○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
先般、海外経済協力に関する検討会の最終報告書がまとまりました。これは、ODAに、より戦略的そして効果的な実行を求めたものだと言われておりますが、私は、このODA特別委員会の意味というのは、まずODAが国民から愛されるものになっていく、そのためにはどうすればよいのかということを知恵を絞る場でもあるのかなと。ただ、そのためには、やはりODAの無駄をチェックしていくということをしっかりしていかないと効果的な実行につながらないのではないかと、そのように考えております。
今日は、まず初めに個別の案件について伺いたいと思います。
平成十五年、二〇〇三年十二月二十六日に、イランのケルマン州のバムというところで大規模な地震が発生いたしました。ちょうど一年後の同じ日にあのインド洋の大津波災害があったわけでありますが、逆に言えば、そのインド洋大津波災害のちょうど一年前に起きた地震でございます。死者約四万人、避難民約七万五千人。
そこで、平成十五年度イラン・バムにおける地震災害に対する緊急無償資金協力、具体的には仮設住宅の供与で、金額にしますと約十五億五千万円についてプロジェクトが決まったということを外務省のホームページで私、知りました。
実際、この計画の概要と、また現状について簡単に報告をしていただきたいと思います。
○副大臣(金田勝年君) イラン・バムで起きました地震に対します緊急無償援助の概要、そして現状でございます。
我が国といたしましては、そのイラン・バム地震によります被災民に対する支援といたしまして、緊急援助物資の供与、これが約二千五百万円相当、及び被災者への緊急的な食糧の配布等を目的としました七十七万ドル、約八千三百万円の緊急無償資金協力を地震発生直後に実施いたしております。また、ただいまお話がありましたように、平成十六年三月十九日に、被災民に仮設住宅提供を目的といたしまして、総額約十五億五千万円の緊急無償資金協力を決定して実施をいたしております。
この無償資金協力によりまして、被災民用の仮設住宅九百戸及び共用施設五十戸の調達と据付けを行っております。そして、昨年の十一月十四日までに全戸の設置を完了いたしまして、イラン側に引渡しがなされているということであります。
以上です。
○谷合正明君 そこで、当初、これはいつまでに完了する予定だったのかと、あと、現在、その約九百五十戸ですけれども、実際人は住んでいるんでしょうか。
○政府参考人(佐藤重和君) この仮設住宅については既にイラン側に引渡しがされておりますが、現時点ではまだ居住に至っておりません。
それから、当初、いつ完成予定かという御質問でございますが、これは明示的にちょっと、具体的にいつまでということで当初予定をしていたということはちょっとはっきりいたしません。
○谷合正明君 はっきりしないというのがそもそも援助としてあり得るのかなという疑問があるんですけれども。
要は、ここで問題提起したいのは、二年前に起きた大地震でございまして、緊急救援のための仮設住宅のプロジェクトでございました。いわゆるプロジェクト、日本側のプロジェクトが完了したのが去年の十一月ということでもう既に時間がたっていると。
更に追加して質問いたします。今後の計画はどうされるのかと。この仮設住宅というのは、ニーズはこれからもあると考えていらっしゃるんでしょうか。いつごろまでに完成に持っていきたいのかということを確認させてください。
○政府参考人(佐藤重和君) この仮設住宅でございますが、当然ながら、これは現在、ニーズというのははっきりあるわけでございまして、住居を必要としている被災民のうち、未亡人、貧困者、孤児等の社会的な弱者に対して優先的に提供される予定であるというふうに承知をいたしております。
現在、先ほど申し上げましたように、昨年の十一月十四日までにイランにおいてその全戸の設置、イラン側への引渡しということが完成をしたわけでございますが、他方で、イラン側で具体的にその周辺の例えば電気回りとか外壁であるとか、あるいは汚水浄化槽、上水道の設置、こういった工事ということをイラン側が当然ながら引き渡して実施をするということになっておるわけでございますが、イラン側の財政難等によってその工事が遅れているということで、先ほど申し上げましたように、まだ居住に至っていないという状況にあるわけでございます。
そういった状況を踏まえまして、私どもとして、本来これイラン側でやるということであったわけですが、できるだけそれを側面的に支援をするということで、例えばその外壁の工事といったものについて、本来イラン側でやる予定でございましたが、なかなかイラン側ができないということでございますので、日本側の方で支援をして工事を実施をしていると、そういったような状況にございます。
○谷合正明君 イラン政府が電気、水道を敷設するという見通しがきっちりできているのかどうかというところがまだはっきりしていないんだろうと推測するわけでありますけれども、このペースで行くといつできるのかなという疑問があります。
