○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
今回の道交法の一部を改正する法律案につきましては、一昨年の栃木県の鹿沼の自動車事故をきっかけに、遺族の方、また被害者の方の思い、また署名などの運動もありまして今日に至っております。その遺族の方の思いを感じますと、本当に大事な改正であるというふうに思っております。その意味で、私自身もこれは賛成でございます。その賛成ということを前提に置きながら、幾つか確認したいこともあります。それから、一定の病気等に係る運転者対策について確認させていただきたいと思っております。
まず、道交法の施行令の第三十三条の二の三に定める一定の病気、この一定の病気についての、十指定されているんでしょうか、まずその根拠を確認させていただきたいと思います。
○政府参考人(倉田潤君) お答えいたします。
道路交通法施行令第三十三条の二の三におきましては、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として、統合失調症、てんかん、再発性の失神、無自覚性の低血糖症、躁うつ病、重度の眠気を呈する睡眠障害のほか、自動車等の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈する病気が定められております。
これらの病気につきましては、例えば幻覚、妄想、興奮等の症状や発作による意識障害、運動障害が運転中に生じた場合には、自動車等の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなることから、これらの症状を呈する場合には運転免許の拒否、取消し等の事由とされているところでございます。
したがいまして、発作が再発するおそれがないなど、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがない症状の方につきましては、免許の拒否等の対象とはしていないところでございます。
○谷合正明君 今の御説明の中で取り上げられていない病気について、何というんですか、取り上げられた疾病と取り上げられていない疾病というのは、やはり事故率が異なるとか、そのような統計というんですか、科学的な何かデータというのがあるんでしょうか。
○政府参考人(倉田潤君) 現在、道路交通法施行令におきましては、自動車等の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなる症状を呈することのある病気のうち、医学的に病気としての概念が定着しているものを掲げているところでございます。
同施行令におきましては、これらの病気のほか、自動車等の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈する病気を包括的に免許の拒否等の対象として規定しているところでございまして、特定の病気のみではなく、その症状に着目して免許の可否を判断しているところでございます。
なお、運転免許を受けた者のうち一定の病気にかかっている者の人数が把握できないため、疾病別の交通事故の発生率等の統計資料は把握してございません。
○谷合正明君 そこで、大臣にお伺いしたいんですが、今回の改正というのが新たな差別を生んではならないわけです。例えば、その一定の病気を持つ方イコール、何となく報道で、自分の病気を隠して運転免許を取得するとか、そしてそれは危険な運転だと、このイコールで全てが結び付いてしまうというような風潮が生まれてはならないというふうに思っているわけでございまして、その、何というんですか、新たな差別が生まれないような取組について、これは警察庁としてどのようにこの対策を講じていくのかについて伺いたいと思います。
○国務大臣(古屋圭司君) そもそも今回の法案改正に当たっては、やはり鹿沼のあの痛ましい事故等々がありまして、やはりその原因が運転者が免許証申請時に自分の症状を正しく申告をしなかったということに原因があったわけですね。
そういう意味では、自分の症状について虚偽の回答をした者に対しては罰則を設けて、正しい回答というのを何とか担保していこうじゃないかという狙いがあるわけでありまして、だから、現状でも自分の症状を正しく申告をしていらっしゃる方、すごくたくさんいらっしゃるんですね。だから、そういった方々との公平性というんですかね、こういった観点からも虚偽の回答をした者に対する罰則を設けるのが適当だろうと。これは有識者懇談会でもそういうアドバイスをいただいたところでございます。
実際、法の施行に当たっては、そういった一定の病気等に起因する事故を防ぐということが何よりも大切でございますので、自己の病状を正しく申告をしていただく必要性があるんですよということを正しく広報する、啓蒙活動する。そして、この法案の趣旨ですね、趣旨をしっかり理解していただくということが何よりも大切でございますので、そういった取組はしっかりしていきたいというふうに思います。今委員が御懸念をされるようなことが起きないように、警察としても万全を期して対応してまいりたいというふうに思っています。
○谷合正明君 正しく申請、申告していただくということが大事であると思うんですが、今回、医師による任意の届出制を設けることによりまして、一定の病気等に該当する方が公安委員会への届出を恐れて医師による治療を受けなくなることで、かえって潜在化するというような懸念というのはないんでしょうか。
○政府参考人(倉田潤君) お答えいたします。
この度の道路交通法改正は、一昨年の四月、栃木県鹿沼市におきまして児童六人がお亡くなりになった大変痛ましい交通事故の発生等を受け、そのような悲惨な事故を防止するために、必要な情報を的確に把握する方策を整備するものでございます。
