○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました東日本大震災復興特別区域法案について質問をいたします。
震災から約九か月。被災地を歩き、被災者一人一人のお話に耳を傾けますと、復興はおろか、復旧すらままならない状況にいまだ直面します。仮設住宅で、暖房器具を申請しても一か月以上届かない、冬の備えはどうなっているのかと嘆く婦人。二重ローンの問題に心労を重ねる事業経営者。スーパーや病院がなくなって、孤立集落でひっそりと暮らす高齢者。仕事に就けず、子供に働いている姿を見せられない若い父親たち。
現地で今一番必要な支援とは何なのか。私たち公明党は、何度も被災地に分け入り、被災者の心に寄り添うよう懸命に活動してまいりました。個人の尊厳に基づく幸福追求権を根拠に、被災者の皆様一人一人に光を当てた人間の復興こそが復興の根幹であると訴えてまいりました。
公明党は、こうした理念を具現化するために、六月に成立した復興基本法に、復興庁の設置、復興特区の創設、復興債の発行を盛り込み、直ちに関連法案を成立すべしと訴えてまいりました。また、九月八日には、震災復興及び経済対策に必要な予算に関する提言を発表、政府に素早く取組をするよう申し上げてまいりました。
しかし、第三次補正予算が先週ようやく成立したことからも明らかなように、政府の取組は、復興構想会議の五百旗頭議長がおっしゃっているごとく、遅過ぎると言わざるを得ません。復興関連法案の成立が大幅に遅れ、被災地の皆様の心を痛めていることは、同じ政治家として本当に申し訳ない思いでいっぱいです。
菅政権から復興担当大臣として仕事をされている平野大臣は、復興の遅れとその理由についてどのような思いでおられるのでしょうか。まず認識を伺います。
以下、具体的に質問を述べます。
本法案は、衆議院で野党の提案を受け、修正がなされ、復興交付金の使途を拡大し、被災地の要望を政府任せにせず、迅速に法改正や議員立法を含め対応できるようにいたしました。
特に、公明党が提案してきた地方からの提案を実現させる仕組み、いわゆる条例による法律の上書きについては、より実効性が担保された内容となったと伺っております。一つ、特定地方公共団体が国会に対して意見書を提出することができるとしたこと、二つ、内閣総理大臣は、国と地方の協議会の協議結果を国会に報告することとしたこと、三つ、国会は意見書、報告書を受けて法制上の措置を講じなければならないとしたこと、そして、四つ、政府は、協議会において協議が調った結果を受け、速やかに法制上の措置を講じなければならないとしたことの修正がなされました。
また、これらをより実効性の高いものにするために、特に国会における受入れ体制について、国会に特別立法チームをつくり、意見書や報告を受けて立法措置をとるとも伺っています。
政府においても、国と地方の協議会を通して地方の意見を確実に吸い上げ、迅速に対応していくことが求められます。国による遅延行為は被災地のためになりません。国による積極的な対応がなされるためにどのような担保があるのか、また、衆議院での修正を踏まえて、国としてどのような対応を行うつもりなのか、大臣に伺います。
次に、復興推進計画による規制・手続に関する特例について伺います。
特例は九つの法律にかかわる十三の事業にとどまり、関係省庁の調整が付かない事項は全て協議会の提案を待つこととなりました。被災した自治体からの要望の強い事項についてはなぜ採用されなかったのか。特に再生可能エネルギーを対象に加えることについては、どのような経過によって事業にカウントされないこととなったのか、大臣にお伺いします。
また、自治体の作成する復興推進計画、復興整備計画、復興交付金計画の三つの計画書についてですが、被災した自治体にとって荷が重く、一つでいいのではないかとおっしゃる方もいます。あえて三つに分けた理由を伺います。また、一つだけに係る計画や、自治体にとって都合の良い組合せの計画作成も可能とすべきと考えますが、併せて大臣にお答えを願います。
復興のための各種の計画を作成する主体は地方公共団体であります。また、計画作成のための協議会の構成員も地方公共団体であります。それ以外の関係者は、条文では加えることができるとされています。
私は、壊滅的な被害を受け、四千人を超えていた人口が約千人に激減した石巻市雄勝町を訪れましたが、地元漁業者らによる合同会社や既存の現地NPOが孤立集落支援、復興町づくりに率先して励んでいる姿を目の当たりにしてまいりました。被災地に根を張り、活動をされている住民組織やNPO、ソーシャルビジネスらを組み込んでいくことで、地方公共団体だけでは拾い切ることができない被災地の、被災者個人の意見を計画に反映させることができるのではないかと私は感じております。この点、対応がされているかどうか、大臣にお答えを願いたいと思います。
次に、土地の買上げ価格について伺います。
被災者の多くは被災した土地の価格が大幅に下落し、高台移転の資金が足りなくなることを心配しています。買上げ価格は市町村が不動産鑑定評価などを参考に評価決定するとしていますが、過去の高台移転の事業では災害前の七割から四割とも言われています。今後の復興計画により左右されると伺っていますが、浸水したままの土地など、極端に下落した土地の価格を下支えする工夫はあるのか、国土交通大臣に答弁を願います。
