○谷合正明君 公明党の谷合です。時間もございますので、手嶋参考人にお伺いをいたします。
私は、国連改革を勉強する議員連盟にも入っておりまして、その中でも安保理の改革、常任理事国の問題でございますけれども、そのPTに入っていた関係もありまして、その国連について質問をさせていただきたいんですが、まず前提として、日本はこれからも常任理事国入りに向けての不断の努力を続けていくべきであると私は思っております。昨年、一昨年ですか、常任理事国入りの、何か国にするかという案をめぐって、いろんな世界、いろんなグループでもめまして、結局、実現に至らなかったわけでありますが、ただ、だからといってそれであきらめるというのはちょっとどうかなと。
というのは、そもそも国連の非常任理事国が一九六三年に四か国増えたわけでありますけれども、そのときも二年ぐらい掛かって批准するという、長期的なスパンがないとできないなと。もう一つ、そもそも国連の不平等なシステムというんでしょうか、戦勝国で常任理事国が成り立っているというシステムを無条件に受け入れるのはどうなのかという問題もありますし、さらに、北朝鮮のミサイル、また核実験に伴って、昨年は日本がイニシアチブを取って全会一致で国連安保理決議を決めたというような外交的な成果もあったわけでございます。また、昨日は、実はモンゴルの大統領が参議院議場で演説されまして、来年でしょうかね、非常任理事国の枠を譲ったというようなエピソードがありましたけれども、いずれにしましても、常任理事国入り、国連安保理の改革に向けて努力しなきゃいけない。
しかしながら、いろいろなグループがあって、何か国常任理事国にするのかとかいろいろな問題もあって、果たして日本の持っている外交資源、例えば外交官の数だとかも、キャパシティーも限られておりますから、そこに、どれだけそこの問題に注ぐことができるのかと。優先順位の問題もあろうかと思っております。直近に北朝鮮の問題もございまして、六か国協議の枠組みというのもありますし、いろいろな外交課題がある中でどういう、国連について日本はどういう優先順位を持っていくべきなのかというところをお伺いしたいなと。
私自身は、これは時間が掛かる問題なので、一方では、今すぐに安保理理事国に仮になったとしても、例えば実際、平和構築の分野での人材が圧倒的に少ない問題であるとかいうことを考えてみますと、やはり平和構築に携われる人材をしっかり育成しておくべきではないかなということを考えておるわけでありますが、御所見をお伺いしたいと思います。
○参考人(手嶋龍一君) 重要な点についての御質問、特に谷合先生御所属の公明党は国連の重視というのはとりわけ言っておられて、その点でも、先ほどイラク戦争に至る国連決議に、私、正確に、つまりレトリックではなく、当時の与党、これは自由民主党に加えて公明党もそうですけれども、その国連決議に、つまり力の行使の正当性を説明する際に逃げ込んでいると申し上げましたけれども、この点については、実は谷合先生を支持をして、この私議論をしているときに、支持をしている母体の方から正にそのとおりだというお手紙をたくさんいただきました。やっぱり、これは与党のお立場ということはあると思うのですけれども、国連を重視すればするほど、やっぱり国連の決議については、最終局面で力の行使を認めさせる決議が取れなかったという厳然とした事実からやっぱり逃れるべきではないというふうに思います。
しかし、だからといって、ここは多分、北沢参考人と意見が違うと思うのですけれども、日本が日米同盟に半世紀にわたって日本の安全保障をゆだねてきて、もしこの段階で日米同盟に完全に背を向けてしまう、これの議論が正に、久間防衛大臣の正に議論で、ワシントンから冷たい視線が向けられているゆえんなのでありますけれども、私も思いに思い悩むところですけれども、直ちに背を向けることは特に東アジアの安全保障環境を考えるとできかねないと確かに思います。
しかし、もし仮に日本が当時、アメリカに対する力の行使を支持をするとしても、そのためにはやっぱり絶対的な条件があるように思います。それは、やっぱりアメリカの力の行使の最終局面に当たって正に意思決定に参加をすると言いましたけれども、これは、イギリスの例は実力部隊を出しておりますから少し違うのは重々承知の上で申し上げるのですけれども、最終局面で、アメリカのイラクに対する力の行使の最終局面で意思決定に少なくても曲がりなりにも参加をしております。ところが、事実として日本は最終局面には参加をしておりません。やはり参加をすべきであろうというふうに思います。
もう一つは、アメリカは、日本にそのぎりぎりの局面で支持を求めるのならば、日本を東アジアを代表する中国と並んでパワーの一つとして、アメリカが率先して日本の安保理常任理事国入りに道を開くべきだというふうに思います。
これはやや刺激的な物言いになるかもしれませんが、事実ですので申し上げますが、谷合先生はよく御案内のように、最後、二年前の段階で安保理常任理事国入りにかなりの可能性があった時期がございます。しかし、そのときに実はそれを葬り去ったのは中国だと一般的には説明をされていますけれども、それが中国でないことは、中国もその一つでありましたけれども、決定的な要素でないことは御案内のとおり、実はあろうことか、半世紀にわたって日米安全保障体制の一角をつまりともにしておりましたアメリカが日本の安保理常任理事国入りを事実上葬り去ったと、私は残念ながら外交ジャーナリストとして本当のことを申し上げざるを得ません。
つまり、アメリカのように直接、つまり国連の枠組みの中に影響力を行使できない国連のような場合でも、やはりそこは冷戦後唯一の、最大のスーパーパワーであるアメリカが安保理改革案を提案をしなければ日本の安保理常任理事国入りに道が開かれないのは、国際政治の冷徹なつまり現実でございます。
しかし、結局のところ、私どもの同盟国アメリカは、言を左右にして日本の安保理常任理事国入りにつまり道を開こうとはいたしませんでした。この点については、やっぱりいかに同盟国であれ、言うべきことはやっぱりきちっと言うべきでありますし、同盟国をそのように、つまり日本の安保理常任理事国入りに連れてこれなかった外交当局、とりわけ国連の日本の代表部、そして当時大使だった方々、この方々は私あえて更迭をして、やっぱりその安保理常任理事国入りの責任を明確にすべきだというふうに言っております。
ですから、それほど重要な話でありますので、ここは日本は、東アジアで決定的な、例えば台湾海峡危機というようなものが現実化したときに、日本は核は持っておりませんし、私は持つべきではないと思いますので、このときこそつまり拒否権を持つ、つまり一等国の一級市民としての安保理常任理事国として東アジアの安全保障に直接責任を持つべきであるというふうに思います。
その点で、谷合先生がおっしゃっている安保理常任理事国入りは恐らく日本外交にとって最優先事項の一つであるべきだというふうに思います。