○谷合正明君 公明党の谷合です。
本日は、都市空間におきます諸課題のうち、都市農地の在り方の問題と、また踏切対策について質問をさせていただきたいと思います。
まず、都市農地の問題であります。特に、都市計画法上の市街化区域内に存在します農地についてでございます。
この市街化区域は、基本的に市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とされておりまして、市街化区域内に存在する農地に関しましては宅地化が原則となっております。例外的に、保存すべき農地として新しい生産緑地制度が平成四年に、ちょうどバブルの景気が終わったときでございますけれども、平成四年に施行されたということでございます。
それ以前は、都市農地の宅地化など開発を基調としたまちづくりが必要だった時代だったと私も認識しております。また、地価高騰を招きましたバブル景気によりまして、税の面で優遇されている都市農家に対しての風当たりというものが非常に強かったというふうに当時のその議事録見ても分かるわけであります。
しかし、時代が大きく変化をいたしまして、人口減少時代に入り、また都市環境に対する住民の要求というのも大きく変わってきておりまして、まちづくりに対する考え方の転換が求められているのではないかと思っておるわけであります。例えば、東京では八割以上の住民の方が都市農地を保存すべきであると、あるいは大阪でも、アンケート調査を行ってもやはり九割以上の方が都市農地であるとかそういった緑を保存すべきであるというように答えているわけでございます。
私、最初に質問させていただきたいのは、この都市計画の考えでいわゆる農地を宅地化にするというこの原則、この考えというのはこれ時代に合っていない考えではないかと、そのように思うわけでありますが、その見解についてお伺いいたします。
○政府参考人(中島正弘君) 今委員からいろいろお話しでございましたように、我が国が都市化していく中で、基本的には平地部で農地や林地を宅地に変えていくというプロセスで都市化が進行しまして、その過程でいろいろな問題があって、昭和四十年を挟んでいろんな議論をして新しい都市計画法ができまして、今御指摘があったような都市計画法のフレーム、つまりその市街化区域を定めて、その中は一応農転をフリーに、届出だけでできるようにして、その外は規制しようということで一応大きな線を引いて、なおその中に改善の余地が残るじゃないかという問題が次の問題として出てきまして、それをどうするのかということで、原則は宅地化するという中で保全すべき農地もあるんではないかと、いや、それは農家に対する優遇ではないかとかいう、まあ今もおっしゃったようないろいろな議論がございました。
平成四年に、市街化区域であっても保全すべき農地はあると、生産緑地という考え方はその前からあったんですけど、税制と泣き別れになっておりましてうまく活用できなかったんですが、税の方と足並みをそろえて新しい制度がスタートしまして、そもそもその線引きの考え方そのものがどうなんだと、これはまた大議論でございまして、ただ、人口全体の動向とかを見ますとこれは議論しなきゃいかぬことだと思います。確かに思いますが、地域地域でまだまだ跛行性がございますし、まだ増えているところもございますし、そうでないところもございますし、全体として制度をどうするかというのはもうちょっと時間を掛けて、その実態を見ながら議論をしていかなきゃと思いますが、問題意識は持っております。御指摘の点は重要な指摘だと思います。
ただ、現行の枠組みの中でやはりやるとすれば、生産緑地をうまく使うというのが基本かなと思いまして、一番問題意識を持っておりますのは、生産緑地、平成四年にやりましたときにそこでもう大議論をして、農地を二つに分けるんだという感じで議論を。ただ、制度上はその後も状況に応じて生産緑地の追加の指定というのは可能でございますので、私どもその追加の指定の考え方を、追加していいんだよということは言っておるつもりでございますので、その辺を更に指導しながら、もちろん御本人の同意が要るという仕組みでございますので行政だけの自由になりませんけれども、コンセンサスのできるところを、残すべき農地を生産緑地の仕組みをうまく使って、あと市民農園なんという制度もございますけれども、残していくべきではないかというふうに思います。
○谷合正明君 ありがとうございます。
そもそも論として、線引きの問題が市街化区域と調整区域、なかなか実態に合っていないのではないかという声が現場からあるわけでありますが、その議論をするとちょっと大きくなって、今日、私は都市農地に絞って議論させていただきたいわけでありますが。
