○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
まず、このたび基本計画が変更されまして、派遣期間が一年間延長されました。まず、私は冒頭に、今サマワで活動する陸上自衛隊員、そして外務省員、またクウェートで任務に就いております航空自衛隊員、この一年間、大きなけがもなく、また隊員の方も一発の銃声も出さずに、撃たずに、撃つことなく、地元部族、住民と力を合わせて、また地域に溶け込んで復興支援活動を行ってこられたことにつきまして、敬意を表したいと思います。
〔委員長退席、理事阿部正俊君着席〕
そこで、まず官房長官に御質問をいたしますが、日本国内の世論調査におきましては、派遣については反対意見が多数を占められていたわけでありますが、こういった反対が多い中、派遣延長を決めた理由を国民に分かりやすく説明いただきたいと思います。
そしてまた、この基本計画は、撤収という言葉を使ってはおりませんが、英豪軍の動向に合わせて陸上自衛隊を撤収させる可能性を示したものだと理解をしております。昨年の派遣延長と何が違うのかといえば、私はこの点にあるんだと思っております。延長の理由とともに、撤収を今後どう図っていくのかという出口戦略を含めて、政府の考えを国民に分かりやすく説明していただきたいと思います。
○国務大臣(安倍晋三君) イラクにおける自衛隊の駐留延長に対して、世論調査の結果が残念ながら余り支持が高くないわけでございます。我々はしっかりとこの延長の意義、必要性についてこれからも国民の皆様に説明をしていきたいと、こう思っています。
そこで、今回の駐留の延長の意義でございますが、今、日本を含めて国際社会は、何とかイラクにおいて平和で民主的な国をつくっていく、その苦しい努力を続けているところでございます。その中で、今年一年間政治的なプロセスを進めてきて、そして十二月の十五日にいよいよ新しい憲法の下における国民議会選挙が行われるわけでございます。そして、この国民議会選挙が行われた結果を受けて議会が構成され、そして新しい政府が樹立をして、本当に真の意味でのイラク人のイラク人による国づくりが本格的に土台が整っていくと、このように思います。
その本当に重要な時期を迎える中において、国連においても、安全保障理事会において多国籍軍の権限を来年末まで一年間延長するという決議が全会一致でなされたわけでございます。日本もしっかりとこのイラク人のイラク人による民主的な国づくりのために貢献をしていくという決意を固め、そしてその発信をしなければならないと、こう考えたわけであります。
現在のイラク政府から、イラクの首相からもまた外務大臣からも、自衛隊の今までの活動に対しては感謝をしている、是非とも今この大事な時期を迎えて駐留を延長してもらいたいという要請もあったわけでございまして、そういう中で我々は一年間の延長を決定をしたと、こういうことでございます。決してテロリストに対して誤ったメッセージを発してもらいたくないというイラクの外務大臣の要請にもこたえた形になっているというふうに思うわけでございます。
イラクにおいては、この一年間で、政治プロセスでは憲法草案の承認という重要な進展が見られ、また治安情勢について、イラク治安部隊が着実に増強をされまして、多国籍軍からイラク治安部隊への治安権限の移譲も検討をされています。
先ほど御質問で御指摘をいただきました四項目については、こうした過去一年間の情勢変化に加えて、これからの一年間が政治プロセスの進展、治安権限の移譲、多国籍軍の活動状況及び構成の変化などを含む重要な時期であることを踏まえ、これらの事象を政府として見極めるとの趣旨をより一層明確にするために設けたものでございます。
今委員から出口戦略があるのかと、こう御質問があったわけでございますが、今私が申し上げましたような要素を勘案しながら適切に対処しなければならないと、こう考えているわけでありますが、我々は、そもそも自衛隊を派遣をするという決定をしたときから、一日も早くイラク人のイラク人の手による国家がしっかりと安定したものになり、バトンをイラク人に渡せるような、渡せることができるような状況が生まれることを望んできたわけでありますし、そして、自衛隊が無事に任務を終えて帰国できることをずっと念頭に置いてきたわけでございますが、現在の段階では正に重要な時期を迎えていて、我々はしっかりと更に日本としての責任を果たしていかなければいけないと、こう考えております。
基本的には、しっかりとイラクにおける治安が回復をされ、しっかりとイラク人によって治安を維持をし、イラク人の手による復興がちゃんとできる、しっかりと行っていく、進んでいくことができるような状況をつくり、そして自衛隊が任務を終えることが望ましいと、このように考えております。