この点、医師による届出を義務化をいたしますと御指摘のようなケースが増えるおそれがあることから、任意規定にとどめて、医師と患者との信頼関係に配慮したところでございます。今後、医師と患者との信頼関係が保たれるよう、届出を行うべき場合やその手続を定めた自主的なガイドラインを医師団体等に作成していただくこととしているところでございます。
なお、今回の法改正は、病気の症状に関する免許の可否基準を変更するものではなく、現在治療により症状が抑えられている方は改正後も引き続き免許を保有することが可能でございます。また、一定の病気を理由に免許を取り消された方が一定期間内に免許を再取得しようとする場合には運転免許試験の一部を免除する規定も改正案に盛り込んでおりまして、その負担軽減にも配慮したところでございます。
警察といたしましては、今回の法改正の趣旨を正確に御理解いただきますとともに、治療の重要性等についても十分な周知が図られるよう、関係機関等と連携して取り組んでまいる所存でございます。
○谷合正明君 それで、大臣、その医師と患者との信頼関係が大事だと、それはそうなんですね。
もう一つ、患者というか、てんかんの方が要望されるのは、相談体制をしっかりしいてほしいということなんですね。平成二十三年中の一定の病気等による免許の取消し等の処分件数のうち、本人及び家族からの相談を端緒とするものというのが二四%あります。交通事故を端緒とするものについては一七・三%ありますので、前者の方が数字的には大きいわけですね。
警察に運転適性相談窓口というのがあると思いますが、そこで、今回の法改正を機に、相談窓口の周知であるとか体制の整備であるとか、あるいは関係団体との連携ですね、この免許を、車が運転できなくなるといったときに、じゃ、どうするんだとか、それが仕事上、どのような影響があるのか、様々なことで一人で悩んでですね、そういうことをさせてはいけないと思うんですね。
ですから、今ある運転適性相談窓口の機能強化というんでしょうか、体制についての大臣の今後これからの見解について伺いたいと思います。
○国務大臣(古屋圭司君) 委員御指摘のように、運転適性相談窓口は今、各都道府県県警の運転免許センターに設置しています。免許を受けようとする方からいろんな相談を受けています。
この運転適性相談については、やはり警察庁や都道府県警のホームページへの記載はもちろんのこと、運転免許センターへのポスターの掲示だとか、あるいは自動車の教習所、こういったところにリーフレットをしっかり配布をして周知徹底を図ると、これが大切ですね。関係機関であるとか患者の団体の方々に対しても、必要に応じ周知の徹底を依頼をしているところです。やっぱりこれは徹底していく必要があると思います。
今、現状では、一定の病気に関する運転適性相談は平成二十三年が二万七千件、平成二十四年が三万九千件と、その相談件数は増加しておりますので、やはり運転適性相談は本人や家族からの相談にきめ細かくやはり対応していかなきゃいけないと思います。そういう意味では非常に重要でございますので、今回こういった形で法律が改正をされますので、相談の一層の周知、それとやはりプライバシー保護など職員に対する指導教養を含めた体制の整備、そして医師とか患者団体との連携の強化、こういった総合的な対応をしていくことが大切だと思いますので、そういった方向で充実をしていくように、警察をしっかり指導してまいりたいというふうに思います。
○谷合正明君 極めて、大臣、大事なことを言われたと思います。特にプライバシーの配慮ですとかそこの職員に対する指導ですとか、これ大事だと思っておりますので、相談しやすい環境をつくっていくと、場があるだけじゃどうにもなりませんから、やはり本当にきめ細やかな対応をしていただきたいと思います。
最後に、ちょっと通告もしていませんが、要望だけですけれども。車社会ですよね、今。高齢者あるいは障害者、病気のある人でもやっぱり車を使って移動するということはあるわけです。ただ、高齢者でも自主返納とか、免許を自主返納する中で、やはり公共交通体系とか、これ極めて重要な観点になるんですね。特に、都会と地方で全く公共交通の度合いが違います。都心では、例えば車がなくても移動できますよね。一家に一台ない、統計上〇・何台ですよね。(発言する者あり)〇・二ですか。これ地方へ行きますと、もう二台とか三台とかですよね、一家に。ですから、何というか、今回、特に地方ですね、車社会になっている中で、しっかりと、対症療法的に法改正というのはこれは大事だと思いますけれども、いざ車がなくても生活ができるという環境をつくっていかないとやはり無理が生じるんじゃないかなと思っております。
これは警察だけじゃなくて国土交通省とも連携してやっていく話だと思いますので、是非、関係機関と連携していただいて、大臣の方からも例えば国土交通大臣にしっかりと要請していただくとか、これ、自転車道の環境もそうだと思うんですね。この辺り、しっかり警察の方からも訴えていただきたいと要望させていただきます。一言、何かあればお願いいたします。
○国務大臣(古屋圭司君) 確かに地方は車がないと生活できないですからね。東京は〇・二台ですけど、地方では一家族で三台ぐらい持っていらっしゃる方々。それはぜいたくで持っているんじゃないんですね、持たざるを得ないから持っているんであって、やはりそういった状況にしっかり対応していく必要がありますね。
これは、もう警察だけではとても限界ですので、今御指摘があった国土交通省だけではなくて、総務省であるとか厚生労働省であるとか、あらゆる官庁の協力と、それから官だけではなくて民の協力が極めて大切ですね。それ以外にも、例えばNPOだとかそういう市民団体の皆様の協働というのが不可欠だと思います。そういった空気を醸成をしていく、環境を醸成をしていく作業も大切だと思います。私ども警察としても、そういう取組をお願いしてまいりたいと思いますが、逆に、委員におかれましても御党の方でもそういう取組をしっかり広めていっていただくような、啓蒙活動を含めた対応をしていただくようにお願いしたいと思います。
○谷合正明君 要望を逆に承りまして、質問を終わりたいと思います。