○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
本日は、まず初めに、明石海峡で起きました船舶衝突事故に伴います漁業被害について一問質問をさせていただきたいと思います。
これは三月五日に、明石海峡の特定航路内で三隻の船が衝突して、うち一隻が沈没してしまうと、そういう事故でございました。その沈没した船に七十七トンの燃料油が搭載されていたということで、油の流出被害によりまして、兵庫県の明石ですとかまた神戸市等、たくさんの被害が出たところでございます。私も予算委員会で質問をさせていただきましたが、改めてこの農林水産委員会で質問させていただこうと考えております。
特に、兵庫県、ノリの養殖が盛んでございまして、ただ、油がノリに付着してしまったということで、付近の漁業組合の方はノリを全面撤去という苦渋の選択をしたわけでございます。全国で第二位のノリの生産量をこの兵庫県誇っているわけでありますが、今回のノリ漁の中止ということで、ノリの被害だけでも約四十億円以上に上るということでありました。
私も現場の神戸市の漁業協同組合さんに伺いました。ノリの養殖業というのは先行投資型の産業なんですと、まず言われました。というのは、秋口、十月ごろに網を仕掛けて種付けをして、その際に育苗だとか船舶などの整備などへ借金をまずするんですと。実際お会いした方は、七百万円ほど借金をして秋口からノリ漁を開始してきたと。いよいよこの三月、四月でノリをいわゆる収穫する段階になったときにこの船舶の事故が起きたということで、まさに借金の返済から利益に転じるこの今どきに、今回この事故のタイミングが本当に最悪だというふうに訴えられて、この先どうして食べていけばいいのかという切実な訴えを聞いてまいりました。
私もその翌日、予算委員会で質問をして、現行制度上なかなかいかんともし難い。船舶が、特定されている船舶もおりますし、責任者がはっきりしているわけでございますので、第一義的にはその船舶が責任を背負うということなんでありますが、ただ、四十億円のノリの被害に比べると、今回の船舶が、船主責任保険の関係上六億から七億までの保険金の出る上限が決められているということで、十分な対応がし切れていないというのが現場での非常な悩みでございました。
私は今回、農林水産省さんに特に聞きたいのは、水産庁として何ができるのかという話でございます。
いろいろ現行制度上課題は残されているんですけれども、例えば漁業共済の早期支払ですとか融資制度、これも特段の配慮をお願いしたいというのが現場の願いでございます。融資制度一つ取ってみても、実は元々借金をして今まさに利益を得る寸前の被害でございましたから、その上で更に融資を受けるというのはなかなか難しいんですけれども、しかし、そうはいっても、農林水産省としてできることは何ができるのかということをまず冒頭に伺いたいと思います。
今回、実際、現場から要望を受け取っていただいた澤政務官にまず質問させていただきたいと思います。
○大臣政務官(澤雄二君) まず最初に、今回の事故で漁業被害に遭われました漁業関係者の皆様方に心からお見舞いを申し上げたいというふうに思います。
農水省といたしましても、十八日には、直ちに水産庁の栽培養殖課長ほかを現地に急遽派遣いたしまして、現況調査を行わさせていただきました。
御質問の点でございますが、委員も先ほど言われましたように、基本的には、漁業被害の補償につきましては加害者と被害者の間で解決されることが基本となっております。農林水産省といたしましても、できる限り速やかに漁業共済金が支払われるように水産庁から全国漁業共済組合連合会に対し要請をしたところでございます。
また、災害を受けられました漁業者が運転資金の融資を受けられるように、これはいわゆる農林漁業セーフティーネット資金でございますが、この資金の金利が、たまたまでございますが今回〇・五%また安くなりました。一・二五%で償還十年でございますが、農林漁業金融公庫に対して、漁業者の方の相談に的確かつ迅速に対応するよう依頼したところでございます。これを受けて、農林漁業金融公庫では大阪支店に相談窓口を設けたところでございます。また、地元の兵庫県におきましては、出先機関などに金融相談窓口を設置しているところでございます。
農林水産省としましても、引き続き、関係地方公共団体と密接な連携を取りつつ、適切に対処していきたいと思っております。
