○谷合正明君 公明党の谷合です。
今後十年で世界最高の知的財産立国を目指すということを踏まえて、特許法等の改正法案が提出されたところでございます。この法案審査に先立ちまして、大臣自ら、昨年の十一月に特許を取得されたと。外国人観光客向けに食事のメニューを多言語で表示するシステムの特許と聞いておりますが、大臣、その特許の内容であるとか、どうして特許を取られたのかとか、あるいはその申請を通じて苦労したこと、取った上での感想であるとか、現行政策への気付きなど、そうした所感を述べていただきたいと思うんですが、まあ一時間でも語ることは可能かと思いますが、私の質問の全体の持ち時間が二十分でございますので、それを踏まえて答弁していただきたいと思います。
○国務大臣(茂木敏充君) ありがとうございます。簡単に答弁しようと思うんですけれども。
私、余り、ワインのソムリエとか、資格取るの好きじゃないんですよ。ただ、発明とか発掘は好きでして、本当は王の墓探したいんですね。エジプトはもう中王朝の第十八王朝、ツタンカーメンの墓が出てしまったんで、なかなかもう王の墓も出ない。王の墓が出ないからというわけじゃありませんけれども、幾つか持っていましたアイデアについて是非特許を取りたいという思いで、今回、外国人の方、日本を訪れてレストランなどで食事をするときに、国籍を入力しますと、メニューであったりとかそれに使っている食材ですね、どんな肉、豚肉であったりとか牛肉であったりとか、そういったものが母国言語、それから通貨で表示をされるという仕組みでありまして、例えば宗教上の理由であったりとかアレルギー等々によりまして不都合な食材が除外できると。そしてまた、そのデータがシステムの中にたまることによりましてデータベースのバージョンアップが図られる、こういうシステムのものでありますけれども。
一出願人として、実際の実務の方は弁理士の方にお願いをしたわけでありますけれども、感じましたこと二つありまして、その一つは、やはり個人としての出願であります。やはり個人であったりとか小規模企業にとって、制度やシステム、もっと負担の少ない、使いやすいものになればいいなと思っておりまして、御案内のとおり、産業競争力強化法、昨年の秋に臨時国会で成立をいたしまして、小規模事業者、中小ベンチャーの特許料とか審査請求料、三分の一に削減をすることができました。ただ、私の出願はその前だったので高いときの出願ということになったわけであります。
もう一つは、審査のスピードと同時に、国際的にも通用するような品質が重要である。日本で特許を取れば海外でも極めて特許が取りやすくなる、こういった状態に発展させていくことが必要だと考えておりまして、経済産業省として、特許法等の改正法案、今審議をお願いしているところでありますが、権利化までの期間を半減するなど特許審査におきます新たな目標を定めたところでありまして、決して私が二つ目の出願をしやすくするということではなくて、日本企業にとってより国際競争力が高まるように、世界最速かつ最高品質の特許審査、実現をしてまいりたいと考えております。
○谷合正明君 よく分かりました。
それで、私、先日、日本科学未来館を訪れまして、ここでものづくりの世界一展というのを今開催中なんですね。これは伊勢神宮の式年遷宮にまつわる伝統技術から、例えば高度経済成長期に発明した電気炊飯器であるとかカップヌードルといったような技術やアイデアから、宇宙開発など現代の最先端技術まで、宝物のようなものが集まっている展示なんですね。大臣の製品はまだなかったんですけれども。
そこでふと感じたことは、日本には本当に技術力があるということは、これは国内外認めることだと思います。しかしながら、それが本当にマーケットにつながっているのかどうかということがふと感じたことでございます。もちろん、もうかるためだけに技術を磨いているわけではないとは思うんですが、知財戦略として、技術で稼ぐという必要があろうかと考えています。
今日はお手元に資料を配付させていただいておりますが、二〇一三年の国際特許出願件数上位ランキング及び営業利益という表なんですけれども、上位十社の中に日本国内企業が三社ございます。しかしながら、特許の件数と営業利益というものが必ずしも結び付いていないということも見て取れるのかと思います。
今、中国などが虎視眈々と日本の特許のトレンドであるとか中身を目を皿のようにして、丸くして見ている状況を踏まえていくと、先ほど来の質疑にありますが、技術をオープンにしていくのか、あるいはクローズにしていくのかといったような見極めというものが必要であろうと思っております。
そこで、企業が技術で勝つと、ビジネスで勝つと、そうするための知財戦略をどのように後押ししていくのかということについて答弁をお願いしたいと思います。
○副大臣(松島みどり君) 科学未来館の世界一展は私もじっくり見せていただきまして、五月六日までやっておりますから、是非多くの方に見ていただきたいなと思った次第で、わくわくいたしました。
