2021年5月8日 2面
日中韓、オーストラリア、東南アジア諸国連合(ASEAN)など15カ国による地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が国会で承認された。早ければ年末にも発効する。
RCEPが発効すれば、人口や国内総生産(GDP)で世界経済の3割を占める最大規模の自由貿易圏が誕生する。域内にサプライチェーン(供給網)を組んでいる日本企業にとって、完成品や部品にかかる関税が撤廃されるメリットは大きい。
日本が、最大の貿易相手国である中国と3位の韓国と結ぶ初めての経済連携協定(EPA)という点も重要だ。工業製品の関税撤廃率は、日本から中国への輸出で8%から86%、韓国向けで19%から92%と格段に高まる。
政府は、RCEP発効による輸出や投資の増加、消費の拡大などを通じて、日本のGDPが実質で2・7%押し上げられると試算する。これは2019年の実質GDPで換算すると約15兆円に相当し、環太平洋連携協定(TPP)を上回る経済効果だ。
RCEPにはインド太平洋地域で経済をけん引する国が参加している。日本が地域の安定と繁栄をめざして提唱している「自由で開かれたインド太平洋」構想の推進にも、RCEPが大きく寄与することが期待される。
忘れてならないのは、大企業だけでなく、中小企業や小規模事業者も自由貿易の恩恵を受けられるようにすることだ。
この点について、公明党経済連携協定等対策本部長の谷合正明参院幹事長は「生産基盤の強化など国内対策の充実に一層、取り組んでいきたい」と強調している。中小企業がRCEPを成長の追い風にできるよう、国際競争力を高める必要がある。国内農水産品の輸出拡大に向けた取り組みも欠かせない。政府による後押しが必要だ。
RCEPについては、交渉の過程でインドが離脱した。ただ、日本とオーストラリア、インドは先月末、脱炭素社会の実現に向けて資源や技術を相互に供給するサプライチェーンを構築することで合意した。
こうした枠組みも活用し、日本はインドにRCEPへの復帰を促すべきである。