○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
精神保健福祉法改正案について質問させていただきます。
今回の精神保健福祉法改正では、措置入院者が退院後に医療等の継続的な支援を確実に受けられる仕組みの整備、精神保健指定医制度の見直し、医療保護入院の入院手続等の見直し等の改正が行われます。精神保健福祉法は平成二十五年にも改正されておりまして、前回の改正法では、例えば医療保護入院に係る問題などは附則の検討規定として掲げられております。また、参議院の委員会において、検討事項に追加修正ということで、精神科病院に係る入院中の処遇についても検討規定として掲げられてまいりました。
まず、本法案提出に至るまでどのような検討がなされてきたのか説明をしていただきたいとともに、今回法改正を行うに至った趣旨及び経緯についてまず確認させていただきたいと思います。
○政府参考人(堀江裕君) 今回の改正に向けての検討といたしましては、昨年七月に相模原市の津久井やまゆり園で発生いたしましたあの事件の検証を行い、その結果を踏まえて、それから精神保健指定医が指定を不正取得した事案、それから平成二十五年改正におきます施行後三年後の見直し検討規定で医療保護入院の手続の在り方等が見直しの検討事項とされたことを踏まえまして、精神保健医療福祉に係る制度について行ったものでございます。
検討経過といたしましては、障害当事者、家族、法学者、医療関係者などといった有識者で構成される検討会において、障害者団体などからのヒアリングも踏まえながら検討を重ねたものでございまして、その結果として、現行法では、措置入院者について患者が退院した後の医療等の支援が不十分であること、精神保健指定医制度について指定医になろうとする者を指導する指導医の役割が十分認識されていないこと、医療保護入院について、患者の家族等が同意、不同意の意思表示を行わない場合、患者の適切な医療につながらないことなどの課題があることが明らかになったことから、これら課題に対応するため今回の法案を提出したものでございます。
○谷合正明君 今、保健福祉部長の方からお話があって、最初に相模原の障害者施設事件について触れられておりました。改めて、昨年の七月二十六日、相模原市障害者支援施設津久井やまゆり園において入所者十九名の方が犠牲となり、二十名を超える方々が負傷するという大変痛ましい事件が発生をいたしました。この事件が国民に与えた衝撃というのは極めて大きく、精神障害者に対する差別や偏見の増長、あるいは共生社会実現への影響というものも懸念されてきているところであります。
我が党といたしましても、このような事件を二度と起こさないという観点から、再発防止策の推進とともに、障害のあるなしにかかわらず、誰もが多様性を認め合いながら地域で暮らすことができる共生社会の構築を力強く推し進めていこうという考えでございます。
この委員会の大臣所信質疑の中で、冒頭、私、SDGs、持続可能な開発目標について大臣に最初所見を伺ったわけでありますけれども、このSDGsも、結局その根底に流れる理念というのは、誰一人取り残さない、誰一人置き去りにしないという理念でございます。まさに私ども、そういう思いに立っているわけでございます。
厚生労働省が作成している法律案の説明資料では、相模原市の障害者支援施設の事件に触れた上で、二度と同様の事件が発生しないよう法改正を行う旨の記載がなされております。
先ほど来の質問でございます。大変大事な点でございます。改めてお伺いします。あのような痛ましい事件は決してあってはならないことでありますが、その一方で、精神障害者に対する医療は、犯罪防止、治安維持がその直接的な役割ではなくて、あくまでも本人のためのものであると考えます。まず、厚生労働省といたしまして、精神障害者に対して医療が果たすべき役割についてどのように考えているのか、橋本副大臣にお伺いしたいと思います。
○副大臣(橋本岳君) 御指摘をいただきましたとおり、精神障害者に対する医療の目的は犯罪防止やいわゆる治安維持ではございません。これははっきり申し上げさせていただきます。
その上で、精神障害者に対する医療は何のためにやるのかということを申し上げますと、病状の改善など精神的健康の保持増進を目的とするものであります。ですので、今回の改正では、このことを認識することを国と地方公共団体の義務として明記をするという改正を含めさせていただいたところでございます。
こうした規定の趣旨について、本法案に基づく退院後支援等の実施を担う地方公共団体に対し今後周知を徹底してまいりたいと思いますし、先ほど川合委員からの御質疑の中で、やっぱり誤解を招くという、それに対して大臣が答弁がございましたけれども、改めて、今申し上げたような趣旨をいろいろな機会に繰り返し申し上げて、徹底をしていけるようにこれからも努めてまいりたいと思っております。
