○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
私は、公明党を代表して、防衛大綱及び中期防衛力整備計画に関して、安倍総理及び岩屋防衛大臣に質問いたします。
先月末、米国トランプ大統領が訪日され、安倍総理との日米首脳会談が行われました。厳しさを増す安全保障環境の中で、我が国の外交・安全保障の基軸である日米同盟の重要性はこれまで以上に高まっています。
北朝鮮は、五月九日に、国連安保理決議に違反する短距離弾道ミサイルの発射を強行しました。我が国は、米国を始めとする関係国と緊密に連携しつつ、北朝鮮に対し、安保理決議の完全な履行を求めていくべきです。拉致問題については、我が国が主体的に解決すべき課題ではありますが、米国との緊密な連携は必要不可欠であり、今後も米国の力強い協力を求めていくべきです。
そこで、北朝鮮の拉致、核、ミサイル問題の解決に向けた日米首脳会談の成果及び今後の方針について総理に伺います。
新防衛大綱、新中期防は、我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさと不確実性を増していることを踏まえ、策定されました。新大綱では、宇宙、サイバー、電磁波などの新領域を含む全領域における能力を有機的に融合する領域横断作戦を可能とする多次元統合防衛力といった概念が示されました。
この多次元統合防衛力の構築に際しては、国民への説明や対外的に不信を招かないようにする視点が欠かせません。新大綱においても、特定の国を仮想敵や脅威とみなし、これに軍事的に対抗していくという発想、脅威対抗論には立たないという点は堅持されているのか、防衛大臣の答弁を求めます。
次に、「いずも」型護衛艦の改修について伺います。
新大綱、新中期防では、「いずも」型護衛艦を改修し、必要な場合には短距離離陸、垂直着陸が可能なSTOVL機の運用を可能とすることとされました。公明党は、「いずも」型護衛艦を改修しても憲法上保有が認められない攻撃型空母とはならない旨の確認書を与党間で交わし、その趣旨は新中期防の本文にも明記されました。
そこで、総理に対し、自衛のための必要最小限度の実力の具体的な限度、憲法の下で保有が許されない攻撃型空母の定義について答弁を求めるとともに、改修後の「いずも」型護衛艦が憲法や専守防衛の理念に反するものではないということについて、国民に分かりやすい説明を求めます。
次に、安全保障協力について伺います。
新大綱では、自由で開かれたインド太平洋というビジョンを踏まえ、多角的、多層的な安全保障協力を戦略的に推進するとの考えが示されましたが、その背景は何か。また、今後は、普遍的価値や安全保障上の利益を共有するオーストラリア、インド、東南アジア諸国等のみならず、中国、ロシア等との間での相互理解の増進に向けた安全保障協力を推進するといった視点も重要ではないでしょうか。あわせて、防衛大臣の答弁を求めます。
次に、自衛隊員の確保について伺います。
少子化、有効求人倍率の上昇等によって、自衛官の募集は厳しい状況にあります。自衛官の確保は、国民の暮らしを守る観点からも早急な対策が必要です。
また、昨年、女性自衛官の配置制限が全面的に見直されましたが、プライバシー保護やセクハラ、パワハラ防止、自衛隊施設における保育施設の整備など、女性自衛官が活躍しやすい環境の整備が重要です。
隊員の確保と女性隊員の活躍推進策について、大臣の答弁を求めます。
最後に、防衛関係費について申し上げます。
新中期防では、各年度の予算の編成に伴う防衛関係費については、防衛力整備の水準に係る金額から約二兆円を削減する目標が掲げられました。また、今後五年間で新たに必要となる事業に係る契約額についても、我が党の強い主張で新たな枠が明記されました。防衛省には、徹底した効率化、合理化、また後年度負担の適切な管理を求めるものであります。
今月末には我が国でG20首脳会議が開催されます。議長国日本が、我が国のみならず国際社会の平和と安定を守るため、リード役を果たすことが重要です。私ども公明党も与党としての役割と責任を果たしていくことをお誓い申し上げ、私の質問といたします。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 谷合正明議員にお答えをいたします。
北朝鮮問題についてお尋ねがありました。
先般の日米首脳会談では、北朝鮮の核・ミサイル問題に関して、最新の情勢を踏まえ、十分な時間を掛けて方針の綿密なすり合わせを行い、日米の立場が完全に一致していることを改めて確認しました。
安保理決議は、北朝鮮に対して、全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全、検証可能かつ不可逆的な方法での廃棄を求めています。我が国としては、米国を始めとする関係国と緊密に連携しつつ、引き続き関連する安保理決議の完全な履行を求めてまいります。