先ほど生産緑地制度を活用するというお話がございました。昨年成立いたしました住生活基本法では、都市農地を保全を視野に計画的に利用するとしております。これは基本的に今答弁いただきました生産緑地制度を活用するということでよろしいでしょうか。
〔委員長退席、理事山下八洲夫君着席〕
○政府参考人(中島正弘君) 済みません。失礼しました。
御指摘のとおり、やはり住生活基本法の中でも、基本計画の中でも農地と住宅が調和したまちづくりなど言われておりますが、やはりその場合も、市街化区域で農地を残す場合はやはり生産緑地が基本になると思います。
○谷合正明君 生産緑地制度を活用していくということなんですけれども、現在三大都市圏におけます生産緑地、この生産緑地に指定された緑地はほぼ横ばいで推移しております。一方で、宅地化農地はほぼ半減しております。ただ、このままいくと、生産緑地に指定された農地さえも相続を契機に切り売りが進むのではないかという懸念を私も持っているわけであります。
生産緑地制度を活用するのであれば、この制度をいかに使いやすい制度にしていくかということが問われるわけであります。ただし、現場からは、なかなかいろいろな経緯もあり、元々税制面での問題もあり、この制度についてはかなり農家も、分かるんだけれども、例えば終身営農の規定であるだとか、あるいは農地面積の下限面積が五百平米で指定されているだとか、制度の利用しにくさが問題になっております。
まず、生産緑地制度は今五百平米というのが下限面積の面積要件になっているわけでありますが、その根拠についてはどういうことなのかと。恐らくその公共施設等の敷地の用に供する土地という条件があるんではないかなと思うんですが、そういうことであれば、例えば市民緑地の下限面積である三百平米の要件であるとか、特別緑地保全地区の面積要件なしという規定があるわけでありますが、そういった柔軟な対応というのはできないのかなと。見解をお伺いいたします。
○政府参考人(中島正弘君) 平成三年の生産緑地法改正によりまして、平成四年から施行されたわけでありますが、その前の生産緑地はもっと規模が大きくて、一ヘクタール、二種というのがございますが、これは〇・二ヘクタールですが、それでも〇・二ヘクタール、二千平米でございました。当時、大変議論ございまして、片方で税を厳しく、厳格にやるということと、農地として営農を継続するということを厳しく求める一方で、やっぱり規模を思い切って引き下げようということで、一挙に二千平米を五百平米まで下げました。
〔理事山下八洲夫君退席、委員長着席〕
そのときの考え方は、都市計画、率直に申し上げまして、都市計画でむしろ面積が付いている方が珍しくて、ほとんどのものは都市計画を決定する人が合理的に決めるというのが建前、原則でございまして、むしろ珍しいんでありますけど、やはり税のサイドの要請もあり、あるいは営農困難になったときに、買取りを申し出て、最後公共施設で受け止められるかというところが制度の構成になっておりますので、今ちょっと仕組みが変わってしまったんですが、当時は都市公園で、どんな公共施設、一番最後に、小さくてもばらばら出てきても受け止められる公共施設はやっぱり公園かなということになりまして、公園で受け止めるとしたら、補助の一番下限が五百平米だった時代がございまして、まあ五百かなと。今はもうずっと上がってしまいまして、ただ、辛うじて特別な中心市街地の一部の区域とか、そういうところでは五百平米でも一応補助金が付くことになっておりますので、まあ何とか五百でもっていると。
それを更に下げるということにつきましては、市民緑地というのはあくまで所有者が持った状態で公共サイドと契約で管理するという仕組みでございますので、生産緑地の解除のときのように売りたいという場合に、ちょっと制度として合わない面があるんじゃないかと思います。
そういう細かい点はともかくとして、更に下げるところにつきましては、いろんな各方面の合意といいますか、税がそれに付いてくるということが何よりも前提でございますので、その辺の税負担の公平性の観点から、関係省庁あるいは広く国民全体の合意みたいなことが必要になるのではないかと、このように思います。
○谷合正明君 分かりました。
生産緑地制度、面積を変えたとしても租税特別措置法の方が付いてこなければしようがないよという、これが本当に大きな悩みであるわけであります。
先ほど、買取り制度についてお話しいただきましたけれども、受皿としては公園があるのではないかと。そこで、五百平米になったということでありまして、この買取り制度、市町村が特別の事情がない限り買い取ることとされているわけでありますが、実際に買い取った実績というのはどれくらいあるんでしょうか。
