【No.173 2015年7月7日】
《 NGO経験者からみる「駆けつけ警護」 》
皆さん、こんにちは。谷合正明です。
国会の会期が過去最長延長され、9月27日までとなりました。
公明党は、平和安全法制について、その必要性や意義、憲法適合性、歯止めについて、十分審議を尽くし、国民の理解を深め、合意を得る努力をしてまいります。
今回の法制は、憲法9条のもとでの自衛の措置の限界を法案にしたものであり、従来の専守防衛政策は一切変わっていません。
自衛の措置以外には、自衛隊による国際協力や後方支援の任務拡大が法案に盛り込まれています。
このうち国際平和協力法(PKO協力法)改正について、ひとつエピソードを紹介します。
今から20年近く前、アフリカのルワンダ難民支援に、かつて私が所属していたAMDA(アジア医師連絡協議会)が医療スタッフを派遣しました。
活動中、AMDAの日本人スタッフが難民キャンプで群衆に取り囲まれ、使用していたトラックが奪われる事案が発生しました。
この時、AMDAからの救援要請に基づき、近傍で活動していた自衛隊(自動小銃を携行)は、そのスタッフ達を保護し、自衛隊車両で宿舎まで運びました。
しかし、PKO協力法に基づく自衛隊の活動には、いわゆる「駆けつけ警護」は、憲法9条で禁止する武力の行使につながりかねないとして、任務には入っていませんでした。
実際、当時のマスコミは、「自衛隊による邦人の救出は任務に入っておらず議論を呼ぶ」と報道。政府は、「救出」ではなく「輸送業務」と位置付けざるを得ませんでした。
国際社会の平和と安全のために、ぜい弱国家など治安の悪い地域では、UNHCRなどの国連機関、AMDAのようなNGO(民間の非営利組織)に加え、国連PKOなどの軍事組織が、それぞれ能力を生かしながら、医療支援、住民保護やインフラ整備活動などを展開しています。実際、私は内戦中の国で、医療支援活動をおこなっていました。
今後、PKOに派遣された自衛隊が、危険に遭遇している活動の関係者から、結果として救援の要請を受ける場合もあります。
駆けつけ警護に伴う武器使用と憲法の整合性についても、これまでの自衛隊のPKOの実績と、また停戦合意などのPKO参加5原則から、武力行使に至ることはないと政府は整理しました。
そこでこの度、平和安全法制の一つであるPKO法改正案には、要請に基づく駆けつけ警護が盛り込まれたところです。私も当然必要だと考えます。憲法9条に違反するとして反対を表明している団体もありますが、自衛隊が参加するPKOの現場の実情を訴え、理解を求めてまいります。
ただし、NGOが自衛隊に「駆けつけ警護」で救助されることをはじめから期待して危険地域に行くことはありません。一般にNGOは、人道性、不偏性、中立性を重んじて、活動しています。そのことは派遣される自衛隊員もよく知っています。
そこを政府が十分に理解せず、あたかもNGO側がかけつけ警護を法的にできるように要望しているかのように説明することに、反発もあります。
政府は、関係するNGO側に、今回の法整備を十分に説明する必要があります。合わせて、国際社会の平和と安全に関して、民間と自衛隊の役割についても整理しつつ、外交・安全保障政策の全体を俯瞰して、自衛隊による国際協力や後方支援を説明すべきです。
(谷あい)