○谷合正明君 それでは、具体的に退院後支援計画について伺いたいと思います。
今回の法改正では、措置入院者等に対する退院後の医療等の支援を継続的に行う仕組みを整備するという観点から、措置を行った都道府県、政令市が、患者の措置入院中から、通院先の医療機関等と協議の上、退院後支援計画を作成することとなっております。
退院後支援計画は、措置入院者等の退院後の社会復帰を目的としているものでありますから、可能な限り支援対象者の意向等が反映されるものが望ましいと思います。計画策定段階において支援対象者や家族の意向を聴取し、計画に取り入れていくことが重要であると考えます。
本会議では、こうした質問に対して、支援対象者やその家族の意向が退院後支援計画に組み入れられるよう、できる限り、可能な限り組み入れられていくという旨の答弁がございましたけれども、もう少し具体的に、どのように組み入れていこうとされているのか、この点について答弁をお願いしたいと思います。
○副大臣(橋本岳君) 御指摘いただきましたように、退院後の医療等の支援を行う上では、患者御本人や御家族の御意向を踏まえることが極めて重要であると考えております。
今回の法案で精神障害者支援地域協議会というものを設けるということになっておりますが、その個別のケース検討会議の方において、そこで退院後支援計画を作成するに当たっては、可能な限り患者本人や御家族に参加をしていただき、その御意向を踏まえた適切な支援がなされるようにしていただくことが大事だというふうに考えておりまして、そうしたことを自治体に求めてまいりたいと考えております。
○谷合正明君 それで、計画を作成しましたと、支援対象者に対してその計画を交付することとなっております。これは似たような質問になるんですけれども、本人や家族に納得してもらうためには、ただ交付するだけではなくて、内容について本人や家族に対してきちんと説明して、その内容を理解してもらう、そういうきめ細やかな対応というのが必要であると思っております。
改めて答弁をお願いしたいと思います。
○政府参考人(堀江裕君) 退院後支援計画に基づく支援を円滑に行うために、支援対象となります患者本人あるいはその家族の理解が不可欠であるという委員の御指摘は全くもっともだというふうに考えてございます。
このため、退院後支援計画の作成に当たりましては、帰住先の保健所設置自治体や入院先病院などが参加する精神障害者支援地域協議会に可能な限り患者本人やその家族の参加を促すこととしてございます。その上で、退院後支援計画の作成に関する協議の中で、患者本人やその家族等に丁寧な説明を行うことに努めるよう保健所設置自治体に周知し、また求めてまいりたいと思っております。
○谷合正明君 是非しっかりと丁寧に対応をお願いしたいと思っております。
精神障害者支援地域協議会についてお尋ねしたいと思っております。
今回の改正で、都道府県は、又は政令市ですね、関係行政機関及び関係団体等で構成される精神障害者支援地域協議会を組織することとなっております。この協議会は、精神障害者の適切な医療そのほかの援助を行うために必要な体制の協議を行うものと、退院後支援計画の作成に関する協議及び実施に係る連絡調整を行うもの、この二つがあると承知をしております。
それぞれの会議の構成員はどのようなものを想定しているのか、先ほどの答弁、先ほどの質疑の中で、若干、聞いている方としては、何か政府の答弁がはっきり整理されているのかなというふうな、ちょっと心配な面もございました。
改めて、整理して、それぞれの会議が果たす役割とともに伺いたいというふうに思っております。
○政府参考人(堀江裕君) 精神障害者支援地域協議会、今御説明いただきましたように、地域における精神障害者の支援体制の協議と個別ケースに関する退院後支援計画の内容の協議と、二つの役割がございます。
このうち、支援体制の協議を行います代表者会議につきましては、地域の関係行政機関や医療機関、関係団体により構成されるものでございます。
また、退院後支援計画の内容の協議を行う個別ケース検討会議につきましては、退院後の医療等の支援の関係者により構成されるものでございまして、これは法文案に明記してございます。退院後の医療等の支援を行う上では患者本人や家族の意向を踏まえることが極めて重要であるということから、退院後の支援計画の作成に当たり、その個別ケース検討会議に可能な限り、患者本人、家族に参加いただき、適切な計画となるようにしてまいりたいと考えてございます。
○谷合正明君 医療と警察のその適切な役割分担ということで先ほどの質疑、やり取りがあったわけでありますが、私の方でちょっと確認したいんですけれども、可能な限り本人や家族の参加ということでお話がありまして、実は厚生労働省の法案の説明資料にも、調整会議、個別ケース検討会議の中で、本人、家族については必要に応じてと書いてありまして、そこが多分そこの可能な限りというところに対応しているんだと思いますけれども、何というか、その言葉が、じゃ、参加できるようにしなくてもいいのかというようなニュアンスにも取られかねないものがありまして、改めて、この必要に応じて、可能な限り、この解釈についてお伺いしたいと思っております。
