○谷合正明君 公明党の谷合です。
まず初めに、震災対応についてお伺いさせていただきます。
先日被災地域に行った折に、こういう悪質な詐欺事例が増えているということで、例えば、原子力損害賠償制度に基づく仮払金なんかが支給され始めるということで、高齢者かどうか分かりませんけど、電話で、その申請手続を代行すると、ついては通帳やら何やら渡してほしいというようなものが消費者センターにも届けられていると。これは未遂に終わったようではありますが、あると。
震災直後は恐らく義援金の詐欺とかあったと思うんですけれども、今後、各種支援制度、先ほどの原子力損害賠償金、また、ほかにもいろいろな各種公的な支援制度も支援金が支給されていきますと、高齢者、特にいわゆるそういった方々に詐欺が狙いを付けていくのではないかと思うわけでありますが、こうした点についてどのようにまず警察の方で取組を強化されているのか、この点についてお伺いさせていただきます。
○国務大臣(中野寛成君) お答えいたします。
御心配のことは誠にごもっともなわけでございますが、今の事例のちょっと前提で、時系列的になるかもしれませんが、今回の震災に便乗した義援金という名目の詐欺については、昨日までに全国で二十四件認知をし、そのうち九件を検挙いたしました。そのほか、事件性が判然としない不審情報を含め、昨日までに二百数十件の相談が都道府県警察に寄せられております。このような犯罪は被災された方々に対する国民の善意を踏みにじる悪質なものでありますから、この防止と、そして防止のための広報啓発に努力をしていく所存でございます。
その手口ですね、市役所職員や実在の団体を装うなどして電話や訪問等により義援金名目の現金等を求めるものが全体の約七割を占めて最も多く、震災に絡んで電気、ガス設備の点検、修理名目で現金を求めるもの、被災地にいる身内と装った電話で現金を求めるおれおれ詐欺、そういうものがございます。
また、いろいろ調査はいたしておりますけれども、いずれにせよ、いろんな相談、また啓発活動によって、広報活動によってこれを防ぐという努力を精いっぱいこれからもしていきたいというふうに思っているところでございます。
○谷合正明君 是非とも、注意のポイント等を当事者の方々、被災者の方々が実際どうしたらいいのかという具体的な行動につながるような注意喚起、またアプローチをしていただきたいと思います。福島の避難所にも福岡県警の方が訪問されていて、そういうようなこともされているわけですけれども、その折にもこういう詐欺対策なんかもしっかりと周知をしていただきたいと思います。
次に、法改正について質問させていただきます。
犯罪収益移転防止法の改正ですが、まず、改正の時期が今のこの時期になったわけでありますが、もっと早く対応できなかったのかという思いもあるわけでありますが、この点について、今見直しがこの時期になったということについて、この理由についてまずお聞かせください。
○政府参考人(小谷渉君) FATFの第三次対日相互審査によりまして様々な指摘があったわけでございますが、平成二十年十月、この相互審査の結果が公表されまして以降、私ども関係省庁等とともに対応策を検討してきたところでございます。
このうちで顧客管理に関する問題は、対象となります事業者が多岐にわたっていること、それから取引実務でありますとか、利用者、つまり国民の利便性にも影響をいろいろと与えるものでありますことから、事業者へのヒアリングでございますとか、有識者懇談会の開催等を経るなどいたしまして、関係省庁と慎重に検討を行ってきたものでございます。
議員から非常に時間が掛かっているではないかという御指摘でございますが、いずれにいたしましても、FATFからは相互審査結果の公表後三年である本年の十月までに改善を図れということを求められておりますので、本年十月のFATFの全体会合におきましては、できる限り良い評価をいただけるように改善状況につきまして説明を尽くしてまいりたいと考えております。
○谷合正明君 次に、このFATFの勧告なんですが、今回の改正では、取引時の確認事項の追加部分については、義務の主体である特定事業者から司法書士等の士業者が除かれているわけでございます。
これがなぜ除かれているのかというと、疑わしい取引の届出義務が課せられていないということだと思いますが、FATF勧告では弁護士等の士業者に対して疑わしい取引の届出義務を課すことを求めていると思いますが、この点について今後どのように検討を進めていくのか、御答弁ください。
○政府参考人(小谷渉君) 弁護士等のいわゆる士業者による疑わしい取引の届出につきましては、犯罪収益移転防止法の制定時に日本弁護士連合会等から依頼者との関係に与える影響について懸念が示されたことなどを踏まえまして、引き続き検討を行うこととし、この法制定時には届出義務を課さないこととされたものでございます。