復興推進計画で定める復興産業集積区域において、新規立地新設企業に対して法人税を五年間無税とする措置が講じられる予定です。これについては、地方からの意見として、既存の企業と新規立地新設企業との間で支援に差があるとの声もあります。
新規立地新設企業に対して五年間無税とする措置がクローズアップされがちな一方で、既存の企業に対しても投資促進税制や雇用促進税制といった一定の特例措置があると伺っております。その詳細について説明を願います。また、既存の企業へも無税とする措置を適用するなど、特例措置の適用を拡大することについてどのように考えるか、大臣にお答えを願いたいと思います。
次に、我が党が主張してきた福島特別立法について伺います。
平野大臣は、来年の通常国会に提出されるという原子力災害からの福島再生特別法で、ほかの被災地より企業の税制優遇措置などを強化した特区を県内に設ける考えを明らかにしたと報じられています。復興特区を超えるものともおっしゃっているようですが、福島県民の思いにこたえる実のある法律としなければなりません。現時点でどのような中身なのか、大臣にお答えいただきたいと思います。
最後に、復興特区と密接に関係します復興庁設置法について触れます。
与野党協議の上成立した復興基本法には、復興庁のつかさどる事務は、復興に関する施策の企画、立案、総合調整、そして実施までとしています。ところが、この度の政府提案では実施の部分で骨抜きとなっており、当初想定していたスーパー官庁としての復興庁から大幅に後退する内容となっています。衆議院において協議中ですが、復興基本法の原点に立ち返って見直すべきと考えます。大臣の見解を伺います。
復興庁や復興特区は、役所の立場に立つのではなく、被災者の側に寄り添うべきであります。
政府においては、法案成立後、復興特区を速やかに立ち上げ、一日も早く被災地において雇用の確保や新たな町づくりが行えるように、これ以上復興を遅らせてはならないことを強く申し上げ、私の質問とします。(拍手)
〔国務大臣平野達男君登壇、拍手〕
○国務大臣(平野達男君) 谷合議員からは私に対して八問、質問をちょうだいしております。
まず、復興の遅れとその理由についてお尋ねがございました。
政府は、これまで、全力を挙げて被災地の復旧・復興対策に取り組んできたところであります。仮設住宅の建設、散乱瓦れきの撤去、電気、ガス、水道等のライフラインの復旧、防潮堤や港湾などの公共施設の応急復旧等に取り組んできたところでありまして、発災直後と比べ、復旧・復興に関する取組は相当程度進展したものと認識しております。
しかし、その一方では、五百旗頭議長からのお言葉にもありますように、政府の取組は遅過ぎるという御指摘もいただいております。そして、被災地は、これから冬を迎える仮設住宅の寒さ対策、市町村の復興計画の策定、実行など、今もなお様々な問題を抱えておりまして、政府として対処しなければならない課題は山積みしていると認識しております。
去る二十一日は第三次補正予算が成立したところであり、政府としては、これを踏まえて、今後の復旧・復興事業のスケジュールを明示した工程表等を作成、公表したところであります。さらに、復興特区制度や東日本大震災復興交付金などについて、今国会での速やかな成立を目指し、地元自治体と協力しながら被災地の復興を加速してまいる所存であります。
国と地方の協議会における国の積極的な対応についての御質問をいただきました。
国と地方の協議会は、現場本位の協議を行いまして、迅速に成果を得るため、現地で開催することとしまして、被災地の立場に立って運営することとしております。また、地域の要望の実現に向けまして、御提案申し上げている復興庁が、関係省庁に対し、一段高い立場から強力なリーダーシップを発揮して対応してまいります。
衆議院における修正によりまして、協議会での協議の結果を尊重し、国が所要の法制上の措置等を講じる義務や、協議の経過及び内容を適時適切に国会に報告する義務の規定が追加されたところでありまして、国は、これらの規定の趣旨をしっかりと踏まえて協議会を運営し、被災地の立場に立って被災自治体の復興への取組を支援してまいります。
法案に盛り込まれている規制の特例措置についての御質問をいただきました。
復興特区法案における規制・手続に関する特例につきましては、被災直後から私を含む政府関係者が現地に出向いて、意見交換を行うとともに、文書などで御要望を募り、把握した御要望を踏まえて法案を作成いたしました。公明党さんからもたくさんの御提案をいただきました。
その結果、住宅、産業、町づくり等の各分野にわたる個別の規制の特例を盛り込んだことに加えまして、多くの被災地で要望の強かった土地利用再編のための一連の特例や雇用創出のための税制上の特例等を盛り込んでおります。御指摘の再生可能エネルギーに関する特例についても、バイオマスエネルギー施設を設置するための農地法、森林法の特例や、小水力発電に関する河川法、電気事業法の手続に関する特例を創設したところであります。