○谷合正明君 イラク人の手による治安また復興をつくっていくことを支援していくということであります。イギリス、オーストラリア軍の基本的な考えは、正にそのイラク治安部隊の能力が育成されればその多国籍軍の活動は終了するという基本スタンスがございます。自衛隊が本来の任務としております、目的としております復興についてはなかなかお答えにくいかもしれませんが、どういう状態が、復興の状態が自衛隊の活動が終了できる状態なのかと、基本計画にある「現地の復興の進展状況等を勘案して、」とありますが、もう少し具体的に何をどう見ていくのかということをお答えできればと思います。
○国務大臣(安倍晋三君) この復興支援活動との関連におきまして、具体的にどの程度現地の復興が進展すれば人道復興支援活動の目的を達成することになるかについては、一概に申し上げるのは若干困難でございますが、現地の復興の進展状況としては、例えばイラク人自身による自立的復興の開始等を考慮しなければならないと、こう考えています。それは、自衛隊そのものはもちろん治安の任務を負っているわけではありませんし、治安部隊を創設することについて自衛隊がそれを指導する、援助するという立場にはないわけでございますが、しかし自衛隊も日本もサマワの地にあって復興活動を行っていくということは、イラク人にとっても正に国づくりが進んでいくということを目にしながらしっかりと自分たちで治安も維持し、そして自分たちの手で復興していこうという気概が芽生えていくことにも私はつながっていくんだろうと、こう考えているわけでございまして、そういう気持ちが本当に芽生える中で、いよいよイラク人にバトンが渡せるという状況がつくられることを我々、今望んで一生懸命頑張っているということでございます。
○谷合正明君 そして、次に政治プロセスの進捗状況についてお伺いいたします。
十二月十五日には新憲法下での総選挙がございまして、予定どおりに安保理決議一五四六に定められたスケジュールに進みますと、本年末までにこのイラク政府の発足となります。この本格政府の発足は、イラク民主化プロセスの最終段階でもありまして、正にこのことが基本計画にも盛り込まれているんだと私も承知をしております。その推移は、これは本当に今後のこの一年間の計画を立てる上で重要なファクターであります。
ただ、今年の一月三十日の選挙を終えて移行政府が発足したのはそれから約三か月後でございまして、まあ単純にいかないという可能性も指摘をされておりますが、政府としてはこのイラク政府の発足となり、また政府の、現地政府の統治能力を判断できると、それはいつごろできると分析されているんでしょうか。外務大臣の方にお伺いいたします。
○国務大臣(麻生太郎君) これは、谷合先生、なかなか判断の物すごく難しいところだと思っております。
我々は、何となく、選挙が終わると開票率一%、当選確実なんというのを見る世界にいますので、大体すぐ何でも答えが出てくるということに皆どうしても思いがちですけれども、インドネシア見ましても非常に広い地域でもありますし、ここもいろんな意味でこういった経験がないところで初めてやります。しかも、その中でインチキしないだろうかとかいろんな形で国連の査察団も入ったりする中での選挙の結果が出て、それによって議席が決まって、それに伴って今度は、今の世論調査を見ますと、二けたいっている支持率、いわゆる政党がいろいろ先ほど若林先生の御質問の中にもありましたように分かれておりますので、見ますと二けたいった支持率、二けた以上、一〇%以上というのがないんで、一番上で九%ぐらいのところですから、これはどう考えたって連立になる確率が極めて高い。そうなりますと、その連立をどうやって組んでいくかというのは、これはマイノリティーであろうと、スンニ派もきちんとある程度持たにゃいかぬとかいろんなことを考えて組閣をされることになりますんで、かなり時間が掛かることを覚悟せにゃいかぬと私どもはそう思っております。
その上で、それがスタートしてどう動いていくかということになるんだと思いますんで、私どもは、それがシーア派の人にとってもスンニ派の人にとっても、いわゆるテロというような形での反政府運動というのをやらなくてもいいような安心した形になるのか、引き続きイラク人以外の人が入ってきていわゆる騒動を起こそうとするのか、いろんな状況も考えて、その上で治安部隊、先ほど御質問がありましたように、再来年の八月までには三十二万五千人まで行きたいと、今の移行政権、政府というか、暫定政府は再来年の八月までには三十二万五千人まで行きたいと言っておりますけれども、そういったようなものが確実に新しい政府の下ででき上がっていって、いわゆる定着するのかというところはちょっとなかなか判断のしにくいところだと思いますけれども、テロとかそういったような異常な事件というのが頻発するという状況が少なくとも収まるというのはすごく大事な条件だと思いますし、治安部隊の組織がきちんと訓練され、維持されるというような状況ができ上がってくるというようなところが、先ほど御質問がありましたように、我々としても別の形での、自衛隊を使わない形でのODA等々のいろんなことができていく背景になるんではないかと考えております。
