5月26日付の日本農民新聞社の日刊アグリ・リサーチに谷合議員のインタビュー記事が掲載されましたので、転載します。
(岡山事務所)
この人に聞く
「新型コロナ禍の農政の取り組み」
公明党 参議院幹事長・農林水産部会長 谷合正明氏
公明党の農業分野における新型コロナ禍への対応や、新たな「食料・農業・農村基本計画」について、公明党農林水産部会長で、農林水産副大臣の経験もある、谷合正明参議院幹事長に話を聞いた。
―新型コロナウイルスの農業・農村への影響をどう捉えているか?
谷合 新型コロナウイルスの感染症拡大が国内で問題視され始めた2月頃には、特に小・中学校の休校に伴い、給食がストップしたことが先ず大きな問題となった。また観光インバウンドの減少により、外食産業に影響がではじめ、特に高級食材の消費が減少した。その後問題が長期化していく中で、学校が再開されぬままとなり、給食に出す予定だった牛乳や野菜等をどうするかという課題が大きくなった。加えて、4月に入ってからは政府による緊急事態宣言が出され、人々が外出を控えるようになり、外食も更に落ち込む等、4月以降より深刻化している。消費が減少した食料品がある一方、需要が急増した食料品もあり、食全体の問題となっている。また、外国人技能実習生を受け入れることができないため、労働力確保の分野にも影響が出ていると認識している。
―補正予算・施策などコロナ禍への農政の対応状況は?
谷合 政府の緊急経済対策が4月に取りまとめられたが、ここで公明党が主眼として主張したのは、需要喚起だ。特に、和牛や林産物の在庫が積みあがっており、これらを、どうやって回転させるか、というのが緊急経済対策における農業分野のポイントだろう。酪農で言えば、学校給食のみならず、コーヒーのチェーン店の休業を受けて乳製品の消費が減少。脱脂粉乳などに変えているが、元々在庫が豊富な状態だったので、更に飼料化等に転換している状況だ。対策では、その価格差分の補てんなどを盛り込んだ。雇用については、マッチング事業を行っている。学生がアルバイトできずに困っているという問題がある一方で、農業を学ぶ学生に働いてほしいという農林水産業もある。これらをマッチングして、学生に現場での経験を積んでもらう取り組みだ。もちろん収束すれば、GoToキャンペーン(需要喚起と地域の再活性化を目指す、期間を限定した官民一体型の需要喚起事業)で飲食業、観光・運輸業等の応援をしたい。
―コロナ禍で今、考えるべきことは?
谷合 今回のコロナ禍では、国民が改めて「農林水産業が大事だ」ということに、気付くきっかけになっていると思う。これまでは当たり前にあった米やパン・パスタが、一次的に小売店に並ばない事態も起きた。食は生命・生活の根源であり、国としても食を守ることは基本だ。農業政策はどちらかというと地味で、予算規模も小さく、予算委員会で頻繁に取り上げられる話題でもない。しかし今回のことで、食料安全保障・食料自給率等、農政について国民一人一人が考え始めている。農政は一部の人だけが考えれば良いというものではない。
また私自身も国会で求めたことだが、コロナ禍の影響は、新たな「食料・農業・農村基本計画」にも反映されている。食料安全保障の観点から、コロナウイルス感染症を受け止めて、我が国の食料安全保障をどう作っていくかを、基本計画に書くべきだと強く主張した。結果、充実した記述になったと評価している。
―その新たな基本計画について、重要視してきたことは?
谷合 基本計画は農業分野の憲法のようなものだと思っている。公明党としては、食料自給率、特にカロリーベースについて、目標としてしっかり堅持すべきだと主張してきた。また、小規模や家族経営など、多様な営農のスタイルをしっかりと応援する基本計画にして欲しいと要請してきた。更に近年は災害が相次ぎ、農林水産分野も多大な影響を受けたことから、災害に対する備えである、インフラ・強靭化も重要だと訴えてきた。災害に強い農業ということも、概ね反映されたと思う。また、SDGsについて、今回からの新しい概念として盛り込み、農政が牽引役を担うべき取り組みだと主張した。
基本計画は、農家や農業行政関係者だけに届けば良いというものではない。国民にこのメッセージをどう届けるかを公明党は大事にしている。いかに国民理解を深めるかという趣旨で、基本計画は立てるべきだと主張してきたが、考慮していただいたと思う。
―党農政の基本方針は?
谷合 多様な営農スタイル・農業経営の多様性をしっかりと応援しなければならないということを、常々訴えてきた。日本は四季を持っているし、南北にも長く、多様な営農ができる国だ。地産地消も日本の強みだと思うし、日本ならではの農政をしっかり行うべきだろう。農業の持続可能性を考えると、若い人たちに農業の担い手として継いでいっていただける環境を、如何に作るかが重要だ。多様性と人材確保は、ずっと強調していきたい公明党の要請のポイントだ。
(5月26日付け日本農民新聞社の日刊アグリ・リサーチより転載)