以下、公明党青年局のHPに載せた文章を転載します。
まずはご報告。先月16日に無事、長男が誕生しました。幸い、出産に立ち会うことができましたが、生命の誕生の瞬間、なんとも言いようのない“すごみ”を感じました。生命に対する畏敬の念が生まれてきました。もちろん、この世の女性に対しても畏敬の念を大いに感じたことは、言うまでもありません。
その余韻も覚めやらぬ間に、今度は、と畜場を見学する機会がありました。先週火曜日、赤松厚生労働副大臣に誘われ、東京都港区にある芝浦食肉衛生検査所を視察しました。「出産とと殺。生まれてくる命と亡くなっていく命の両方を見るとは、いい経験になるね(笑)」と、赤松さん。私も少しドキドキしながらと畜場に足を運びました。
この施設は、国産牛肉・豚肉などのと畜、BSE(牛海綿状脳症)を含む生体検査、そして食肉市場をも併設している全国一の規模の施設です。この日は、牛が400頭、豚が800頭あまり処理されていましたが、年間の流通量は全国の約1割を占めます。
視察の目的は、BSE問題について、昨今話題になっているアメリカのと畜場と比較する上でも、国内のと畜場を実際に視察し、わが国のBSE検査体制が現場でどのように守られているのかをみることです。
私自身、と畜場を見学するのは初めて。写真をお見せできればよいのですが、場内撮影禁止でしたのでございません。牛のラインでは、生態検査、と殺、ピッシング(運動機能を失くすための処置)、角・前足・頭・後足などの切断、皮はぎ、内臓摘出・検査、背割り、枝肉検査などをつぶさに見学しました。テール、ホルモン、レバー、タンなど焼肉屋で扱う部位の原形も間近に見ました。
BSE検査は、獣医師の資格のある方が別棟の検査室で一頭ずつ検体(延髄)をチェックしていました。検査員の方によると、ピッシングをすると、延髄が壊れやすくなるので、異常があるかどうかの検査が難しくなるとのこと。このピッシングの代替方法を早期に確立することは、日本のと畜プロセスの課題です。
また、月齢20ヶ月以下の牛については、BSE検査はしなくてもよくなったのですが、国内では、20ヶ月以下の牛は、全体の流通量の1%ほどなので、それを分別して検査しないほうが、時間とコストがかかることが分かりました(特に取扱量の多い本施設の場合)。
視察の目的は、わが国のBSE検査体制を見ることでありましたが、このこととは別に、人間として、食べ物を前にして合掌したくなる気持ちが高まりました。生命の終局のシーンにも、やはり生命誕生のシーンと似た生命の“すごみ”が存在していました。ちなみに日本の食糧自給率低下の原因に、お米を食べなくなったこと以外に、残飯の割合が多いということがあげられるのです。
その日の夜、都内で小学校教師をしている後輩と合流。食事しながら、昨今の教育現場の話など聞いておりましたが、後輩はあろうことか、牛タンを注文しました。しかし、さすがにこの日は牛タンには箸が進みませんでした。
まだまだこの世で生きていくにはナイーブかも知れないな・・・
生きるということは戦いだ。そんなことを思った一日でした。
(谷あい)
【エッセー】生きるとは戦いだ ――― と畜場を見学して