まず、外務省のホームページ、見させていただきました。支援を決定した理由にこうありました。現地では、地震が十二月二十六日にありましたから、現地では春以降、気温が急上昇し夏は猛暑となるため被災民のテント生活は極めて困難となると。イラン政府は仮設住宅建設のための自助努力を行っているが、更なる援助が必要であるとして、我が国政府に対し仮設住宅建設支援の要請を行ったものであると。それにこたえて緊急無償資金協力を行ったと書いてありまして、これを読む限り、すぐにでも仮設住宅が設置されるべきものだったんだろうと、想定してたんだろうと私は思っているわけでありますが、しかし、実際に、先ほども言いましたけれども、地震が起きてもう二年もたっております。しかも、このサイトがある場所は、聞くところによると、市街地から十五キロ離れたところであるとか、あるいは砂漠の真ん中にあるとか、今から果たしてそういう社会的弱者の方が入っていくニーズが本当にあるのかなというところを私は疑問に思うわけであります。
プロジェクトが遅れた理由というところで、例えばプロジェクトサイトが変更をされたとか、あるいは大統領選挙があって、相手国政府の担当者にこの案件がうまく引き継がれなかったということは承知しております。しかし、そもそもそういったことは、ある意味、援助の計画を立てるときに外部要因として考慮してしかるべきものだと私は思うわけであります。
だから、まず援助そのものの計画が本当に妥当であったのかどうか。しかも、途中で修正できなかったところに問題があると私は思っております。一体、これ果たして緊急救援なのか復興支援なのか開発支援なのかと、その辺のところもぼやけてきてしまっているということが言えると思います。
これからたとえその社会的弱者の方がそういったプレハブの仮設住宅に入ったとしても、じゃ、そこで社会的弱者の方が生計を立てられる、職を得る環境にあるのかというと、やはり私は難しいと思っております。それは、自立につながらない、タイミングを逸した支援になっているんじゃないかと思っております。
ここで、次にお聞きしたいのは、結果的に大幅に本計画が遅れていることについて、そもそも責任の所在というのはどこにあるのかと。これはイラン政府にあるのか。あるいは、今回は外務省が直接実施をする緊急無償資金協力でございますので、外務省にあるのかと。実施の主体は外務省でございます。あるいは、調達代理機関であります財団法人日本国際協力システム、JICSというのはいったんイラン政府に入ったお金をチェックしていく機関だと思うんですけれども、JICSというのは果たして何をしてきたのかといったところに私は疑問を感じているわけであります。
まず、この大幅に本案件が遅れていることの責任の所在を明確にしていただきたいと思います。
○副大臣(金田勝年君) 委員御指摘の点でございますが、本件支援の実施に際しましては、イランの行政内部で様々な調整手続がなされて、そのために一定の時間を要したというふうに承知しております。
具体的には、支援の決定の後、イラン側におきまして住宅の建設用地確保に相当の時間を要したという点、それから住宅の仕様につきましても、イラン側の要請が何度も変更されて、そのたびに調査をやり直す必要があったという点、そして業者契約後でございますが、イラン側負担分の整地工事等がしばらく行われなかったといったような事情で工事が着工できない状態が続いたという事情があったと聞いております。そして、昨年八月の新大統領就任に伴います地方自治体の長が交代になったという点につきましても、事業の実施に関するイラン側の行政機能に影響を与えたということで承知いたしております。
私どもとしては、ただいま御指摘の出ましたJICS、日本国際協力システムとも連携をいたしまして、我が方イラン大使館との連携も緊密にいたしまして、実施の促進に向け努力してきたという経緯もございます。JICSは、地震発生以降現在に至るまで合計十一回、平成十六年一月に現地調査を行った後、十一回十八名の職員を現地に派遣いたしまして、各種調査、イラン側との協議、そして進捗管理等を通じて実施の促進を図るべく努めてきたということも確認をいたしております。
また、我が方のイラン大使館におきましても、様々な機会を通じ、現地のイラン側の関係者と協議を重ねまして、そして工事の促進に向けての協議を重ねてきたという経緯もございます。
そういう中で、先ほど申し上げたような事情がございまして、一定の時間を要したというふうに承知をいたしております。
○谷合正明君 責任の所在です、そこが何かあやふやになっているんじゃないかと。もし、私が仮にプロジェクトリーダーであれば、もうプロジェクトリーダーとしての責任を痛感しているところであります。
