○谷合正明君 公明党の谷合です。
今日は、石原参考人におかれましては、大変貴重な御意見を賜りましてありがとうございます。
私の方からは、まず、閣議並びに閣僚懇談会、この議事録がこの四月一日から作成、公表されるということについてお尋ねしたいと思います。
私も、閣議、中に入ったことはございませんので、どういう議論をされているのかというのは全く分からないわけでありますが、この議事録がこれまで作成されてこなかったと、明治の内閣制度が発足されて以来、作成されてこなかったわけでありますが、今回の決定につきましては、内閣の最高の意思決定の場である閣議の透明性の向上であるとか、あるいは情報公開、そして内閣の意思決定過程の国民への説明責任というような観点で、私は、また私ども会派といたしましては画期的なことだと評価をしております。
そこで、まず、この度の閣議並びに閣僚懇談会の議事録作成、公表の決定についてどのように評価をなされていらっしゃるのかという点と、あと、参考人は、先ほど風間委員からも御紹介があった御厨先生とのインタビュー記事の本の中にも閣議の中身について触れられている部分がございました。
それを引用いたしますと、閣議の中で問題があった場合には、官房長官は各閣僚に対して、この場限りにして外に出さないようにと言う場合があると。それはそのとき限りの、それぞれの閣僚なり総理の記憶、私たちの記憶、非常に重要な問題は私はよく覚えていますけれども、記録として残すことはしないと、各省を拘束するようなものは案件としてちゃんと残りますからというような一文がありました。
そこで、この度公開されるに当たって、情報公開という観点でまだ課題となるようなものがあるのかと、この点についてお伺いしたいと思います。
○参考人(石原信雄君) 私が在職中も、閣議の議事録というものを作っていないのかというお尋ねを受けたことは何回かあります。しかし、伝統的にこれは議事録は作っていないということを申し上げてきたんですが、ただ、誤解があってはいけませんけれども、閣議で審議されて答えを出したもの、結論を出したものは全て記録が残っております、政令にしても法律案にしても、それとか条約にしても。要するに、閣議で、閣議としての意思決定になったものは全て記録としては残っております。
問題は、閣議の過程で閣僚の発言、どういう発言があったかということですけれども、今引用されたように、これまでは閣議の模様は官房長官が閣議後の記者会見で発表しております。その際に、官房長官の判断で閣議の発言の中で記者会見で述べた方がいいと思うものは述べていると、必要なものは述べていると、しかしそれ以外のことは控えているということ、取捨選択を官房長官の判断でやってきたというのが実態であります。
しからば、今回、政府は閣議の議事録を作成して公表するという方針に踏み切られたようでありますけれども、それは確かに、情報公開といいましょうか、閣議の場でどういう議論が行われているかということを国民が知るということは大変それなりの意義があることであろうと思います。
ただ、私の経験から申しますと、公表されるという前提になりますと、閣僚の発言がかなり限定されるんじゃないかと。というのは、従来の閣議では公表されないということがあったものですから、比較的フリーというんですか、国政万般についていろんな発言がありました。しかし、その中には官房長官が発表するものもあるし、しないものもあると。そういう意味で、官房長官が政府全体の立場で取捨選択して発表しておったわけですけれども、今後公表されるということになると、全ての閣僚が自分の発言が公表されるという前提で発言するようになるという、そういう意味での閣議の雰囲気というか模様は変わってくるのではないかなというふうに思います。
○谷合正明君 率直な御意見、ありがとうございます。
むしろ、閣議に至るまでのこのプロセスを今後どう、知る権利との関係でどこまで情報公開できるかということだと思うんですが、まず第一回目がスタートすると。第一回目のその閣議の議事録の公表は、今回の防衛装備品の移転三原則というのがまず第一号として公表されるということでございますので、今後とも、我々としてもこの公表について、この在り方については更により良いものとなるように検討してまいりたいと思います。
次の質問ですけれども、非常時、例えば震災等の非常時における内閣の機能について質問をさせていただきたいと思います。
参考人は、村山内閣のときに阪神・淡路大震災を経験されております。当時の危機管理体制を振り返っておられまして、特に情報管理体制、情報伝達体制が弱かったというふうに指摘をされております。
三年前、東日本大震災また原子力発電事故がございました。このときも、初動が不十分ではないのか、時の総理の個人プレーが目立ったというような御指摘も参考人からあったように伺っております。そして、そうしたことを踏まえて、最近、政府に強い権限を与える国家緊急権の創設を求める意見もあります。
一方で、総理大臣が命令を出して速やかな復旧を図るというのは今ある法律でもほとんど可能である、ですから別に新しい法律を作らなくてもいいんじゃないかという議論もあるんですね。
