○谷合正明君 公明党の谷合です。
独禁法の見直しでございますが、公明党の中にも独禁法調査委員会というものがございまして、これまで、この法改正に伴いまして、法改正をするということで、経団連でございますとか日弁連、また全国中小企業団体中央会、また全国消費者団体連絡会からもヒアリングをさせていただきまして、見直しの主眼であります課徴金制度の見直しということについて、おおむねその方向性に賛同していただいているというふうに承知をしております。その上で、今日は、いろいろな切り口があろうかと思いますが、消費者の利益というところからの視点で質問させていただきたいと思っております。
まず、独占禁止法ですけれども、第一条に、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とするとございまして、消費者利益の確保を明確に規定しているところでございます。
そこで、まず大臣にお伺いしますけれども、基本的な認識でございます。この独占禁止法が消費者利益の確保に対して果たす役割、意義についてどのように認識しているのか、見解を問いたいと思います。
○国務大臣(宮腰光寛君) 社会経済活動の中で消費活動は大きなウエートを占めておりまして、平成三十年版消費者白書において記述されているように、消費者の消費活動は日本の経済社会全体に大きな影響を及ぼすものであります。経済社会の持続的な発展のためには、消費者が安心して消費活動を行える市場を構築し、消費者利益の確保を図ることが重要であると考えます。
独占禁止法は、市場の独占やカルテルなどの市場における競争を阻害する行為を排除し、公正かつ自由な競争の促進を図ることにより、事業者が市場における公正かつ自由な競争に参加し、商品やサービスの品質向上や技術開発等を行い、消費者は、そのように豊富に提供された商品やサービスの中から適正な価格で自由に選べるようにすることを目的としておりまして、消費者利益の確保のため非常に重要な役割を担うものであるというふうに考えております。
○谷合正明君 安心して消費者がその活動をできるようにするということだと思いますが、その中でこの独占禁止法が果たす役割というものが極めて重要であって、消費者に被害を与えるカルテル、入札談合を防ぐということは消費者の利益の確保につながっていくということだと思います。
今回の独占禁止法の改正につきましては、適切な課徴金を課すことができるものとするとしているところでございます。カルテル、入札談合等の独占禁止法違反行為を未然に防いでいくためには、課徴金がしっかりと課せられるようにする必要があるということは理解をしておりますが、その適切な課徴金を課すことができるものとするということはどのような意味なのか。独占禁止法の強化の改正ということなのかということですね。まず、その意味を委員長の方に問いたいと思います。
○政府特別補佐人(杉本和行君) ありがとうございます。
独占禁止法の現行の課徴金制度は、法定された算定方式に従いまして一律かつ画一的に算定、賦課されるものでございます。しかし、事業者の経済活動や企業形態の変化が進む中で、独占禁止法違反行為も多様化、複雑化しております。したがいまして、現行の課徴金制度では違反行為に対しまして適切な課徴金を賦課することができない事案が生じていることも事実でございます。
課徴金の算定方法について所要の改正を行うことによりまして、こうした多様化、複雑化した違反行為に対しても適切な課徴金を課すことができるようになりますと、独占禁止法の違反行為に対する抑止効果が向上するのではないかと考えておるところでございます。これにより、独占禁止法の目的である公正かつ自由な競争の促進、そして一般消費者の利益の確保と国民経済の民主的で健全な発展を図っていくことに貢献するものじゃないかと考えておるところでございます。
○谷合正明君 多様化、また複雑化した違反行為に対しまして抑止の効果があるということだと思います。
今回の課徴金の算定基礎の改正内容を見ますと、例えばこれ、算定期間の延長でございますとか算定基礎の追加、また、この算定率におきましても、適用対象を実質的な中小企業に限定することでありますとか業種別算定率の廃止など、おおむね課徴金が取れるようになる、課徴金額が増加するという内容と理解をしております。
一方、今般の改正内容の中には、繰り返し違反の適用対象の整理として、最初の課徴金納付命令等よりも前に、同時並行する違反行為を取りやめた場合を除外するというものが含まれております。これは課徴金額が減少する方向のものであると理解しますが、どのような理由でこの改正を行うのか。適切な課徴金を課すことができるものとするとの趣旨との整合性についての確認をさせていただきたいと思います。
○政府参考人(菅久修一君) お答え申し上げます。
違反行為を繰り返すなど複数の違反行為を行う事業者、これは、課徴金を納付してもなお違反行為を行うインセンティブが生じるほどの利得を得ていると考えられますので、そのような違反行為を抑止するために必要な課徴金を賦課するという観点から、平成十七年の独占禁止法改正におきまして繰り返し違反に対する割増し鑑定率が導入されたものでございます。
