○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
耐震強度偽装問題の発覚から一年がたちました。さきの通常国会で、第一弾の建築基準法等の改正が行われました。第二弾として、今この国会で建築士法等の改正が審議されております。また、明年の通常国会におきましては瑕疵担保責任の問題を議論する第三弾と続くわけでございます。我が党としましても、この問題が起きて真っ先に動いたわけでございます。特に、耐震強度偽装問題の再発防止策を申し入れるために、三月にはその対策本部として安心、安全の確保をしっかりと要求をさせていただきました。その多くが法律となり、また今この法案となっていることに評価したいと思うわけでございます。
この一連の改革というのはそもそもだれのための改革かというと、やはりそれはユーザーであり国民のための改革であります。そうあるべきでございます。国民の間に建築物の耐震性に対する不安ですとか建築界に対する不信というものが広がったわけでございます。これを取り除く、これがまず第一義でございます。
この一年たちまして、事件の原因究明についてはある程度進んだのではないかというような、ユーザーのアンケート調査の中にもそういう意見は見られます。しかしながら、国や自治体の進める対策というのは進んでいないんではないかと。進んでいるというふうに回答する割合ですが、一〇%もいないような状況でございます。しかしながら、国や自治体が進める対策については非常に関心があるというのがいわゆる国民、ユーザーの率直な心情ではないかと思うわけであります。
そこで、まず冒頭に大臣の方に、前回、通常国会ありました。また今回、今、建築士法の改正を行おうとしていますが、この国民の信頼回復にどれだけ寄与し得るものなのか、その辺りの見解、というよりは決意をまずお伺いしたいと思います。
○国務大臣(冬柴鐵三君) お説のように、今回の事件を契機といたしまして、能力が欠如した建築士が存在するということが一つ、それから元請設計、これが下請建築士事務所に丸投げをしてみたり重要な部分がいろんな事務所に分かれて発注されたりというようなことを通じて非常に責任が不明確なままに安易な外注がされていたという事実、そしてそういうことが契機となって建築士の職業倫理の低下をそういうことが助長したと。関与した建築士というものはだれだったのかが表に見えないというような、そういうところがあったということの反省に立ちまして、第一弾、第二弾、第三弾とおっしゃいましたけれども、今回建築士、第二弾として建築士法を改正いたしまして、建築士の資質、能力を向上させようという、研修を義務付ける等、そういう改正をいたしました。
それから、次は高度の専門能力を有する建築士の育成、活用をやろうということで、特に姉歯事務所は大きな建物の構造計算のみを下請したわけでございます。したがいまして、構造計算というのはだれでも建築士だったらできることになっていますけれども、大変高度な事務だと。そして、しかも建物のボリュームが最近非常に大きくなっているわけでございまして、私もこの計算書を見せてもらいましたけれども、コンピューターで打ち出されたこんな厚さのが構造計算書でございまして、非常に専門的だということから、こういう一級建築士とはいえ、その中からこの構造計算についてきちっとした専門能力を有する人というものをより分けて選別をする。それから、設備設計につきましても非常に大きな床面積の中で消火施設とかあるいは昇降機、エレベーターとか冷暖房、空調とか非常に多くの設備があるわけで、こういうものについてもボリュームが大きくなっているだけに、専門知識を有する人をきちっと認定して、それをまた選別をしようというようなこともいたしました。そして、その結果、二十メートルを超えるような鉄筋コンクリート、ほとんどのマンションがそういうことになりつつありますが、そういうものについては今言ったように選別された専門家の関与、専門化された設計士による関与ということを義務付けるということで、そしてそれら関与した人たちすべての名前が外側に分かるようにいろんな面で、そしてまたそれが外部からも閲覧できるように取り計らうということもいたしました。
それからもう一つは、先ほどの質問でも明らかにされましたように、建築士個人の資質の向上とか能力の向上をしましても、切磋琢磨するためにも、一つの団体というものの中でそういうものが恒常的に切磋琢磨して向上していくということが必要であろうということで、建築士事務所の業務というものを明らかにして、そしてその中で研修を義務付ける。あるいは、管理建築士という人を置いて、ユーザーと契約をする際にはその人たちに重要事項説明、これは不動産取引のときの取引主任がその不動産についての重要な事項をきちっと告知しなきゃならないということがありますが、それと類似のような制度をここへ導入しまして、重要事項をきちっと説明させる、そしてその説明した事項を書面にして、そしてそこには関与した建築士の名前もきちっと明記させてそれを交付するというようなことも明らかにしたわけであります。このようなことを通じまして、分譲マンションのように施主とユーザー、使う人が別々の建物については特に重い配慮をして、設計についても、あるいは建築施工についても下請を要はさすということを禁止するというようなことを通じて責任を明らかにするということにしたわけでございます。
