○谷合正明君 公明党の谷合です。
今日は、三人の参考人の皆様におかれましては、高い学術的見地から御意見を述べていただきました。大変参考になりました。
今日は、国の統治機構における調査会の中で、特に小テーマというんですか、サブテーマとして中央省庁等改革、そして独立行政法人制度ということで設定もしておりますので、私の方からその点について参考人の方にお伺いしたいと思っております。
最初に、やはり内閣官房、内閣府の業務についてなんですが、これは今年の二月の衆議院の予算委員会でありますが、菅官房長官の答弁なんですが、府省横断的な仕事、課題が多くなっている、内閣府、内閣官房に仕事量が集中しているというふうに述べられた上で、処理が終わった部分はそれぞれの省庁に戻していくことが必要だというような、そこら辺まで具体的に、具体的なのかどうか分かりませんが、答弁をされております。
この点については、昨年の秋に国家公務員制度改革を与党で、自公でワーキングチームで議論をしているときに、総理に申入れをする際にも、一言、この内閣官房、内閣府の仕事についての整理が必要ではないかということも提言の中に盛り込ませていただいたところでございます。
まず、中島参考人にお伺いしたいと思います。
今日、レジュメの中に五つの黒ポツがありまして、そのうち触れられていない内閣官房の総合調整機能を担う事務体制が十分でないことといったところもありますので、改めてこの中央省庁等改革の評価というんでしょうか、についてどのように思っていらっしゃるのかということと、今申し上げた、特に内閣官房、内閣府の現状についての参考人が今後こうあるべきじゃないかというものの御意見があれば教えていただきたいと。
同じこのテーマで只野参考人に、もし今日のテーマに即した中央省庁等の二〇〇一年から行われてきている改革についての只野参考人の今日の評価というものがあれば聞かせていただきたいと思います。
○会長(武見敬三君) では、まず中島参考人、どうぞ。
○参考人(中島忠能君) 中央省庁再編というのは、当時としては大変な大事業だと思います。橋本龍太郎先生が大変な努力をしてああいう案をお作りになって実現したわけですけれども。私は個人的に橋本龍太郎先生と非常に親しかったものですから、よく麹町の事務所にも遊びに行って先生とお話ししたんですけれども、今度の中央省庁大編成というのは政治主導というものを諦めて官僚主導というものを狙ってつくったように見えますよということを言ったことがあるんですよ。
結局どういうことかというと、あれだけ大きな省庁をつくって、文部科学省もそうですけれども、厚生労働省もそうです、国土交通省もそうなんですけれども、あれだけ大きな省庁をつくっちゃうと、一年そこそこで交代するような大臣が主導権を握れるはずがないと。
だから、やっぱり大臣になればその省庁の幹部公務員を叱咤激励して自分の政治理念を実現していくような仕事をしたいでしょうから、それができるような規模のものにした方がいいんじゃないですかということを橋本先生に言ったら、橋本先生は違うことを考えておられたようですけれども。やっぱり一番あのとき言われておったのは、政治主導というものをとにかく与野党共に実現していきたいという思いがあったんでしょうから、それからいうとやっぱり逆だということを申し上げたことがあります。今でもそう思っています。だから、私の評価はと言われれば、あれはもうとにかく諦めてもう一度考え直した方がいいというのが私の結論です。
それから、内閣官房とか内閣府の話ですけれども、これは内閣法というものを読むと、いずれにしても、官庁間の権限について疑義があるときには閣議にかけて総理大臣が裁定する、あるいは、複数の省庁にまたがるような仕事についての総合調整は内閣官房でやるとかということが書いてあるけれども、その規定で総理大臣とか官房長官が直に仕事をするはずがないんですね。その粗ごなしをするところが必要なんです、セクションが必要なんですよ。だから、粗ごなしをするセクションはどこかにあるのかということを見ても、どこにもないわけですよね。しかし、それを内閣官房に電話をして聞いてみると、いや、官房副長官補が担当ですというようなことを言うから、その程度のものなら大した仕事はできないですよ。
やはり、本格的に内閣官房で総合調整をする、本格的に内閣官房で各省の権限争いについて一定の方向を出すというんなら、しっかりした組織で、そしてそのトップは非常に有能な力のある国会議員を大臣に据えてやらなきゃ駄目ですね。それをやると、私は内閣府とか内閣官房の仕事というものはうんと整理できると思いますね。それをやらずに、とにかく各省に引き取れと言っても、各省は今と同じようなことを言うと思いますよ。やはりこれは、もう引き取っても、どうしても各省間で話がまとまらないときにはあそこへ持っていけばきちんとした裁定をしてくれるんだという安心感がなかったら、各省はやっぱり引き受けないと思いますね。
○会長(武見敬三君) 只野参考人、どうぞ。
○参考人(只野雅人君) なかなかお答えが難しいところがございますけれども、中央省庁等改革の一つの理念が、今お話にありましたように、やはり政治の中心性をどうつくるかといいましょうか、政治主導の体制をどうつくるかというところにあったように思います。
ただ、やはりなかなか実際に動かしてみると難しいところがあったのかなと多々思うところがありまして、今日はお話しいたしませんでしたけれども、例えば政治家を官庁のトップに送り込むといいましょうか、大臣政務官とか副大臣なんかをつくるんだというふうなことが言われたりして実行もされているんですけれども、なかなかやはり思うようにいかない。
今お話があったように、組織が大きいというところも確かにあるのかなというふうに思いますけれども、今日のお話との関係でいいますと、やはり国会を含めて全体で政治主導の仕組みを動かしていくということが必要なのかなというのはすごく感じるところでございます。
