○谷合正明君 公明党の谷合です。先週に引き続きまして質問させていただきます。
建築士法の改正案の質問に入る前に、一点要望だけさせていただきたいと思います。それは、実は私の地元岡山でちょうど約一か月前、十一月十九日に起きましたJR津山線の脱線事故がありまして、事故車両の撤去作業が始まり、地元の住民からは早期の復旧に対して期待が高まっている状況でもありますので、ここで要望させていただきます。
事故の詳細は今、国土交通省の事故調査委員会の方、調査報告書を鋭意まとめられているというふうにお伺いしております。自然災害でありまして、重さ百トン余りの四メーター四方の大きな岩がレールに直撃して、そしてそのはずみで県道にぶつかって、県道に大きな穴が空いた。早朝の落石事故でありましたので、鉄道とその県道の情報共有体制がうまくいかなかっただとか、そういったこともありました。
私、この場で言いたいのは、まずは早期の原因の解明をしていただきたい、追及をしていただきたい。というのも、一年以上前にちょうど似たような箇所で落石事故がございました。そういったこともございます。
もう一つ、復旧に際しましては安全の確保をしっかりと取っていただきたいと。特に、中山間地域におきますローカル線のこの安全確保というのは非常に重要ではないかと。中国地方におきましても、JR路線、今現在で三路線、私が認識しているだけでも不通状態。これは落石事故だけじゃなくて、土砂崩れ等が原因でそうなっているわけでありますが、こういった安全確保をしていただきたい。
さらには、難しい課題だとは思いますが、土砂崩れが起きた斜面であるとか山、この土地の所有者が例えば私有地であるとか、そういった場合になかなか、落石防止さくであるとか、その後の復旧の費用をどうするのかとか、費用負担の問題がいろいろ課題としては起こっております。是非、JRだけの問題とかあるいは関係自治体だけの問題とか、そういうことじゃなくて、国も含めて関係各団体が協力して、用地境界の部分のその絡みにつきましては、今後、この安心、安全の公共交通機関の確保に努めていただきたいと。まずその点、冒頭に要望させていただきたいと思います。
それでは、建築士法の改正につきまして質問させていただきます。
まず、一級建築士の受験資格でございますが、これは原則、設計、工事監理業務の経験を評価していくということでございます。しかし、原則ということでありまして、この原則以外、例えば行政でありますとか、建築行政、大工、研究教育あるいは大学院といった、これまで認められていたような部分につきましてどの部分までその経験として評価され得るのかと。例えば行政におきましても、建築主事で全国で今千七百名余りの方が従事されているようでありますが、この方々は一級建築士でございまして、こういう受験資格の見直しにつきまして、今の設計、工事監理業務以外の経験をどのように評価するかの検討状況をお聞かせください。
○政府参考人(榊正剛君) 実務経験の内容でございますけれども、原則として設計図書の作成若しくはチェックに関与しているということと、工事と設計図書の照合に関与していると、こういったようなことがメルクマールといいますか、基本的にはその設計図書に密接にかかわっている業務であるということがメルクマールということになろうかと思います。
具体的には今後検討して省令で書くということなんですが、今のところ思っておりますのは、例えば住宅局で住宅行政をやっていても、今まではどうもオーケーだったようなんですが、これはちょっと問題かなと思っておりまして、営繕行政における設計、工事監理の業務補助とか、建築確認検査といったような特定行政庁なんかでやっておられるような確認検査の業務補助というのは間違いなく大丈夫だなと。
ただ、一般的な大学院で研究経験を積んでいるというだけでは、言わば設計図書と密接にかかわる業務かどうかという点に関して言えば、それは密接にかかわっていないのか、一般論で言えばそういうことが言えるのかなと思っておりまして、そういったような形で、設計図書に密接にかかわる業務であるかどうかということを基準にして判断していきたいというふうに思っております。
○谷合正明君 前回の参考人質疑の中で、慶應大学の村上先生、建築分科会の会長でございますが、の発言で、まずこの法律改正が承認されるとして実施の段階に、具体的な制度設計の段階で一番大事なのは人材養成の問題でありますということをおっしゃられて、それが非常に印象的だったわけでございますが、先ほど受験資格の話も今、回答でございましたが、そもそも人材養成を図っていかなければならないんだと。
特に、構造ですとか設備の方の人材養成。今回新たに設置されます構造設計一級建築士、設備設計一級建築士、それぞれ法施行になった場合に三千人ずつ想定して、そのぐらいの数がいれば回るんではないかというような答弁も先週ございましたが、それ以外にも、先ほど話もありました建築設備士と、そういった資格を持っていらっしゃる方がいらっしゃいます。