このようにして失われた信頼というものを回復すべく一生懸命取り組みたいと思いますし、また残された問題として、売主の瑕疵担保責任の実効を確実なものとするために、来国会には売主等、いわゆる売主あるいは建設した人、その人たちの十年間にわたる瑕疵担保責任の履行を確実なものにするために保険制度の導入とか、あるいはその人たちが故意とか重過失でそのようなことを行った場合でも担保されるように供託制度とか、そういうものも導入しようということで現在努力中なのでございます。
こういうことの一連の作業を通じて、失われた信頼を必ず取り戻したいし、二度と再びこういうことが起こらないようにするために頑張ってまいりたいというのが決意でございます。
○谷合正明君 それで、第一弾の改革の中の話させていただきたいんですけれども、ピアチェックが改革の目玉だったと思います。
ここで確認をさせていただきたいんですけれども、先日も朝日新聞の報道でこの第三者審査を明年六月に施行されるわけでありますけれども、なかなか三十道府県で専門家が不足しているというような報道がございました。特に地域の偏在の問題等もあると。実際に私も一級建築士の方からいろんな話を聞きますと、やはり地方に行けば行くほど大変なんだというような、大変というのはその専門家が不足しているというようなお話を聞いております。
後ほどの構造設備の専門家の話とちょっとリンクしますので、まずここで明年のその六月までにちゃんと実行できるのか、そういったところを確認させていただきたいと思います。
○政府参考人(榊正剛君) 指定構造計算適合性判定機関でございますけれども、構造計算の審査を専門的に行う公正中立な第三者機関ということでございまして、先ほどの質問にもございましたが、大学教授ですとか研究者、優れた構造設計の実務者といった方々を構造計算適合性判定員という形で選任をいたしまして、構造計算の過程の詳細な審査とか再計算を実施する機関ということでございます。
現在、来年の六月の施行に向けまして、各都道府県で準備作業を進めていただいているところでございます。地方の住宅建築センターといったようなところが指定構造計算適合性判定機関という形で指定されるというふうに考えておるところでございます。私ども、今年のこの九月に実施した調査によりますと、約半数の都道府県で管内の機関を立ち上げる予定というふうに伺っております。
じゃ、あと半数はどうするかということでございますけれども、構造計算適合性判定員という方が、まあ構造の専門家でございますけれども、大都市圏に集中をして地方都市で不足しているという指摘もございます。したがいまして、私どもでは、日本建築行政会議ですとか関係団体等と連携を図りながら、円滑な施行に向けまして、都市部におられる構造専門家を地方の判定機関に紹介、あっせんするといったような必要な支援を行いたいというふうに考えております。
さらに、指定構造計算適合性判定機関として業務を行う機関がないというような県もひょっとしたらあるかもしれないということでございますので、そういった場合には、全国的な組織といたしまして日本建築センターなり日本建築総合研究所というのがございますので、そういったところで広域的な業務を実施できるような必要な支援や仕組みということも検討してまいりたいというふうに思っているところでございます。
○谷合正明君 それで、建築確認検査制度、それを再構築するというのが建築基準法、またこの建築士法の改正の主眼でも、一つでございます。
そこで、さきの通常国会でも盛んに議論になりました建築主事とその指定機関の関係でございます。
改めて確認をさせていただきますが、現在、建築主事と指定機関の関係、まあ公と民間の関係ですが、同等な立場で基本的にこの建築確認検査業務というものは実施をしております。しかしながら、民間開放して以来、建築主事、特定行政庁におけます建築主事の役割というのが、むしろ今後は、例えば指定機関の指導監督あるいは違反建築物の摘発等に特化することの方が効果的ではないかと、また効率的ではないかとか、そういうような意見もございます。ただし、さきの通常国会におきましては、耐震強度偽装事件という問題の性質上、なかなかそういう抜本的な改革には至らなかったというような北側大臣の答弁もございましたが、そもそも将来的に、この建築確認検査制度を再構築するに当たって、この建築主事と指定機関の関係というのはどのようなものが望ましいと考えているのか、改めて国土交通省の見解を伺いさせていただきます。
○政府参考人(榊正剛君) 実は、指定確認検査機関制度ということでございますけれども、阪神・淡路大震災のときの教訓を基にいたしまして、平成十年の基準法改正いたしまして建築確認検査を民間開放したという背景には、建築物が大規模化、高度化する中で、確認検査といったような実施体制が行政だけでは十分に確保できないという状況を踏まえまして、官民の役割分担の見直しを行って的確で効率的な執行体制を創出することが求められたということでございます。このために、建築主事が行っておりました確認検査事務につきまして、新たに必要な審査能力を有する公正中立な民間機関も行うことができるというふうにしたところでございます。
