12月18日付公明新聞の「ポスドク」就職支援の取り組みに関する特集記事に、谷合正明参院議員のコメントが掲載されましたので、以下転載します。
(東京事務所)
「ポスドク(博士研究員)」を企業に生かそう!
博士号を取得した後、「任期付き」の有期雇用で研究を続ける「ポストドクター(博士研究員)」は、大学教員のポストが限られている就職難の中、不安定な生活環境で細々と研究を続けているのが現状だ。優れた専門性を持つポスドクを産業界に生かすため、民間企業への就職支援に力を入れる大学や自治体の取り組みを紹介する。
大学が実践講座で就職支援
博士課程からのキャリア教育も
「夢や希望、目標を実現するには、いろいろな考え方や見方を身に付けなければならない」―。早稲田大学の「博士キャリアセンター」が主導している講座・博士実践特論A「イノベーション・リーダーシップ」では、受講生が真剣な表情で講義に聞き入っていた。同講座は、民間企業などで活躍するために必要な経営管理力や指導力、交渉力などの基礎を学ぶもので、現在、理工系の博士課程大学院生を中心に約20人が受講している。
同大学がポスドクのキャリア(職業)教育に力を入れ始めたのは2006年。まず「ポスドク・キャリアセンター」を開設し、企業との交流会の開催やインターンシップ(就業体験)先の開拓・紹介、個別相談などを行ってきた。さらに08年には、現役の博士課程大学院生と博士号取得後5年以内のポスドクを対象にした博士キャリアセンターも開設し、取り組みを発展させてきた。
こうした取り組みの背景には、ポスドクの人数増加に対し、大学教員や常用雇用の研究職ポスト数が横ばい状態である上、民間企業への就職など研究職以外への道も平たんではないといった実情がある。
だが、同大学の博士キャリアセンターは「きちんと本人に研究する力があれば、他分野でも即戦力になれる。大事なのはポスドク自身がその可能性に気付くことだ」と指摘する。実際、特に就職が厳しいとされるバイオ(生命科学)関連の専門研究を行っていたポスドクのAさんは、同センターの講座に参加して「バイオ関連以外の分野でも自分の知識が生かせる」と気付き、材料技術を基盤とする電気メーカーへのインターンシップに挑戦した結果、同企業に就職できた。
同センターにはこれまで、他大学に籍を置くポスドクを含め698人が登録しており、同センターの指導による内定・就職者数は36人で、このうち28人が民間企業に就職している。
広がる自治体の取り組み―
中小企業とマッチング 京都府
雇用企業へ人件費助成 香川県
自治体によるポスドクの就職支援も始まっている。
京都府は、府内の大学に籍を置くポスドクを対象に、中小企業とのマッチング(適合)を図る事業を今年7月からスタートさせた。
同事業は、ポスドクの高度な研究技術を「ものづくり」現場に生かすため、府内中小企業への就職を支援するもの。具体的には、就職を希望するポスドクは府の中小企業技術力向上支援センターに直接雇用(6カ月間)され、中小企業からの技術相談や依頼試験を行う府の試験研究機関で現場研修を受けながら、就職先を探すことができる。今年度の事業期間は12月末までで、現在、2人が就職・内定、3人が就職活動中だ。
京都府は、人口の10人に1人が学生か大学関係者という“大学の街”京都市を抱え、府内45大学に籍を置くポスドクは1600人以上。一方、府内の中小企業も研究開発型の企業が多いことから同事業をスタートさせた。府は「両者の出会いの場が大切だ。この事業を始めたことで、中小企業のポスドクに対する見方が大きく変わった」(ものづくり振興課)と、その手応えを強調している。
また香川県は、最先端技術分野の人材を獲得するため今年度から、ポスドクを雇用した企業に対し人件費を助成する制度を実施。これまで8社で10人が採用されている。
党青年委員長 谷合正明参院議員
就労支援の強化・拡充を
政府が大学院生倍増などの施策を進めたことで博士号取得者が増加したものの、出口に当たる大学教員などのポストは限られており、多くが有期雇用の不安定な雇用環境の中で、研究を続けている実態があります。
このような常用雇用に就けない博士号取得者らポスドクの数は年々増加しており、2008年度では約1万8000人に上っています。研究職以外の職を選択するにしても、年齢の高さや“専門分野以外の事柄や常識に疎い”といった固定観念で、採用が進まず、ポスドクを採用したことがない企業は全体の86・6%を占めます。
しかし、ポスドクは、これまで取り組んできた専門研究のノウハウや基盤を持っており、それこそ、誰にも解けなかった難問を解決する“知性”と高度な分析能力を持っています。実際に採用した企業の8割以上が「ほぼ期待通り」の働き方をしていると回答したとの調査結果もあります。
そこで、公明党は先の参院選マニフェスト(政策綱領)で、大学と産業界の連携強化などポスドクの就労支援の拡充を掲げてきました。特に、日本には専門的、独特な技術を持つ中小企業も多く、うまく出会いの機会を創出していくことで、雇用機会を生み出すことができます。今後ともポスドクの就労支援の強化に取り組んでいきます。
(公明新聞:2010年12月18日より転載)
「ポスドク(博士研究員)」を企業に生かそう!