6月12日に政府が発表した「若者雇用戦略」に公明党青年委員会の主張が反映され、このほど公明新聞に掲載されました。以下、記事を転載します。
(岡山事務所)
解説ワイド 厳しさ増す若者の雇用
減少続く大卒求人数
早期離職など不安定化も
若者を取り巻く雇用情勢は依然として厳しい。若者雇用の問題点や対策、政府の決定した若者雇用戦略について解説するとともに、職業訓練のあり方などについて、専修大学の宮本光晴教授に話を聞いた。
景気の低迷や歴史的な円高などの影響により、製造業を中心に大規模な人員削減が相次いでいる。
例えば、電機大手メーカーのNECやソニーは、国内外のグループ全体で1万人規模の人員削減を行うことを発表し、パナソニックも7000人いる本社従業員を半分程度に減らすことを検討している。下請けの中小企業にも影響が及ぶことは必至で、雇用への不安は高まるばかりだ。
こうした雇用悪化のしわ寄せは、企業の新卒採用の抑制という形で学生や若者を直撃している。
今春卒業した大学生の就職率(4月1日現在)は、過去最低だった前年から2・6ポイント増の93・6%だ。しかし、リクルート ワークス研究所の調査によれば、今年3月卒の大卒求人総数は約56万人にとどまり、2008年秋のリーマン・ショック以前の水準(09年3月卒=94万8000人)は回復できていない。
さらに来年3月卒の大卒求人総数は、1・1%減の約55・4万人と減少しており、就職難は続く見通しだ。
そもそも就職率には、就職留年をした学生や内定を取れずに就職を諦めた学生などは含まれておらず、実態がもっと厳しいのは間違いない。
◇
就職できたとしても数年で辞めてしまう「早期離職」の問題も深刻だ。
大学卒業後、3年以内に離職する人の割合は、1990年代半ばから3割以上が続いている。高卒の場合も37・6%(08年卒)と高い。
原因としては、学生が自ら就きたい職業を十分に検討しないまま就職するケースや、長時間労働といった劣悪な職場環境などから離職するケースが指摘されている。
早期離職した若者が必ずしも正規雇用に就けるとは限らず、雇用の不安定化に拍車を掛ける結果も招いている。
一方、派遣社員やフリーターなどの非正規雇用の増加も大きな課題となっている。
非正規雇用は全年齢層で増える傾向にあるが、90年代半ばからは、15~24歳の若者の非正規雇用者の割合が大きく上昇し、3人に1人が非正規雇用者である【グラフ参照】。
もちろん、働き方の多様化により、自ら進んで非正規雇用に就く人もいる。だが、一度、就職できずに非正規雇用となってしまうと、教育訓練の機会も少なく抜け出すのが難しい。不本意なまま働き続けざるを得ない人も多い。
不安定な若者の雇用は、少子化の要因や高齢期の貧困につながり、社会保障制度の根幹を揺るがしかねない。
『中小企業とのミスマッチ解消が鍵に』
『変わり始めた学生の意識』
学生の就職活動の妨げとなっているのが、求人と求職のミスマッチ(ずれ)だ。
中小企業の採用意欲は高いものの、採用に費用や人手が掛けられない課題がある一方、学生側は大手志向が強いために、すれ違いが起きているのだ。
公明党はこうしたミスマッチの解消に着目し、合同説明会などを通じて学生と中小企業を橋渡しする「ドリーム・マッチ プロジェクト」を強力に推進。大学とハローワークとの連携強化なども提唱してきた。
こうした支援策が功を奏したことは間違いない。国は今年1月から3月に掛けて未内定者への支援に力を入れ、約1万6000人の大学生が就職できたが、その就職先の多くは中小企業であったと見られている。
厳しい就職難の中、学生の意識も変わり始めている。リクルート ワークス研究所の調査によれば、来年3月卒業予定の大学生では、中小・中堅企業への志望者数が、大企業志望者数を上回る結果となっている【グラフ参照】。
学生と中小企業とのミスマッチ解消へ、さらなる対策が必要だ。
『政府が雇用戦略を決定 公明の主張も 数多く反映』
多くの問題を抱える若者の雇用状況を改善するため、政府は12日に「若者雇用戦略」を決定した。同戦略には、早期離職の防止策の推進や、就学支援による「貧困の連鎖の防止」が明記され、各都道府県に協議会を設け、キャリア教育支援など行うことが決められた。
また、公明党青年委員会(谷合正明委員長=参院議員)が若者雇用実態調査を踏まえて昨年12月に行った政策提言も数多く反映され、雇用のミスマッチ解消策や非正規雇用のキャリア・アップ支援策として盛り込まれている【別掲】。
雇用問題の背景には日本経済の低迷があることは否定できない。
民主党政権には明確な経済成長戦略がなく、デフレの脱却もできていない。若者雇用戦略を実効性のある政策として実現していくためには、そうした経済対策を着実に実行していくことが求められている。
(公明新聞:2012年6月27日付より転載)