また、今回被害を受けられた地域におきましては、従来から地域の特色を生かしたノリの養殖、そしてイカナゴの漁業等が営まれております。特にイカナゴにつきましては、くぎ煮といった創意工夫を持った特産品も産出をされております。
農林水産省としても、漁業者が一刻も早く今回の被害から立ち直っていただけるように、地域の漁業の振興を図ることができるように、漁業共済金の早期支払に努めるとともに、関係地方公共団体と連携を取って、また関係省庁とも連携を取りまして、ノリの色落ち対策などの地域の実情に応じた振興策を積極的に進めてまいりたいと考えております。また、地元から要望があった場合でございますが、先ほども答弁でありましたけれども、燃油高騰対策資金、これの柔軟活用についても検討したいというふうに考えております。
○谷合正明君 是非きめ細かい対応を今後ともお願いしたいと思います。
制度上の欠陥については、これは国交省の方に私もこれからしっかりと政治家として働きかけてまいる決意でございます。欠陥というのは、要は、タンカー船なんかで油が流出した場合は、そこは漁業被害が大きく広がるわけでありますから、油濁損害防止法に関する基金の創設という取組があるわけでありますが、ただし貨物船に入っている燃料油の場合は十分な対応がないわけでありまして、この辺り、明石海峡というのは特定航路でございまして、非常に船舶がたくさん通航していると。かつ、潮の流れも速くて、一方でそれは漁業者にとってみると非常に漁業盛んな地域でもございます。こういった特定航路とそういう重なっている漁場、これ瀬戸内にはかなり多くあるわけでありまして、私は、これ今後の教訓に生かしていかなければならない、そういうふうに考えております。
次に、森林・林業についての質問に移りたいと思います。
私は、先日、鳥取県の若桜町というところに行ってまいりました。林業の振興について地元の、御存じでしょうか、地元の小林町長始め林業関係者と懇談をしてまいりました。この若桜町というのは、兵庫県、岡山両県に接する急峻な山々に囲まれた山間地でございまして、町の総面積の九五%を山林が占めるというところでございます。
昭和四十年代は林業が盛んな町で非常に活気があったというふうに地元の方は口々に言われておりました。しかし、林業従事者の高齢化と、またその減少によりまして森林施業が困難になっているので、森林経営の衰退とともに森林の荒廃が進んできていると。森林が担う多面的機能も低下するのではないかというふうに危惧をしていると。旧森林組合もこの町では解散をしておりまして、木材の流通機能も衰退しているわけでございます。こういう状況のところというのは幾多もあるんだというふうに私は思います。
公明党が昨年の十一月から十二月まで過疎集落実態調査というものを行いました。ここでは高齢化率の高い四百七十六の全国の集落から調査回答、実際に現地に行って、地元の首長さん、あるいは集落に住んでいる方から聞き取り調査を行いました。その結果、十年以内に集落が消滅すると予測している自治体の首長さんというのはもう三〇%にも上っているわけですね。
この過疎化、集落の過疎化が進んだ原因としては、高齢化、後継者不足、そして農林水産業の衰退というものを挙げられると。これは集落に住んでいる方も、また自治体の方もそういうふうに理由を挙げるわけであります。
全国には今六万の過疎集落がありまして、このうち林野率が八〇%以上の山間地は約二万集落ですね、約三分の一を占めております。先ほど私が言いました鳥取県の若桜町も、昭和四十年代、林業が盛んだったと。木を切った、木材出荷した昭和五十年ごろ、そのときに植林したものが今ちょうど樹齢で三十二年とかそのぐらいになっているわけですね。間伐の時期をまさに迎えているわけでございます。かつて、そういうふうに林業が盛んだった町が、今ちょうどその当時に植林した木が三十年ぐらいになってきているというのが今全国の過疎集落の実態ではなかろうかというふうに思います。今過疎化が進んでいるそういった山間部の町村では、ある意味そういう森林資源がたくさん埋まっている、眠っているということになります。
公明党としては、今回の調査で、農林水産業は国土保全、雇用確保として効果が大きく、その多面的機能を森林の荒廃や耕作地の放棄など過疎対策として活用することが重要だというふうに考えております。その際、農林水産業を単なる産業施策としてだけではなくて、過疎対策の重要な柱として公的施策を活用、採用すべきというふうに考えているわけでありますが。
