○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について質問をいたします。
年金の受給資格期間の短縮につきましては、四年前の、当時、民主、自民、公明の三党合意に基づく社会保障と税の一体改革の中で決められた施策であります。六十四万人の方々が新たに受給資格を得るということであり、さらにその実施時期について前倒しをするということで、極めて大変重要な法制度であります。
そこで、まず冒頭に確認をさせていただきたいんですけれども、現行制度では受給資格期間が二十五年とされておりますけれども、今日の質疑の中でも二十五年がほかの国に比べて極めて長いとかいろんな指摘があったんですが、そもそも二十五年とされている趣旨というのがどういったものだったのか。また、短縮後これを十年にすると、ほかの国では多分、ほかの国では十年もあるかもしれません、五年の国もあるし様々あるんですが、十年にするとした理由についてまず確認したいと思います。
その上で、本年、この参議院選挙の一つの争点にもなったわけでありますが、消費税率の引上げの時期を延期をするということになりまして、それに伴ってこの受給資格期間の短縮の実施時期も先送りされるのではないかとの懸念があったわけであります。ただ、私たち公明党、ほかの党もあったかもしれませんが、私たち公明党は、無年金者対策の推進のためにはこの施策については前倒しして実施すべきと訴えてきたものでございます。
この受給資格期間の短縮の時期が当初、当初というんでしょうか、二〇一九年十月になるところからこれが前倒しになるということに対しての意義についてまず確認したいと思います。
冒頭申し上げた二十五年の意味と十年の理由と、また前倒しの意義ですね、お願いいたします。
○大臣政務官(馬場成志君) 谷合委員には、常に御指導いただきまして、心から感謝を申し上げます。
そもそも受給資格期間につきましては、国民年金の制度が発足した昭和三十六年当時、まず、厚生年金等の受給資格期間が二十年であったこと、そして、経済状況により保険料納付が困難な方には免除制度が設けられており、低所得者にも受給資格期間が確保されるよう配慮していたこと、そして、ある程度の年金の水準を確保するためには一定の拠出期間を必要としていたことを考慮し二十五年と設定したものと承知をいたしております。
こうした中で、無年金者の問題はかねてより年金制度の課題の一つとして指摘されており、社会保障・税一体改革において、無年金者をできるだけ救済すると同時に、納付した年金保険料を極力給付に結び付ける観点から、諸外国の例も考慮して、受給資格期間を二十五年から十年へ短縮することとしたものであります。これにより年金制度への信頼を高めることにつながるものと考えています。
この期間短縮は、現行の法律上、消費税率の一〇%への引上げ時に行うこととされておりますが、先ほどからお話があっておりますように、消費税の延期を決定する中で、無年金の問題は喫緊の課題であることからできる限り早い実施をすべきと判断し、平成二十九年八月一日施行としたものであります。
以上です。
○谷合正明君 そこで、この法案の効果についてなんですけれども、いろいろ今お話があった中で、効果というか意義の一つとして、年金制度の信頼を高めるというお話もございました。それはそうだと思うんです。その中で、もう少し具体的な効果というところもお尋ねしたいと思っております。
今、皆さんのお手元に参考資料を配付させていただきました。これは十月三十一日に総務省が発表したものでありまして、平成二十六年の全国消費実態調査、所得分布等に関する結果でございます。ここの中に貧困率の数字が出ておりまして、相対的貧困率、子供の相対的貧困率が出ておりますが、この相対的貧困率が前回平成二十一年と比べて〇・二ポイント低下というグラフがありまして、これをもう少しグラフを追ってみますと、相対的貧困率が一九九九年には九・一%だったものが二〇〇四年に九・五%、二〇〇九年に一〇・一%、二〇一四年に減少傾向に転じたということで九・九%、まあ僅かかもしれません。
世帯主の年齢の階級別でいいますと、例えば六十五歳以上でいえば、一九九九年で一五・〇%だったものが二〇一四年で一三・六%となっていると。世帯類型別で見ますと、特に大人一人と子供の世帯ですけれども、六二・七%が四七・七%までこれは改善されているということだと思います。これはこれで、特にこの四年間の経済政策の運営に関して成果が表れているというふうに捉えることもできると思います。
ただ一方で、貧困線というのがありまして、この貧困線の定義は等価可処分所得の中央値の半分の値ということでございまして、これが、一九九九年百五十六万円だったものが二〇〇四年百四十五万円、二〇〇九年百三十五万円、二〇一四年百三十二万円と、これいずれも減少傾向にあり続けるわけでございまして、相対的貧困率とこの貧困線の変動をどのように評価、解釈されるかなと。特に、貧困対策に中心的な役割を担っている厚生労働省としての考えを聞きたいと思っております。
この度の無年金者対策との関連で申し上げますと、この度の無年金者対策によってそもそも貧困率というのが改善していくのだろうかと、本法案のこの効果について併せてお伺いしたいと思います。