今回の改正におきましては、FATF勧告、これ四十九ございますが、そのうち重要勧告とされる六つのうちの一つとして重要な位置付けがなされているにもかかわらず、四段階ある評価のうち最低の不履行との評価を受けております顧客管理の項目について最優先で対応を図らせていただくものでございます。
弁護士等の、御指摘のありました士業者の疑わしい取引の届出義務につきましても、重要勧告ということでは位置付けられておりませんけれども、FATFの指摘の一つでございます。我が国におけるマネーロンダリング事犯の動向等も踏まえつつ、関係省庁、関係団体と十分に協議の上、引き続き検討してまいる所存でございます。
○谷合正明君 確認ですけれども、そのFATFの勧告というのは、例えば我が国では日弁連等からの懸念が示されたことであるとか我が国なりの実態であるとかいうのは余り考慮されずにこういう勧告に至っているんでしょうか。ここは通告しておりませんけれども、もし分かる範囲でお聞かせいただければと思います。
○政府参考人(小谷渉君) これは、FATFではマネーロンダリング対策のために各国が取るべき基準というのをまず定めて、それに基づいて相互審査が行われる、各国を審査しているという形でございまして、それぞれの国によってもなかなか制度も違うわけでございますので、できるだけ基準をクリアするように各国努力をしているわけでございますが、その実情は国によって違っているところでございます。
ちなみに、弁護士による疑わしい取引の届出について、例えば米国、アメリカにおきましては法曹協会というところが、依頼者関係とか弁護士会の独立を損なういかなる法令にも反対する旨の決議がなされたということがございまして、アメリカにおいては弁護士に対する規制が掛けられていないとか、そういうもろもろの事情がございまして、日本としては、いろいろな条件がある中でできるだけその勧告にこたえようとして努力してきているところでございます。
○谷合正明君 今のと関連するところもあるんですが、四十九あるFATF勧告のうち我が国は不履行の項目が十あるということですが、改正が見送られている項目があります。
これは先ほど来の答弁の中で、例えばお国柄であるとかの事情が様々あるとか、あと、各国に比べて相対的に低いとか高いとかそういうことでもないという大臣の答弁もございましたが、そう聞くと余計にどういうことなのかと私もよく分からなくなるんですが、国際的な基準が我が国の実情に当てはまらない部分があるというふうに受け止めてよろしいのか。
また、一方で国際的な信用力ですね、このFATF勧告という勧告があるわけですから、こういう国際的な勧告という観点から、やっぱり我が国の場合ですと他国に比べるとバツの数が多いわけです。そうすると、今回改正しなかった部分について今後どういうふうに進めていくのかという点について、併せて大臣の方に答弁願いたいと思います。
○国務大臣(中野寛成君) 御指摘のように、四十九あるFATF勧告のうち、重要勧告とされる六つのうちの一つであるにもかかわらず四段階ある評価のうち最低の不履行との評価を受けたと、ここからスタートしているわけですが、顧客管理の項目について、マネーロンダリング対策上の効果や事業者、国民の負担等を慎重に考慮した上で、可能な範囲で最優先で対応を図ろうとするものということであります。
これ、警察だけが担当している分野というのはかなりごく一部でございます。金融庁や各省庁が担当している分野、約十省庁ぐらいに及んだと思いますけれども、九省庁ですね、にまたがりますので、それぞれの省庁が自分の分野で担当するところをそれぞれに検討していただいております。
これを一括してまとめて、相談をして、日本国政府としてどおんと出せれば、もっと一気に問題解決というか、イメージも上がってくると思いますが、それぞれに経緯、歴史ありますし、別に縦割り行政で云々することではありませんけれども、しかし、それは精査をしていきませんと、国民の負担もこれは増えます、協力をいただけないといけませんので。そしてまた、犯罪防止のための効果も上げなければいけない。これらのことについては、まずできることからやっていこうと。そして、一番悪い評価をされたところからしっかりやっていこうということで、まず警察で自分の分野、所轄のところについてスタートをさせたということでございますので、そこはよろしく御協力をお願いしたいと思います。
○谷合正明君 大臣がそう答弁されましたけれども、まさにほかの役所と絡むところがあるので、逆にほかの役所の進行具合どうなのかなと思っていると、余り警察庁に比べると動きが見えないものですから、私はある意味、連携する部分はしっかりと連携していただきながら、十月の会合あるんでしょうかね、これにしっかり臨まないと、何か再度また勧告を受けるとか、そういう事態になりかねないのではないかと思っておりまして、警察だけよければいいという話でもないと思いますので、どうぞこの点についてはよろしくお願い申し上げます。
以上で終わります。