○谷合正明君 公明党の谷合です。
まず、質問通告をしていないんですけれども、ジャワ島の地震に対する食料援助ということで、農水省の対応について伺いたいと思います。
今日の報道でも、大臣の方から的確な対応を指示されたといったことが出ておりまして、このジャカルタの近郊の、近郊というか、ジョクジャカルタですけれども、死者五千人を超えているというこの大災害におきまして、どういう対応を今検討されているのか、まず伺いたいと思います。
○国務大臣(中川昭一君) 今、谷合委員御指摘のように、一年半もたたないうちにまたインドネシアで大きな自然災害があったということで、日本のある意味では隣国での災害でございますから、日本としてできるだけのことをしなければならないというふうに思っております。
昨日、事務次官には、どういう要請なりがあっても対応できるようにという指示をしたところでございます。我々としては主に食料関係ということになろうと思います。現時点では、食料に対する要請を、インドネシア政府から来ておりませんけれども、ニュース等を見ますと、被災された方が食べ物がないというようなインタビューといいましょうか、映像が流れておりましたので、どういう形でやっていったらいいのか、現地で調達をして送っていったらいいのか、日本から届けていったらいいのか、また通路が大変災害に遭っているという条件もございますので、とにかく必要最低限の、例えばめんであるとかあるいは脱脂粉乳であるとかいったものを念頭に置きながら、それに限りません、何でも対応できるように関係者にはお願いしながら今待機しているという状況でございます。
○谷合正明君 そういう対応のお話しいただきまして、今ある程度ほっとしたところでありますけれども、私もやはり、このような検討だけじゃなくて、実際に要請が今のところないかもしれませんが、実際はニーズはあるんだろうと思いますので、是非実行していただきたいなと、どういう形であれ、思います。特に、タイミングを失うとこの援助も迷惑になりますので、例えば脱脂粉乳を送ったとして、向こうの倉庫でたくさん山積みになっているとか、あるいは向こうのマーケットを阻害するというか混乱させるような事態にもなりますので、こういう緊急事態の食料援助というのは、食料援助というか支援というのは、やはり日ごろから準備して、いろいろなケースを想定して準備しておくのが大事なんだろうと思いますので、日本から食料を送るだけじゃなくて、現地調達だとか、あるいは農機具であるだとか、あるいは市場、崩壊しているかもしれません、そういった市場の修復だとか、いろいろなステージに合わせた手段があると思いますので、是非大臣の方でしっかりと検討していただきたいと思います。
続きまして、今回の法案について質問をさせていただきますけれども、まず担い手経営安定法案でありますが、これは戦後農政を転換するものであると、それは直接支払による政策支援を一定の基準を満たした担い手に限定したものだと、すべての農業者を対象とした一律の農政からの大転換を意味するものだと、これはもう午前中からの質疑で出ておりますが、そういう意味で私もやはりこの新しい新法を導入するに当たっては、これまでの農政というものを総括すべきであると、しっかり総括するべきだと思っております。
昭和三十六年の旧農業基本法、これは農工間の所得格差を是正することを目的としたものでありまして、規模拡大あるいは生産性向上によるコストダウンによって農業構造を改革して農業所得向上を目指したものでありますけれども、実際、現実としては農家所得というものは伸び悩んでいて、生産構造も脆弱化してきていると。また、農地の集積も思うように進んでいない。あるいは、一方でもう耕作放棄地も増えていると。耕作放棄地も、昭和三十五年から約四十年間で二百四十万ヘクタールものが耕作放棄地となっていった。これは、農地改革で小作人に解放した百九十三万ヘクタールよりも大きいというようなものであります。
また、昭和三十五年から今日まで、GDPに占める農業の割合というのも九%から一%に減少してきたと。一方で、六十五歳以上の高齢農業者の比率というのも一割から六割へ上昇したと。フランスにおきましては、五十四歳未満の農業者が今六割以上ということです。対照的な結果になっているんだと思います。
