○谷合正明君 公明党の谷合です。
まず初めに、成年後見制度と選挙権の問題について触れさせていただきます。
四月二十一日の内閣委員会で、私は、後見類型になりますと選挙権が公職選挙法の規定によりなくなるという問題を指摘させていただきました。その際に官房長官から、指摘を踏まえた検討には私の責任で入ることを約束という答弁でございましたが、その後、指示、検討内容について確認させていただきたいと思います。
○国務大臣(枝野幸男君) 四月二十一日の当委員会での御質問を踏まえて、まず私の下で現行制度の概要や経緯、これに係る訴訟の状況について関係省庁、具体的には総務省及び法務省に指示し、整理をさせて報告を受けたところでございます。
これに基づいて改めて御報告を申し上げますと、これは御承知のとおり、後見開始の審判をするためには、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあることが要件とされているところでございまして、裁判所においては、医師の診断書や鑑定等の医学的判断に基づき、この要件の適否について適切に判断をしているものというふうに思っております。
一方で、後見類型と審判をされましたが、現在の判断能力が保佐類型や補助類型、つまり事理を弁識する能力を欠く常況、常のある状況ではなくて、事理を弁識できないときとできるときがあるとか、それから能力が欠けるわけではなくて低下をしているとか、そういうことに当たる場合には、家庭裁判所に保佐開始や補助開始の審判の申立てをして、後見ではなくて保佐の類型に変えるということが可能になっております。
そして、保佐と後見では保護に違いがあるのかということについては、実態上、この保佐と後見で、保佐では保護に欠けるということには必ずしもならないということの確認をいたしました。
したがいまして、裁判所における事案に応じた適切な審判がなされることによって、事理を弁識する能力を常に欠いている方でなければ、つまり選挙権等を行使できるような状況の方であれば、保佐によって保護をされながら選挙権が行使できるという仕組みであるというふうに確認をいたしました。
問題は、これを、運用の問題といいますか、実際に当事者の皆さんの、現に不便というか、十分な周知がなされていない等ということもございますので、そこについては若干お時間をいただいて考えさせていただいているところでございます。
○谷合正明君 運用についてのところでございますけれども、今の趣旨ですと、保佐類型に行ける方というか、保佐類型にふさわしい方は保佐類型であるべきではないかというような趣旨であったかと思っておりますが、現在の裁判所や、まあ医師の判断に基づいて裁判所が審理、鑑定するんだと思いますが、そこが不十分ではないかという認識を示されたのかなと思いますが、そういうことでございますでしょうか。
○国務大臣(枝野幸男君) 率直に申し上げて、行政府の立場から裁判所の審判が違っているんじゃないかとはちょっと申し上げられないというふうに思っております。
裁判所においては、その時点においてはまさに事理を弁識する能力を常に欠いている状況であるという認識判断、認定判断等をされたのだろうというふうに、これは司法府を信頼するべきだというふうに思っておりますが、例えば、一人の方でも、審判の時点ではそういった状況だったけれども、その後状況が良くなって、事理を弁識する能力が戻ったというような状況なら当然選挙権も行使したいということになるわけでございましょうし、そうしたときに、一旦後見の審判を受けていて、じゃ、それもう実態は保佐だよねといって保佐に切り替えるのが必ずしも簡単ではないというようなことが実態としてはあるということについてどういった対応をするべきなのか。裁判所の手続との絡みもありますので、率直に申し上げ、まだ結論を出せていないと、こういうことでございます。
○谷合正明君 後見類型なのか保佐類型なのかというのはなかなか運用上難しい側面もあるということでして、特に障害者の方のアンケート調査によりますと、ほとんどの方が後見類型に属するという答えが多いんですよね。その上で、実際にこの制度を利用しようと思って手続を始めてみて初めて後見類型になると選挙権、被選挙権がなくなるということを気付くという方も結構いらっしゃるというのが実態ではないかと思っております。
例えば、私の手元に法務省民事局作成の成年後見制度のパンフレットがありますけれども、こういったパンフレットには、後見類型になると選挙権がなくなりますよといったようなことは一切触れられていないわけでありますが、どうしてこうしたことが触れられていないのか、また、今後、今の官房長官の御答弁を踏まえて検討する余地があるのか、法務省の方から回答をいただきたいと思います。
○政府参考人(團藤丈士君) ただいま委員からお示しをいただきました法務省民事局において作成しておりますパンフレットでございますが、この成年後見制度のパンフレットは、成年後見制度の周知、広報の観点から、民法が規定しております成年後見制度の概要、事例を紹介いたしますとともに、法務局において行われております成年後見登記制度の概要や証明書の利用方法などについて説明をするという目的で作成しているものでございます。