質問としましては、構造、設備の専門家をどう養成していくのかということでございます。例えば、若い人たちが希望を持って建築士を目指すと、あるいは設備の方も何か誇りを持った進路先として進んでいくと、そういったことが大事であるわけであります。しかしながら、一方で、大学の方で、これはある電気設備学科が、これは芝浦工大ですかね、九五年に設備の専門家を養成するためのコースがスタートしたと。しかしながら、学生がなかなか入ってこないということで二〇〇四年には募集停止になっておりまして、なかなか現実としては、専門家を養成しなきゃいけないというのは口では言いやすいですけれども、具体的にどう進めるかが大事だと思いますが、この点につきまして国土交通省の見解を伺いたいと思います。
○政府参考人(榊正剛君) 今回の関係で申しますれば、学歴要件を科目主義に改めるということで、どういう学科ではなくてどういう科目を修了しているかということで判断をいたしたいというふうに思っております。すなわち、建築士となるに必要な知識を修得可能な科目を履修しているかどうかということで判断をしてまいりたいと思っています。そういった意味でいえば、電気学科と機械学科の方が設備関係の科目を取った上で建築関係の科目を併せて履修されるということであれば、建築学科を卒業していなくても受験資格を得ることが可能なようにはなるのではないかというふうに思っています。
実は、ここ数年来、建築関係の学部、学科のあれも相当名前も変わりまして、土木という名前の学部自体が全国ほとんどないような実態にもなっておりますので、今回に合わせまして、どういう学部でどういう学科でどういう科目を履修しているかというのをつぶさに見させていただいて適正な科目主義にしたいというふうに思っておるところでございます。
○谷合正明君 次に、消費者の立場に立ってみますと、消費者が今一番知りたい情報というのが、先日、日経アーキテクチュアの中でアンケート調査があったわけでありますが、それは、建築士や建築士事務所の専門分野や設計実績、そして第三者による設計内容のチェック状況、こういったものについては非常に情報として提供していただきたい、そういうような回答結果がございました。
これは、前回の通常国会での改正の部分に強く反映されているんだと思いますが、今回、この制度改革でどれだけその情報開示というのは具体的に進むんでしょうか。
○政府参考人(榊正剛君) その前に、さきの通常国会で建築士法を改正をいたしましたときに、建築士事務所に所属するすべての建築士の氏名、業務実績について閲覧対象へ追加するということと、処分を受けた建築士については公表するといったようなことを措置いたしたところでございます。
これに加えまして、今回、建築士名簿の記載内容を更に充実をいたしまして、実は建築士名簿を閲覧に供していなかったというのが実態でございまして、これを閲覧させるということにいたしました。定期講習の受講歴ですとか、構造設計一級建築士であるか否かですとか、建築士の処分歴といったようなものを消費者に対して開示するということを考えております。
それから、免許証でございますけれども、これも携帯用の免許証に変更しようということで、その免許証には定期講習の受講歴ですとか構造設計一級建築士であるか否かですとか、そういったようなことを免許証にきちっと書いていきたいというふうに思っております。それから、免許証でございますけれども、設計、工事監理契約締結前の重要事項を説明をするといった場合にはその提示を義務付けることといたしておりますので、消費者の方にとってみれば、その免許証を見れば、先ほど申し上げたような受講歴ですとか構造設計一級建築士かどうかということが分かるという形になっております。
それから、指定確認検査機関についての情報開示につきましても、さきの通常国会の中で、その事業所の中に事業報告書とか財務諸表ですとか、確認検査員の氏名、略歴を記載した書類と、それから確認検査に関しまして損害を生じた場合の賠償請求に対応するための保険契約の内容といったようなことを閲覧、求めがあれば閲覧させるということを義務付けたところでございます。
以上のようなところでございます。
○谷合正明君 以上るる説明がございまして、我が党としましても、今年の春に対策本部で緊急提言、要望したときに、情報開示でありますとか、その一環として住宅性能表示制度の強化、普及について、これについても要望をさせていただきました。
住宅性能表示制度、これは本法律とはちょっと離れた問題ではありますが、しかしながら、情報開示という点におきましては関係がございます。私がここで質問をさせていただきたいのは、この住宅性能表示制度、これをしっかり活用するべく普及を図っていただきたいと。
現在、まだ平成十七年度でこの住宅性能表示制度を利用している着工戸数というのは大体一五%ぐらいでございます。しかし、偽装事件以降、急激に住宅性能表示制度の受付というものが広まっております。ただ、詳しく見ていくと、設計住宅性能評価と建設住宅性能評価というのが二つあるわけでございますが、設計住宅性能評価というのは非常に大きく受付の伸び、交付の伸びがあるわけでありますが、建設住宅性能評価というのは伸びが悪いと。一説によると、住宅のディベロッパーが販売促進のため安易な設計評価を取得しているという指摘もございます。つまり、住宅性能表示制度があるマンションというのは価格も高く設定でき得るということでございます。