私の方からまず冒頭に、これまでの農政ということで、これが思いどおりに、思い描いたとおりに進まなかった理由というものは何なんだろうかという、その辺りの反省点を踏まえた分析を聞かせていただければと思います。
○政府参考人(井出道雄君) 委員御指摘のとおり、現在、農業従事者の減少でありますとか高齢化、そういった中で農業の生産構造の脆弱化が進行しております。特に、水田農業を中心に担い手が十分に確保されているとは言えず、また担い手への農地の利用集積についても近年増加率が鈍化してきておりまして、土地利用型農業を中心に農業の構造改革が立ち後れているのは事実でございます。
〔委員長退席、理事常田享詳君着席〕
このように、水田農業を中心に構造改革が進んでこなかった主な要因といたしまして、一つには、近年の経済状況の中で、担い手と言われる層の規模拡大意欲が抑制されてきたと。また、担い手から見て、これは欲しいという優良な農地がなかなか出てこないと。そのために、農地を取得しましても非常に使い勝手の悪い農地を分散錯圃で所有する形になっていると。また、機械化の進展を背景にしまして、兼業農家等が稲作に特化した経営をいわゆる土日農業で継続することが可能な状況になっていると、こういった点が考えられます。
政策面については様々な御指摘があるわけでございますが、本質的には経営対策として、価格政策のように幅広い農業者を一律に対象としてきたために担い手が伸びていくというその素地が与えられなかったということが考えられます。
このため、今回の基本計画、新たな基本計画におきまして、何とか望ましい農業構造の実現に効果的に結び付けるために、この品目横断的経営安定対策を始めとしまして農業経営に関する各種施策の対象をできる限り担い手に集中化、重点化して実施するということで、この担い手層に元気を出してもらい頑張っていただきたいと、そういう観点で施策の集中化を行おうとしているところでございます。
○谷合正明君 そういう分析が今ありましたけれども、次に、それでは日本の農業のそういう今の負の側面というか、これまでの農政を含めた反省点であったわけでありますが、日本の農業においてもやはりそれは一方では強み、特質というものがしっかりとあります。
その日本の農業の特質、強みというのは何なのかと。よくWTOの説明なんかを聞きますと、日本農業は多面的機能を有しているんだといったことをキーワードに攻めたりしているわけであります。いろいろな強みというのはあるんだと思います。
先日、党の農業フォーラムに、蔦谷農林中金総研特別理事が講演されたんですけれども、強みというのはいろいろあるけれども、例えば豊富な地域性、多様性、里地里山、棚田等の優れた景観、豊かな森と海、水の存在、それから水準の高い農業技術、高所得かつ安心、安全に敏感な大量な消費者の存在、都市と農村の極めて近い距離といったことが挙げられました。
私、特に最後の二つ、安心、安全に敏感な大量な消費者の存在と、都市と農村の極めて近い距離、これは諸外国に比べましてやはり、農村、中山間地域といえども車で何時間掛けていけば行けるといった近い距離にあるんだと思います、日本の場合は。私は、こういった特徴をしっかり発揮していくことが大事なんだと、追求していくことが大事だと思っております。品質とコミュニケーション、消費者と生産者のコミュニケーションを図る、そういう力点を置く農業を模索しないといけないんだろうなと思っております。
そこで、大臣に、日本の農業の強み、大臣はよく諸外国に行かれます、日本の農業を説明されていると思いますけれども、日本の農業の強みというのは何なんだといったことを大臣のお言葉で聞きたいと思います。
○国務大臣(中川昭一君) 今、谷合委員から多面的機能というお言葉がありましたが、これは強みというよりも、むしろ多様な農業、そして多面的機能、これは当然の各国の主張として認めるべきであると。先ほどのツルネン議員のキューバ、キューバはキューバで、あるいはまたヨーロッパはヨーロッパで、東南アジアは東南アジアで、アフリカはアフリカで、それぞれ多様な農業があるということは、これは強みとか弱みよりも、当然のものとしてお互い認め合わないとこれは交渉にならないのではないかということをいつも申し上げているところでございます。
〔理事常田享詳君退席、委員長着席〕