まず、この森林また林業についての考えを大臣にお伺いしたいんですが、過疎地域における集落、特に山村を維持し国土を保全していく上で林業という産業が果たしてきた役割についてどのように認識されているのか。また、今後、山にしっかり人が入って、森林整備を進めていくことができるようにしていくべきだというふうに考えておりますが、二十一世紀の林業をどのように再構築していこうと考えていらっしゃるのか、まず所見をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(若林正俊君) 公明党が昨年、いわゆる限界集落と言われるような過疎地の集落の実態調査をなさいました。その状況については報告を受けまして、大変きめ細かな調査、地域の状況に即して、それを類型区分しながら大変有効な資料を私もいただいたというふうに考えております。
その中に、お話がございました若桜でありますような圧倒的に森林の占める比率の高い地域において林業というものが果たしている役割、これが役割を果たせなくなったことによって今おっしゃるような形の地域の崩壊、崩落が進んできているんじゃないかという御認識、私もそのようなことを心配いたしております。私も長野県でございまして、長野県の北部のそういう山地が圧倒的でありますような地域の皆さんとも親しく付き合っておりまして、そういう山村の状況というのは私なりに承知いたしていると思います。
この森林が持っている国土保全とか水源涵養とか、そういういろいろな多面的な機能は持っているわけですけれども、その受益は言ってみればその川下のみんなで受益をしているということになっているわけでございます。ですから、この林業というのは、こういうような役割は果たしているという意味では緑の私は社会資本だというふうに思い、この社会資本である森林を支える上で重要な役割を果たしてきていると、こう思うわけでございまして、また、林業というのは山村地域の主要な実は産業でありますから、山村地域を活性化していくためには、林業の発展がなければそこに人が住み着いていくことができない、そういう意味でこの林業というのは大事な役割を果たしているわけでございまして、一方で、今おっしゃられましたような、ちょうどこの間伐適期といいますか、もう三十年生、三十五年生になるような人工林が各地に放置されたままあるということでございまして、この利用可能な森林資源は年々拡充されているわけでございます。
そのために、農林水産省としては、二十一世紀における森林・林業に関する施策の基本指針となります森林・林業基本法に基づいて策定されました森林・林業基本計画、これに基づきまして国産材の利用の拡大を軸とした林業・木材産業の再生を図ることにいたしております。また同時に、国民運動を展開しなければならないという意味で、美しい森林づくりの国民運動、これはもう企業の皆さん方も含めまして幅広く国民運動を展開しつつあるわけでございます。
具体的な林業政策としては、森林施業をやはり集約化して、作業道などの路網と高性能林業機械の一体的な組合せによります林業生産コストを下げていくということ。そして、緑の雇用対策がございます。その緑の雇用対策によりまして新しい林業就業者、若い林業就業者を確保してこれを育成すること。そして、市場のニーズに合わせた木材製品の安定供給体制を整備すること。そして、四つ目でありますが、木材バイオマスなどの木材の総合的な利用の促進というものを積極的に図ってまいりたいと、こう考えているわけであります。
私は、先ほど、宮城県に参りまして非常に新しい技術革新によります国産材をカツラむきにして合板を作っている大変進んだ企業を拝見させていただきました。驚いたことに、この宮城県の工場ですけれども、今まで処理に困っていました長野県のカラマツですね、どうしてもカラマツというのは曲がっていたりして利用しにくいという問題があり、油が多いとか、いろんな問題があって実は地元で利用できなくて困っておりましたが、この間伐材が宮城県に運ばれて、もうどんどん持ってきてくれと、こういうお話でございました。やはりそういう新しい製品というものが開発されてきておるということも踏まえまして、合板でありますとか集成材でありますとか、そういうようなニーズと山の川上の部門の生産体制を再構築するものとが結び付くような形で一つのシステムをこれからつくっていかなきゃいけないなとしみじみ思ったところでございます。
