2019年10月31日 1面
日米貿易協定の承認案が今国会で審議されています。来年1月の発効をめざす同協定の意義や評価、今後の国内対策などについて、公明党TPP・日EU・日米TAG等経済協定対策本部長の谷合正明参院幹事長に聞きました。
――意義と評価は。
米中貿易摩擦の激化をはじめ世界経済に不安要因が増す中、世界の国内総生産(GDP)の3割を占める日米で貿易協定が結ばれることは非常に重要です。環太平洋連携協定(TPP)から離脱した米国を世界の自由貿易の枠組みに戻すことができたという点でも大きな意義があります。
協定は、農産品や工業品にかける日米間の関税を撤廃・削減し、自由貿易を促進させるのが狙いです。中でも、最大の焦点だった米国の農産品にかける関税の撤廃・削減の対象はTPPの範囲内に収めました。
協定が発効すると貿易額ベースで米国側が92%、日本側は84%の関税撤廃が実現します。日本のGDPを約0・8%(4・2兆円)押し上げ、雇用も約28万人増えると政府も試算しており、国益にかなった協定であると評価しています。
――具体的には。
消費者にとっては、米国産の農産品を安く買えるという恩恵が期待できます。例えば、牛肉の関税は現在の38・5%から段階的に引き下げられ、2033年度には9%となり、チェダーチーズやワインも関税が段階的に引き下げられ、最終的には撤廃されます。
米国に市場を開放する一方で、日本は「聖域」としていたコメを協定から除外し、無関税輸入枠を設けていません。米国産牛肉においては、輸入が一定量を超えると関税を引き上げる「セーフガード」を導入しました。
■(日本の農産・工業品)販路開拓の好機
農産品の輸出に関しては、米国が日本産牛肉に設けていた低関税枠を現在の年200トンから6万5005トンに実質拡大します。輸出実績の高い日本のしょうゆや緑茶なども関税が削減・撤廃されます。
また工業分野では多くの品目で米国側の関税が引き下げられるため、国内企業にとって輸出拡大の追い風になると言えます。例えば、燃料電池やエアコン部品などの関税は即時撤廃され、部品産業を担う中小企業の販路開拓も期待できます。
――焦点となっていた自動車や関連部品の関税撤廃は。
撤廃を前提に今後も交渉が続けられます。政府は協定に「さらなる交渉による関税撤廃」と明記させ、追加関税や数量規制という措置を取らないことも米国から言質を取りました。自動車業界も今回の合意を高く評価しています。
■農業の生産基盤強化
――臨時国会での公明党の主張は。
農家の皆さまから合意内容に評価の声をいただく一方で、農林水産物の生産減少額が600億〜1100億円になるという政府試算に不安を抱えている方々もいると聞いています。安心して生産に取り組めるよう生産基盤を強化する対策が欠かせません。
政府は年内にも必要な国内対策をまとめる方針です。公明党は対策本部を中心に活発に議論を重ね、政府に全国各地で説明会をきめ細かく実施するよう万全な準備を求めてきました。
国会審議では、協定の意義やメリットの周知に努めるとともに、来年1月の発効に向けて承認案の早期成立を期してまいります。