日本の農業の強みというのは、今御指摘があったように、一つは、国土が、細長いんですけれども、主要の農業国あるいはいわゆる大国というところから見ると比較的小さいと。最近はフードマイルという言葉がございますけれども、作ったところと消費するところの距離というものが、例えば太平洋を渡るとかオーストラリアから来るということによるマイナス面、できるだけ食べ物というのは近いところで、その究極が地産地消ということになろうかと思いますけれども、そういった面で日本は、フードマイルが非常に短いだけではなくて、今や国民的な御理解の下で地産地消というものを我々も後押しを受けながら一生懸命進めているところでございます。
それから、対外的に説明できるかどうかは別にして、我々が誇りに思わなければいけないのは、先ほどお話がありましたように、日本の農山漁村というのは昔からの、古くからの自然との共生というもの、したがってそこには歴史なり文化なり、そしてそこに住む人たちのすばらしい人間性なりがあると。これが国内の中でのいろんな、北海道から、北海道はちょっとまた北海道固有の歴史があるわけでございますけれども、沖縄に至るまでのそれぞれの地域で多様なそういったものがあるということでございます。
それから、安全、安心ということも顔が見えるということからあると思いますし、これは最近特に我々が強調し、誇りに思っていいと思いますのは、日本型食生活というものがある意味で世界に大変な、我々が思っている以上に非常に評価をされているということでございます。
先ほどの御質問の中でお答えしようと思っていたんですけれども、パスカル・ラミー事務局長が私に対して、四月末までにまとまらなかった理由の一つは、これは、ステーキ料理のようにどんとメーンディッシュ・プラスアルファみたいな形で片付ければいいと思っていたら、極めて、農業、NAMA、サービス、ルール、開発、環境、その他いろんなものが絡み合った大事な、複雑なものであったと、まるで繊細な日本料理のようであったという比喩をパスカル・ラミーさんは私におっしゃっておられましたけれども。
やはり日本型食生活というのは健康にもいいし、また、見て美しいし、そしておいしいしということで、我々、今輸出に向かって力を入れておりますけれども、五年間で、昨年から輸出を倍増しようということでありますが、去年だけでも既に一二%輸出額が伸びているわけでございまして、むしろ、我々がいいんだというよりも、むしろ諸外国の方が日本の農林水産物はいいんだと。そして、それを作っている生産現場がいいんだと。また、それを消費する人たちの目利きといいましょうか、まあ舌利きという言葉があるのかどうか知りませんが、といいましょうか、消費者の高いニーズ、そしてそれにこたえようとしている生産者との共生関係といったものが結果的に世界的に評価をされているのではないかということで、我々は直すところは直していかなければならないと思いますが、誇れるところは大いに誇って、守り発展をさせていきたいというふうに思っております。
○谷合正明君 ありがとうございます。
それで、いよいよ法案の目的について質問させていただきたいんですけれども、まず前段で農政の総括、そして日本農業の強みといったことを質問させていただきました。この法案は正にその意味で反省があり、また日本農業の強みが発揮されるものでなければならないわけであります。
この法案の目的というものは一体何なんでしょうか。今おっしゃられた日本農業の特質といったものを生かせるものなのか、そういったことを法案の目的としてまず質問させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○国務大臣(中川昭一君) 農業は多面的機能があるという前提であえて申し上げますけれども、いいものを作って消費者に買ってもらおうと。消費者はいいものであれば買う、安全で安心で顔が見えるものを消費者は求めております。そういうものを作れば売れる、売れれば農家はもうかる、そういう農業をこれからもっともっと発展をしていきたいというのが端的に言えばこの目的であると同時に、車の両輪として、農地、水、環境対策もこれまた密接不可分のものでございますんで、地域の環境保全、発展、と同時に、もうかる農業を、どんどんどんどん参加をしてもらおうという、ちょっと言葉が乱暴かもしれませんけれども、そういう農業経営者に頑張ってもらえるような対策、支援をさせていただきたいということでございます。
