○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
今年の施政方針演説の中で福田総理は平和協力国家という言葉を用いました。「平和協力国家として、国際社会において責任ある役割を果たします。地域や世界の共通利益のために汗をかく、魅力に満ち、志のある国を目指したいと思います。」というふうに述べられたわけでございます。
二十一世紀に入ってからも依然として戦争、紛争が絶えず、不幸な歴史が繰り返されております。特にその中でも小型武器や対人地雷などの非人道的な兵器が子供を始めとする多くの一般民衆の犠牲を生んでいるというのが特徴ではないかというふうに思います。小型武器による年間の犠牲者が約五十万人というふうに推定もされております。
こうしたことから、やはり我が国としても、このODAの中でも平和協力国家として通常兵器であるとか小型兵器の軍縮への取組を一層力強く進めていただきたいわけでありますが、まずこの点について高村外務大臣に御決意を伺いたいと思います。
○国務大臣(高村正彦君) 小型武器は冷戦後に頻発している地域紛争等において主要な武器として使用されているわけで、紛争を長期化、激化させるだけでなくて、紛争後の復興開発を阻害し、さらには紛争の再発生を助長する原因として極めて重要な問題であると認識をしております。
我が国としては、二〇〇一年に採択された国連小型武器行動計画に基づきまして国際的なルール作りと被害国におけるプロジェクトの支援、これを二本の柱といたしまして、小型武器の取組において積極的な役割を果たしてきているわけでございます。
特に実際に小型武器の被害に苦しむ国や地域において、包括的な観点からの小型武器対策プロジェクトを積極的に支援しております。紛争予防・平和構築無償資金協力により、カンボジア、シエラレオネ、リベリアなどで小型武器回収を始めとしたプロジェクトを支援しているほか、西アフリカ諸国経済共同体諸国の小型武器管理計画を支援しているわけでございます。
○谷合正明君 実は先日シエラレオネの外務次官の方にお会いして、日本のその取組、高く評価をされておりました。まさにこの小型武器の回収があったわけでありますが。
更に付け加えますと、人間の安全保障の理念を基にしたソフトパワーの外交を、しっかりと平和外交を推進していくということが求められているんだと思っております。国連総会の本会議、二〇〇六年の本会議でありますけれども、十二月に行われた際に、武器貿易条約、ATTに向けて、通常兵器の輸入、輸出及び移譲に関する国際基準の設置についてを賛成百五十三、反対一、棄権二十四の圧倒的多数で採択されました。
我が党としましても、この武器貿易条約、ATTを早期締結する必要があるというふうに考えておりまして、推進小委員会というのも設置してまいりました。
現在、ATTが国際世論の後押しも受けまして、また日本政府そして英国の積極的な取組もありまして、いよいよ本年、先月二月には政府専門家会合も行われましたし、この専門家会合を幾つか経て、本年の国連総会の場に報告書が提出されるというふうにお聞きをしております。
このATTが今考えておりますのは、兵器のいわゆる管理でございます。何も輸出を禁止させるというものではございません。とりわけ大型武器につきましては、基本的には国家の管理運用下にありまして、その使用や移転もコントロールされやすいわけでありますが、小型武器については、不法取引によって簡単に紛争地に拡散するだけじゃなくて、安易に使用されて日々多くの命を奪っているわけでありまして、アナン前の国連事務総長も小型武器を事実上の大量破壊兵器というふうに呼んでいるわけでございます。
そこで、我が国としてもこのATTの条約の早期締約をしっかり実現すべく積極的に取り組むべきであると考えておりますが、大臣の御見解をお伺いいたしたいと思います。
○国務大臣(高村正彦君) 武器貿易条約は、今後、通常兵器の輸入、輸出及び移譲に関する国際共通原則を定める国際約束を作成しようという構想でございます。
我が国は、武器輸出三原則等の下、原則として武器を輸出しておりません。また、国連等において小型武器を含む通常兵器の問題に積極的に取り組んでいるところでございます。
ATT、武器貿易条約は、こうした我が国の立場と基本的に合致するものであります。我が国は、これまでも国連総会決議案の提出や東京でのシンポジウム開催等を通じこの条約に関する国際的議論に積極的に参加してきており、今後もこうした努力を続けていきます。積極的に議論をリードしていきたいと考えております。
○谷合正明君 ありがとうございます。
その際、このATTにつきましては、まだ議論が始まったばかりでございますので、どのようにまとめていくかということが、対象武器の範囲であるとか、そういったことがまさにこれからの課題なんでありますが、現時点で例えばアメリカがどこまでこのATTに参加してくるのかであるとか、中国だとかロシアといった協力は得られるのかとか、いろいろな論点があるわけでありますが、我が国としては主体的にかかわっていくわけでございまして、このATTの検討に乗り出した国際社会の行動を何としても結実させる必要があると思っております。
