○谷合正明君 公明党の谷合です。
本日は三人の参考人の先生方、本当にありがとうございます。
まず、私の方から青木参考人にお伺いをいたします。
先ほどと同趣旨の質問になろうかと思いますが、保険制度あるいは供託制度の加入の義務化、この影響についてお伺いしたいんですが、住宅生産団体連合会、七団体あると。そのうち当初から賛成の意向を示していたのは全建連さんだけであるということでございました。その理由としては、大手の住宅メーカーと同様に保険あるいは供託を義務化すれば同じ土俵に立てるということをおっしゃっていただきました。既存の住宅保証機構の住宅性能保証制度について、今これ四万社が入っているんでしょうかね、大体。
ただ、国全体として中小零細の工務店の数というのはどのくらいあるのかちょっと私も分かりませんけれども、十五万から二十万社ぐらいあると言われておりますけども、やはり同じ土俵に立てるとはいえ、やはり住宅性能保証制度に加入していない零細中小の方も多数いらっしゃるというわけで、この保険あるいは供託制度の導入というものが中小零細の工務店により良い競争結果が働くとする理由を改めて教えていただきたいと思います。
○参考人(青木宏之君) 今、データでいきますと、保証機構が四万二、三千社登録されています。これ代々の工務店の、木造についてだけ言いますと三十五万戸ぐらいをそこで造っている形で、実は工務店の登録、全建連も含めまして何社というのには、何年も柱をいじったことのない工務店というのは結構いるんです。つまり、増改築だとかメンテナンスだとかってやって、これも大切な仕事で、今度の住生活基本法では重要な位置を占めるんですが。住宅の新築についてだけの制度でカウントしますと、例えば三十万戸を四万社でやると十棟弱ぐらいで、そんなような形で、実態としては、家を造っている人というのは、ですから新築のうちを定期的に造っている人というのは工務店の中で十社に一つぐらいになってきたのかなという現状です。
全建連がこれを賛同させていただいたのは、先ほど言ったように同じ土俵に立ってということと、もう一つは保証機構の保険住宅についての経験があったということで、これを推し進めることがやっぱり消費者の保護に、保護と先ほどから偉そうに言っていますが、そんなことは考えていないんで、これから永続的に仕事をやるには必要なんだろうなという形で賛成をさせていただいています。
○谷合正明君 それで、確認させていただきたいんですけども、引き続いて青木参考人、伺いますが、供託と保険で、大手のメーカーさんが供託にいくと言われているわけでありますが、逆にお伺いしますが、青木参考人の知る範囲で結構ですけれども、実際に中小の方で、保険ではなくて、じゃ供託ということもあり得るのかという点についてお伺いします。
○参考人(青木宏之君) これは、工務店というのは普通の会議では本音を言わないで、後の懇親会だとか飲み会で本音を言うというこういう人種でして、例えば人によっては、国債なんかを何千万円と持っているやつは結構いるんです、個人でですね。そうすると、そういうものが供託に何か該当するというようなことをお聞きしていますので、そういう人間は多分個人でそれを出して会社に貸すんですか、どういう方法だか分かりませんが、そういうふうに言う人間は結構います。ですから、必ずしも保険制度に全部乗るという人間ばかりではない。
それで、もちろんそういう人間は年に三棟とか五棟っきり建てていないから供託金ももちろん安いという、何千万円ぐらいで済むと。あれが発表された段階で、私の印象としては、先ほども出ていますが、たくさん建っている建物については、まあ対数曲線だからしようがないんでしょうけど、意外と安いなと。一棟建っている、一棟を十年間でやる人は二千万とかといって、あの辺が少し、そういう面ではもう少し、何かもうちょっと払わないと、もう住宅メーカーがつぶれたときには大変なことになるなというような印象もありますが、いずれにしろ、工務店でも供託を選択できる、するかどうか分かりませんが、できる人間は結構います。
○谷合正明君 それでは、犬塚参考人と松本参考人にお伺いいたしますが、まず総括的な、これまでの耐震偽装問題を受けての国交省が出した第一弾、第二弾、今回の法案は第三弾と言われておりますけれども、総括的な評価をいただきたいんですが、まず公明党としましても、耐震強度偽装事件が発覚した当初から、瑕疵担保責任の履行確保を売主に義務付けることが再発防止策として最も有効であると指摘し、法制化へ尽力してまいりました。当時もあの北側国土交通大臣ということもありましたので、公明党も力を入れてきたわけでございます。
特に、住宅購入者の保護という観点から、第一弾の建築基準法の改正、第二弾の建築士法の改正だけでは不十分であるという思いを持っておりまして、この瑕疵担保の今回の法案については、またその法案にない救済基金の枠組みについては非常に画期的なものだというふうなとらえ方をしておりますが、まず、一連の昨年からの耐震偽装問題を受けてのこれまでの国としての取組について、消費者保護という観点からどのように総括的に評価されるのか、両参考人、お伺いいたします。
○参考人(犬塚浩君) 消費者保護の観点という趣旨から申しますと、建築士法の改正等につきましては、日弁連内部でも、住宅問題に積極的に取り組んでいる弁護士の方からまだまだ手ぬるいというふうな意見もございました。また、今回の新法に関しましても、故意、重過失のケース等について十分なる担保ができていないんではないかという意見も確かにございます。
いろいろな考え方があるんですが、一つは、非常に不幸でありました耐震偽装事件につきましては、ちょっと個人的に厳しい言い方をさせていただくと、私ども弁護士、それから例えばお医者さん、それから建築士もそうだと思いますが、いわゆる専門職という社会的な評価を受けている人間が、言葉を悪く言えば非常に魂を売る形にしてあのようなことをしてしまったわけであり、私個人としては、やはり一番の責任は専門家である当人にあるものと考えております。