○谷合正明君 この法案を導入することによって現場の農家からは、実際導入後の経営のイメージがわかないとか、そもそも内容が難しいといった声があるんですけれども、実際農業経営の姿というのはどういうふうに変わっていくんでありましょうか。
○政府参考人(井出道雄君) 今回の品目横断的経営安定対策の対象となります担い手につきましては、一つは、諸外国との生産条件格差を是正するために、過去の生産実績に基づく支払を継続的、安定的に受けられることになりますし、当該年の農産物の品質等に応じた支払を受けることもできるわけであります。
また、一方、現行のナラシ、担い手経営安定対策などに比べまして、新しい対策では生産者の負担がより軽減される、つまり、国の負担割合が一対三の、四分の三になるというようなメリットが拡大する中で、市場価格や収量の変動に伴う収入の変動の影響を緩和することができるというメリットを受けることになります。
こうした中で、対象となる担い手は、大臣も申し上げましたけれども、品質に優れ、安全性の高い農産物を供給できるという我が国農業の特質、強みを生かしつつ、新たな作物の導入や更なる農産物の品質の向上などに取り組むことができることになります。その結果、他産業並みの所得を得ることができる効率的かつ安定的な農業経営が農業生産の相当部分を担うような強靱な農業構造の確立へと進んでいくというふうに考えております。
○谷合正明君 イメージが分かりやすく伝わるように、もう少し柔らかくおっしゃっていただければと思うんです。
次に、この法案は国民にとってどういうメリットがあるのかという質問をさせていただきたいと思います。
今、担い手に絞るということでありましたけれども、この担い手に絞るということは、一つの理由としては負担をする国民に理解をいただくためだといったことも説明として聞きます。つまり、国民、納税者が今突き付けられている選択肢というのは、極端に言えばすべて外国からの安い輸入食料品でいいのか、あるいは日本で頑張る農業者を応援していくといった二つの選択肢があるんだと思います。
特に、後者の場合はそれ相応の負担が生じるんだというふうに私は理解するわけでありますけれども、ただ、その負担に見合う形で国民にメリットがもたらせるのであれば、それはもう国民、消費者はこの新しい農業、この新法に賛同していただけるんだと思います。しかし、国民に対してメリットというものが見えないんであれば、私はこの法案というのは本当に見えないところで審議しているだけの法案になってしまうと思います。
消費者の視点に立ってみて、この法案導入することで実質良質かつ低コストの農産物の増加につながるのかといったところをまずお伺いしたいと思います。
○副大臣(三浦一水君) 今回のこの品目横断的経営安定対策等につきましては、今、局長も申しましたように、強靱な農業構造を作っていこうと、そのことがまた国民にも直接、間接にいい影響があるんではないかというふうに見ております。
やや具体的に申しますと、生産性の高い担い手、いわゆるその実現を通じて農産物の生産コストも低減をしていこうと。先般、中川農林水産大臣のいわゆる中川イニシアチブでもって四月四日に決定をいたしました二十一世紀新農政二〇〇六の中では、いわゆる食料全体の供給コストを二〇%削減していこうという誠に野心的な目標も具体的に掲げておるわけであります。この辺は、現実的に実現をしていく中で国民に十分メリットをもたらすことができることになるんではないかと予測をしておるところでございます。
また、消費者や食品産業の需要に的確に対応をしていく、そして農産物を安定的に供給できる体制を確立をしていくと、このことのもたらすメリットは大きいのではないかというふうに考えております。
以上、重ねて申しますが、強靱な農業構造の確立を目指すことで国民にもメリットをもたらしていきたいということでございます。
○谷合正明君 そういうことを通じて、食料自給率もこれが減少することないということをしっかりアピールしていただきたいと思います。つまり、国民にとってのメリットというものが明確に示せない限り、幾ら周知しても、国民に対してPRしてもなかなか響かないものだと私は思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
次に、実際に対象となる担い手でありますが、これまでの審議の中で、経営安定対策の対象者というのは全販売農家の三割程度、そして経営耕地総面積の五割程度というざっくりとした試算が出ております。