本改正法案では、さらに、企業グループ単位での違反行為についても抑止効果を及ぼすという観点から、過去十年以内に完全子会社が課徴金納付命令等を受けている場合や課徴金納付命令等を受けた違反対象事業を承継している場合も繰り返し違反に対する割増し算定率を適用することとしております。
さらに、現行規定におきましては、同時並行的な違反行為に対しましても繰り返し違反に対する割増し算定率が適用されますが、本法案では、繰り返し違反による割増し算定率の適用対象を追加する、今まで申しましたように追加することによって抑止力を高めることと併せまして、最初の課徴金納付命令等が出されるより前に、御指摘のように、同時並行的な違反行為をやめている場合には割増し算定率の適用対象とはしないこととしております。これは、これによりまして、違反事業者が自発的に、より早期に違反行為を取りやめることが一層期待できる、このようなことのため、このような改正を行うということでございます。
このような改正は、いずれも適切な課徴金を課すことにより独占禁止法違反行為の抑止を図るという制度の趣旨に沿うものであるというふうに考えております。
○谷合正明君 自発的に、また早期に違反行為をやめるということで、そういう狙いがあるということで理解をしたところでございます。
さて、その独占禁止法を改正した後におきましては、公正取引委員会によります運用というものが重要になってまいります。過去数年の独占禁止法の運用状況に目を向けますと、二十八年度の課徴金額から二十九年度にがくっと下がって、三十年度も若干また下がっているというふうに聞いております。
この二十九年度から三十一年度の課徴金額の動向など、独占禁止法の運用の状況をまず確認したいということと、一見、この課徴金額が大幅に減少するなど、公取の方のこの執行が低迷しているのではないかという見方もあるのではないかというふうに思うんですね。この課徴金額が減少している理由は何なのか。また、最近の公取の法運用の状況についてどのようにそもそも評価しているのか、この点について併せて確認をさせていただきたいと思います。
○政府参考人(南部利之君) お答えいたします。
法的措置の件数につきまして、平成二十九年から三十一年の三年間ということで御紹介いたしますと、平成二十八年度は十一件、平成二十九年度は十三件、平成三十年度は八件と。また、課徴金額につきましては、それぞれ九十一・四億円、十八・九億円、二・六億円というふうになってございます。平成二十九年度と平成三十年度の課徴金額は、それぞれ、それ以前の年度と比べまして減少しておりますけれども、課徴金の対象になりました法的措置の件数、これ自体は平成二十六年度や平成二十七年度と比べましても相応の件数となっているのではないかと。
また、法的措置には当たりませんけれども、デジタルプラットフォーマー等のIT、デジタル関連分野に積極的に取り組んでおりまして、事業者からの改善措置を講じる旨の申出などを受けて、独占禁止法違反の疑いを解消するものと認めて審査を終了したという事案が平成二十九年度に一件、それから平成三十年度に三件ございました。
このように、公正取引委員会としましては、社会的なニーズに対応して適切な対処をすることにより競争環境の回復を図ってきたところでございます。
○谷合正明君 件数自体はそう変わらないという話と、また今日的な、この社会的な課題に対する公取の対応というものも、デジタルプラットフォーマー等出てきたという話もございました。
そこで、取り扱う事件により金額というものは上下していくものだと、執行が低迷しているというものではないということなんですけれども、しかし、どのような事件を取り上げるかということも公取が決めていると理解しておりまして、法改正、成立後は今までにも増してこの法運用に力を入れてほしいというふうに考えます。
そこで、杉本委員長の方には、改正後のこの独占禁止法の運用に対する決意を伺いたいと思います。
○政府特別補佐人(杉本和行君) 本法案は、事業者による調査協力を促進しまして、適切な課徴金を課すことができるようにするものでございますので、これらにより違反行為の効率的な排除、違反行為に対する抑止力の向上が期待されるところでございます。
公正取引委員会といたしましては、このような本法案の趣旨を踏まえまして、改正法案が成立した場合には、引き続き、迅速かつ実効性のある事件審査を行いまして、独占禁止法違反行為に対して厳正かつ積極的にかつしっかりと対処してまいりたいと考えているところでございます。
○谷合正明君 御答弁ありましたとおり、引き続き独占禁止法違反行為に対してしっかりと取り組んでいただきたいというふうに思っております。
先ほども吉川先生の方からも問題提起がございましたこのデジタルプラットフォーマーへの取組でございますが、やはり最近の公取に関連する報道を見ていますと、このデジタルプラットフォーマーへの取組というもので今一斉調査を進めているということで、委員長自身もいろんなメディアで、いろんなところで発信をされているというふうに聞いております。
このデジタルプラットフォーマー自体は、消費者にとっては身近なものでありますし、私自身も身近でございますし、皆さんにとっても身近なんですけれども、しかも便利なものであるということはもうこれは間違いないんですけれども、他方、様々な問題も出てきているということでございます。知らない間に個人情報がどこかに提供されているですとか、様々海外でも今大きな問題となって取り上げているところでございますけれども。