我が国にとって最も重要な拉致問題に関しては、トランプ大統領御夫妻に再び拉致被害者の御家族と面会いただき、御家族の皆様を励まし、勇気付けていただきました。
首脳会談では、私から、条件を付けずに金正恩委員長と会って、率直に、虚心坦懐に話をしたい旨を述べ、これに対しトランプ大統領から、全面的に支持をする、あらゆる支援を惜しまないとの力強い支持をいただきました。
拉致問題の解決に向けては、我が国自身が主体的に取り組むことが重要です。御家族も御高齢となる中、一日も早い解決に向け、引き続き日米で緊密に連携しながら、あらゆるチャンスを逃すことなく果断に行動していく決意です。
今後とも、我が国として、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決をし、不幸な過去を清算して国交正常化を目指してまいります。
攻撃型空母の定義と「いずも」型護衛艦の改修についてお尋ねがありました。
「いずも」型護衛艦の改修については、与党で大変充実した御議論をいただきました。与党間の確認書の内容は政府としても同じ考えであり、その趣旨は全て大綱、中期防に反映されています。
政府としては、従来より、性能上、専ら相手国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられる、いわゆる攻撃的兵器を保有することは、自衛のための必要最小限度を超え、憲法上許されないと考えています。
また、いわゆる攻撃型空母とは、空母のうち、そのような兵器に該当するものと考えています。
「いずも」型護衛艦における航空機の運用と所要の改修は、専守防衛の下、新たな安全保障環境に対応し、広大な太平洋を含む我が国の海と空の守りについて、隊員の安全を確保しつつ、しっかりとした備えを行うものであり、今後の我が国の防衛上、必要不可欠なものであります。
また、その性能は航空機を十機程度運用し得るにとどまるものであり、性能上、専ら相手国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられる兵器でないこと、また攻撃型空母でないことは明らかであり、憲法や専守防衛に反するものではありません。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣岩屋毅君登壇、拍手〕
○国務大臣(岩屋毅君) 谷合正明議員にお答えいたします。
まず、我が国の防衛政策や防衛力整備の在り方についてお尋ねがありました。
我が国の防衛政策や防衛力整備は、もとより、特定の国や地域を脅威とみなして、これに軍事的に対抗していくという発想には立っておらず、この方針は今般の防衛大綱及び中期防においても引き続き堅持をしております。
政府としては、我が国を取り巻く安全保障環境の現実を踏まえ、いかなる事態に際しても国民の命と平和な暮らしを守るため、新たな大綱、中期防の下に多次元統合防衛力の構築をしっかりと進めてまいります。
次に、安全保障協力についてお尋ねがありました。
我が国を取り巻く安全保障環境が格段に速いスピードで厳しさと不確実性を増す中で、各国との安全保障協力の強化は安全保障にとって不可欠でございます。
このような考え方の下に、新たな大綱に従って、望ましい安全保障環境を創出するため、今後は、共同訓練・演習、防衛装備・技術協力、能力構築支援、軍種間交流等の防衛協力・交流を多角的、多層的に組み合わせて、戦略的に実施していくことが一層重要だと考えております。
安保協力を進めていく上では、防衛省としては、自由で開かれたインド太平洋というビジョンを踏まえて、豪州、インド、東南アジア諸国等との防衛協力・交流を推進してまいりますが、中国やロシアとの間でも、日ロ2プラス2や日ロ防衛相会談、日中防衛相会談のような機会も通じて様々な対話や交流を進め、相互理解と信頼関係の増進を図ってまいります。
最後に、隊員の確保と女性隊員の活躍推進策についてお尋ねがありました。
近年の少子化の進行によって採用対象人口が減少する中、自衛隊員の人材確保と能力、士気の向上は防衛力の強化に不可欠であります。このため、新たな大綱、中期防では、人的基盤の強化を優先事項と位置付け、採用の取組を強化しつつ、女性活躍を推進するなど、人材の一層の有効活用を図ることとしています。
女性自衛官の全自衛官に占める割合は、昨年度末で約七%ですが、直近の採用では女性自衛官の割合を約一六%に伸ばしております。
女性自衛官が働きやすい環境の整備がますます重要となっておりまして、現在八か所ある庁内託児所につきましても、今後ともニーズに応じた拡充を図っていくほか、自衛隊の建物の女性用区画や施設の整備にしっかり取り組んでまいります。
そのような中で、セクハラ、パワハラ防止対策を積極的に進めることも重要でございます。最近では、管理職隊員への研修等を強化しているほか、パワハラ防止に関する部外有識者の意見を聴取することによって、効果的な施策を検討し、実施に移していきたいと考えております。(拍手)