まず、担い手の要件として認定農業者というものがございます。認定農業者の数は今全国で約二十万人となっておりますけれども、果たしてこの新しい法律がスタートする時点でどれだけ対象となる認定農業者というものが増えてくるのかといったところが、聞いても、確かにいろいろな特例なんかもあって確たる数値を見通すことは困難ということが言われるわけでありますが、しかし一方で、やはりその数値の見通しというものは重要であります。
その数値の見通しがもし困難であれば、その対象者数の把握に向けてどういった対策を講じようとしているのか、その点について伺いたいと思います。
○政府参考人(井出道雄君) 認定農業者でございますが、現在、行政と農業団体が連携協力をいたしましてその育成について強力に取り組んでいるところでございますが、平成十七年度の一年間で約一万九千人増えまして、今、委員御指摘のとおり、十八年三月末現在でその数は二十万人を超えたところでございます。
しかし、委員もお話しされていましたように、この二十万のうちどのくらいが品目横断的経営安定対策の対象品目である米、麦、大豆の作付けを行っておりまして、その原則である都府県四ヘクタール、北海道十ヘクタールの経営規模を満たしているのかということについては、現在残念ながら不明でございます。さらに、今後そういう、今急ピッチで担い手育成の取組が進んでおりますので、この対策導入時点でどれだけ認定農業者が増えてくるのかということについてもちょっと見通すことが難しいわけでございます。
いずれにいたしましても、この認定農業者の数につきましては、今担い手育成の取組を地方公共団体と協調して推進していく中でそういう者の把握にもしっかり努めていきたいと。もちろん、対象者として申請をしてくださればその時点で分かるわけでありますが、それを待つことなく把握できるように今努力をいたしているところでございます。
○谷合正明君 やはり把握しないとどれだけ新しいこの担い手対策に入ってくるのかというのは分からないわけでありますので、そういう施策もスタートしてみないと分からないということではやはり心もとないと思いますので、いろいろなその推進する過程の中で把握するとおっしゃいましたけども、しっかり急ピッチでやっていただきたいなと、この作業をやっていただきたいなと思っております。
次に、この認定農業者制度の地域の格差について聞きたいと思います。
先ほど言いましたけども、認定農業者の数というのは約二十万人であります。主業農家に占める割合というのは四五%にとどまっていると。これを地域ごとに見てみると、主業農家で認定農家の占める割合というのは、北海道、北陸地域が約七〇%であると。一方で、関東、近畿、中四国では約三五%程度にとどまっていると。地域間によって格差があると。この今の数字は昨年の十二月末の数字でありますけれども。もちろん、すべての数字が均一になる必要性というものも必ずしもあるわけじゃないんですが、底上げしていく必要というものもあるだろうと。
こうした地域間格差を踏まえて、これまでの認定農業者制度をどのように評価するのか、また改善点はどういったところにあるのか、そしてまた、この格差を埋めていくために、この支援の対象である認定農業者を今後どのように確保していくのか、その点について伺います。
○政府参考人(井出道雄君) 認定農業者制度につきましては、育成すべき農業経営を地域段階で明確にして支援を重点化していく制度として地域に定着してきておりますけれども、御指摘のとおり、この認定農業者の主業農家に占める割合についてはかなりの地域間格差がございます。
今、委員からも御指摘ございましたけれども、十八年三月末現在で見ますと、一番高率な県は八〇%に既に達しておりますが、低率なところはまだ二〇%台であるということでございます。これは、元々この認定農業者の制度が、農家自らが計画を作成して申請するという自己申請主義に基づいているということに、そういう性格によるところが大きいと考えられておりますが、もちろん、これを指導している市町村の姿勢にも随分差があったということが言えると思います。