そもそも公正取引委員会では、このデジタルプラットフォーマーをどのようなものとして捉えていて、どのような課題があると考えているのか、そしてまた、今どのような取組を進めているのかについてお答えいただきたいというふうに思います。
○政府参考人(菅久修一君) お答え申し上げます。
デジタルプラットフォーマーは、革新的なビジネスの担い手といたしまして、事業者による市場へのアクセスの可能性を飛躍的に高め、また消費者に一定の安全、安心な取引の場を提供するなど、事業者、消費者の双方にメリットをもたらしている面もある、このように承知しております。
一方、デジタルプラットフォーマーにおきましては、ネットワーク効果が働くことに加えまして、限界費用が低く、独占化、寡占化につながりやすいといった特徴があると言われております。
自由競争によって実現された地位、これ自体が直ちに問題になるわけではございませんが、そのような地位を濫用する行為などがございますと独占禁止法上問題になり得る、そのように考えているところでございます。
委員御指摘のとおり、公正取引委員会は、本年一月から、デジタルプラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査を行ってきております。
現状、まだ調査中でございますが、第一に、プラットフォームの運営事業者がプラットフォームを利用せざるを得ない利用事業者に対しまして不当な不利益を与えていないかどうか、また第二に、プラットフォームの運営事業者が利用事業者の立場を兼ねる場合、このような場合に競合商品を販売する利用事業者を不当に排除していないか、このような観点からデジタルプラットフォーマーの取引実態を十分に把握いたしまして、今後、独占禁止法、競争政策上の考え方を整理していきたいと、このように考えております。
○谷合正明君 ちょっと関連しますけど、調査を始めているということで、今後は、例えば中間報告なり、どの時点で出していきたいとかいうような、このめどみたいなのはあるんでしょうか。お答えできる範囲で結構ですが。
○政府参考人(菅久修一君) お答え申し上げます。
徹底した調査ということが期待されて進めておりますので、相応の時間は要するかと考えております。
四月に一度、アンケート調査結果などを中間的に公表したものでございますが、今、引き続き、関係事業者からのヒアリングやプラットフォーマー自体へのヒアリング、また意見聴取なども行いながら調査を進めているところでございます。もうしばらく時間を掛けて調査を進めていくことになろうかと考えております。
○谷合正明君 独占禁止法で禁止されておりますこの優越的地位の濫用につきまして、事業者間の取引だけでなくて、関連しますけれども、事業者と消費者の間での取引への適用も検討しているとの話も聞きます。
委員長にお伺いしますけれども、具体的にどのようなことを検討しているのか、説明を求めたいと思います。
○政府特別補佐人(杉本和行君) これまで独占禁止法の優越的地位の濫用規制は事業者間取引のみに適用されておりまして、事業者と消費者の取引について適用された例はないというところでございます。
しかしながら、公正取引委員会としては、デジタルプラットフォーマーと消費者との取引に関して優越的地位の濫用規制を適用することは、独占禁止法を執行していく上で排除されないと考えているところでございます。
デジタルプラットフォーマーがサービスをたとえ無料で提供している場合、例えば検索サービスにいたしましてもSNSサービスにしましても、消費者が無料で検索サービスを利用できますけれども、それに対しまして、消費者はデジタルプラットフォーマーに対して情報を反対給付しているというふうに考えることもできると思います。この情報はまた重要な財でございまして、こういった情報を基に、デジタルプラットフォーマーはターゲット広告を打つというようなビジネスモデルを確立しているんだと思っております。
したがいまして、こうした情報というものは投入財として位置付けられるものでございますので、サービスの対価と見られるということから、デジタルプラットフォーマーと消費者は取引していると見ることが可能であると考えております。情報というものが非常に今重要になっておりますので、そういった取引として認識することが可能であることから独禁法の対象になるものだと私どもは考えてございます。
したがいまして、その適用に当たりましては、デジタルプラットフォーマーの取引上の地位が消費者に優越しているかどうか、デジタルプラットフォーマーが消費者に対して不当に不利益を与えていると言えるかどうか、デジタルプラットフォーマーの行為が競争に悪影響を与えているかどうか、すなわち公正な競争を阻害するおそれがあるかといった点について、個別のケースに応じて判断をしていくことが必要であると考えているところでございます。
これらの論点も含めまして、デジタルプラットフォーマーと消費者との取引に対して優越的地位の濫用規制を適用することにつきまして、基本的な考え方を今整理しているところでございます。