御指摘の選挙権の問題でございますが、成年被後見人となったことを欠格条項に該当するとしている制度はこの公職選挙法以外にも多数ございますが、私どもの立場から申し上げさせていただければ、それを欠格条項として維持するのかどうか、どういう趣旨で欠格条項とする必要があるのかというのは、それぞれの法律を所管する省庁において責任を持って御判断をされ、かつまたそれを周知されるべきものだという理解でおるところでございます。そういった事柄もございまして、今お示しをいただきましたパンフレットには選挙権について欠格条項となるという記載がないということでございます。
もっとも、度重なる御指摘もいただいておるところでもございますので、公職選挙法を含めまして成年被後見人に関する欠格条項が存在するということにつきまして、今後、法務省民事局が作成するパンフレットにおいて記載する方法で周知するということについて、議員の御指摘も踏まえて私どもとしても検討してまいりたいと考えてございます。
○谷合正明君 そういう検討を、法律を所管する、公職選挙法を所管する総務省だけでなくて、法務省の方としても私は柔軟な対応を取っていただきたいと、取るべきだと思っております。
私は何も保佐類型を十分活用していただきたいということだけで済む問題ではないと思っておりまして、選挙権の行使の能力があるのかないのかにかかわらず、そもそも選挙権を奪うという現行のこの公職選挙法、従前からの制度を引き継いでいるというわけでございますが、そのものがおかしいと思っております。これはむしろ立法府の方の仕事ではないかとも思っておりまして、しかしながら、政府としても、私はいたずらに今回の訴訟の結果を待つというだけじゃなくて、もう少し政府としての考えなりをお示ししていただくということも必要ではないかと思っておるんですが、人権派の弁護士でもあられる官房長官としては、裁判の結果を待つという、そういった態度でいいのかどうか。私は、今後はこの問題は問題として認識して検討していかなきゃいけない事項だと思っておるんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(枝野幸男君) まずは、実際の障害をお持ち等で後見あるいは保佐等が必要な皆さんの便宜のことのために、先ほど法務省の事務当局も御答弁をくださいましたので、是非、より分かりやすく、後見だとこうなる、保佐だとどうなる、皆さんの場合ならどちらに当たるんでしょうかということがよりしっかりと判断していただけるような周知ができないかどうか、これは法務省や総務省等を含めて私の方でも努力をしたいというふうに思っております。
その上で立法政策論としての話については、私も直感的にも、前回の御指摘などを踏まえて、ここは変えられる余地があるのではないだろうかというような認識でお答えをして検討をいたしたのでありますが、一般的な理屈からいうと、事理の弁識する能力が常にない状態ではやっぱり選挙権は行使できませんよねというのは、それなりに合理的な判断であるかなというふうには思っております。
そういたしますと、ちょっともう一段次元の超えたところでの検討が必要かなというふうに思っておりまして、率直に申し上げて、私自身も今、じゃ、こういうロジックならば今御指摘のようなことを乗り越えられるかなということの答えを持っている状況ではございません。しかし、裁判がどうであるかということよりも、まさにこうした後見、保佐等が必要な立場におられる皆さんの人権という観点と、制度としての整合性、合理性という観点とをうまく両立させることができるのかということについての努力は更にしてまいりたいと思っております。
○谷合正明君 是非よろしくお願いします。引き続きこの問題は取り上げさせていただきたいと思います。
次に、生活保護世帯における義援金の収入認定について質問させていただきます。今日は小林政務官にお越しいただいております。
私は、これもう内閣委員会で、六月でしたかね、取り上げさせていただきました。当時は岡本政務官に答弁いただきましたが、義援金は収入認定扱いすべきではないと申し上げたんですが、それは金額の大きさによって決まるんだというような答弁でございました。
今日は資料を配付させていただいておりますが、本年の五月二日に社会・援護局の保護課長から生活保護の取扱いについての通知が出されております。それによると、2の自立更生計画の策定についての(2)のところに、包括的に一定額を自立更生に充てられるものとして自立更生計画に計上して差し支えないという判断が示されておりますが、これはあくまでもこの程度の話であって、あと自治体によって収入認定になっていたりという問題が今出ているというのが現実だと思います。
ところが、この通知の基となっているのが昭和三十六年の厚生事務次官の通知であります。今日も資料を配付させていただいておりますが、その中に「生活保護法による保護の実施要領について」ということで、(3)次に掲げるものは収入として認定しないこととあります。そのアには、社会事業団そのほかから被保護者に対して臨時的に恵与された慈善的性質を有する金銭であって、社会通念上収入として認定することが適当でないものは収入認定しないと書いてあるんですが、そうすると、義援金は、私はこのアに該当して収入認定から除外すべきであると明確にすべきだと思っているんですが、この見解についてお伺いします。
