以下、公明党青年局のHPに載せた文章を転載します。
「海苔は山がつくる」とは漁師のことばである。海苔の出来の良し悪しは、山から海に注ぎ込まれる川の水に左右されるというのだ。森・川を移動してくる水には栄養塩類が含まれていて、それが海域の生態系に影響を及ぼすらしい。
日本では古くから漁師が海の沿岸の林や木々を「魚付き林」と呼んで大切にしてきた。魚付き林は魚の生息や繁殖を助ける。近年では、沿岸部だけでなく、山間部の森林を大切にするようになってきた。
山が豊かでないと、美味しい海苔ができない。海苔だけではない、魚にも影響を与えるということを漁師から聞いた。「山は海の恋人」「森は海の恋人」を合言葉に、各地で植林が進んでいる。
山が荒れている
しかし、なぜ、漁師が山で植樹をするようになったのか。それは日本の山が荒れているからにほかならない。保水能力が乏しく災害に弱い山、エサとなる実がなく鳥獣が住めない山、材木価格の低迷で手入れされなくなった山。
岡山県出身の植物生態学者の宮脇昭教授は、「現場を調べれば、必ずその土地その土地に本来育っているべき樹木が見出せる。その主木群を植えることによって強い森を再生する」と主張する。
針葉樹だけでなく、広葉樹を植林していくことで、本来の森の形に近づけることが大事である。同時に、伐採期を迎えた国産材をもっと活用するようにしないといけない。生態系の維持と林業経済の活性化という、環境と経済の両立を図っていかないと、日本の山には未来がない。
大臣への申し入れ
先日、岡山県で海苔養殖を営む漁師とともに、中川農林水産大臣と北側国土交通大臣を訪れた。瀬戸内海では栄養塩類の低下により、海苔の品質が低下し、減産に追い込まれている。そこで、国交省直轄のダムを緊急放流して、栄養塩類を海に供給して欲しいとの要望だ。両大臣ともに、岡山県だけの問題ではないので、今後、協力していくことを約束していただいた。
席上、北側大臣とは、ダムの水利権が話題になった。水権利の有する者の了解がないと放流はできないが、水を持て余しているダムもあることから、ここを柔軟に対処していきたいと言っていただいた。また、災害に強い山を復活させたいとも語っておられた。さらに大臣から、「海苔は山がつくる」ということばは分かりやすいので、是非、広めて欲しいと逆に要望された。
林業、水産業を復活させる
毎週末に、林業、水産業従事者の声を聞いている。この二つの業種は、数ある産業の中でも、採算性や将来性において最も厳しい職種である。山だけ見ていてはいけないし、海だけ見ていてもいけないと思う。安易な補助金が経営体を競争力ないものにしてきたことも直視しないといけない。
山と海とを複合的に捉え、省庁横断的に対策を講じていきたい。そして、国の支援事業については、税金がムダに使われていないかを常にしっかりと監視していきたい。
(谷あい)
【エッセー】海苔(のり)は山がつくる