○政府参考人(中島正弘君) 公園が受皿になるという答弁をした後で大変答えにくいんでありますけれども、実績を申しますと、買取りの申出が、取りあえず三年間調べましたんですが、十六年、十七年、十八年で買取りの申出が全部で五千六十七件ございました。そのうち実際に買い取られましたのが二十九件、五千六十七件あって実際に買い取られたのは、公共団体が買い取ったのは二十九件でございます。
公園はまた三件でございまして、その他、ちょっと内容は分かりませんが、公共事業の用地となったのが十九件、代替地になったのが六件、その他一件、計二十九件、これが実績でございます。
○谷合正明君 本来の法律の目的にかなった適切な管理が実際のところされていないということなんですね。これは、農家サイドにとってみればどう使われようが、売れればいいというか、買い取られればいいんですけれども、ただ、実際、農地、緑地が消えていくという現実があるんではないかなと。
先ほどちょっと御説明もいただいたわけですが、都市緑地法にも買取り制度があると。この制度は、市町村が買い取る際、補助が出るわけでありますが、生産緑地制度にはこういったものがないがゆえに財政的な問題で市町村が買い取れないという見方があるわけでありますが、この農地、緑地を残していく、計画的に利用していく、保全を視野に入れていくという思想からすると、この農地、緑地を維持することを促進する施策というのがちょっと必要なんではないかなと私は思うんですが、その点いかがでしょうか。
○政府参考人(中島正弘君) 補助金につきましては、片や補助金改革という流れもございまして、なるべく小さな補助金はもう廃止してという片方には流れもございまして、実は公園に対する補助金もどんどん面積要件が上がっていっている状況でございます。
ただ、そういう中で、都市と緑をどう守るかというのは大変重要な課題でございまして、公共で買い取らないまでも、先ほど先生が言われた市民緑地なんかもそうですが、民間で持っていただいたまま公共がある程度契約で施設整備だけするとか維持管理だけするとか、そういった形で活用する制度でありますとか、あるいは市民農園的に活用していくとか、農地ともう一つ屋敷林というのもございまして、これもまた町中では随分議論になりまして、なるべく立派な林や森を残したいわけでありますが、昔農家は、農地をお持ちでかつ雑木林をお持ちで自分のおうちがあるという、そういう構成であったんだろうと思いますが、平地に結構、東京の西の方なんか中心に残っておりまして、こういったものをどう残していくかというのは大きな検討課題だと思います。
予算の制度あるいは法律の制度、いろいろ課題ございますけれども、どっちにしましても何らかのお金といいますか、売る方は動機があって、そこを止めるという話でございますのでなかなかうまくいきませんが、持てる制度を活用して、あるいは必要があれば新しい制度も視野に入れて、いろんな方の御意見聞きながら進めなければいけない課題だというふうに思っております。
○谷合正明君 是非、鋭意検討していただきたいと思うわけでありますが、本当に国土交通省だけでできる話じゃない、農林水産省であるとか、財務省も絡んでくるでしょうし、税の話になってきますと。その辺がこの都市農地の問題のネックになってきているということはさんざん指摘されているわけでございます。
踏切の質問もしなきゃいけないんで、ちょっと一つ質問を飛ばさせていただいて、大臣に、今ちょっと細かい議論もしてきたわけでありますが、それはさておきまして、都市農地の意義というんですか、在り方、これからの都市環境の中にあってどういう存在意義があるのかということを大臣の御見解を聞きたいわけであります。
また、先ほど申し上げましたとおり、これは国土交通省だけで全部できるかという課題ではなくて、農林水産省であるとか、との連携が必要であると。これは前の北側国土交通大臣も国会の中でそう答弁されていらっしゃるわけでありますが、是非ともこの都市農地の保全また計画的な利用が前進できるようなことを進めていただきたいと。最後に、この問題についての大臣の御見解をお伺いいたします。
○国務大臣(冬柴鐵三君) 緑とオープンスペースというのは都市生活者にとっては大変重要なものでございます。緑地があるということ、それからまた防災の面で、防災空間としても大変重要でございますし、それから体験といいますか、都市生活者にとりましても、一坪農園で休日に夫婦であるいは子供連れで野菜や花や、そういうものを作るという楽しみ、これ非常にニーズ高いわけですね。
そういう意味でも、私はやはり快適で豊かな生活というものを保障する意味において、都市の中におけるこのような農地が必要だと私は思っております。
ただ、農業者にとって農地というのは事業用資産ですよね。ですから、その人が亡くなったときにそれが相続税の対象になってしまいますと、もう都市農地は非常に高い値段ですので、それだけでもう相続税を納めれば農地は売らなきゃならないと。これはもうはっきりしているわけです。したがいまして、それを売らないようにするためにはどうするのかと。