復興特区に係る三つの計画について御質問をいただきました。
本法案における復興推進計画、復興整備計画、復興交付金事業計画の三つの計画は、それぞれ内容、手続等が異なっているため、自治体の使い勝手から個別の計画として取り扱うこととしております。自治体は自らが必要と考える計画だけを策定することになりますが、これに加えて、三つの計画の中で必要なものを組み合わせて一つの計画として策定して提出することも可能とするような柔軟な運用を心掛けまして、自治体が必要な計画をできるだけ簡便に策定できるように工夫してまいります。
住民組織やNPO、ソーシャルビジネスを計画作成のための協議会に組み込んでいく点について対応がされているかどうかの御質問をいただきました。
復興の円滑かつ迅速な推進のためには、住民組織やNPO等の民間の知恵や活力を取り入れることが必要であります。また、これらの者は、復興推進事業の実施主体として地域の復興に重要な役割を担うことが期待されているところであります。
したがいまして、計画策定主体である地方公共団体が、推進しようとする取組の内容に応じて必要と認めるときは、住民組織やNPO等を地域協議会に構成員として加えまして、積極的に意見を吸い上げつつ計画を策定していただくことが望ましいと考えております。
既存企業に対する税制上の特例措置の詳細及び特例措置の適用の拡大についての御質問をいただきました。
復興特区制度では、被災地における投資や雇用を促進する観点から様々な税制上の特例措置を講ずることとしております。
新設企業につきましては、立ち上げ当初の経営が安定していないと考えられますことから、法人税を五年間無税とする特に大胆な措置を講じまして、創業を支援し、地域への定着を促すところとしたところであります。
一方で、既存企業につきましても、御指摘のとおり、事業用設備を取得した場合の特別償却制度や税額控除、被災者を雇用する場合の税額控除等の適用を受けることが可能でありまして、地方税についても、既存企業に対する不均一課税等も補填措置の対象になるものであります。
続いて、特例措置の適用の拡大についての御質問についてですが、今回創設した税制上の特例措置等を活用いたしまして、被災地における雇用や投資につなげていくことが重要であると考えております。まずは、これらの制度が十分活用されるよう、被災地方公共団体の復興推進計画作成の支援等、適切な対応に努めてまいります。
福島再生特別法の内容についての御質問をいただきました。
福島再生のための特別立法につきましては、私が座長の原子力災害からの福島再生復興協議会において福島県と協議を行っているところであります。福島県からは、警戒区域等のふるさと再生、産業活力の再生のための特別の措置等を特別法に盛り込むよう御要望をいただいているところであります。
政府としても、要望を踏まえまして、避難区域の設定や風評被害といった原子力事故に起因する他の被災地と異なる事情に応じまして、どのような対策を講じるべきか、現在、内容の検討を進めているところであります。
最後に、復興庁の事務の在り方についての御質問をいただきました。
復興庁の事務につきましては、復興交付金は、被災地におけるハード的事業全般について網羅するものであります。また、復興特区は、各府省の規制・制度や税制に切り込み、被災地のための特例を設けるものであり、強力な制度となっております。
他方、医療の再生や中小企業支援など各事業の復興につきましては、各府省の主体的な取組を促進しつつ、それぞれ府省のノウハウや知見を活用することが効果的でありまして、復興庁には勧告権、予算要求の調整権を付与することとしております。
復興庁設置法案につきましては、現在、各党間で修正協議が進められていると伺っております。御意見を真摯に受け止めてまいりたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣前田武志君登壇、拍手〕
○国務大臣(前田武志君) 谷合正明議員にお答えいたします。
被災した土地の買上げ価格についてお尋ねがありました。
防災集団移転促進事業において、被災した移転元の土地を取得する場合には、一般の公共事業用地を取得する場合の考え方に準じて、契約締結時における正常な取引価格として事業主体である地方公共団体が適切な不動産鑑定評価等を参考に評価、決定することとしております。その際、災害の発生するおそれ、災害危険区域としての建築の禁止、制限の内容やその程度を勘案するとともに、復興計画による土地の効用の回復見通し等にも留意することとなっております。
本来、移転元の土地価格については、正常な取引価格として市場で形成される性格のものであることから、地方公共団体においては、まず、復興計画に基づく町づくりを通じて地域全体の価値を高める等の工夫を行っていただくことが重要と認識しております。
一方、移転される方の負担ができる限り軽減されるように対応することが重要と考えており、移転先で住宅や宅地を取得する際の各種支援措置等により、移転者の負担を極力軽減し、円滑な集団移転が進むよう支援してまいります。
以上でございます。(拍手)