また、よく言われましたのは、よく似た経営を営む農業者でありましても、住まいされています市町村が異なると認定の仕方にばらつきがあるというようなことも過去に問題として指摘されてきたわけでございまして、現在では、それぞれ市町村において有識者などから成る第三者機関の意見を聴くなどにより、この認定手続の透明性の確保と認定のばらつきの解消を行うための運用改善の指導を行ってきているところでございます。
いずれにしましても、現在も認定農業者の数が少ない地域に参りますと、やはりこれまで認定農業者になっても大したメリットがないじゃないかというようなことで、農家あるいは行政もそういう姿勢であったというところが多いようでございますが、今回は、新たな経営安定対策の導入に当たりまして、個別経営の場合には認定農業者になっていただくということが必須要件になっておりますので、全国的にも今申し上げました主業農家を中心に認定農業者にしようという機運が高まっているところでございます。
農林水産省といたしましても、こういった機運を後押ししまして、主業農家の中で認定農家になっていらっしゃらない方が余りに多い県、そういった県を重点的に今、担い手育成の支援をいたしているところでございます。
○谷合正明君 続いて、集落営農について質問させていただきます。
通告では、農山村の意味について通告していたんですけれども、先ほど大臣の方からの日本農業の強みという特質の中で既に明快に、多様な歴史、文化を備えているといったところが出ておりますので、この農山村の意味についてはやはりそういったところなんだろうと。その農山村を維持していくためにはこの集落営農というのがかぎでありますので、その意味で集落営農について、次、質問をさせていただきたいと思います。
先ほどの質問と同じなんでありますけれども、この集落営農、今、全集落営農数は約一万と言われております。認定農業者と同様、そのうちどの程度の集落営農組織が対象となるのかといったところもこれを把握していく必要があるだろうと。平成十七年五月時点で、集落営農の全国約一万のうち、営農と一括管理運営しているのは全体の一五%ほどであります。また、農業構造の展望では、今後十年間で効率的かつ安定的な集落営農経営を二万から四万と見込んでいると。この数のギャップがあるわけでありますけれども、制度がスタートするに当たりまして、対象となる集落営農数がどの程度か、またその見通し、そのための取組、また集落営農へ参加してもらうための施策といったものをどういうふうに講じられようとするのか、その点について伺います。
○政府参考人(井出道雄君) 委員御指摘のとおり、昨年五月に行いました集落営農実態調査によりますと、その時点で集落営農組織と言われるものは全国で約一万存在していると言われております。ただ、これについても、恐縮なのでありますが、今回の対策では、こういった集落営農組織であって、その規約を作る、あるいは経理を一元化するといった五つの要件を満たすことが今回の対象になる前提になってございます。この五つの要件というのは集落営農の構成員の合意にかかわるものでございまして、この一万存在している集落営農のうち、この五つの要件を今満たしている経営体がどの程度存在しているかということについても確たるものを持ち合わせておりません。
現在、ただ、集落営農組織については昨年来、かなりの県で数が急速に増えているという報告はいただいております。
農林水産省としましても、十八年度予算で集落営農対策として百七億円という予算を組みました。特に、ネックになっているというアンケート調査の結果から、リーダーの育成でありますとか、あるいは経理の一元化をどうするのかとか、幾つかの困難な課題、問題点が指摘されておりましたので、その百七億円の予算の中でそれに対応するような措置を講じてきているところでございます。
○谷合正明君 五つの要件を持ち合わせている集落営農の割合がどの程度なのかといった推測というのは実際はされているんではないかなと私は思うんですが、いずれにしましても、この集落営農の実態というか、中山間地域の実態を見るにつけ、ここの施策というのは非常に私自身大事なところであると思っております。
今お答えの中に、リーダーの育成といったことがありました。先日、島根県のある集落に行きましたけれども、大体もう平均年齢六十歳から七十歳という中、若手とは言われても五十代の人が兼業で、平日は仕事しながら土日で作業していると。よっぽどもう時間もなくて、リーダーになろうと思ってもこれ以上もう時間もないと。頑張っているのに、これ以上頑張れとも言えないわけであります。