それに加えまして、先ほど来指摘されておりますバイオマスの利活用という意味で、林地残材なども、間伐材なども一つの商品としての価値が出てくるような対策を講ずることによって地域におきます産業を育てていくということが大事ではないかと、こんなふうに考えているわけでございます。
○谷合正明君 ありがとうございます。
まさに今、若桜町は、先ほどは何か大分過疎化が進んで進んでばっかり言ってしまったんですけれども、実際立ち上がっているわけですね。何とか町の有効な資源を活用できないかと、まさに緑の社会資本だということで立ち上がっておりまして、まさにそういう地域をバックアップするような施策を展開していただきたいというふうに思います。
それで、林業についてなんですが、木材自給率が平成十七年、七年ぶりに二〇%台を回復したということでございます。木材価格を見ると、中国等における需要増などにより外材価格は上昇傾向にありまして、国産丸太の競争力は高まっているというふうに認識をしております。
まず、国産材と外材の価格を比較すると、杉丸太などは国産の方が安くなっているのではないかと。外材に比べ価格が安くなっているとすれば、じゃ果たして何が国産材の生産量をもっと増やすことがなかなかできないそのネックになっているのか、この点についての考えをお聞かせください。
○政府参考人(井出道雄君) 御指摘のように、近年では国産材の価格の方が外材の一部よりも安いという現状にありますけれども、せっかく価格が安くなっているにもかかわらず国産材の生産量が伸びていない原因でありますが、やはり今大臣からも御答弁いたしましたように、国内の森林の所有構造が小規模零細で原木の安定供給体制ができていないということ、さらには、原木を加工、流通する体制も小規模、多段階で、市場ニーズに応じた製品の供給が進んでいないということが主たる原因ではないかと考えられております。
このため、山元では、施業の集約化ですとか、路網と高性能の機械を組み合わせた低コスト作業システムを開発、普及することによって原木を低コストで安定供給する体制をつくっていくと。また、受け取る側では、乾燥材等の品質、性能の確かな製品を安定供給できるような流通確保体制を整備すると。この二点においてしっかり施策を講じていくことによりまして、原木の確保から製品供給に至るまでの国産材の競争力が確保されていくというふうに考えております。
○谷合正明君 政府は、競争力の高い製材加工体制を整備するために、平成十八年度から五年間の予定で新生産システムを推進されております。まさに、先ほど言われたようなネックとなっていることの事項を克服するための新生産システムであろうかと思いますが、十八年度から開始された新生産システムの実施状況をまず伺いたいと思います。また、このシステムを今全国で十一か所のモデル地域でやっているところかと思いますが、全国的に展開させることについての見通しについてもお伺いいたします。
○政府参考人(井出道雄君) 新生産システムと言われるものにつきましては、大ロットで安定的な木材供給体制の確立を通じまして林業を再生したいということで仕組んでいるシステムでございます。今委員からお話がありましたように、平成十八年度から五か年計画で全国十一か所のモデル地域において、川上、川下一体となりまして大規模な加工施設と直結した木材の安定供給体制を確立することを目標にして今推進をいたしております。
現在、この十一のモデル地域におきましては、施業の集約化を実行するモデル的な林業事業体が育成される、あるいは伐採可能な立木資源情報のデータベースの整備が進んでいる、あるいは高性能な林業機械の活用によります森林施業、素材生産、流通のコストダウンのための取組が具体的に実践、普及されつつある、さらに製材工場の大型化等のための木材加工施設の整備が計画的に進んでおります。
この生産システムにつきましては、五年間実施して、この大規模なモデルとしての評価を踏まえまして今後の展開方向を検討していく考えでございます。
○谷合正明君 はい、分かりました。
間伐材の利用拡大についてなんですが、先ほど大臣の答弁の中で宮城県の例を出されて、間伐材をどんどん利用しているんだという話がありましたけれども、林業の採算性向上を図る上でも間伐材の利用拡大というのは非常に大事だと思いますけれども、政府は間伐材の利用拡大について具体的にどのように取り組まれているのか、重複する部分も多々あろうかと思いますが、重ねてお聞きいたします。
