2021年5月7日 3面
LGBTなど性的少数者カップルの関係を公的に認める「パートナーシップ制度」を導入する自治体が、支援団体の調べで100を超えた。これらの地方議会では公明議員が人権を守る観点から積極的に推進している。制度の意義とともに、公明党「性的指向と性自認に関するプロジェクトチーム(PT)」の谷合正明座長(参院幹事長)から話を聞いた。
パートナーシップ制度は、自治体がLGBTカップルに対して、二人の関係が結婚と同等であると承認し、証明書などを発行するもの。国内で同性婚が認められない中、2015年11月に東京都渋谷区と世田谷区で日本初となるパートナーシップ制度が始まった。
自治体によって制度の詳細は異なるが、公営住宅に家族として入居が認められたり、パートナーが病院に救急搬送された際、家族として面会できるなどの配慮が得やすくなる。一方、あくまで自治体の取り組みのため、相続や税制、在留資格などの法的効力はない。
支援団体の同性パートナーシップ・ネットによると1日現在、同制度を導入しているのは大阪、茨城、群馬の3府県のほか、102区市町を数え、全国の人口カバー率は4割近くに上る。認定NPO法人「虹色ダイバーシティ」の調べでは、3月末時点で全国1741組に証明書が交付されている【グラフ参照】。
同制度が広がる背景には、LGBTへの差別や偏見を是正する人権運動の世界的高まりがある。01年にオランダが世界で初めて同性婚制度を導入し、現在、世界28カ国・地域に拡大。先進7カ国(G7)で同性婚や、それに準ずる制度がないのは日本だけだ。
■差別・偏見の解消、命に関わる問題
都内にあるLGBTの情報発信拠点「プライドハウス東京レガシー」を訪れ、松中権代表に話を聞いた。松中さん自身、男性同性愛者であることをカミングアウトしている当事者だ。
パートナーシップ制度について、松中代表は「身近な存在として理解されていなかったLGBTについて、同じ街に当事者がいることを示し、公的に肯定してくれる意義は大きい」と指摘する。とりわけ松中代表が強調するのは、若い世代とその親たちに与える影響だ。「“異常性愛”などとネガティブな情報も多く、一番身近な家族にさえ打ち明けられない。将来を描けず、自ら命を絶ってしまうケースもある」
プライドハウス東京レガシーでは、LGBTの子どもや若者に対する相談支援を開始しており、松中代表は、「差別や偏見の解消は若い世代にとって命に関わる取り組みだ」と訴える。
■「実現へ一番の近道は公明に相談すること」
公明党は当事者や関係団体から切実な要望を受け、パートナーシップ制度を各地方議会で推進している。
埼玉県では県内自治体の約2割に当たる12市町で始めた。県内で導入を求める活動を展開する「レインボーさいたまの会」の加藤岳代表は、大半の議会で公明議員の協力があったとした上で、「公明党に主導してもらうことで、保守系からも革新系からも賛同を引き出せた」と振り返る。
国内最大人口の政令市である横浜市でも、19年12月にパートナーシップ制度を導入した。きっかけは18年5月に、当事者である中島愛さんが、公明議員の協力で市議会議長に送った要望書だ。中島さんは「全国で議会に請願を行う仲間たちの間では、公明党にお願いすることが実現への一番の近道であることは共通認識になっている」と明かす。
■都議会でも重ねて訴え
人口1400万人を抱える東京都では、都議会公明党が実現に向け動いている。19年3月の予算特別委員会に続き、昨年12月の代表質問などでパートナーシップ制度の導入を繰り返し主張。今年3月の予算特別委員会では、同制度と併せて、LGBTカップルが育てる子どもを家族と認める「ファミリーシップ制度」の実施を求めている。
■多様性尊重する社会築く/党性的指向と性自認に関するPT座長 谷合正明参院幹事長
公明党はこれまで、性的少数者の方々への支援について、繰り返し政府に申し入れを行い、昨年9月の党大会でも自治体パートナーシップ制度を推進していくことを確認した。
国会では、性的指向と性自認に関する議員立法の成立に向けて、与野党間での協議が加速している。3月には、札幌地裁で同性婚を認めない現状について、法の下の平等を定めた憲法14条に反するとの判断が示された。公明党は与党内では初となる同性婚検討ワーキングチームを立ち上げ、議論を進めている。
性的少数者の方々が差別される社会を次世代に残してはならない。“人権の党”として公明党は、与野党の合意形成に粘り強く取り組み、多様性を尊重する「誰一人取り残さない」社会を築く決意だ。