○国務大臣(塩崎恭久君) 総務省が実施をしているこの平成二十六年全国消費実態調査、これにおきまして、今御指摘いただいたように相対的貧困率が低下をしていると。その理由として、総務省の分析によりますと、近年の雇用情勢の改善によって若い世代を中心に、低所得者層において勤め先の収入が増加をしているということが考えられるとのことだということを総務省の方は分析をしています。
〔委員長退席、理事島村大君着席〕
また、今御指摘の貧困線が低下をしているということの理由でございますが、高齢化に伴って稼得活動から引退をした高齢者の方が増加をすることによって、世帯の生活水準を表す指標として用いられる等価可処分所得、いわゆる世帯の可処分所得を世帯人数の平方根で割ったものでありますが、これが全体的に減少しまして中央値も下がったことなどが考えられるというふうに聞いているところでございます。
年金の受給資格期間の短縮によって貧困率が改善するかどうかという御質問でございますけれども、補足性の原則を有する生活保護との関係や、貧困線を超える人がどれくらいいるかといったことによるため、一概にはこれ申し上げにくいわけでございますけれども、権利性があって自由に使える年金給付によって高齢期の所得と消費の底上げ効果が期待をされるところでございます。また、受給資格期間短縮に加えて福祉的な給付を行うことによって一層の効果を期待をしているところでございます。
○谷合正明君 高齢者の所得保障については、もちろんこの法案だけで何か全てが解決するなり説明できるものじゃないでしょうし、ただ一方で、こうした本法案であるとか低年金対策など、様々な施策を重層的にしっかりやっていくことによって所得保障を高めていくということが私としては大事なんだろうというふうに思っております。
それで、次の質問に移らせていただきますと、法案の成立した後でありますけれども、新たに六十四万人の方が受給権を得るということで、日本年金機構から送付される年金請求書、これを提出する必要が出てくるということでありまして、年金請求書は返送してもよいわけでありますけれども、実際には年金事務所の窓口に直接伺う方も相当おられるのではないか、そこで窓口の体制強化というのもしっかり進めなきゃならないということだと思うんですね。
今日私が問題提起したいのは、さらにその窓口の方になかなか行けない方々ですね。返送がしっかり事務的に書類申請ばっちりできますよという方、それから窓口に行ける方、そこはいいとして、窓口になかなか足を運べないという方なんですけれども、もし分かればでいいんですけど、六十四万人の方々の中に、これは高齢者の方がほとんどだと思いますけれども、九十歳以上の方々がある程度いらっしゃるんだと思うんですね。私、約二千人というふうに承知しておりますが、もし正確な数字が分かれば教えていただきたいと思います。
で、その年金事務所の窓口までなかなか出向くことが困難な方への対応という、今、九十歳以上の方を数字をお伺いしましたけれども、そういう高齢者の方々に対してのきめ細やかな体制というのが極めて重要ではないかと思っております。コールセンターでの相談体制、これも大事だと思いますし市町村との連携協力というのも大事だと思いますが、こうした点について具体的な取組はどう進めていこうとされているのか、お尋ねしたいと思います。
○政府参考人(伊原和人君) お答え申し上げます。
〔理事島村大君退席、委員長着席〕
まず、最初に御質問のございました、今回の六十四万人の中に九十歳以上の方がどのくらいいらっしゃるかということでございますが、大体二千人ぐらいいるのではないかと我々は見込んでおります。
それから、実際、超御高齢の方で年金事務所の窓口に来られない方がいらっしゃるのではないかという御質問につきましてですけれども、一つは、御家族が代理してやることは当然可能でございます。しかし、やはり身寄りのない方のような方の場合には実際なかなか難しいということもあると思いますので、我々としましては、日頃そういう方が接しておられる介護事業者などがいらっしゃると思います。ケアマネジャーとかそういう方がいらっしゃいますので、そうした方々に御支援をいただいて手続をしていくというようなことも一つの考え方としてあるのではないかと思っておりますので、今後、介護事業者団体などとも御協力いただけるように要請していくとか、そういう工夫もしてまいりたいと思いますし、何より、やっぱり一番身近なのは市町村でございますので、市町村と年金事務所の連携を図りまして、こうした方々への対応もありますし、あるいはその他市町村の窓口に御相談に来られる高齢者もいらっしゃると思います。
そうした方々を、まず相談に乗っていただくことも第一番にやっていただきますし、その後年金事務所に適切に誘導していただくというようなことも考えていかなければいけないと思っておりまして、現在、市町村の方々とどう対応するかいろいろ研究をしております。工夫をして対応してまいりたいと思っております。
○谷合正明君 市町村との連携について今研究されているということでありまして、具体的にやはり対応をお示ししていただくということが安心につながると思います。今、介護事業者の話も出ておりましたけれども、そうしたきめ細やかな対応を、万全な体制をしいていただくよう要請するものでございます。