○政府参考人(堀江裕君) 退院後支援計画につきましては、まさにその措置入院者等の円滑な地域移行に向けての退院後の支援を行うことを目的としたものでございますので、しっかりとその協議会に本人あるいは家族が参加いただけるようにしてまいりたいと考えてございます。
○谷合正明君 次に行きますけれども、要するに、退院後支援計画や精神障害者支援地域協議会によって退院後もずっと管理されるのではないかなどと心配される方の声も今よく届いているわけであります。こういった心配、不安の声に対して、管理することが目的ではないんだよという丁寧な説明がやはり政府の方で必要だと思っております。
改めて、こうした今出ているこの不安の声に対して、副大臣の方から御答弁をいただきたいというふうに思っております。
○副大臣(橋本岳君) 今回の法律改正に当たりまして、措置入院について、その患者が退院した後の医療等の支援が不十分であることが課題となって明らかになったということが今回の検討のきっかけだったということはるる答弁したとおりでございます。このために、その患者の社会復帰の促進及びその自立と社会経済活動への参加促進のために必要な医療そのほかの援助を適切かつ円滑に受けることができるよう、それを目的として退院後支援計画を作成をするというものでございます。
この退院後支援計画については、精神障害者支援地域協議会における個別ケース検討会議において、患者の退院後の医療等の支援の関係者による合議体で協議を行い、今御質問いただきましたが、可能な限り、本当に可能な限り、患者本人とその御家族の御意向を踏まえて計画を策定するものでございます。こうしたことから、退院後支援計画や精神障害者支援地域協議会は、退院後の患者の支援を目的に行われるものでございまして、患者の管理を目的とするものではございません。
なお、言いますと、ずっとその支援という形で話が続くのかということも一つ誤解を招き得るところなのかなと思っておりますが、これはやはりその患者の病状等に応じて適切な設定ということになるわけでございますが、そのガイドラインを、退院後支援のガイドラインを作成するときに、その期間の目安を設けようと考えております。今のところ、その具体的な目安として、原則として半年以内程度の期間ということを想定をしているということでございまして、ずっとその支援の何かがずっと付いて回って、結果として管理をされるような感じになるというようなこともないということは申し添えていきたいと思っております。
なお、その患者支援の趣旨ということについて、今回追加された国及び地方公共団体の義務として、これは、精神障害者の人権尊重、退院による地域生活への移行の促進というものを規定をするということで、より明文でも記したところでございますが、具体的には今のような点をしっかりと御説明をすることで、管理をしたいんではないのだと、しっかりと半年なり適切な期間を区切って、患者あるいは退院された後の方が社会復帰をされる、あるいは適切な医療を受けて社会復帰をされるということをサポートをしていく、これを目的とした計画であるということでございます。
○谷合正明君 今、大切な視点を御答弁いただいたと思っております。支援そのものが目的じゃなくて、退院後の、その後の社会復帰というところが大事だと思っておりますので、本当にきめ細やかに対応していただきたいと思っております。
共生社会の実現について伺いたいと思います。
今回の法改正では、措置入院者の退院後は、患者の帰住先の保健所設置自治体が退院後支援計画に基づき相談、指導を行うこととなっています。精神障害者が真に必要とする支援が行われるためには、地域の受入れ体制が重要であり、医療と保健と福祉がしっかりと連携して支援を継続することが重要であります。地域の精神医療に関わる専門職等が連携して支援に当たっていくことが非常に重要でありますが、精神障害者の方に寄り添った対応をするためにはそれだけの人員が必要となってまいります。
私は昨日、政令市である岡山市の精神保健福祉センター、こころの健康センターを訪れました。所長にお話を伺いました。人材面についてということでいえば、保健所また精神保健福祉センター、これから極めて重要な役割になっていく、そうした中で、保健師さん、精神保健福祉士さん、こうした専門家の方のやっぱり体制強化というのが必要であると。保健所も年々カバーする領域が増えており、地域の精神医療だけに割けるマンパワーというのも限りがある。様々な事業をされておりますので、それに対応する事務処理の手続というんでしょうか、煩雑な書類整備というのも極めて増えてきているということで、今後も保健所やあるいは精神保健福祉センターの役割が増えていくという中においては、やはり財政面や人材育成の面においてしっかりと支援を行っていかなきゃならないというふうに私も強く感じたところであります。