○大臣政務官(小林正夫君) 生活保護受給者の方が受け取る金銭の収入認定の取扱いについては、一つとして、最低限度の生活の保障、二つ目としては、自立の助長という生活保護制度の目的だとか、受け取った金銭の趣旨と目的を踏まえたものとすべきと、このように考えております。
今議員御指摘の義援金については、災害等によって被災した方が受け取る生活支援、生活再建に向けた金銭であると考えられるので、災害等によって損害を受けたことにより臨時的に受ける金銭、つまり委員がお示しをされた先ほどの事務次官通達(3)のオで示した内容に基づいて、災害によって失われた生活基盤の回復などの自立更生に充てられる経費、例えば被服だとか布団だとかテレビ、冷蔵庫など、こういうものについて認定除外とすることが適切であると、このように考えて判断をしているということでございます。
○谷合正明君 義援金はオに含まれてくるという話ですが、逆に言うと、このアに該当するものというのはどういったものが過去にあったんでしょうか。
○大臣政務官(小林正夫君) 御指摘の事務次官通知に掲げる社会事業団体等から支給された慈善的性質を有する金銭は、一つは、恒常的に一定額が支給されるものではなくて臨時的な金銭である、二つ目は、支給される金額も生活を保障するまでの金額ではなくて、生活保護受給世帯が受け取っても生活保護を受けていない低所得世帯とのバランスを失する程度とは認められないことから全額を収入認定除外としていることでございます。
個別的、具体的な金銭は例示しておりませんけれども、例えば歳末に都道府県知事又は市長が個人的にその収入や資産からもち代を給与する場合、あるいは歳末助け合い等の社会事業団体が支給する慈善的な金銭が該当することを想定して規定されたものと受け止めております。
○谷合正明君 その説明でありますと、義援金がなぜアでないのかというところがより不明確になってくるのではないかなと。オでもいいんでしょうけれども、アでもいいじゃないかと。義援金はなぜアではないんですか。
○大臣政務官(小林正夫君) 先ほど答弁したとおり、災害等によって被災した方が受け取る生活再建に向けた金銭である、こういうふうに考えていることが大きいものですから、先ほど言った判断をしているということでございます。
○谷合正明君 それでは、ハンセン病の補償金とサリン事件の賠償金、この間、予算委員会でうちの同僚の富田議員が言及されたものですけれども、これは収入認定の扱いになったんですか、ならなかったんですか。
○大臣政務官(小林正夫君) 生活保護受給者が受け取る金銭のうち、一つは生活保護受給者の自立更生に充てられる経費、二つ目は、生活費でなくて心身の苦痛に対して慰謝することを目的として、生活保護で保障していない受給に対応して支給される金銭については収入として認定しない取扱いをしております。
お尋ねのハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律によって支給される補償金については、国の政策によりハンセン病療養所入所者等の被った長年の精神的苦痛を国が慰謝するために支給されたものであることから、全額収入認定除外としたものでございます。
また、地下鉄サリン事件の被害者に支払われた賠償金については、一つとしては、無差別テロという社会を震撼させる極めて悪質かつ特異な事件であったこと、二つ目としては、被害者の損害賠償請求権を他の債権に優先させるとする特別法が制定されたこと等の事情を総合的に判断をして、保護受給中であった特定の被害者について、その賠償金を全額収入認定除外といたしました。
なお、今回の義援金を始め災害等によって損害を受けたことにより受け取る金銭については、その全額が被災者の方の心身の苦痛を慰謝するものだけではなくて、災害によって失われた生活基盤の回復という生活保護の意味合いが大きいと考えられるため、自立更生に充てられる経費以外は収入として取り扱うこととしており、過去の阪神・淡路大震災や新潟県中越沖地震の際も同様の取扱いをさせていただきました。
○谷合正明君 もう時間がありませんので、最後に。
その収入認定扱いをするかどうかというのは、これは結局誰が決めるんですか。大臣なのか次官なのか、また自治体なのか局長なのか、どういうレベルで決めているんですか。
○大臣政務官(小林正夫君) 自治体にお示しする通知の形式については、次官通知あるいは局長通知などありますけれども、今般、通知で示している収入認定に関する具体的な取扱いについては、大臣に御相談した上で次官通知に基づき厚生労働省としての考え方を明らかにしたものでございます。各自治体においては、厚生労働省の通知に基づいて適切に個別の事案ごとに収入認定を行っているものと考えております。
○谷合正明君 終わりますが、私は、義援金はその性質上、また今回の災害の性質上、収入認定から除外すべきであるということは明確にして改めて国から通知を出すべきであるということを申し上げて、質問を終わらせていただきます。