2019年08月07日 1面
公明党の山口那津男代表は6日午前、広島市で記者会見し、核兵器のない世界に向けた日本の役割などについて、大要次のような見解を述べた。
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【被爆体験の継承】
一、原爆投下から74年を迎えた。被爆を経験した人が少なくなり、その体験の継承が難しくなっている。記憶や経験を文字にとどめ、画像や映像に残し、被爆の遺構を保存することで、被爆の実相を後世に伝えていく取り組みが重要だ。
一、(被爆遺構の保存について)公明党議員も積極的に支援している。後世に残し、伝えるべき価値があり、保存に適したものは、政府に一定の配慮をお願いしたい。具体的な検討へ前向きに努力していく。
【核なき世界に向けて】
一、唯一の戦争被爆国である日本が核兵器のない世界をめざして、これからも粘り強く歩みを進めていかなければならない。(核兵器保有国と非保有国の橋渡し役として)公明党が提唱し、創設された賢人会議が9月にも報告書をまとめる。これを日本政府が共有して、来年開かれる核拡散防止条約(NPT)運用再検討会議での対話を促し、実質的な核軍縮に結び付ける役割の一助として生かしていくべきだ。公明党もNGO(非政府組織)などと手を携え、日本政府をバックアップしながら、会議の成功を後押ししていく。
一、(広島市長が平和宣言で「核兵器禁止条約の署名・批准を求める被爆者の思いを受け止めてほしい」と述べたことについて)広島市民の切なる声を政府に届ける真摯な内容だった。核兵器禁止条約に対する日本政府の取り組みを求める声は、広島市民のみならず、広範で強い。国際的な規範として重要な意味を持つものだ。
一、一方で、核兵器の禁止規範とともに大事なことは、核保有国に働き掛けて、実質的な核軍縮を進めることだ。そうした点に日本政府は配慮し、核保有国と非保有国の橋渡し役を担い、対話による核軍縮の進展をめざしている。大きな方向性は矛盾するものではない。
■74回目、広島原爆の日
広島は6日、74回目の原爆の日を迎えた。広島市中区の平和記念公園では、午前8時から市主催の「原爆死没者慰霊式・平和祈念式」(平和記念式典)が開かれ、被爆者や遺族ら約5万人が参列。松井一実市長は平和宣言で、日本政府に対し「唯一の戦争被爆国として、核兵器禁止条約への署名・批准を求める被爆者の思いを受け止めて」と訴えた。
式典には安倍晋三首相ら政府関係者のほか、公明党からは山口那津男代表をはじめ、斉藤鉄夫幹事長、谷合正明、山本博司の両参院議員、田川寿一、栗原俊二、日下美香、尾熊良一、下西幸雄、石津正啓の各広島県議、渡辺好造、西田浩、碓氷芳雄、石田祥子、川村真治、並川雄一、田中勝、川本和弘の各広島市議が出席。92カ国と欧州連合(EU)の代表とともに、国連の中満泉軍縮担当上級代表(事務次長)も、3年連続で出席した。
原爆が投下された午前8時15分には、遺族代表らが「平和の鐘」を打ち鳴らし、1分間の黙とうをささげた。
市長は宣言で、世界の政治指導者に対し「核兵器のない世界への一里塚となる核兵器禁止条約の発効を求める市民社会の思いに応えてもらいたい」と要請。日本政府に対しては「核兵器のない世界の実現にさらに一歩踏み込んでリーダーシップを発揮する」よう求めた。
中距離核戦力(INF)全廃条約の失効など最近の国際情勢については「国家間の対立的な動きが緊張関係を高め、核兵器廃絶への動きも停滞している」と指摘した。
安倍首相はあいさつで「核兵器国と非核兵器国の橋渡しに努め、双方の協力を得ながら対話を粘り強く促し、国際社会の取り組みを主導する」と述べた。
式典では市長と遺族代表が、この1年間に死亡が確認された5068人の名前を記した原爆死没者名簿を慰霊碑に納めた。犠牲者は31万9186人となった。厚生労働省によると、被爆者健康手帳を持つ人は今年3月末時点で全国に14万5844人。平均年齢は82・65歳で、昨年より0・59歳高くなった。