今回の法改正に伴い、そうした面においてどのような支援が行われるのか、答弁をお願いしたいと思います。
○副大臣(橋本岳君) 保健所や精神保健福祉センターへの人員体制の財政面や人材育成面での支援ということで御質問をいただきました。
今回の改正法案は平成三十年度以降の施行というのを想定をしているところではございますが、その施行前の平成二十九年度、今年度においても、その退院後の支援に取り組めるよう必要な専門人材の確保等の経費について地方交付税が措置されております。
ただし、これは御案内のとおり交付税措置でございますので、しっかり自治体の方でその配置をしていただくということはしていただかなければなりませんので、厚生労働省としては、保健所、精神保健福祉センター等の職員が確実に増員されるように自治体に対して働きかけを行ってまいりたいと考えております。
その上で、また、今のは財政面での話ですね、そうした形で人材を増員をするということと、さらに人材育成という観点での支援でございますけれども、患者の退院後に適切な医療等の支援を提供するためには、退院後支援の調整の役割を担う保健所設置自治体の職員等に対して、支援の趣旨、内容等への理解を促進し、その専門性を向上させることが重要であると考えております。
今後、厚生労働省において退院後の医療等の支援等に関するガイドラインを、まあ秋頃をめどにと今考えておりますけれども、作成をする予定でございまして、それを今度は完成したらしっかり普及をしていくということが大事でございますので、そのために自治体職員等に対して研修を実施をしていくなど、具体的にそのガイドラインを作成する、そしてそれをきちんと周知をするというか、勉強していただく、研修を受けていただく、そして、今回の法律が通していただければ、それができて、来年、三十年度から施行ということを念頭に置いて、そうした人材面、財政面の支援を今しようとしているところでございます。
○谷合正明君 おっしゃるとおり、地方交付税措置でございますから二百名分の精神保健福祉士を新たに雇い入れるだけの財政支援があるんですけれども、実際それがどう使われるかというのは自治体の判断でありますから、そこはしっかり厚生労働省としても各自治体においての対応というものも見ていただきたいなと思っておりますし、私も実際、人材育成という面において副大臣の答弁は非常に重要だと思いますし、一方で、いろんな業務が増えてきたので、実際、事務手続なんかの書類上のいろんなやり取り、これももしかしたら、もう少しきめ細かく見ていくと、無駄な、不要な、何というのかな、厚労省とのやり取り、厚労省かどうかは分からないけれども、業務上のやり取りとかあるのかな、それをもう少しスリム化できる部分もあるんじゃないかなと。調査したわけじゃないんですけれども、厚労省としてもそうした問題意識を持っていただきたいなというふうに思っております。
〔委員長退席、理事島村大君着席〕
そこで、続きまして、同じく、今度は岡山県なんですけれども、岡山県の精神保健福祉センターにおいては、二年以上このセンターに関わる人を対象に行った調査では、精神科の治療を受けていなかった人が一割強、また治療を中断していた人が三割を占めることも判明しております。
精神障害者の方は引きこもりや経済的な生活苦など複数の問題を抱える場合も多いとされており、精神障害者に対する支援に当たっては、孤立を防ぐ仕組みやアウトリーチという観点も重要になってまいります。退院後の支援は、入院形態に関係なく、医療保護入院、任意入院を含め、支援を必要としている方に提供されるべきものであると考えます。
今後、支援を必要とする方に確実に支援が届くよう厚生労働省としてどのような取組を行っていくつもりなのか、この点について伺いたいと思います。
○政府参考人(堀江裕君) 今回の改正法案は、措置入院者について、自治体が中心となって退院後支援計画に基づく医療等の支援を行うこととしてございます。
そうした支援につきましては、措置入院以外の入院形態から退院された方にも実施することは考え得ますけれども、今回は、措置入院は他の入院形態と異なり都道府県知事等が入院させるものであるため、退院後の支援についても自治体が中心となって行う必要性が高い、また、措置入院に至るまで病状が悪化した方について、退院後も円滑に地域生活に移行できるような環境を整える必要性が特に高いと考えられることから、今回の支援の枠組みを設けることとしてございます。
ただ、退院後支援をするということについて考えますと、措置入院、退院した方だけでなく進めていくことと、これは重要なことだという委員の御指摘には共鳴いたします。
○谷合正明君 共鳴していただいてありがとうございます。