法施行後、この検査機関が着実に増加いたしまして、現在では百二十五機関が指定されておりまして、確認検査業務の六割を実施するに至っております。結果として、建物の完成後の完了検査率も、平成十年の三八%から平成十七年には七六%という形で倍増をしております。これは、公共団体の執行体制の効率が促進をされまして、御指摘のように、行政だけではできないような違反対策、指導監督業務に重点を置くことができるようになった結果ではないかというふうに思っておりまして、そういった意味で、違反建築物件数も一万二千件から約七千七百件ぐらいまで減ってきたというふうに、減少しているということで、一定の効果と、まあ民ができることは民間でという方向での制度改正には効果があったのではないかというふうに認識しております。
ただ、確認検査を全部民間で行って、行政は違反是正とか指導監督業務に特化するんだという制度ということであると、まあ公正中立な民間機関ということではございますけれども、民間の常識的な振る舞いとして、業務区域なり業務区分といったようなものを、採算の取れるようなところで業務を実施するとか、こういった採算の取れるような部門でしか実施しないとか、そういった可能性が営利目的ということであれば高うございます。そういった意味で、住民サービスの観点といったような意味でいえば、日本全国をカバーするということにはちょっと不適切ではないかというふうに思っております。
したがいまして、建築主事、指定確認検査機関、いずれもが確認検査を行う制度というふうにいたしまして、どちらを選択するかというのは建築主の判断にゆだねられているということではないかというふうに思っております。
今回の指定確認検査機関のみならず、一部の特定行政庁も実は構造計算書の偽装を見抜くことができなかったというのも事実でございまして、この点非常に遺憾に思いまして、今回の建築確認検査制度の抜本的な見直しを図ることとしたところでございます。
そういった意味でいけば、本年の六月の建築基準法改正の中では、建築確認検査を厳格化するために国による確認検査の指針を作って、その指針に従って確認検査を厳格化していただく、それから指定構造計算適合性判定機関におきます構造計算の判定の義務付け、それから特定行政庁の立入り権限を、指定確認検査機関に対する立入り権限を付与いたしまして指導監督の強化をやるといったようなことを行いまして再発防止に向け万全を期したいと、こういうことでございます。
○谷合正明君 既にもう時間がなくなってきてしまったんですけれども、行政、今行政の話させていただきましたが、行政、また施工、設計と、この三者の役割の責任を明確化していくことが大事であると、この質問を大臣にしようと思っていたんですけれども、ちょっと時間がないですのでまた来週にさせていただきますが、先ほどピアチェックの話も出ました。
各論に入りますけれども、構造設計一級建築士と設備設計一級建築士が新設されます。先ほど設備設計一級建築士の数の問題が出ました。今度の、私、聞きたいのは、構造設計一級建築士の、それぞれ何人必要なのか、確保できるのか、そしてピアチェックの先ほどの不足の問題がありましたが、それとも関連していくのか等、今、国土交通省のお考えを聞かせていただきたいと思います。
○政府参考人(榊正剛君) まず、構造設計一級建築士でございますけれども、二十メートル超の建物ということになりますと、現在で大体六万件から七万件程度というふうに想定をいたしております。現在、構造設計を行っておられる建築士の方が約一万人程度ではないかというふうに推計をいたしておりますが、そのうち、やはり一定規模以上の建築物の構造設計ということになりますと、大体三千人から四千人の間の方ではないかというふうに推計をいたしておりまして、これらの方が自ら設計若しくは設計のチェックを行っているケースがほとんどではないかというふうに思っております。したがって、そういった方が三千人から四千人おられますので、こうした方の大半が法施行後に構造設計一級建築士というふうになるのではないかというふうに思っております。
それと、設備設計一級建築士でございますけれども、三階建て以上、かつ床面積五千平米超で約年間三千五百棟程度ということでございまして、これも私どもの推計によりますが、建築設備士の方でなおかつ一級建築士を持っておられる方というのがやっぱり三千人程度ではないかというふうに思っております。そういった意味では、数字的には双方とも十分対応可能ではないかというふうに思っております。
ただ、今申し上げましたのは全国的な規模で見たトータルの数ということでございますので、先ほども御指摘ございましたけれども、地域的に見て人材不足があるかないかというような点もございます。それで、この制度自体が二十一年春ごろということで、あと二年半近くございますので、そういった地域的に見ても人材不足のないような形で人材育成を努めていきたいというふうに思っているところでございます。
○谷合正明君 終わります。