2022年8月7日 1面
広島は6日、77回目の原爆の日を迎えた。広島市中区の平和記念公園では市主催の平和記念式典が開かれ、被爆者や遺族、岸田文雄首相ら2854人が参列。式典には、99カ国と欧州連合(EU)の代表や、公明党の山口那津男代表も出席した。山口代表は同日夕、式典に参列した国連のグテレス事務総長と広島市で会談し、「核兵器のない世界」の実現へ日本が果たすべき役割を巡って意見を交わした。=関連記事2面
■先頭に立つ公明に感謝(事務総長)/「先制不使用」約束を切望(山口代表)
山口代表は、グテレス事務総長が式典のスピーチで核保有国に対し、核兵器の「先制不使用」の約束や、非核保有国に核兵器を使用せず、脅迫もしないよう求めたことに触れ、「日本国民が強く望むこと」と歓迎。米ニューヨークで開催中の核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議において「最終文書に反映されることを期待する」と語った。
NPTと補完関係にあると位置付けられた核兵器禁止条約に盛り込まれた核兵器の被害者支援と環境修復については「(唯一の戦争被爆国であり、原発事故を経験した)日本こそ経験や知識、技術を役立てられる」と力説。国際貢献を実現するためにも、来年の核禁条約第2回締約国会議でのオブザーバー参加へ「政府が早く表明するよう道筋を付けたい」と訴えた。
グテレス事務総長は、各国の核・ミサイル開発が進み、「核戦争を避けることがさらに難しい状況になっている」と危機感を表明。「その否定的な流れを反転させ、核軍縮を進める流れをつくっていかなければならない。公明党が核軍縮を進める先頭に立って行動していることに感謝する」と述べ、さらなる協力の深化を望んだ。
会談には、中満泉国連事務次長(軍縮担当上級代表)、根本かおる国連広報センター所長、公明党の斉藤鉄夫副代表、谷合正明参院幹事長、日下正喜衆院議員、田川寿一広島県議らが同席した。
■記念式典で平和の誓い固く
平和記念式典で平和宣言した松井一実広島市長は、ロシアのウクライナ侵攻を契機に「核兵器による抑止力なくして平和は維持できないという考え」が世界中で勢いを増していると非難し、「全ての核のボタンを無用のものにしなくてはならない」と訴えた。
また、核保有国の為政者に対し、被爆地を訪れて核兵器を使用した際の結末を直視し、「国民の生命と財産を守るためには、核兵器を無くすこと以外に根本的な解決策は見いだせないことを確信していただきたい」と述べた。
岸田首相は、「77年前のあの日の惨禍を決して繰り返してはならない。これは、唯一の戦争被爆国であるわが国の責務であり、被爆地広島出身の総理大臣としての私の誓い」と強調。「非核三原則を堅持しつつ、『厳しい安全保障環境』という現実を『核兵器のない世界』という理想に結びつける努力を行う」とした。
式典には、公明党から山口代表のほか、谷合正明参院幹事長、山本博司参院議員、日下正喜、平林晃の両衆院議員、田川寿一、栗原俊二、下西幸雄、石津正啓の各広島県議、渡辺好造、西田浩、碓氷芳雄、石田祥子、川村真治、並川雄一、田中勝、川本和弘の各広島市議が出席。斉藤鉄夫国土交通相(公明党)も参列した。
■日本が指導力発揮を/核禁条約、オブザーバー参加めざせ/記者会見で山口代表
山口代表は6日午前、広島市で記者会見した。発言は大要、次の通り。
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【平和記念式典の意義】
一、特別な意義のある式典になった。核兵器を取り巻く状況が厳しくなっている一方で、核兵器を無くす方向性でさまざまな営みが行われている。
一、核兵器禁止条約の第1回締約国会議が6月に開催された。日本はオブザーバー参加しなかったが、公明党から浜田昌良参院議員(当時)を派遣した。締約国会議がNPT体制と対抗するのではなく、相互補完し協力し合う位置付けとして進むことになった。
一、8月1日からNPT再検討会議が開催され、日本の首相として初めて岸田首相が演説した。「ヒロシマ・アクション・プラン」を発表し、その中で、11月に国際賢人会議を広島で開催すると明言。若い世代に「被爆の実相」を体験してもらうための基金を国連につくることも発表した。
一、来年5月には、広島でG7サミット(先進7カ国首脳会議)が開催される見通しだ。唯一の戦争被爆国である日本がリーダーシップを発揮すべきだ。
【核禁条約と日本】
一、核兵器禁止条約は「核兵器の被害者支援」や「環境修復」のワーキング・グループをつくり、科学的知見を有する人を活用するとうたっている。日本も貢献すべきだ。日本が第2回締約国会議にオブザーバー参加する意思を明確にすることを期待したい。核保有国と非保有国の橋渡しを進める日本の役割の中で、さまざまな観点からの努力を一層すべきだと考えている。