実際に、リーダーの育成といったところが政策の一つとして出てまいりましたけれども、現実として高齢化が進んでいる集落営農、こういったリーダーがいないというのが実情、それはもう御存じのとおりだと思います。実際に、中国地方なんかでは、中山間地域では高齢化して、農地を貸したいけれども周りを見ても集落の中にも借り手がいないだとか、そういった問題も起きているぐらいにもう人がいないといったことがございます。
そういったことを考えると、この集落営農の対策というのは簡単な話ではないだけに、相当のきめ細かい対策あるいは決意がないと達成できないんだと私は思います。いろいろ審議の中では、参加、集落営農に参加しない人はいても参加できない人はいないといった答弁もありますけれども、本当に参加できない人はいないのかなとか、いろいろ考えるわけであります。
この集落営農、質問させていただきますけれども、こういった高齢化している集落におきましてどうこの対策を講じられていくのか、もう何遍も質問があるものでありますが、特に集落においては、営農組織だけじゃなくて地域社会といったもの全体を継承していく人が必要でありますので、そういった点について、集落営農を継承していくための施策、どう対応していこうとされるのか、質問させていただきます。
○大臣政務官(小斉平敏文君) ただいま谷合委員から御指摘がありましたとおりに、今回の問題におきましてはリーダーの存在というものが非常に重要だと、このように認識をいたしております。
水田集落の約半数におきましては担い手がいないという現状でございまして、そういう中で、担い手のいない水田集落、これを中心にして将来どのような形で農業を維持していくのか、そういう危機感が非常に強いということも十二分に承知をいたしておるところであります。
また一方、昨年六月に農林水産省が公表いたしました「集落の農業の将来展望に関する意向調査結果」、これによっても、集落営農の組織化あるいは法人化に当たっての最大の問題点ということで、そのリーダーの不在ということが指摘をされておるところでございます。
私、先日、自分の地元の宮崎で法人の設立総会に呼ばれまして、行きました。この組織法人というのは、県下で最大の参加農家数、そして面積も最大と、集積が最大という法人であります。ここで行って驚いたのは、設立準備会からわずか十か月で法人が設立されたというんです。いろんな話を聞いておりましたら、正に三人のリーダー、この方々がおられたから、わずかこんな短期間で法人が設立をされたということを聞き及びまして、正にリーダーというものが先生御指摘のとおり一番重要だと、このように考えております。
そこで、平成十八年度の予算におきまして二十億という予算を措置いたしたわけでありますけれども、一地区で四十万、そしてそれを五千地区ということで予算措置がなされておるところでございまして、現在、今現在ですね、現在既に三千二百五十二地区からこれに希望が、手を挙げておられる地区が全国にあるということでございまして、農水省といたしましても、今後、全力を挙げて、御指摘のとおり、リーダーの育成ということに取り組んでまいりたいと、このように思う次第であります。
○谷合正明君 ありがとうございます。
是非、今おっしゃられたような力強いメッセージを、宮崎県だけじゃなくて中国地方にも是非政務官にはお越しいただいて、よろしくお願いいたします。
対象品目の絞り込みについて伺います。
これ、ゲタの部分は四品目でございます、ナラシの部分は五品目ありますけれども。先ほど集落の話出ましたけれども、中山間地域などでは、生産条件が不利だといった中で、いろいろなアイデアを使って生産性向上に結び付くように、例えばソバだとか野菜などの特産物を、そういったところにも交付金を対象拡大することなどが検討されてもいいんじゃないかといったことが指摘されているわけでありますけれども、今回そういう意味で対象五品目に限定した理由というのは何なのか伺います。よろしくお願いいたします。
○政府参考人(井出道雄君) 対象品目についてでございますが、これは法律上、担い手の経営全体に着目して、その経営の安定を図るということによりまして食料の安定供給を確保しようとするものでございますので、一つには、国民に対する熱量の供給を図る上で特に重要であるもの、二つには、他の農産物と組み合わせた生産が広く行われていることの二つの要件を満たすものとしております。