○政府参考人(井出道雄君) やはり間伐材の用途としましては、大きなものはやはり合板、集成材等の原料として大量に利用する取組というのがまず第一であろうと思っております。
そのほかにもいろいろと工夫はいたしておりまして、例えば公共事業の土木資材への利用促進ということで、斜面の土砂を固定する土止め工等への利用等を関係府省にもお願いしまして公共事業で扱っていただくとか、あるいはガードレール等といったものにも新たな間伐材の利用用途の拡大ということで取り組んでおります。さらに、先ほど御説明いたしましたやはりバイオマス、バイオ燃料等への木質資源の転換ということも今後の大きな課題であり、また大きな期待を持っているところでございます。
○谷合正明君 いろいろな森林関係者にお会いするたびに言われるのが、間伐材にしても木を切り出すにしても運び出すにしても、路網が整備されていないんだと。路網が整備されていないから林業が衰退したんだというようなことも言われるわけですね。卵と鶏の議論のような感じもしないでもないんですけれども、実際に林業を成立させるために今後新しい例えば林業機械を導入することにより伐採、搬出作業等の生産性を上げると、いわゆるコストを下げるという必要性があるわけですね。
路網が整備されているかどうかが非常に大事なわけで、しかも、今高齢化していてますます作業が困難になっているわけで、まず路網について、現在の整備状況、我が国の整備状況、そして、これは諸外国と比べた場合、整備水準についての、これはどのように認識をされているのか、この点について伺います。
○国務大臣(若林正俊君) まさに一番のポイントだと私思っております。
先週の金曜日に群馬県に出かけまして、まさに間伐を進めているある森林組合を訪ねたわけでございます。そこでは、まさに高性能の林業機械を導入をして、緑の雇用で就労するようになりました青年たち七人が非常に力強く希望を持って作業に従事していたわけでございますが、このような高性能の機械が入るということは、まさにこの林道と路網とがセットで整備されていくということが必要になってくるわけでございます。
お話にございました、我が国の場合に路網が大変整備が遅れていると、林道路網の整備が遅れているという現状、そして外国との比較はどうだというお話がございましたが、日本はヘクタール当たり十六メートル、オーストリアはヘクタール当たり八十七メートル、ドイツはヘクタール当たり百十八メートルというような大きな差があります。これは、やはり日本の場合は急傾斜地が多いということで道路を入れにくいといったような事情も当然あるわけで、ドイツやオーストリアのような平地林というのと違いますから林道路網の整備が難しかったということもありますが、同時に、それだけではなくて、今までの進め方が皆伐方式でやってきたと。皆伐方式で、一斉造林で一斉皆伐というような、それに応じた作業システムとして林道から、よくありますが、ケーブル引いて架線で引っ張り出すという、そういう集材方式を長く取ってきたというようなことが林道の整備の中心として行われてきたということもあったと思うんです。もちろん、そうでなければ集材できないところもあるわけでございますけれども、できるだけ路網の整備の効率を上げ、技術的にも非常に工法も進んできておりますから、やはり林道の整備と路網の整備を調整して、連携した形で進めていくということがこの間伐を進めるために高性能機械の導入のためにはどうしても必要なことだと、このように考えております。
○谷合正明君 そうなんですよね。ヘクタール当たり十六メートルという、オーストリア、ドイツに比べると本当に数字が低いわけでありまして、私が先ほど言った鳥取の若桜町でいうと、国有林野だとヘクタール当たり十メートルですね、民有林野だと五メートルだけなんですよね。これは非常に、確かにこの数字を言われると、確かにこれで林業というか、間伐頑張れといってもなかなか頑張れない実情が、状況があるのではないかなというふうに思います。
今後の具体的な計画、大臣いろいろな技術のやり方の見直しだとか言われましたけれども、これは林道路網、路網というのは計画的に整備することというのはできないんですか、将来、何年までにどのくらい造るとかいう。こういうことについて、まずちょっと認識を伺いたいんですけれども。
