かれた先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)では、世界の指導者が「被爆の実相」に直接触れ、「核の非人道性」を改めて確認した意義は大きい。核の使用と威嚇を許してはならないとの共通認識の下、核抑止に代わる安全保障のあり方や「核の先制不使用」誓約に向けた議論を日本がリードすべきです。
公明党は結党以来60年、核廃絶を一貫して主張し、行動を起こしてきました。2021年に発効した核兵器禁止条約(核禁条約)を「核兵器を初めて違法として禁止した画期的な国際法規範」として高く評価。日本政府が締約国会議にオブザーバー参加し、核保有国と非保有国の橋渡し役を担うことを求めています。
昨年11月27日から12月1日まで米ニューヨークで開かれた核禁条約の第2回締約国会議に合わせ、私が党から派遣され、国際NGOが主催する世界各国の国会議員による会合で演説。「核なき世界」に向け「唯一の戦争被爆国・日本の政治家として議論に貢献していく」と訴えました。
条約で定める核兵器の被害者援助と環境修復について、日本が貢献するよう求めるとともに、核禁条約を締結・批准できる環境整備に党を挙げて取り組んでいきます。