一方で、住宅の住み手である購入者が本当に必要な情報をこれから得ることが大事でございますので、この住宅性能表示制度の普及、強化につきまして、課題と、またその充実を強化していくための誘導政策についての見解を聞かせていただければと思います。
○政府参考人(榊正剛君) 委員御指摘のように、平成十七年度の実施率というのは一六%になっておりますが、実は分譲マンションだけに限ってみますと四七%というような形でございまして、実は平成十四年度、制度創設時十万戸を切ると、九万数千戸といったような状態から見れば着実に制度が普及してきているのではないかというふうに思っておりますし、委員の御指摘のように、構造計算書偽装事件を受けまして本制度への期待が一層高まっているというふうに考えております。本年成立いたしました住生活基本法に基づきます住生活基本計画におきましても、この制度の目標を平成二十二年度までに全体一六%から五〇%までということで、相当大幅アップを私どもとしてもねらっておるところでございます。
したがいまして、こういった制度の活用を促進するために、講習会の開催ですとか、住宅フェア、新聞等を通じた広報の実施でございますとか、地震保険料につきましてもそれぞれ性能表示におきまして最高三割まで引けると、割引ができるといったような優遇もしておりますし、住宅金融公庫の証券化支援業務におきましても金利の引下げ対象にしているというような形で、本制度の誘導をいたしているところでございます。
さらに、住宅性能に関する消費者ニーズに対応して、実は今年の四月には防犯性能の追加ですとか免震住宅表示の追加とか、それからこういったようなこと、失礼しました、本年四月そういうことをやりまして、来年はその免震住宅表示の追加ですとか共用配管の更新の容易性、間取りの変えやすさみたいなものを追加したいというふうに思っておりまして、そういった制度の充実とそれから普及促進の施策と相まって更なる普及率の向上に向けまして積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えておるところでございます。
○谷合正明君 是非よろしくお願いいたします。
次に、報酬基準の見直しについて質問を用意させていただいたんですけれども、先ほども出ましたので要望に変えさせていただきますが。
私も構造設計に従事されている方からお話を聞きまして、構造設計の大切さというのが本当に分かっていただけていないというような話がございました。その中でも、報酬基準の見直しということで、現在のところ設備そして構造そして意匠と別々になっておりませんで、それが一因となって構造の方にしわ寄せが行っているということはよく指摘されていることでございます。
その方は、構造設計報酬基準のようなものを独自に別途作っていただきたいような話もあったわけでありますが、そういう別途作るということではなしに、報酬基準の中に、分野ごとに、先ほどの答弁でいいますと、分野ごとにしっかり基準を設けていくんだということでありますので、しっかりとその実情に合わせて設計をしていただきたいと思っております。
最後に、もう時間がございませんが、大臣に今回の建築士法の改正に当たりまして一言お言葉いただきたいんですが、先ほど構造と言いましたけれども、構造の建築士の方にとってみるとどうして構造だけこんなやり玉になって、まじめにやっている方ですよ、まじめにやっている構造建築士の方はどうしておれたちだけが、私たちだけがやり玉に上がるのか、まじめにやっている建築士の方はどうして建築士、私、まじめにやっている建築士がこの影響を受けるような、影響というのはその罰則強化なるんだというような思いもあるわけでありまして、先ほど大臣が言いました、いわゆる設計とそれから施工側とそして行政と、この三者がしっかり一体となってこの制度設計、今後の将来の制度設計を働かせていかなきゃいけないと思うわけであります。一度耐震偽装事件と離れてゆっくり、まあゆっくりと、じっくり議論をしていただきたいと思いますが、大臣のいわゆる将来へのビジョンというものを最後に聞かせていただければと思います。
○国務大臣(冬柴鐵三君) この事件によって建築物に対する信頼、また建築士という人たちに対する信頼、また建築行政に対する信頼、あるいは施工業者、あるいは売主に対する信頼というものは大きく揺らいだと思うんですね。私どもとしては、この信頼を取り戻すためにどういうことをしなきゃならないかという考えの下に、今回、建築士法の改正、あるいは建築基準法の改正、あるいは来国会になりますけれども、売主の瑕疵担保責任の確実な履行ということを通じて、二度と再びこのような事件は起こさないし、万々が一起こったとしても、その人たちに対しては瑕疵担保責任というものが十分に保証されるという制度を作ることにより信頼を回復したい、一日も早く回復したいというふうに思っております。
今回の今お願いをいたしております建築士法の改正もその一環でありまして、また前国会で成立していただきましたこの建築基準法の改正も、ペアチェックを通じて、有資格者、相当高度な有資格者の二重のチェックでこういうものを防いでいこうという思想であります。したがって、国民の皆様方にその思いを理解をしていただき、そして信頼を回復していきたいと、このように考えております。