政治主導の一つのイメージというのが、内閣が政の部分を引き受けて官を使いこなしていくと、こういうことであったかと思いますけれども、やはりどうしてもそれだけでは限界があるんではないかと。例えば国会が、統制という言葉をさっき使いましたけれども、機能の中でそれを一部引き受けていくというふうな役割分担があってもよいのかなと、こんな感じもしております。
ですから、内閣だけで全てを担うということになかなかやはり限界はあるんじゃないだろうかと。統治機構全体の問題として政治主導をどうつくっていくかということを考えていく必要があるんではないだろうかと。ちょっと大ざっぱなお話でございますけれども、こんなふうに考えている次第でございます。
○谷合正明君 よく分かりました。
それで、更に中央省庁等改革の特に内閣官房だとか内閣府の話をしていきたいんですが、中島参考人からは、あれは考え直した方がいいというところまで言われてしまったものですから、なかなか次の質問難しいんですけれども。
今日的な課題と、私自身も政治家をしている上で、どうしてもこの省庁間、どの省の問題なのかよく分からない部分が結構多い、そういうことがやはり政治的な今日的な課題というのが多いんだなというふうに思っていまして、私自身も例えば議員立法を作る際に、いや、これはもう最初から内閣府の所管にするべきだとかいうふうに思っていたところなんですが、ただ、そもそも二〇〇一年の改革では省庁の大くくり再編成をして、縦割り行政の弊害を排除していくために大くくり編成をしていたと。それでもなおどこの省庁に行くか分からない部分については、省間連携をしっかりすることによって、何というか、例えばどこどこの役所は、私どもはこれは所管でありませんよとすぐに突き放すんじゃなくて、まずは省間調整システムの整備をしていくということが当初の狙いであったんだと思います。
ところが、なかなかその省間調整システムも整備されていない。その省間調整を担うところがなかなかリーダーシップを発揮していないのかもしれませんが、ですから、もう少し、今後ですけれども、具体的にこの省庁間連携をしっかり機能させていくことが重要ではないかと思うんですが、この点について中島参考人。それから、牧原参考人におかれましても、先ほども内閣官房と内閣府についてそれぞれこうあるべきだというふうな言及もされましたので、同じ質問をさせていただきたいと思います。お二人の参考人にお伺いします。
○会長(武見敬三君) では、まず中島参考人、どうぞ。
○参考人(中島忠能君) おっしゃるように、省庁間連携というものが非常に重要だし、お互いに相手の意見をよく聞いて、譲歩するところは譲歩するという、そういう心構えは必要だと思います。
ただ、セクショナリズムという言葉は、私はちょっと誤解されているんじゃないかと思う。公務員としての経験から申し上げますと、セクショナリズムとしてあれは悪いというようなことも、確かに良くないことはあると思うんです。ただ、どこの省庁も法律に基づいて仕事をしているわけですから、その仕事というものを一生懸命考えて一生懸命主張すると対立すると。対立してとにかくにっちもさっちもいかなくなると役人はセクショナリズムだから駄目だと、こういう話になるんですけれども、それは僕はできるだけとにかくしっかり主張させればいいと思っておるんですよ。主張させて、それを聞いて判断するセクションがあるかどうかということが重要だと思うんです。
だから、省庁間で一生懸命にそれぞれの立場を議論して主張させる。主張させて、それをよく聞いて、それを判断するシステムさえつくれば私はいいと。いずれにしても、政策上の対立ですから政策上の判断で片付けた方がいいと思うんですね。人事で片付けるとか、そういうことは最後の手だと思うんですね。やっぱり政策の面で対立しているんなら政策の面で説得して片付けちゃうと。その片付けするセクションがあるかどうかということが重要だというふうに思います。
○会長(武見敬三君) 牧原参考人、どうぞ。
○参考人(牧原出君) 各省の省間調整システム、これも、二〇〇一年の省庁再編の際にはそれもデザインするということでいろいろな準備が当時なされたわけでありまして、例えばBSEの問題などで、外部から見ていても、当時、農水省と厚生労働省との間でもかなり連携で処理していったというようなこともあったように見受けております。
ただ、実際に問題を処理するときに、やはりどの省に落としていいか分からないということのもとにあるのは、やはり設置法という規定の在り方が元々非常に強い権限を各省に定めてその中で仕事をするということがあったわけですね。これは徐々に緩んでいるんですけれども、やはり各省がイニシアチブを取って、ほかの省に対しても、何といいますか、積極的に調整をして、そこで解決するという仕組みをより活性化させるのであれば、やはり設置法において各省の権限の範囲を厳然と定めるということをもっと緩やかにしていく必要があるのではないかと考えます。
そしてもう一つは、官僚同士の調整だけではなくて、やはり大臣政務官、副大臣といった政務三役の調整も非常に重要ですので、そうなると今度は、元々イギリスのモデルがそうですけれども、ミニスターとジュニアミニスター、彼らのチームというのは非常に強固ですので、やはり内閣を組織するときに大臣、副大臣、大臣政務官が非常に強いチームをつくると。しかも同じ与党ですから、それがほかの省の大臣、チームとも密接に連携をして問題を処理するような、そういうやはり強い組織力というものを政策において与党の側も構築していくということも併せて必要であろうと考えております。
○谷合正明君 どうもありがとうございます。時間になりましたから終わります。