今後、南海トラフ、首都直下型地震が想定される中で、我々としては、この非常事態において十分機能する内閣というのをつくっていかなきゃいけないんだと思いますが、東日本大震災のときに参考人はどのようにこの内閣の機能を見ていらっしゃったのかと。不十分であったとすれば、それは憲法に問題があったのか、法律に問題があったのか、あるいは運用に問題があったのか、あるいは属人的な問題だったのかと、そのような論点があろうかと思いますが、御意見を賜りたいと思います。
○参考人(石原信雄君) まず、大災害の発生等の非常事態に備えて内閣はどう対応するかということですが、私は阪神大震災を経験したわけですけれども、それまでも伊勢湾台風だとか、災害は常に起こっております。災害のたびに、それを参考にしながらいろいろな特別立法を含めて立法が行われておりますが、それでも新しい事態になるとやはり足りないということで、更に立法措置を講ずるということがあります。
私は、どんなに考えてやっても、大きな災害への対応もその都度変わってきますから、どんなに考えてもあらかじめ準備した法律で万全ということはなかなかないんじゃないかと。そうすると、一応の想定された事態に対する対策はつくっておく必要がありますが、それを超える問題が起こるということを常に考えておかないかぬ。そのときはどうするかということですが、私は、その場合は、内閣の最高責任者である総理大臣あるいは内閣に当面の対応を認めて、それを後で追認するということが必要になってくるんじゃないかというふうに思います。
阪神大震災のときも、情報伝達の問題について申しますと、実は当時も、伊勢湾台風のときの状況など参考にしながら防災無線というものを準備しておったんですが、その防災無線が地震で倒れちゃったわけですね、兵庫の。そのために震災発生直後、情報が内閣に入ってこないわけです。それで、後で警察電話なり消防の電話なりでだんだん全貌が分かってきたんですけれども。今、情報伝達手段もかなり機能的にいいものができているそうですけれども、やはり状況把握を正確に行う、なるべく早く把握する体制を整備するというのが一番基本だと思います。
それから、その後の内閣の対応ですけれども、私は、阪神大震災のときと今回の東日本大震災と両方見て、やはり緊急体制をつくるときは総理大臣を中心に極めて小人数の人で意思決定できるような仕組みが必要ではないかと。大勢の人が集まって議論するというと、どうしても結論が遅れます。
それから、責任体制を明確にすると。どういう分野については誰が最高責任者になるかということを明確にしておくということが大切なんではないかなという感じを持ちました。
特に、今回は、東日本大震災では、原子力発電所の災害について、外から見ていますと、最終責任者が総理なのか特命大臣なのか経済産業大臣なのか、そこのところがちょっと曖昧だったような気がいたします。ああいう大災害のときには案件ごとに責任者をはっきり初めから決めておくと、それを内閣全体がその責任者をバックアップするということが必要なんではないかなと思います。
○谷合正明君 ありがとうございます。
そうした非常時に十分に機能する統治機構というのをつくっていかなきゃならないということだと思いますが、非常時に適切に対応するためには、つまり、通常時においても統治機構が円滑に機能するように仕組んでいかなきゃならないんだと思っております。
これは、私も前回の調査会でも訴えたところではありますが、強い内閣をつくっていくと同時に国会の方も機能を強化していかなきゃならないんだろうと。強い内閣と強い国会を同時に目指すべきではないかと。
そこで、これはこの調査会の来週のテーマにもなるんですが、二院制において参議院の役割というのは常にいわゆる監視機能だとよく言われております。この参議院の行政監視機能の強化というのがこれからもますます重要になってくるんだと思います。
そもそも、この国の統治機構を考える調査会自体が衆議院にはなくて参議院にあるということだと思っておりまして、参考人が実際に長くこの政権の中で歴代の内閣を支えてこられたときに、この参議院の役割ということについて、何か御所見なり具体的な御提案みたいなことがあれば御教示いただきたいと思っております。
○参考人(石原信雄君) 衆議院と参議院の役割分担あるいは機能というか、それはどうなのかとしょっちゅう議論されるのを聞いております。私も、まあ政府の中におったものですから関心がありますが、現状では、やはり法律については全く、特別な法律以外は衆議院、参議院対等ですし、ですから衆参の連携がうまくいかないと国政がうまくいかないという面がしばしばありますから、そういう意味で、やっぱり内閣が機能しやすくするためには衆議院と参議院の連携というものがうまくいくということが大切ではないかなという気がいたします。
直接、参議院がどうあるべきかということを、私はまあ申し上げる立場にはありませんけれども。
○谷合正明君 時間になりましたので、これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。