今回の措置は今回の措置で受け止めておるわけですが、今後、支援というのは、入院形態に関係なく支援を必要とする方にやっていくというのがやっぱり筋であると思っていまして、まさに今参考人の方からお話がありましたけれども、今後の私は課題だと思っておりますし、退院後に円滑な地域生活への移行の必要性というのは入院形態に限らないわけでございまして、まさにこの支援を必要とする方に、しっかりと全ての方に提供されるべきものと考えております。
〔理事島村大君退席、委員長着席〕
次に、相模原市の障害者殺傷事件を契機として、社会福祉施設等における防犯に係る安全確保対策の重要性も言われているところでございます。一方で、社会福祉施設は地域とともにあるものでありまして、また開かれた存在であること、利用者が窮屈な思いをせずに過ごせることが人権の観点からも重要であります。壁などで高く囲う、監視カメラ等で監視を強める等の防犯対策を行えばそれでよいという話でもありません。
この度の事件を受けて、地域と一体となった開かれた社会福祉施設と安全確保の両立を図るべく国はどのような対応を行ったのか、また今後の在り方とともに伺いたいと思います。
○副大臣(橋本岳君) 津久井やまゆり園での事件を受けまして、厚生労働省としては、地域と一体となった開かれた施設となることと安全確保との両立に留意をしつつ、職員に対する防犯講習の実施等の社会福祉施設等における防犯に係る日常の対応、それから不審者情報がある場合の関係機関への連絡体制や、想定される危害等に即した警戒体制等の緊急時の対応に関する点検項目、チェックリストのような形でこれを整理した通知を発出し、自治体において必要な取組がなされるように周知をしたところでございます。
また、何に取り組めばいいのかということとともに、実際に取り組むためには資源も要りますので、社会福祉施設等における防犯対策を進めるために、平成二十八年度の第二次補正予算それから平成二十九年度の予算において所要の予算を確保したところでございまして、そうした面でもサポートしてまいるということでございます。
今後、これらの予算を踏まえた防犯設備の設置を進めるとともに、先ほど、午前中、石井委員の御質問の中で、通知を出せば物事は動くと思っているのではないかという御指摘もいただきまして、これは重く受け止めなければならないことだなと思っております。しっかりと、安全対策がどうなっているのかということと社会福祉施設が地域に開かれたものとなっているというものの両立ということを今申し上げましたが、それがどのように進んでいるかということを、関係機関とも連携を図りながら、引き続き私たちも注目をしながら検討を進めてまいりたいと考えております。
○谷合正明君 内閣府に伺いたいと思います。
全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するためには、障害者施策に関する国民への関心と理解を広く深める必要がございます。この点、公明党は、共生社会の実現に向けて、差別や偏見のない社会を実現するために、障害者基本法、障害者差別解消法等の理念をあらゆる機会を活用して啓発していくことが重要であると考えております。
内閣府としてどのような取組をしているのか、まずお答えをいただきたいと思っております。
○政府参考人(和田昭夫君) お答え申し上げます。
障害者基本法では、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、ひとしく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現について規定しておりまして、委員御指摘のとおり、共生社会の実現に向けて政府としてしっかり取り組んでまいりますことは大変重要であると考えております。
また、障害者基本法では、国民の間に広く障害又は障害者に対する関心と理解を深め、障害者のあらゆる分野への参加を促進するために、毎年十二月三日から九日までの期間を障害者週間とすることとされており、この期間を中心に、国、地方公共団体が民間団体などと連携しつつ、障害又は障害者に対する理解促進のための様々な啓発活動を行っているところでございます。
例えば、内閣府では昨年度、政府広報を活用いたしました動画番組を作成いたしますとともに、障害者フォーラム二〇一六を開催し、その中で、全国から募集いたしました障害をテーマとする作文、ポスターの最優秀受賞者の表彰や、真の共生社会とは何かを改めて問うシンポジウムなどを実施いたしました。
政府といたしましては、障害者基本法や障害者差別解消法等の理念に沿って、国民の更なる理解が促進されますよう、障害者週間などのあらゆる機会を活用して共生社会の推進に向けた啓発活動を引き続き推進してまいりたいと存じます。
○谷合正明君 今、参議院の有志で障害者の文化芸術の振興のための議員立法も検討されていると聞いております。こうしたことも活用していただきながら、共生社会の実現に向けて取組を深めていただきたいと思っております。
