(公明党青年局のホームページに寄せたエッセーを転載します。)
5月は田植えの季節。私の地元、岡山でも田んぼにきれいに水が張られ、稲の苗が植えられ始めています。農業とは無縁のような都心でも、六本木ヒルズの体験農園で親子が田植えしている様子を微笑ましくテレビで見ました。
今、農業がにわかに脚光を浴びています。あるアンケートでは、「趣味として農作物を作ってみたいと思うか」という問いに対して「現在つくっている」及び「今後つくってみたい」と回答した人は76.4%となっており、農業に対する興味の高さが伺えます。
このように、都市住民を中心に農業に対する憧れが芽生え、食の安心についてますます関心が高まる一方で、実は、日本の農業は、後継者不足と高齢化という厳しい現実に直面 しております。農業を知る人ほど、「このままでは、日本の農業は・・・」と嘆いているのです。
最近、日本の農業の現状を分かりやすく的確に捉えた漫画を読みました。「地の子(つちのこ)」というタイトルの本(原作:毛利甚八)です。西暦2007年夏、文部科学省5年目の青年が、突如首相より、3年以内に「農業高校の卒業生の5割が就農する教育システム」を作り上げるよう命を受け、霞ヶ関から1000km離れた山奥の農業高校に着任します。その青年は試行錯誤の上、「すべての小中高の児童生徒をそれぞれ地域にある全国50万人の中核になる農家へ週1度通 わせる制度を作る。高校生になったらすべての高校で農業を選択科目に加え単位 を取得できるようにする。さらに高校の3年間を通じて農業を学んだ生徒には優先的に各大学の農学部に進める制度をつくる」という案を考え出します。結果 は、残念ながら最後に予算がつかず、その制度自体は実現しませんでした。しかし、村の人たちと協力しながら、農村集落にグリーンコミュニティ特区をつくり、農家と消費者を結びつける体験農園などの取り組みを通 して、過疎化が進む農村を救っていくというストーリーです。
先日の農業委員会でこの話を出しました。そして、現在、農業高校、大学農学部の卒業生がどのくらい就農しているのかを尋ねました。答えは、農業高校については、平成15年卒業者が3万4231人いて、就農者は1026人、就農率は3%。これが大学の農学部になると、15年度で卒業生1万5865人、就農者が491人、就農率3.1%。(私も就農していない人間のうちの一人!)
就農率は極めて低い数字であります。農業高校卒の5割が就農するというプロジェクトは極めて難しいのです。なぜ、これほどまでに数字が低いのか。農業で生計を立てていくことが難しいからでありますが、その他の理由としては、就農したくても情報がない、土地がない、経験がない、資金がないということで、そのあたりの参入障壁を取り除いていかなければならないと私は思っています。農業高校や農学部だって、卒業後の進路にはいろいろな選択肢があってもいいと思いますが、これからは、若い人たちの就業先の一つとして農業にもっと焦点をあてるべきです。新規就農の支援を今後とも積極的にしていきたいと思います。
これからの農業は、「きつい」「きたない」「危険」の3Kではない、「価値、感動、可能性」の3Kだと、ある農村で働く女性が語った言葉を紹介しながら、農林水産委員会での質疑をしめくくりました。他党の議員より、「3Kもらったよ!」と肩をポンとたたかれました。
【エッセー】就業先の一つとしての農業