2018年07月30日 2面
厳しい財政事情により、日本の政府開発援助(ODA)予算は20年前のピーク時から約半分に減っている。しかし、ODAの実施主体でもあるNGO(非政府組織)との協力を深化させることで、途上国支援をさらに効果的にすることは可能なはずである。
外務省がこのほどスタートさせたODA有識者懇談会は、日本のNGOを強化するには何が必要か、また、連携はどうあるべきかをテーマに検討を進める。NGOの主体性と専門性を尊重した支援策をまとめてほしい。
日本のODAは、途上国の自立をめざす「自助努力支援」と、恐怖と欠乏から一人一人を守る「人間の安全保障」に基づく援助を重視し、世界から高い評価を得ている。現地の人たちから信頼を勝ち得て初めて達成できる目標であり、友好的な態度でどこにでも入っていくNGOの力を政府は必要としている。
NGOはTシャツ姿で身軽に援助に向かうイメージもある一方で、高度の専門知識と高いコミュニケーション能力、さらに、現地の声を代弁し要望実現のための政策を提言できる力量を持ったメンバーもそろえている。
例えば、感染症対策などの医療支援の場合なら、医師、看護師は当然として医薬品などの調達や輸送を担う後方支援要員、さらに、情報収集をする先遣隊、現地政府や他のNGOとの連絡・調整をする司令塔も必要になる。
優秀な人材をどこまで結集できるかがNGOの勝負所だが、外国の大規模NGOに比べるとまだ課題が多い。
国際医療NGO出身の谷合正明公明党参院議員は昨年3月、国会で「NGOでフィールド経験を積んだ医師も多いが、国内に戻った時にキャリアに支障があるため、長期に出ることをためらうこともある」と訴えた。志の高い専門家をNGOで活躍しやすくするためには、援助の現場で培った経験が社会で正当に評価される仕組みを作ることも必要である。
また、NGOを恒常的に運営するための費用は政府の資金協力の対象外だが、人件費にも使える資金を求める声もある。NGO本位の支援で、NGOが主要な就職先になるような時代を開きたい。