この要件によりまして、熱量供給量に占める割合や国内生産の状況等を踏まえ、米、麦、大豆、てん菜、でん粉原料用バレイショの五品目を対象農産物とすることにいたしております。
今お尋ねの飼料作物、ソバにつきましては、飼料作物については先ほどもちょっと申し上げましたが、これは家畜のえさとして摂取されまして、最終的には畜産物の形で国民に対して供給されるという中間生産物でございまして、そこに対して直接の熱量を供給しているわけではないということ、ソバについては、熱量供給量に占める割合がまだ低いことから本対策の対象とすることはしておりませんが、もちろん食料自給率の向上等の観点から、飼料作物の自給率向上対策でありますとかソバの生産振興対策については別途対策として支援策を講じており、また今後とも講じることといたしております。
○谷合正明君 分かりました。
次に、周知徹底の話でございますが、先ほど大臣の方から、あえて挙げるとすれば農家への周知徹底だとか国民への理解、これがまだまだ足りないといったところが言われましたけれども。
その農家への周知徹底でございますが、これも幾つかもう質疑で取り上げられておりますが、先日、日本農業新聞が四月末に実施したアンケート調査で分かったことは、世代間によってこの制度の周知、認知度というものが違うと。また、地域によっても違うといったことが明らかになりました。具体的には、この対策が、法律が成立すれば〇七年度から始まるということを知っているのは、三十代で五五%、四十代で六八%、五十代、六十代、七十代で八〇%が知っていると、そういった世代間によってちょっとこの制度を知っているかどうかのばらつきがあると。
また、担い手づくりの進み具合も各地で差が現れていると。この制度の説明を受けたと回答する割合も、最も進んでいる東北では七六%の農家がもう既に制度の説明を受けたと言っておりますが、一方で、関東、近畿、四国では説明もないという、いまだに説明もないという割合が六〇%もいるといったばらつきがあります。こういった、まず地域間の機会不平等というんでしょうか、この格差を是正するということが一つ農家への周知徹底を考える際に大事なポイントになるのかなと思いますが、この農家への施策の浸透、周知徹底に向けてどのように今後取り組んでいかれるのか、その点について伺います。
○政府参考人(井出道雄君) 今御指摘の農業新聞のアンケートの結果につきましては、関東、近畿、中四国では進捗が後れてますよと、代わりに東北、北信越、九州では相当進んでいますという報告がなされているところでございますが、これは、私どもも担当者を全国各地に直接派遣をして、足を運んで働き掛けも行っておりますが、そういった中でも、地域によって必ずしも同じように進捗しているかといいますと、やはり若干の差があるということは認めざるを得ないと思っております。
それは、やはり一つには、麦、大豆の主産地と言われているところではやはりこの対策についての関心が非常に高いと。その次がやはり米の主産県でございます。それ以外のところというのは、やはり自分のところは麦も大豆も作ってないしとか、そういう点で関心が少し薄いのかなと。それから、行政やJAにお願いしているわけでありますが、そういったところの動きも、その主産県に比べると鈍いのかなという感じがいたしております。
そういう中ではありますが、先ほど申しましたように、認定農業者総数が一万九千人一年間で増えて二十万の大台に乗るというようなことでもございますし、また、アンケート調査でも、対策の認知度が八割、あるいは担い手にシフトしていくことに対することについても五割強まで肯定的に見ていただいているということで、ある程度認識は高まっているんではないかと思っております。
私どもは、せっかくそういう盛り上がってきた機運を冷やすことのないように、これからも十九年産の導入に向けまして積極的に地域の実態の把握や関係者へのきめ細かな説明に努めたいと思っておりますが、こういうアンケートも参考にして、弱いと思われるところに重点的に情報提供あるいは意見交換等も進めていきたいと思っております。
○谷合正明君 是非、これは農政の一大転換と言われるわけでありますので、この農家への周知というものを徹底していただきたいと思います。
質問を終わりにいたします。