いろいろな幾多のハードルはあろうかと思いますが、それを越えていくためのリーダーシップをどう発揮するのか、我が国のこのATT実現に向けての役割というのはどのように認識されているのか、この点について再度お伺いいたします。
○国務大臣(高村正彦君) 本年は、国連の枠組みで武器貿易条約、ATTの実現可能性や構成要素等について検討するための政府専門家会合が開催されているわけであります。第一回会合は二月に開催され、我が国からも政府専門家が参加しました。今後、五月に第二回会合、七、八月に第三回会合が開催されることとなっております。
政府としては、ATTは平和協力国家としての我が国の立場と基本的に合致するものと考えております。我が国としては、国際紛争等の助長を回避し、かつ幅広い国の参加も得られるような国際約束の作成を目指すべきとの立場から、ATTに関する国連総会決議の原共同提案国として積極的に参加していく考えでございます。二国間や多国間の枠組みを通じて、いろいろ積極的にやっていきたいと考えております。
○谷合正明君 そこで、確認させていただきたいんですが、ある識者によると、我が国のこの武器輸出三原則とこのATTの関係性で、恐らく我が国の場合、ATTより現に厳しい基準で適用されているわけでありまして、このATTをつくることは何ら困難性は伴わないわけであります、我が国にとっては。
しかしながら、このATTというのは、武器輸出三原則を補強するのか、三原則の修正を迫るものなのか。つまり、我が国の武器輸出三原則が、極端な話、武器輸出の余地を生むようなことはないのかということも言われているわけでありますが、この点について確認をさせていただきたいと思います。
○国務大臣(高村正彦君) 政府としては、武器輸出については、平和国家としての立場から、それによって国際紛争等を助長することを回避するとの目的の下で、いわゆる武器輸出三原則及び武器輸出に関する政府見解に基づいて、引き続き慎重に対応していく考えでございます。武器貿易条約は、こうした我が国の立場と基本的に合致するものであります。
武器輸出三原則はより厳しいもので、そういう考え方を国際的に国際約束として、それほど厳しくなくともやりましょうと、こういうことですよね。そういう約束ができたから必然的にそこまで日本も緩めると、そういう話じゃありません、ありません。仮に武器輸出三原則を緩めるとすれば、それはまた別の観点からいろいろあるかもしれませんけれども、この国際約束を作ったからその国際約束と同じだけに緩めると、そういう話になるというものではありません。
○谷合正明君 分かりました。ありがとうございます。
いずれにしましても、このATTにつきましてはNGOなんかもかなり積極的に実現に向けて頑張ってこられていらっしゃいまして、この運動をしてきた二〇〇三年の当時は、これは理想論だというふうに、非現実的だというふうに言われていたそうでありますが、ここまでこの議論が進んできております。富士山で言ってもまだ二合目のところなのかもしれませんが、いよいよこの実現に向けて我が国の平和協力国家としてのソフトパワーをしっかり発揮していただきたいし、そういう場であると私は思っておりますので、よろしくお願いいたします。
最後に、アフリカそして環境、この問題についてお伺いいたします。
今年は、アフリカと環境が、二つが大きなキーワードになるわけでございます。私は、いろいろ現場でアフリカの支援関係者の方の話を聞きまして、アフリカの環境問題で今一番何が深刻ですかということで聞いてまいりましたら、一つには、アフリカの森林破壊というのがあるというふうにお伺いをいたしました。世界で森林破壊というとどうしてもアマゾンに目を向けがちなんですけれども、まさに酸素の供給源、まあCO2の吸収源でもありますが、アマゾンに次いで世界で第二番目の大きな森林地帯というのがアフリカのコンゴ流域のコンゴ盆地の森林地帯なんですね。
まさに、私は、アフリカと環境がキーワードとなっている年にアフリカの持続可能な森林経営を可能とするあるいは森林保護を進める、こういった取組が日本が積極的にあってしかるべきだなというふうに考えました。とりわけ国際熱帯木材機関というITTOという国連機関を我が国は横浜に招致をしておるわけですね。その横浜でTICADが開催されるということは、これは本当に時宜にかなっているんじゃないかなというふうに思います。
そこで、私は具体的にアフリカの森林問題というふうに提起いたしましたが、アフリカの環境問題についての取組を最後にお伺いをいたします。
○国務大臣(高村正彦君) 御指摘のあった国際熱帯木材機関は、アフリカのコンゴ盆地における取組として、同地域のカメルーン、中央アフリカ、コンゴ民主共和国、ガボン、コンゴ共和国に対して、一九八九年から二〇〇七年までの間に計七十件、約二千九百二十二万ドルのプロジェクトの実施を支援しています。このうち我が国の支援額は約二千八十六万ドルであり、アフリカ、コンゴ盆地におけるITTOプロジェクトに対するトップドナーとなっているわけであります。
今後とも、こうしたアフリカの環境問題への取組を継続していく考えでございます。
○谷合正明君 是非、金額だけでなくて、これやっぱり広大な地域ですので、効率的にまた我が国も現地の専門家を養成していく必要があると、私はそのように考えております。
このTICADの大成功のために、是非積極的に取り組んでいただきたいと申し上げまして、私の質問を終わります。