それで、委員が今配られました資料にもありますように、日本企業、非常にたくさん国際特許も出願している、しかしそれが、必ずしもそういう大企業が常にもうかっているというわけでもないということだと思います。この場合、例えば特許の取得自体が目的化しているとか、活用戦略が必ずしも明確ではないけれども特許をとにかく出すとか、そういった指摘も見られるところであります。
もちろん、日本の大企業の中にも、例えばキヤノンのデジタルカメラのように、画像処理回路やレンズ等の技術を差別化領域としてブラックボックス化して、その一方で記録メディアやプリンターの機器等の相互利用を実現するフォーマットを標準化する、そのように今戦略を立てて、拡大しているデジカメ市場の主導権を維持しているというような会社の事例も見られるところでございます。
先ほど来大臣も言われているように、企業は結局技術で勝つための知財戦略という、議員も御指摘ありました点に関しましては、研究開発の成果の取扱いにつきまして、特許による収益を確保するのか、製造のノウハウなど秘匿すべき技術や営業秘密のブラックボックス化を進めるのか、あるいは標準化戦略による市場規模、市場シェアの拡大といったような取組をするのか、こういったものを最適化する組合せ、これはもちろん企業自身が、企業のトップが判断するものだと考えます。
経済産業省としてできる環境整備といいますかお膳立て、環境整備は、例えば、今回、今のこの国会で今日も審議していただいております意匠法の改正でありますが、この意匠法の改正では複数国に対する一括出願を可能とする、そのような改正内容を盛り込んでおります。また、特許に関して申し上げますと、日本で特許を取ればその審査結果が海外の審査でも通用して海外でも権利を速やかに取れる、そのような世界最速かつ最高品質の特許審査の実現を目指しております。
こういった形によりまして、特許に限らず、意匠、商標、いろんな意味におきまして日本の企業が知的財産をより戦略的に取得し活用することができるよう、経済産業省としては積極的に支援してまいりたいと考えます。
○谷合正明君 ありがとうございます。
その上で、やはり中小企業に対するこの支援というものが今後重要になってくると思っております。
大臣の冒頭の御答弁にもありましたけれども、やはり個人として取得される方であるとか中小企業の方や地域や大学といったような方々が取得する場合には、まだまだこの制度が使い勝手という点において十分かというと、そうでもないという御感想を持たれたということだと思います。
そこで、例えば今、知財総合支援窓口の機能強化であるとか、先行技術調査支援であるとか、弁理士の皆様の更なる活用であるとか料金制度の見直し、様々な取組があろうかと思うんですが、中小企業による知的財産の活用をしっかり支援するということが極めて重要だと考えますが、この取組状況についてお伺いしたいと思います。
○副大臣(松島みどり君) 中小企業がしっかりと知財を取得し守っていけるようにということですが、まさに委員が大分おっしゃっていただいたんですけれども、特許庁は全国五十七か所に知財総合支援窓口というのを設置しております。ここに新しく弁理士や弁護士、こういう専門家を配置して無料で相談に応じる体制を整える、これを始めます。
また、海外での模倣品対策でありますが、これまでの補助というのは模倣品の製造や流通経路が海外現地でどういうふうになっているかの調査費だけを補助しておりました。これを対象拡大いたしまして、海外において警告文を作成する費用ですとか、あるいは海外当局への取締りの申請費用も補助対象に追加してまいります。
そして、そもそものところでございますが、今年一月に施行しました産業競争力強化法で、中小企業や小規模事業者が国内及び海外での特許取得をしやすいようにと、これまで二分の一補助で一般の二分の一掛かっていたんですが、今日から、四月一日から三分の二を補助する、つまり三分の一で済む、三分の一に軽減するという措置をスタートさせました。これも知られないと駄目なので、商工会議所や商工会の協力もいただきまして説明会を開催したりパンフレットを配布するなどして周知徹底に努めたいと思っております。
○谷合正明君 しっかりやっていただきたいと思うんですが、例えば、先ほどの知財総合支援窓口では、待っているだけじゃなくてしっかりアウトリーチで相談に乗っていこうじゃないかということで企業のOB等を活用した知財アドバイザーという制度もあるとは思うんですが、まだまだ数が少ないんだと思います。一人の方が何十社と見ているような状況だと思いますので、具体的にそうした人的体制整備というものもしっかり強化していただきたいと思っております。