○政府参考人(井出道雄君) 我が方におきましても、平成十八年九月に閣議決定されました森林・林業基本計画におきまして、こういった高性能林業機械を活用した効率的な作業システムが構築できるように、そのためには林道と作業道、作業路の適切な組合せによる路網整備は進めなければならぬということをうたってきております。
ただ、具体的には、今若桜町の例を挙げられましたように、その地域の山の状況ですね、急峻であるか、なだらかであるかとか、そういうことにもよりまして、その林道と作業道、作業路の組合せというものが変わってまいります。従来、我が国では、林道の開設延長に比べると、やっぱり作業道、作業路の開設延長が少ないということがございまして、ここ数年では、林道に比べて作業道、作業路の開設延長が三倍から四倍というふうにだんだん作業道、作業路にシフトしてきております。
そういった具体的な地域地域の実情も踏まえてその路網整備はやっていかなきゃならないということでございますが、もちろん補助事業においても、今申し上げました高性能林業機械導入等とセットにして、そういうまとまって団地間伐をするような地域において作業道、作業路を入れていくということもセットでできるような事業も今急速に展開をいたしているところでございます。
○谷合正明君 時間がなくなってまいりましたので次の質問に移りますが、環境対策としての面からこの林業振興ということで質問したいんですが、先ほど来の質問の中にありましたが、京都議定書によるCO2削減約束のうちの森林吸収目標の達成ですね、これが平成十九年度から二十四年度まで六年間において毎年五十五万ヘクタールの間伐等の森林整備を行っていくんだと。合計三百三十万ヘクタールの森林を整備する必要があるわけであります。
追加的整備として、十九年度から二十万ヘクタール間伐が新たに求められ、付け加えられたわけでありますが、このための予算もしっかり付いているんだという話なんですが、実際、この追加的整備について予算を確保されたわけですが、この事業の執行実績について確認をさせてください。
○政府参考人(井出道雄君) 御指摘のように、平成十九年度につきましては、この追加整備量はその二十万ヘクタールを超えまして二十三万ヘクタールやれるだけの予算は確保されておりますけれども、間伐は主として時期的には木々の成長が止まる秋以降に実施されるものが多うございまして、現在、まさにその実施に向けてひしと取り組んでいるところでございます。
執行実績については、現在時点ではまとまっておりません。しかし、これだけの追加整備をするということで努力をいたしてきておりますので、昨年に比べれば当然相当程度の整備量増加が見込まれると考えております。
○谷合正明君 今はっきりおっしゃっていただかなかったわけですが、多分、恐らくまだ目標には届いていないんだと思うんですね。
そこで、特に民有林についての間伐がなかなか国有林に比べれば遅れているんだと思いますが、その原因の一つとして、間伐を実施する際、所有者負担があると思います。基本的に国が五割、県が二割、所有者負担三割という理解でよろしいんでしょうか。例えば、それが一ヘクタール三十五万円とすると、個人負担はやっぱり十万円ぐらい掛かるわけですね。
この所有者負担を限りなくゼロにしていくということをしていかないと、この間伐へのインセンティブってなかなか働かないんじゃないかなというふうに考えるわけでありますが、この点についてどのように考えていらっしゃるのか、御所見を伺います。
○国務大臣(若林正俊君) この間伐を進めるに当たって、民有林の場合、これは所有者がその間伐をすることに同意をしてくれなければ間伐できないわけですね。間伐をする主体は、森林組合の場合もあれば、あるいは施業をする素材生産事業者の場合もあるんですけれども、いずれにしてもその森林所有者と合意をして、区画をきちっと確定をして、この区画についてはどういう形で間伐を進めるかということを森林所有者の同意をいただかなければ事業ができない。
そこで、その同意をいただくに当たって、最終的にあなたが、所有者がですよ、将来、木が立派に成長することを考えて、今ここは投資のつもりで負担してくださいと、こう言っても、二十年先、三十年先どうなるか分からないものに、負担までして同意するというようなことがなかなか難しいんですね。
実際進んでいる間伐の事例を聞きますと、まあせいぜいその負担のない、とんとんで、あとは事業者がいろいろやってもらって間伐材を処分をして売りますね。そうやって、それが収入になって費用を賄うと。まあ補助金を得ながらやれるようなものでないと所有者がうんと言わないというのが現実なんですね。