○谷合正明君 今、最後に治安維持というような話も出ましたので、現地の治安状況について質問を移らせていただきます。
今イラク全土に二十七万人を目標にしてこれを整備されていると、現状では二十一万人ということを聞いております。サマワがありますムサンナ県におきましては、六千人がこの治安部隊として活動していると、あるいはイギリス、オーストラリア軍から養成を受けているということでありますが、一方で、全くの経験のない素人が警察であるとかそういう訓練を受けていて、その能力について不安視する向きも、報道もございます。
まず、ムサンナ県の治安状況について伺います。そしてまた、ムサンナ県におきますイラク治安部隊の整備状況、この六千人というのは十分足りているのか、人数規模のこの目標達成度であるとか能力についてこれをどのように把握されているのか、防衛庁長官にお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(額賀福志郎君) 英軍、それから豪軍の幹部の皆さん方と懇談をしたときに、現地の治安部隊の状況について、こういうことをおっしゃっていました。これまでの育成強化で相当レベルは上がりつつあると。ある意味では、このムサンナ県においては現地の部隊に当事者能力が備わってきつつあるというような話だったと思っております。だから、相対的に見れば、ムサンナ県は治安が安定しているということを言っているわけでございます。したがって、この自衛隊の活動についても、自らの努力とそれから現地の治安部隊と、それから英豪軍との、これこそ三位一体で連係プレーの中で治安が維持されていると。
じゃ、かといって、英豪軍がいない中で、現地の治安部隊と陸上自衛隊だけでしっかりと従来のような復興支援活動ができていくことに自信があるのかというと、そこまでは言えないと、我々の立場からは言えないというふうに思っております。それは、イラク全体がやっぱり治安回復の状態ではないと。したがって、周囲からいつ何どき、どういうふうな事態が起こるか分からないという予断を許さないこともあるから、若干の心配はあるということです。
○谷合正明君 いずれにしましても、延長に当たりましては自衛隊の安全確保を万全を期していただきたいということと、そしてまた、この治安と復興の両面におきましてイラク人の手によるこの復興、治安回復というものができる状態になれば、この撤収というのも戦略として考えていただきたいということを要望をさせていただきます。
そして、次にODAについてお話をさせていただきますが、陸上自衛隊がこれまでは理想型としてセカンドランナーに民間、まあNGO、JICAなりにハンドオーバーしていくということが望ましいという考えであったと思います。公明党としましても、引き続きこのODAを中心に人道復興支援活動を、仮に陸上自衛隊が撤収した後も十分継続をしていただきたいということは要望をさせていただいているところでございます。特に、メソポタミア湿原の事業なんかも雇用創出を図る上では非常に重要な事業だと思っております。
しかしながら、現在のところ、またこの当面一年間、セカンドランナーとして自衛隊がバトンを渡すということは、自衛隊がセカンドランナーにバトンを渡すということはかなり厳しいのではないかという私は認識を持っております。
そこで懸念されるのが、自衛隊が雇用してきた、まあ貢献してきた雇用活動であります。陸上自衛隊は一日最大で千三百人の雇用をしてきながら復興支援活動を行ってまいりました。これは安い賃金ではございますが、この現地住民の大きな支援となっておりますし、これを良好な住民関係を築く上にも非常に役立ってきたというふうに認識をしております。
しかし、いきなり撤収となって、いきなり雇用の数が減っていったのでは住民の中で不満が高まるだろうと。住民の不満の矛先がそれこそ今後撤収を計画している陸上自衛隊に向けられる可能性もなきにしもあらずということで、この雇用の継続というのは治安を守るという意味でも非常に大事なファクターであると私は思います。
そこでお伺いしたいのは、セカンドランナーが、実際想定していたセカンドランナー、NGOなりJICAなりが見えない中でどのようにこの自衛隊の雇用を引き継ごうとされていこうとしているのか、その辺りをお聞きしたいと思います。
○国務大臣(額賀福志郎君) その際に、雇用が、自衛隊の復興支援活動で雇用が活用されているというのは、管理技術だとか技術提供を自らが全部完結的に仕事をやるんではなくて、地元の人たちに教えながら、やらせながらやっているということで雇用が生まれていると思うんですね。そこで現地の人たちが、地元の人たちがいろいろ仕事を覚えていくということでありますね。それが、例えばこれからはイラク政府ができる、あるいは現地の行政府ができていくときに、行政府なり政府の当事者能力が、行政府のあるいは統治能力ですね、それは仕事だと業務が展開できるのかどうか、企画力があるのかどうか、住民のニーズをどうやって吸い上げていくのかどうか、そういうことを自衛隊の復興支援活動の中で住民の中に教えているわけであります。