もう一つの質問に移りますが、先ほどのオープン・クローズの話の中で今度はクローズの部分に入るわけでありますが、営業秘密としてクローズするという判断もあるかと思います。二〇一三年、経済産業省の調査によりますと、人を通じた営業秘密の漏えいの存在や経験があると回答した企業は一三・五%だと。他方、漏えいがないと回答した企業の三割は防止対策を取っていないということで、漏えいもないはずだというふうに認識していることがうかがえます。また、海外に漏えいした企業の方が国内へ漏えいした企業よりも大きな損害を被っている割合も高いということも分かっております。
今、企業秘密の海外流出を防ぐためには不正競争防止法というのがありますが、これは漏えい先の企業が国内でも国外でも罰金は変わらないといった課題もありまして、今の不正競争防止法では不十分という声も上がっております。
そこで、権利化しなかったクローズな技術について企業内で厳格に管理されることが重要でありますが、今回の東芝事件、先ほど出ましたが、東芝事件のような、技術流出に見られるような漏えいのまず実態はどうなっているのか、また今後の対策をどうするのかと、この点について伺いたいと思います。
○政府参考人(菅原郁郎君) 今委員からも御紹介ありましたけれども、まず漏えいの実態でございます。
営業秘密、基本的には人を通じて出ていくというケースが非常に多うございます。その場合の、人を通じた場合の人というところでございますが、経産省が二十四年度に行いましたアンケート調査によりますと、中途退職者による漏えいが全体の半分を占めてございます、五〇%。現職の従業員のミスによるものが二六%。それ以降は、現職の従業員が金銭目的である意味で不正行為を働いたものというような順番になっていまして、やはり中途退職者から漏れていくというようなケースが非常に多うございます。
一方で、この営業秘密は、誰がその営業秘密を指定するのかは企業が有用と判断するかどうかでございます。
あとは、不正競争防止法上は、その秘密と判断された、有用として秘密として管理されているかどうかが初めて法律上の保護の対象になるということでございまして、委員からもありましたように、我が国の企業においてはこの管理水準が極めてばらつきが多いと。一部の企業については全く管理していないというところも見られるところでございまして、こういった企業の権利として本来行使することができる以上、しっかりとした管理水準をどう上げていくのか、若しくはベストプラクティスをどう普及、共有化していくのか。あと、委員から御指摘がありましたように、本当に国の制度上不足な部分があるのかどうかについては、企業の実態その他も見極めながら、現行制度の見直しや追加も含めてしっかり検討していきたいと考えてございます。
○谷合正明君 いずれにしましても、今回の東芝事件を踏まえて、早急に対応を私は取りまとめるべきであるということを思っております。
最後に質問でありますが、デザインとかブランドの取組なんですけれども、技術も非常に重要でありますが、知財戦略を踏まえまして、意匠、商標を活用したデザインやブランドの取組、これはまだまだ不十分だと思います。今回の法改正によりこうした状況をどの程度変えていくことができるのか、この点について質問をいたします。
○政府参考人(羽藤秀雄君) 国際出願件数という観点から見ますと、世界のトップテンの企業の中で、特許については日本企業は三社がランクインをしておりますけれども、意匠、商標については我が国企業は一社も入っていないというのが、これが現状でございます。
また、民間の調査ではございますけれども、デザインや技術の評価も含んでいるブランド価値について、世界のトップフィフティー、五十の中で、アメリカの企業が二十八社に対して日本の企業は四社というのもまた一つの結果を物語っていると思っております。
このように、優れた技術を持ちながらも、権利化あるいはデザイン、ブランドといった総合的な知財戦略の取組について、国際的な展開という観点からは必ずしも日本企業十分ではないというふうにも認識をしております。その結果として優れた技術をブランドや価値、収益の獲得につなげられない、こういった指摘もなされているところであります。
こういった観点を踏まえまして、今般御審議をお願いをしております本法案におきましては、複数国に対して意匠を一括出願するための規定を盛り込むなどして、我が国の企業が優れた技術をグローバルな収益に結び付けられるような国際的な対応というものを促す、こういったこともまた重要な課題であるというふうに思っております。
日本企業のデザイン戦略の一層の国際展開を期待をしながら、さらに、知的財産総合支援窓口での専門家による相談、派遣の充実などを通じまして、日本企業のデザイン、ブランドにおける戦略の取組を支援してまいりたいと考えております。
○谷合正明君 以上で私の質問は終わりますが、今回の、大臣もせっかく特許を取られておりますので、今回の法改正の趣旨や周知といったことも含めて、経済産業省、特許庁においてはしっかりやっていただきたいと思っております。
以上でございます。