他の中小企業者の、例えば商工業者にとっても、例えば新宿通りのようなところでしにせが店を構えている。このときに社長が亡くなったら、これは全部相続財産と言われたら、これはそのなりわいはもう成立しなくなってしまうわけで、そういう租税、相続税とそれからそういうような事業用資産をどう扱っていくのかという非常に大きな問題がそこにあるように思われます。
私は、このような困難な中で農業政策と、谷合委員も言われましたように、それから租税の問題どう考えるのか、それからそういうような農業者とか中小企業者、商業者、そういう人たちの事業用資産の承継というときに租税とどう絡めてこれを解決していくのか、非常に大きな問題がある。そのいろんな知恵がそこに絞られたのが生産緑地制度というような形でしているわけですけれども、それは面積要件が大きいんじゃないかとか、あるいは三十年間も営農しなければならないと、それでその途中で売ればワークペイされるということは非常に大きいとか、いろんな意見がここに絡んでいると思います。
私も冒頭申し上げましたように、都市空間にこのような緑地が必要だということを前提に考えて、今のるる申し上げた困難な問題にも挑戦をしていかなきゃならないというふうに思っています。一つの方法としては、一坪農園のような形で都市内にある農業地を残していくような方法はないのかなというような考えもありまして、いろいろ、東京のある区では何々方式というような形で、そういうような工夫もしているところもあります。こういうことをヒントにやはり考えていかなきゃならないと思っております。
○谷合正明君 大臣の前向きな答弁と、また問題の本質をついた御指摘もいただきまして本当に有り難いなと思っております。税の話については、ほかの公平性の観点もありますので、この都市農地だけの問題じゃなくて、中小企業の事業承継の話であるとか、一体的に考えなきゃいけない課題であると思っております。
次に、最後、ちょっと残りの時間をいただきまして、踏切対策についてお伺いいたします。
我が国は大変踏切の多い国でございまして、東京二十三区内に踏切が約七百か所ある一方、パリには二十か所しかないというか、本来東京が多過ぎるんだという指摘があります。
まず、その踏切にもいろいろあって、今年の四月に全国の踏切を交通実態総点検されたということで、約二千か所が緊急対策が必要だと、ピーク時に四十分以上閉まる開かずの踏切、いわゆる開かずの踏切が六百か所、歩道が狭い踏切が六百か所というのがあると。
踏切対策につきましては、連続立体交差だとか、それが本当に抜本対策として必要なんですけれども、これはもう経費あるいは時間といった問題でなかなか目に見えてこないと。そう考えますと、一方で開かずの踏切対策、この速効対策という、いわゆる速効、歩道橋を造るだとか本当に歩行者の安全を考える対策を取るだとか、そういったことは必要だと思うわけでありますが。
ちょっとまとめて質問させていただきますが、まず国交省としては平成十八年から二十二年までにこの一千二百に関しては速効対策を講じるとされておりますけれども、現在までの進捗状況と、私はこの平成二十二年までに目に見える形でしっかり全部対策を講じていただきたいと思うわけでありますが、その見通しについて見解をお伺いいたします。
○政府参考人(宮田年耕君) 御指摘のありました千二百か所、速効対策をやるべき箇所ということで調査結果をまとめさせていただきました。
五か年で全部速効対策をやるということでやっておりますが、現在のところ、千二百か所のうち約半分、五百六十三か所について整備計画が策定されております。大体市町村道というところが多うございますので、市町村の方に整備計画を立てていただくということでございます。十八年度はその一割、百二十一か所で事業を実施しております。事業費は九十五億円でございます。平成十九年度は約四割の箇所、ダブるところも出てきますから継続事業もございますが、約四割の箇所、五百か所で、事業費は百四十五億円でございます。
大体半分のところが整備計画ができているということでございますが、残り半分、これはまず整備計画を立てていただく、その後事業ということになりますので、立てていただくことが肝要であります。踏切道調整連絡会議というのを私ども、鉄道事業者と道路管理者でつくっていただきますので、そういう場を活用して整備計画の立案、策定、そういうのを強めてまいりたいと思っております。
速効対策、五か年で全部できますように、いろんな働き掛けをやってまいりたい、あるいは財政的な措置をやってまいりたいと考えております。
○谷合正明君 終わります。