そして、さらに関連で申し上げますと、日本年金機構から送付される年金請求書を見逃す方、申請を忘れる方、様々いろんな状況が想定されるわけであります。あえて申請しないという方々もいらっしゃるのかもしれませんが、受給を希望しながら何らかの事情で年金請求を忘れてしまう方や、また漏れてしまう、そういった方々に対して更にこれをきめ細やかにアプローチしていただきたい、そう思うんです。そうした請求漏れや請求忘れへの対応についての対策についてお尋ねしたいと思います。
○政府参考人(伊原和人君) まず、我々、六十四万人の方に五回に分けて年金請求書をお送りしたいと思っておりますが、単に個別にお送りするだけではなくて、ホームページもございますし各種媒体もございますので、今回の制度改正とか、こういう方々が対象ですとか、それから先ほどお話がありました空期間の問題とか、そういうこともできるだけ多くの方に知ってもらうべく様々なツールを使ってPRをしたいと思っております。
しかしながら、このお送りした方からなかなか御返事がいただけないというようなことがあった場合につきましては、実際どの程度そういう未送達の方とか返事がない方がいらっしゃるかというようなことも、実際判明した段階で速やかに、どういう形で、もう一度御連絡するかどうかも含めてそういう具体策を検討してまいりたいと、このように考えております。
○谷合正明君 この法案を速やかに可決しなきゃならないわけでございまして、そして、この年内にはそういう手続が始まっていくということ、手続というんですか、いろんな厚労省からの説明、周知広報というのもしていくわけでありますから、しっかり急ピッチにこの辺の対応を進めていただくようにお願いしたいと思います。
それから、後納制度についてお尋ねしたいと思います。
保険料の納付機会の拡大を図るために、平成三十年九月末までは過去五年間分の後納制度が準備されております。将来受給できる年金額は保険料納付済期間に比例いたします。将来の無年金、低年金を防止するためにもこの後納制度の活用を促進する必要があると考えます。一方、平成二十七年九月末まで実施された十年の後納制度については、約二千万件のお知らせを送付して、三年間の利用者は百十八万人でございました。
この利用実績についての認識を伺いたいと思います。この実績を踏まえて現行の五年後納制度の利用をどのように促進するのかの見解を伺いたいと思います。
○大臣政務官(馬場成志君) 十年後納制度については、平成二十四年十月からの三年間の特例として実施されたものであります。
十年後納制度のお知らせを送付した方は、今お話がありましたように約二千万人でありますが、そのうち相談に訪れた方は約百四十万人おられ、その約八割に当たる百十八万人が利用されております。その結果、新たに老齢基礎年金の受給権に結び付いた方が約三万人、ほかに、既に老齢基礎年金を受給されていて増額に至った方が約一万人おられます。また、これからこの効果が出てくる方はまた別途現役の方々にいらっしゃるというふうに思っております。一定の効果があったというふうに認識をしておるところです。
一方、平成三十年九月末までの特例として設けている保険料の五年後納制度についても、今回の受給資格期間の短縮により受給権を得やすくなることを踏まえ、日本年金機構ホームページや政府広報等を通じ、さらには、先ほどから議論があっておりますように、より一層の周知広報を行ってまいりたいと存じます。
○谷合正明君 百十八万人の利用者で、これは、本当はもう少し想定していたんじゃないかなと思われるわけでありまして、その辺も踏まえますと、五年後納制度の利用を更に促進していただきたいというふうに思っているわけであります。
二十五年を十年に短縮するということで、いろいろ周知広報を徹底してくれという話をしておりますけれども、何というんですかね、高齢者を狙った詐欺についてもちょっと警戒しなきゃならないなと思っております。
不正アクセスによる年金情報流出の事案のときも、実は高齢者を狙った詐欺、振り込め詐欺が実際にあったというふうに聞いておりまして、今回の無年金者対策を悪用されるケースというんですかね、そういったことも想定しておかなきゃいけないというふうに思っておりまして、例えば、日本年金機構から直接対象者の方に電話が行くのか行かないのかとか、結構そういったこともちょっと知っておかなきゃいけないと思うんですね。
こういった高齢者への詐欺の対策というのも併せて徹底していただきたいと思いますが、どうでしょうか。
○政府参考人(伊原和人君) お答え申し上げます。
今回の受給資格期間の短縮につきましては、御本人へ年金請求書をお送りいたしましてお手続をいただくこととしております。したがいまして、御本人から年金請求書を提出いただかない限り、年金機構の方から電話で御連絡することは一切ありません。それから、年金請求書を出していただいた後、例えば電話で振り込み先を教えてくださいとか、そういうことをすることも一切ありません。
したがいまして、こういう取扱いにつきましては、ホームページやあるいは市町村の広報、そうした形で周知いたしまして、詐欺への注意喚起というものをしっかりやっていきたいと、このように考えております。
○谷合正明君 終わります。どうもありがとうございました。