テレビ番組なんかでよく障害者の方の特集をする番組があったりするんですけれども、例えば、これはアメリカなんかであれば、「セサミストリート」で、普通に番組の中に障害を持つ方と障害を持たない方も一緒になって番組に出ています。いわゆるインクルーシブな番組になっています。でも、日本だと、どちらかというと、インクルーシブな内容というよりは別途何か番組を作るようなところに今とどまっているということで、もう少し、そういう共生社会の実現に向けては、政府の広報についても一工夫、二工夫が必要なんだなと私は思っている次第でございます。
文科省にも来ていただいておりますが、私事になりますけれども、私は家族の中に重度の知的障害を持った姉がおりましたので、小さい頃から障害というものを身近な存在として他人事ではなくて我が事として捉える、そういう環境に育ってまいりました。そこで、やはり感受性豊かな小学生の段階から障害者や精神疾患に対する理解を深めていくということが肝要であると考えております。
これは、障害のある子供とない子供双方にとって極めて重要であるというふうに思っておりまして、今は学校教育などの場で心のバリアフリーという取組の充実というものがうたわれておるわけでありますけれども、文科省として、今までもやっていると思うんですけれども、今までに増して力を入れていくべきだと私は考えております。
児童生徒に対する対応、またその児童生徒に接する教職員の方に対する対応というんでしょうか、こうした心のバリアフリーの対応についてお伺いしたいと思っております。
○政府参考人(白間竜一郎君) お答え申し上げます。
学校教育におきます障害者理解の推進、これを図ることは、多様な人々が共に生きる社会の実現に不可欠であります他者への共感や思いやり、こういったことを子供たちに培っていくために大変に重要であるというふうに認識をしております。
このため、障害者への理解を深める教育を行っておるところでございますけれども、これを児童生徒の発達の段階に応じて指導するということとしておりまして、これまでに加えまして、さらに、小学校では平成三十二年度から、また中学校では三十三年度から全面実施をされます次期の学習指導要領におきましては、一つとして道徳を新たな特別の教科と位置付けまして、ここで相互理解、寛容、また公正、公平、社会正義と、こういったことの内容を充実をするということとともに、障害のある児童生徒との交流及び共同学習の機会を設けるということを規定をいたしまして、指導の充実も図ることとしております。
またあわせまして、教科を横断して障害者理解に活用できる書き込み型の教材、これは仮称でございますけれども、心のバリアフリーノートといったようなものも作成をすることとしているところでございます。
また、教員養成についての御質問もございましたけれども、この教員の養成段階におきましては、障害者等への理解を深めるために、平成十年度の大学に入学した者から、小学校又は中学校の免許状の取得の要件として、障害者福祉施設を含む社会福祉施設と特別支援学校での七日間の介護等体験を、これを必修としているところでございます。
さらに、昨年四月に施行されました障害者差別解消法について教育現場へ周知徹底を図るということで、教育委員会等への通知の発出を行うとともに、共に学ぶための、子供たちが共に学ぶための環境の整備のために、一つは学校に看護師などの外部専門家を配置するための補助事業を行う、また、特別支援教育の支援員といった形での配置を進めるための地方財政措置を実施をしているところでございます。
引き続き、より一層の推進に努めてまいりたいと考えております。
○谷合正明君 大臣に伺います。
本法案では、第二条第二項に、国及び地方公共団体が十分に配慮すべき規定として精神障害者の人権尊重も盛り込まれたところでございます。相模原の事件では、障害者はもちろん、我々国民一人一人に強い衝撃を与えました。事件を風化させずに、今後人権尊重のメッセージを様々なタイミングで発信していくことが重要と考えますけれども、厚生労働大臣の強い決意を伺いたいと思います。
○国務大臣(塩崎恭久君) これまで、精神障害者につきましては、精神保健福祉法の理念にのっとって、できる限り地域社会における生活への移行というものを進めるということでやってまいったわけでありますが、今回の事件を契機にこうした流れを揺るがすことが絶対にあってはならないというふうに考えております。
このため、今回の改正におきまして、国と地方公共団体の義務として、精神障害者の人権を尊重して地域移行の促進に十分配慮すべきことを、今御指摘をいただいたように法律上明記をさせていただきました。
今後、こうした制度の趣旨を自治体に対してしっかりと理解をしてもらうということが大事でありまして、それと同時に、様々な機会を捉えて広く国民に発信を私どもからしていく、そして、そのことによって精神障害者に偏見や差別の目が向けられることがないように、地域における生活への移行が進むようにしてまいりたいというふうに考えているところでございまして、今お話しのように、機会を捉えてできる限りこのような人権尊重の考え方をしっかりと発信してまいりたいというふうに思います。