○谷合正明君 消費者にとっても大変関心のあるところでございますので、今のこの調査をしっかりとしていただきたいと思いますし、また、消費者の方にもしっかりとその周知ができるようにしていただきたいというふうに思っております。
さて、独占禁止法違反行為に対して、今回の改正後の法運用、また今答弁のありましたデジタルプラットフォーマーに対する取組に加えまして、それらを支える体制というものも重要になってまいります。
公正取引委員会の体制強化という点について、人員ですとか専門性ですとか、様々な観点があろうかと思いますけれども、この体制強化の重要性、必要性についての見解を問いたいと思います。
○政府特別補佐人(杉本和行君) 本法案により導入されます調査協力減算制度や、その施行に伴い運用を開始することを考えておりますいわゆる秘匿特権への対応に係る制度は初めて導入するものでございます。また、御質問にございましたように、プラットフォーマーについては、独占禁止法に違反する行為があれば厳正に対処するとともに、実態把握のための継続的な実態調査を行っていく必要があると考えているところでございます。
したがいまして、こういったものに対応するためには公正取引委員会にもリソースが必要でございまして、その対応に必要な人員、体制については、各方面の理解を得ながら、その充実に努めてまいりたいと考えているところでございます。
○谷合正明君 消費者の利益の確保ということについて改めて問いたいと思いますけれども、先ほど私もデジタルプラットフォーマーのところで消費者の関心が極めて高いというお話もさせていただきました。そのデジタルプラットフォーマーだけでなく、独占禁止法により消費者の利益が確保されることに鑑みますと、事業者に対する周知活動のみならず、消費者への周知、また消費者からの理解も極めて重要になってまいります。
これら消費者に対する周知活動についてしっかり行っていただきたいと思うんですけれども、どのように行っていくのか、その方針について伺いたいと思います。
○政府参考人(菅久修一君) お答え申し上げます。
御指摘のとおり、公正取引委員会といたしましては、この改正法案成立した場合には、この改正される法律の内容とともに、法運用の考え方につきましても、事業者、消費者に対しまして十分周知していきたいと考えております。
この法案におきましては、一部を除きまして、成立した場合には、公布から一年六か月を超えない範囲内で政令で定める日から施行するとされております。この間に、この施行までの間に、政令、委員会規則、ガイドライン、こうしたものを整備を行いつつ、例えば事業者向けには説明会を開催するなどということを行うことで十分周知活動を行っていきたいと考えておりますし、また、消費者団体との間では、現在でも定期的に意見交換を実施してきております。こうした機会を十分に活用して消費者からの理解も得られるよう、十分な周知活動を対消費者についても行っていきたいというふうに考えております。
○谷合正明君 最後の質問とさせていただきたいと思います。
今、周知の話がございましたが、今回、法改正そのものじゃないんですけれども、弁護士・依頼者間秘匿特権制度の件について取り上げたいと思っております。衆議院の審議でも度々この特権制度について質疑、やり取りされましたが、私の方からこの周知ということについて最後確認したいと思います。
この制度は、諸外国において権利として認められている秘匿特権について、独占禁止法において今後は規則等で整備していくということなんですけれども、この制度については、我が国の事業者に周知するのみならず、海外において日本の独占禁止法にも秘匿特権に相当するものがあると理解させていく必要がございます。それが重要であるというふうに考えています。実際に、ヒアリングをした団体の一部からもこうした声が上がってきてまいりました。
そのため、この制度の海外向けの周知というものをどのように行っていくのかということについてお伺いしたいと思います。
○政府特別補佐人(杉本和行君) お答えさせていただきたいと思います。
お尋ねの制度は、本法案により導入される新たな課徴金減免制度をより機能させる等の観点から、事業者と弁護士との間で行われた通信の内容を記載した物件の取扱いにつきまして、独占禁止法七十六条に基づく規則、指針等により、審査手続の一環として整備しようと考えているものでございます。
この規則等の策定に当たりましては、本制度の導入までに、周知期間も考慮した上でパブリックコメントを実施することを考えております。その際には、英訳したものも示した上で、諸外国を含めて広く意見等を求めることとしたいと考えているところでございます。また、規則等の成案の公表に当たっても、英訳したものも併せて公表することといたしまして、海外にも周知徹底を図りたいと考えているところでございます。
これらの取組によりまして、海外諸国においても本制度の内容が適切に理解されるよう周知を行ってまいりたいと考えているところでございます。
○谷合正明君 以上で質問を終わりますけれども、改めて、今回の改正におきまして、この消費者の利益の確保をしっかりと公取の方でも確保していただくということを要請させていただきまして、私の質問とさせていただきます。
ありがとうございます。