もちろん、このような不幸な事件が起きた以上、それに対して政策的な観点からの方策がなければならないとは思いますが、やたら厳しくするということ自体が必ずしもまたいいのかというと、そういうものでもない。もちろん、性善説だけでは決着できない問題があるというのは十分認識しておりますが、かといって罰則等を厳しくすればそれでいいという問題でもない、チェック機能を厳しくすればそれでいいという問題ではないと思います。チェックを厳しくし過ぎれば、その分プロセスに影響を与えて、その分がコストオンされれば消費者もある意味では困るわけでございます。
漠然とした言い方でございますが、私個人の意見としては、この程度という言い方はちょっと語弊があるかもしれませんけど、これぐらいのさじ加減が活性化とそれから警告という意味ではベストなんではないかと個人的には認識しております。
以上です。
○参考人(松本光平君) この問題の処理は、ワンセットで予防と救済がそろって初めて処理が全うされるというふうに考えております。
その観点からいいますと、第一弾である建築基準法の改正は、本来は不特定又は多数の国民の安全を守るために規制するのが建築基準法の目的であって、個人の資産を守るものではないのですけれども、反射効果として非常に効果がある、消費者保護に関してですね、反射効果として非常に効果があるものと考えております。
それから、建築基準法の改正につきましては、直接的な影響は罰則の規定があります、強化されましたので、悪者が出る確率が小さくなるという意味ではある程度効果があるかと思いますが、本来、基本的な問題とはちょっと関係がないのではないかと、この消費者保護という観点からすると直接的な関係がないんではないかと考えていました。
それから、今回のこの救済措置につきましては、現状ではベストなものではないかと考えます。世界的に見てやったことのない、つまり供託で消費者保護をするというのはやった例がないはずなんですけれども、そういった新しい分野に一歩踏み出すという点で、いろいろ問題が将来出るかもしれませんが、画期的な考え方ではないかと思います。
総合的に言いますと、非常に短期間に対策をそろえるということについては非常に大変な御苦労があったんではないかというふうに考えております。
○谷合正明君 それでは、犬塚参考人にお伺いいたします。
この法案では、政省令に委任している事項というものが結構多くあるわけでありますが、保険金額でありますとか被害者からの直接請求の場合の相当期間でございますとか供託金額、先ほど説明の中にも触れられていらっしゃる部分もございますけれども、改めて具体的な御意見を伺いたいのと、保険金額、直接請求の場合の相当期間。
また、瑕疵の範囲ですね、対象となる瑕疵の範囲についてやはりどういうふうに考えていらっしゃるのか。これも実際明確に瑕疵であるかどうかというのはなかなか現場に行くと分からないことが多いと。瑕疵なのか劣化なのかなかなか、非常にそれこそが本当に大変であるという話を聞きますが、その点について意見をお伺いいたします。
○参考人(犬塚浩君) 法案を見させていただきまして、私ども作業としましては、政令と書いているところと省令というところに書いているところにラインマーカーを引いて枠組みを見るわけでございますが、国土交通省令で定めるというところが大変に多いなという印象は正直持っております。それは今、松本委員からもありましたように、非常に大枠を決めて早く対応したいという背景もありますので、それ自体を私は非難する考えはございません。
今後の検討として御注意いただきたい点につきましては、特に冒頭に申し上げた点でございます。再度繰り返すようでございますが、保険内容の点については被害者の救済に資するように十分御配慮いただきたいと思います。ただいま御指摘ありましたとおり、実は欠陥住宅の被害金額は項目に分けますと結構直接的な工事費以外に損害金というものが発生するものでございます。
多少テクニック的なといいますか技術的な話をしますと、なかなかまだ金額がどの程度掛かるかということの算出が難しい状況にございます。先生方も御存じかと思いますが、交通事故の分野というのは大体幾らの損害というのがある程度判例等の集積によりましてでき上がっておりますので、割と保険というものになじみやすいという実態があるわけですが、まだ建築の裁判事例につきましてはそこまでの分析が進んでいないのが実態であるために、保険でカバーでき得る部分というものが、いわゆる保険という制度の下では限界があるというのも確かでございます。
ただ、それではなかなか消費者の保護は図り切れないところがございますので、消費者の側に立ちますと、その範囲をできる限り広くお願いいたします。直接工事費は言うまでもなく、それに伴う、大体紛争のためには建築士さんにお願いしてその調査をお願いしなければなりません。実際、工事をするときには、再度補修していただくときにはその監理の費用も必要になってまいります。ケースとしては少ないですけれども、ちょっとその間移転することになれば引っ越し費用、それから移転先の居住費等が発生するわけでございますので、その点を広く御確認いただければというふうに思います。
省令の制定につきましては、私ども日弁連としていろいろな御意見を出させていただいて、是非とも国土交通省には意見を尊重していただいて反映させていただきたいというふうに考えておりますが、大きな点といたしましては、冒頭に申しましたように、保険の内容、それから保険法人の中身といった辺りに現段階では非常に注目しております。
以上でございます。
○谷合正明君 終わります。