そういう意味では、おっしゃるように、その森林所有者の負担がゼロになるような形で、その間伐材あるいは間伐に伴って発生をいたしますその林地での資材というものが有効に処分されるという、そういうシステムと同時に、間伐をするその作業の効率を上げないと、生産性を上げないとゼロになるというのは、なかなか難しいんですね。
先ほど私お話ししました群馬県の森林組合は、組合長、大変マネジメント、経営の感覚があるんでございましょう。話を聞きますと、間伐します、それで材木として売れる物は市場に出すと。しかし、その先の方の細い部分は、市場まで持っていけば運賃で大体マイナスになってしまうという細い部分は、細い部分だけでまとめまして、そして地場の建設業などに自分たちで売り込みに行っているんだそうです。
それを自分たちで売って、それを収入にカウントして、私が行きました林班、その事業地区について言うと、ヘクタール当たりで二十万ぐらいの所有者に対する還元ができるかなと、こういうことを言っておりました。その辺は手堅く踏んでいかないと、二十万と言っていて十万だったら怒られるから、手堅く手堅く、十万と言って二十万ぐらい上がれば喜んでもらえると。そうすると、次の林地についてもまた任せてもらえると。
そういうようなお話をしておりまして、やっぱり現地現地の状況で、どのようにしてその間伐をした材が売れるか、そしてまた、そのためにどのような能率を上げた間伐施業ができるかといったようなことが現場では非常に大事だというふうに思っております。
○谷合正明君 ありがとうございます。
もう時間が一分ぐらいしか残っていないので、最後に、せっかく国土交通省さんに来ていただいていますので、質問させていただきます。それは地籍調査の件であります。
山の地籍調査が、林地ですけど、これ四〇%しかまだ明らかにされておりません。こうした低い理由問うと、余り理由のところはもう時間ないですから、これを今後やはりしっかり把握すべきではないかと思います。さらに、都道府県によってばらつきがございます。鳥取県では、この地籍調査ではっきりしているのが一九%でございます。一方、青森、岩手だと九〇%ぐらい地籍調査がしっかり進んでいるわけですね、林地の部分が。済みません、これは林地じゃないのかな、平均ですね、農村、いわゆる農地も含めた地籍調査です。
こうしたばらつきの差があるというのもどうなのかなと思いますし、今後、この地籍調査、山を持っている方が高齢化して、あと何年いらっしゃるかは分かりませんけれども、早くもう手を打たないと駄目だと思いますので、ここ国交省さんにちょっと最後、決意だけお願いします。
○政府参考人(宮崎正義君) 地籍調査の進捗率、先ほど委員お話ございましたように、十八年度末で全国平均で四七%でございますけれども、林地は四〇%という状況でございます。
元々、山林原野の公図というものは精度に問題があるものが多いと、それから測量等に、急傾斜で測量が困難であると、そういった事情もございます。
先ほど委員がおっしゃいましたように、最近では所有者の高齢化あるいは不在村化が進んでおりまして、なかなか境界の確認が困難となってきていると、そういったこともあろうかと思います。
それともう一つ、林地と併せまして、都市部につきましては、さらに現在、特に一九%と進捗率が低くなっておりまして、都市部でございますので、土地が細分化されて筆数が多いとか、権利関係が錯綜している、そういったこともございます。
地域における進捗の差につきましては、当然、実施主体であります自治体の体制、そういったこともあるかと思いますけれども、こういった土地の種類ごとの事情、こういったものも反映しているかと考えております。
このような状況でございますので、国土交通省といたしましても、都道府県、市町村等に対しまして地籍調査の推進を従来から働きかけているところでございますけれども、特に進捗が遅れております都市部あるいは山村地域につきまして、例えば山村地域におきましては、取りあえず山林のおおむねの境界を保全する、こういった事業を国が直轄で行い、実施主体である市町村が今後取り組みやすい環境づくり、こういったものを整備すべく努めているところでございます。
今後とも、これらによりまして、地籍調査の推進に一層努力してまいりたいと存じております。
○谷合正明君 終わります。