5月12日に谷合正明参議院議員がパネリストとして参加した、フォーラム「働き方改革!もう一度考えよう男性の育休のすべて」のパネルディスカッションの模様がマイナビニュース記事で紹介されましたので、以下転載致します。
【レポート】 普通の男性会社員が育休を取得してみてわかったこと 横山茉紀
父親の子育てを支援しているNPO法人ファザーリング・ジャパンはこのほど、男性の育児休業取得に関するパネルディスカッションを開催。実際に育休を取得した男性や、夫が取得したという女性などが参加し、意見を交わした。
育休を取得した男性らがパネルディスカッションに参加
妻のイライラの理由がわかった
――男性の育休取得にはどのようなメリットがありますか。
3度育休を取得した安田修吾さん
安田修吾さん(妻、2人の娘の4人家族。2011年、2015年、2016年に育休を取得):
メリットというとすごくたくさんあると思いますが、妻と育児に関する共通の話題ができることが大きいと思います。また、妻が育児でなぜイライラしてしまうのかというのが、育休を取得して初めてわかりました。
育児・家事については、1人目の子どものための育休でスキルを身につけられたと感じています。ですので2人目の時にはたんたんとこなせるようになりました。
育休を取得して仕事から離れてみると、社会と断絶してしまうので、社会とのつながりを求めたくなります。仕事への愛着がわき、職場に復帰したとき「居場所があったんだ」と妙な安心感もありましたね。
3人の子どもの父親 塚越学さん
塚越学さん(妻、3人の息子の5人家族で育休取得経験あり):
2回目の育休で育児・家事が大体できるようになったので、3人目に8カ月の育休を取得したときに一番気をつけたのは、育児・家事以外のことがどれだけできるかということです。結果として効率化を進めると、NPOの活動に参加できたり、重要なミーティングにも子どもと参加できたりして、「いろんなチャレンジをしながら仕事ができる」とわかりました。
――男性の育休取得は女性のキャリアにとってもいい影響がありますよね。
安田さん: 妻の会社では、産休・育休を取得したあとに職場復帰しなかった例が過去にありました。ですから、産休・育休を取得することで、仕事に対してのやる気がないと思われることを警戒していたんですね。そこで私が育休を取って、妻は1年を待たずして職場復帰しました。職場への配慮を妻なりにかなりしたのではないかと思います。
――メリットがあるとは言え、なかなか取得が難しい状況もあります。どうして取得できたのでしょうか。
育休を取得した夫を持つ奥野依理子さん
奥野依理子さん(2012年に第1子を出産。夫は2週間の育休を取得):
育児を親に頼めないという切羽詰まった状況があったのと、夫が育児に関わりたいという意志を持ってくれていたのが大きかったと思います。育児を目的として有給休暇を取るのではなく、自分の意思で育児休業を取得してくれました。
夫は当時管理職であったので、自分が有給休暇を取ってしまうことで「部下も同じことをしてしまう」と思ったようです。また「育児のために休む」というアピールをしたかったとのことでした。育休を取得したことで、夫の働き方は変わりました。今までは2日間に1回しか家に帰らないような生活をしていましたが、仕事の調整をしてみて「やれば(長時間労働を改善することが)できる」と気づいたからです。
私は今まで「女性は子育てと夫に尽くし、家のことを完璧にやるべき」という古い価値観を持っていました。しかし今は、女性だけがそれを担うというのは難しいです。よくよく考えてみると、2人からうまれた子どもだから子育ても半分ずつしたらいいと思うようになりました。ですので、子どもがうまれる前から、「一緒にがんばっていこう」という機運を高めた上で、子育てがスタートできたらいいのではないでしょうか。
業務改善を進めなければ、取得は進まない
――企業の取り組みとしてはどうでしょうか。
イクボスとしても活躍する伊藤秀樹さん
伊藤秀樹さん(ダイエー執行役員。2015年に役員として初めて育休を取得した。部下のワークライフバランスを考える上司・イクボスとしても活躍):
ビジネスマンなので、仕事に穴を開けるのは許されないと考えると、業務改善を進めたり、仕事の属人化を排除したりができなければ、「育休を取得したくても言い出せない」という状況は続くと思っています。
加えて制度をしっかりと整えた上で、雰囲気を醸成することも必要。私の部署では、子どもの年間行事予定を一覧にして全員が持っています。そうすると、みんなの意識が変わっていく。残念ながらこの取り組みが育休取得率のアップにはまだつながっていませんが、このようなことが大事なポイントになるのではないでしょうか。
――政策としてはどうですか。
イクメン議連の共同座長として活動している谷合正明さん
谷合正明さん(参議院議員。超党派イクメン議連共同座長):
民間が取り組みを進めている中で、育休取得の裾野を広げていくためには制度としての後押しが必要です。育休を取得したいという男性が30%いると言われている中で、実際の取得率は2%ほどにとどまっているというギャップを埋めるためにどうするか。育休を父親に義務的に割り当てるクオーター制、育休中の休業補償を100%にすること、法改正をして有給休暇の取得日数を増やすことなどを視野にいれないといけないと考えています。
育休を通して考えたこと
奥野さん: 夫が育休を取得したことで一番感じたのは、何と言っても楽だということです。自分の知らない人に産後サポートを頼むのか、血はつながっているけれど普段共に生活していない親族に頼むのか、血はつながっていないけれどこれから一緒に家族を作り、イライラもぶつけられるパートナーに頼むのか。精神的に楽なのはやはりパートナーです。ここに遠慮しなくていいと思います。
さらに、子どもとママがいかに密接にいざるを得ないのか、それをパパに知ってもらえたというのが一番大きかったですね。その期間に働き方の考え方を改めてくれたこともよかったです。
安田さん: 育休はできれば1カ月くらい取得してほしいと思います。なぜならば、そうでないと子育てと家事を1人でまわす「ワンオペ」ができないからです。お互いワンオペのスキルを持っていれば、職場で不測の事態が起きても、信頼して子育て・家事を任せることができ、落ち着いて仕事をこなすことができます。また、育休を取得したことで、職場で子育てをしているということを知ってもらえるのも大きなメリットだと思っています。
伊藤さん: 残業が多い、有給休暇を取らない、休日出勤・深夜勤務をする。この手の人は育休を取りません。そしてこのような人に共通しているのは、自分の仕事にやたらと誇りを持っていて、自分の仕事の代わりができる人はいないと思っているという点です。ここを丁寧に「大いなる間違いだよ」と伝えていくことが一番大切だと思っています。
(2016年5月20日横山茉紀 マイナビニュースより転載)