しかし、今回、いろいろ現地にも行っていると、十一回も行っていると話ありましたが、イラン政府からの何度も変更が、要望というか変更が来たといったところなんですが、逆に何か日本が援助を押し付けられているというか、日本はイラン側に押し付けるんじゃないということを言っているんですけれども、逆に何か、日本が本来受け持つべきでなかった外壁の工事等を何かなし崩し的に支援をしていると。このままいくと、本当に電気も水道も日本が支援しなきゃいけないんじゃないかということを危惧してしまいます。
次に、情報公開ということについてお伺いしたいんですけれども、そもそもこのプロジェクトは、外務省のホームページに支援が決定したことということの報告しか私は探すことができませんでした。外務省あるいはJICSのホームページのどこを見ても、この進捗状況というものが載っておりませんでした。
JICSの平成十五年度の年報の事業実績には、緊急無償資金協力、このイランの本件について記載がなかったんですけれども、これはどういうことなんでしょうか。国民に対する責任は必要がないと判断したのか、その辺りをちょっと確認させていただきたいんですが。
○政府参考人(佐藤重和君) ただいまお話ございましたとおり、政府が行っておりますODA援助についてできるだけの情報の公開をする、積極的に国民に知っていただくということはこれはもう当然のことでございまして、その点について私どももできるだけ努力をしてきているということでございます。
外務省のホームページもそうですし、先ほど、これは調達機関でございますが、JICSでもホームページをもっていろいろな案件について紹介をしている、あるいはその案件の入札状況といったものもできるだけ公開をするといったようなことをやってきておるわけでございますが、そういった、できるだけこれを拡大をし、できるだけのものを載せようということで努力をしておるわけでございますが、残念ながら、現時点ですべてのプロジェクトについてホームページで紹介をするというところまでには至っておらないということでございます。
具体的に申し上げると、一年間でいわゆるODAを通じて実施をされるプロジェクトの数というのは大変な数、大ざっぱに申しますと、いろんなものを入れて約二千件ぐらいのプロジェクトがあるわけでございますので、そうしたもののすべての案件について、こういう案件を取り上げ、現在どういう進捗状況にあるかということを、残念ながらすべてホームページに掲載をするということには至っておりません。
例えば、無償資金協力で申し上げますと、一般プロジェクト無償といったものについては恐らくほとんどそのホームページに載っていると思いますが、本件は緊急無償ということでございますが、この種のプロジェクトについて、実は残念ながら、今御指摘がございましたようにホームページに具体的に記載がされていないという状況にございます。
それから、JICSのホームページにつきましても、案件については触れておりますが、今御指摘ございましたその進捗状況とか、そういったところについてはホームページに掲載がされていないということはお話あったとおりでございます。
全体として、そのキャパシティーとかいろいろ限界があるところはございますが、私どもとしてできるだけ、こういったものも含めてホームページあるいはいろんな媒体を通じて情報の公開あるいは広報ということに一層改善をしてまいりたいと思っております。
○谷合正明君 済みません。JICSのところで確認させていただきたいんですけれども、二〇〇三年度の国別実績に、いろんな国が全部網羅的に入って、細かに一般無償は何件あってとか文化無償は何件あってとか緊急無償は何件あってとかあるんですよ。それらは私はすべての案件が入っているとは思うんですけれども、なぜイランの案件がゼロになっているのか。これは果たして、緊急無償のその年の実績の金額として、これも十六億は計上されていないんですよ。果たしてJICSの収支報告で、これ入っているのかどうかというところに疑問があるわけですが、お分かりのところでお答えください。
○政府参考人(佐藤重和君) ただいま御指摘がございましたホームページにどういう、なぜ具体的な記載がないかということについては、恐縮ですが私、必ずしもつまびらかにいたしませんが、JICSのいわゆるホームページではございませんが、広報誌、定期的な広報誌がございます。こういった広報誌において、具体的にイランに対する緊急無償、その震災からの復興事業というようなことで具体的にその案件の進捗内容について広報誌の中に記載はあるということでございます。
○谷合正明君 時間がないので、最後に要望だけさせていただきます。
検討会の報告書の中では、無償資金協力については、効果的なタイミングで機動的に実施すべき援助は引き続き外務省自らが実施するとは書いてありまして、恐らくこの緊急無償資金というのはそのたぐいに入るんだなと私は思っておるわけですけれども、もうチェック体制をやはりしっかりしていかないと私はいけないと。今のこのイランの本件に見られるような状態では私は国民から愛されるODAにはならない、そのことを申し上げさせていただきまして、質問を終わりにいたします。