だから、治安活動だけではなくて、そういうノウハウ提供の中で一日でも早くイラク人によるイラクの政府ができ上がるように、あるいは行政、地方の行政府ができ上がるようにしているということの中でその労働力確保とかが行われているというふうに私は現地に行って感じてきましたので、それは御理解をいただきたいというふうに思います。
○理事(阿部正俊君) 外務大臣ですか。いいですか、いいですか。じゃ、金田外務副大臣。
○副大臣(金田勝年君) ただいま御指摘がありました点につきましては、やはり一つは、まず現在はイラクの移行政府が駐留米軍と協議しながら大規模な武装勢力掃討作戦を実施して治安回復に向けて全力で取り組んでいる、そういう状況の中ですけれども、将来、イラクの治安状況が抜本的に改善されたときには、やはりNGOを含むような文民中心の復興支援というのは可能になるんだろうというふうに考えております。
しかし、現在のイラクというのはそのような状況にあるというふうな認識は私どもも持っていないわけですけれども、一方、何といいますか、自衛隊の撤収した後のことについて現時点で判断といいますか、することはできませんけれども、以上の前提であえて申し上げますと、イラクの、本来イラク側の当局が、自衛隊が行っております人道復興支援事業というのは本来イラク側の当局が行っていくべきものだというふうに考えますと、やはり各種事業のフォローアップというものをイラク人が自らのその行政能力を向上させながら行っていくことが期待されるわけであります。
したがいまして、私ども、このたびの中で、御指摘のとおり、これまでは自衛隊の事業関連でいろいろな雇用が創出されてきておりますこと、そのとおりでございますが、これと併せまして、ODAにおきましてもUNDP、国連開発計画等の国際機関を通じました雇用創出事業というものを実施してきておりますし、また十二月八日、このたびの発表のしました内容におきましても同様の事業の実施というものを新たに決定し、発表させていただいているわけであります。
○谷合正明君 今の最後にUNDPのIREP事業のことについてお話が出ましたが、これはちょうど八月、済みません、十二月八日に決まったということで、今後一年間のものでございますが、ほぼこれはムサンナ県で行われて、ほぼこの資金も日本政府のものだとお伺いしております。これ私、いかに日本のこれが貢献なんだということをビジビリティーをしっかり出していただきたいと、パートナーシップ。もう一つは、イラク政府の統治能力を高めるための、そのオーナーシップも大事でありますけれども、日本の貢献であるというビジビリティーをしっかりこのUNDPの事業の中でも出していただきたいということを要望させていただきます。
最後に、イラクからの国費留学生を是非受け入れていただきたいという話を最後にさせていただきます。
このODAによる研修生受入れ事業につきましては、これまで総計千人を超える研修生が日本に参りました。これ、非常に好評だったというふうに聞いております。しかし、その中に新生イラクから国費留学生として日本にまだ一人も来ておりません。サマワにも大学が一つございます。そのほかにも専門学校等高等教育機関もございます。サマワに限らず、私は、このイラク全土というのはかなり教育の発達した国だと、実際に現地を訪問して感じました。
私も実際に二〇〇三年の六月にバグダッド大学を訪問したときに、この交換留学の話をいろいろ、民間部門で働いていたときに交換留学の話をしたときに、是非とも日本に留学生を送りたいんだというような話を向こうの大学関係者から聞きましたが、私は是非ともこの国費留学生受入れを実現していただきたいと要望させていただきますが、まずその状況について教えていただきたいと思います。
○副大臣(金田勝年君) ただいま委員御指摘の留学でございますが、十七年現在でございますが、国費留学生二名、私費留学生一名ということでございます。そして、新たに、十八年度でございますが、大学院レベルでございますが、二名の国費留学生を受け入れるべく現在準備を進めております。これが現状でございます。よろしいですか。
○理事(阿部正俊君) 谷合正明君、時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。
○谷合正明君 はい、分かりました。
政府には、今後、サマワに築いた財産、特に人的なつながりを生かし、息の長い復興支援をしていただくことを要望いたしまして、質問を終わりにいたします。
ありがとうございました。