○谷合正明君 続きまして、医療保護入院について伺います。
前回、平成二十五年の精神保健福祉法改正により、保護者による同意に代えて家族等のいずれかによる同意が要件とされ、必要な医療へのアクセスが一定程度改善されたと認識しております。しかし、患者の家族等が患者本人との関係の悪化や患者と疎遠であること等を理由に同意、不同意の意思表示を行わないケースについては必要な入院医療につながらないといった課題が一部生じているものと考えております。
そこで今回の法改正につながっているというふうに承知しておりますけれども、改めて、今回の法改正によりこうした課題についてどのような改善が見込まれるのかという点について伺いたいと思います。
○政府参考人(堀江裕君) 平成二十五年の精神保健福祉法改正によりまして、医療保護入院に当たっては家族等のいずれかの同意が必要となり、家族全員がいない等の場合にのみ市町村長の同意により医療保護入院を行うことができることとされたものでございます。このような現行法の仕組みの下では、患者の家族等は存在するものの、その全員が同意、不同意の意思表示を行わない場合には家族にとって必要な入院医療につながらない可能性があるということでございます。
このため、今回の改正法案では、家族等の全員が同意、不同意の意思表示を行わない場合でも市町村長の同意により医療保護入院を行うことができるよう市町村長の同意の対象を拡大することとしております。これによりまして、入院医療を必要とする精神障害者について適切な治療につながるように改善されるものと考えてございます。
○谷合正明君 質問を続けます。
今回の法改正では、措置入院等を行った都道府県知事及び医療保護入院又は任意入院者の退院制限等を行った精神科病院の管理者は、対象者にその措置を行う理由を書面により知らせることとなっています。措置の理由を知らせることは大変重要でありますけれども、ただ知らせるだけではなくて、きちんと対象者等に理由を説明して理解してもらう必要があります。さらに、対象者等がその理由について不満がある場合には、その旨を申し立てる又は必要に応じて迅速に措置解除や処遇改善へとつなげる体制が必要であると思います。
本会議においては、そのような仕組みは設けていくという答弁でございました。この委員会では、その仕組みを設けるとして、どのように具体的に運用されていこうとされているのか、政府にお尋ねしたいと思います。
○政府参考人(堀江裕君) 今回の法案では、家族の人権保護の観点から、都道府県知事が措置入院を行った場合や精神科病院の管理者が医療保護入院を行った場合等に、その入院措置をとる理由を患者に対して告知することを新たに求めてございます。一方、現行制度の下では、精神科病院に入院中の患者とその家族等は、都道府県知事等に対し退院や処遇の改善を請求することができることとされておりますが、告知された理由の内容を踏まえて、その入院措置等に不満がある場合はこうした退院等の請求の仕組みを活用することが可能になるということが改善でございます。
なお、請求があった場合には、都道府県等に置かれた精神医療審査会において専門家の合議体による公正な審査が行われることになります。
○谷合正明君 前回改正により、医療保護入院者の退院による地域移行の促進を担う退院後生活環境相談員が新設をされました。医療保護入院者の早期退院のためには、精神科病院内における患者の治療だけでなく、その退院後の生活環境の調整も重要であるということに鑑みて設けられたものでありますが、これはまだ導入されて間もないということなんでありますが、まずもって、この導入の効果をどのように評価しているのかについて伺いたいと思います。
そして、その評価は今回の改正にどうつながっているのかと、今回その対象を措置入院にも拡大するということなんですが、しっかりこの前回の改正をどのように分析、評価して今回の改正に至っているのかということの説明をしていただきたいと思っております。
○政府参考人(堀江裕君) 前回、平成二十五年の精神保健福祉法におきます退院支援に関係するものは、御指摘の退院後生活環境相談員の選任に加えまして、地域援助事業者の患者への紹介、それから医療保護入院者退院支援委員会の開催といった三つの退院促進措置が設けられているところでございまして、これらの取組について、平成二十六年四月の改正法施行以降、着実に進められているところでございまして、平成二十六年六月時点の医療保護入院患者数について、施行前の平成二十五年六月時点に比べまして十三万六千六百八十人から十三万千九百二十四人へと四千七百五十六人減少するなど、退院の促進が図られているものでございます。それまで、どちらかというとずっと右肩上がりだったものが、この時点で減少していることが見て取れます。
