公明党の考え方を本日午前国会内で会見しました。
以下、全文を掲載します。
「性的指向と性自認に関する立法(いわゆる性的マイノリティ法案)」と「性同一性障害特例法」についてのわが党の基本的な考え方
公明党 政務調査会 性的指向と性自認に関するPT
1.はじめに
2011年6月、国連人権理事会は、性的指向と性自認に基づく人権侵害に明確に焦点をあてた初めての決議を採択した。我が国も賛同した当決議は、人権の普遍性を再確認し、性的指向や性自認を理由に人々が受けている人権侵害に対し重大な懸念を示したものである。
性的指向および性自認に関わる当事者が直面する課題は、学校や職場、社会生活等多岐にわたっている。2015年8月、オリンピック憲章に性的指向に関する項目が明記され、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを前に、日本でも国際的な人権問題として議論し、法整備も含め検討していく必要がある。
性的指向や性自認に関する多様性を尊重していくことは、誰もが活躍できる「一億総活躍社会」の基本的考え方や、「誰一人置き去りにしない」という「持続可能な開発目標(SDGs)」の基本理念に通ずるものである。
2.議論の経過
超党派議連「LGBTに関する課題を考える議員連盟」は、立法検討ワーキングチームを設置し、民進党(当時、民主党)が昨年末に作成した法案骨子(差別解消法)をたたき台に議論してきた。
自民党「性的指向・性自認に関する特命委員会」は、「国民の理解促進に関する党の基本方針」をまとめ、それに基づく自民党案(理解増進法)が合同部会で了承された。
3.基本的な考え方
わが党として、2012年4月に設置された「性同一性障害に関するPT」で検討してきた同障害に関する課題に加え、性的マイノリティ全般の課題も検討していくため、当「性的指向と性自認に関するPT」として2月に改組し、これまで当事者や有識者からのヒアリングを行うとともに、議連の議論にも参加してきた。
PTとしては、「性的指向・性自認の多様性が尊重され、これを理由とする差別のない社会を目指す」との認識に基づき、性的指向と性自認に関する、いわゆる性的マイノリティのための法律(議員立法)を整備する必要があると考える。上記2法案が発表されていることを踏まえ、以下、わが党の基本的な考え方をとりまとめるものである。
- 人権侵害を抑制するため、性的指向と性自認に関する法制について成案を得ることは喫緊の課題であり、与党として調整の上コンセンサスを得ることが望ましい
○ 性的指向・性自認の多様なあり方について、社会の理解が進んでいるとは言えず、差別解消についての法制化は時期尚早である。性の多様性を尊重し、性的マイノリティへの理解の促進をはかる法整備を進めることが現実的であり、差別解消に向けた漸進的な方策と考える
○ 当事者を取り巻く社会的環境の変化や、2020年東京オリンピック・パラリンピックを控え国際的な動向にも注視し、法律に時期を定めた見直し規定を盛り込む
○ 関係省庁、地方自治体が連携し、当事者の声を踏まえ、学校・職場・社会生活等における困難の実態把握、合理的配慮のための環境整備、教育啓発、相談体制の整備につとめる
○ 性同一性障害特例法に関しては、平成20年以降改正されておらず、懸案である「現に未成年の子がいないこと(子なし要件)」「手術要件」などについて早期に見直しを検討する
○ 性同一性障害の方々への施策として、性別適合手術の保険適用化や安心して使えるトイレの普及など、医療や職場、学校などで抱える困難について、政府は実態把握を行い、合理的配慮につとめるべきである
○ 教育現場においても、「自殺総合対策大綱」(※1)、「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について(教職員向け手引き)」(28年4月)、G7教育大臣会合「倉敷宣言」(※2)を基に、教職員の理解を促進するとともに、いじめ防止対策の推進、多様性が尊重される教育環境の実現につとめること
※1 自殺総合対策大綱(24年8月)・・・「自殺念慮の割合等が高いことが指摘されている性的マイノリティについて、無理解や偏見等がその背景にある社会的要因の一つであると捉えて、教職員の理解を促進する」
※2 G7教育大臣会合「倉敷宣言」(28年5月)・・・「困難な状況にいる子供や若者(性的指向や性自認を理由とした差別に苦しんでいる子供など)がさらされやすい排他や疎外、格差や不平等の解消が喫緊の課題であることを認識する。個別性や多様性が尊重され、すべての子供や若者が自らの可能性や長所を最大限に活かすことができるような教育環境を実現する」