今回の法改正では、こうした医療保護入院におきます退院促進措置に期待される効果も踏まえまして、措置入院の場合にも退院後生活環境相談員の選任を医療機関に義務付けるとともに、退院後の医療等の関係者による協議の上、退院後支援計画の作成等を行うことといたしまして、退院後支援の強化を図っているものでございます。
○谷合正明君 私自身は、今回の改正が措置入院の方まで対象にするということで、この点についても評価をしているわけでございます。こうした今回の改正の趣旨をしっかりと踏まえた対応をしていただきたいというふうに思っております。
精神保健指定医について伺います。
平成二十八年には、全国において八十九名の指定医について、指定申請に当たり、自らが診断、治療に十分に関与していない患者についてのケースレポートを提出したなどとして指定の取消しが行われました。精神保健指定医に係る指定の不正取得は指定医の社会的信頼を損ねるものでありまして、決してあってはならないことであります。平成二十一年一月まで遡って調査が行われたと聞いておりますけれども、不正が発覚するより随分前からこのような不正事案が見逃されてきたのではないかということを懸念するわけでございます。
まず、今回の不正事案が起こった原因についてどのように分析しているのかとともに、今回の法改正によって指導医の役割というものを明確化するということでありますが、その内容及び目的について併せて伺いたいと思います。
○政府参考人(堀江裕君) 二点についてお尋ねいただきました。
厚生労働省としては、今回の不正取得の問題についての原因ということのお尋ねでございますけれども、指定医の申請を行う医師とその指導に当たる指導医に、指定医とは措置入院等の患者の意向に反した処置を行える権限を持つ重要な資格であるという意識が希薄であった、人権を扱う者の意識が希薄であったこと、それから指導医の役割の重要性が十分に認識されていなかったこと、そして指定医申請時の実務経験の確認をケースレポートによる書面審査のみで行っていた、これはこちら側の問題でございますけど、等の要因が影響していたと考えてございます。
また、指導医の役割の明確化についてでございますけれども、不正取得の事案では、ケースレポートの症例の診断又は治療について申請医を指導し、ケースレポートの内容の証明を行う指導医の機能が適切に発揮されなかったことが明らかになったものでございます。
このため、今回の法改正では、精神保健指定医の指定の不正取得の事案を受け、その再発防止を行うとともに、指定医の資質を確保するため、指導医を一定の要件を満たす指定医として法律上位置付け、指定申請者にはその指導の下での実務経験を求めるとともに、指定の更新要件に指定医業務の実績を新たに追加することといたしてございます。
○谷合正明君 今回の法改正によりまして、指定医の資格不正取得の防止及び社会的信頼の向上にしっかりとつなげていただきたいというふうに、大臣の方に要請というか要求をさせていただきたいと思います。
最後になりますが、附則に、施行後五年以内に、新法の施行の状況並びに精神保健及び精神障害者の福祉を取り巻く環境の変化を勘案し、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるとの検討規定が設けられました。
施行後五年以内の見直しまで、どのような点を重視しながら、今後、精神保健医療福祉行政の改革を行っていく考えなのか、最後、副大臣に答弁をお願いしたいと思っております。
○副大臣(橋本岳君) 今回の改正法案におきましては、先ほど御指摘をいただきましたように、附則に施行後五年以内の見直し検討規定が置かれているところでございます。
厚生労働省としては、この規定に基づき、今回新設する措置入院者の退院後の医療等の支援の在り方や、精神障害者の適切な医療等の支援を行うための関係行政機関等による協議の在り方を中心に、施行状況等を踏まえ検討を行うことを考えているところでございます。
具体的には、措置入院者に対する退院後の医療等の支援が患者の円滑な地域移行につながっているか、あるいは精神障害者支援地域協議会における地域の関係者での支援体制の協議や個別の支援内容の検討が適切な医療等の支援につながっているか、また法の運用を行う地方自治体の体制が十分か、こうした点に留意をして検討を行っていきたいと考えております。
また、医療保護入院に係る実態についても、今回、家族等同意がない場合のということを新設をしたわけでございますが、継続的にこれは検証を行いまして、今申し上げました家族等同意の在り方を含め引き続き検討を行ってまいりたいと、このように考えております。
○谷合正明君 以上で終わりたいと思いますが、改めて、共生社会の実現、そして治療と退院後のフォローアップ、こうした点をきめ細やかにやっていただきたい、そのことを申し上げて質問とさせていただきます。
以上です。