先日、岡山県と鳥取県の農業後継者の方とお会いしました。後継者ですから20代、30代の若い世代です。花卉(き)、畜産、果樹、野菜などさまざまなジャンルで活躍しています。どの分野にせよ、自分と同じ世代と話をするのは非常に刺激的です。なぜなら等身大でお互いに話せるからです。国会議員だからといって先生と呼ぶ必要もありません。公明党の議員は、○○さんでいいですよ、そういう政党ですと言うと、それはいいですね、本音で語れますねと、喜んでいただけます。
ところで今回は、相手は農業のプロですから、こちらが知らないことばかりで本当に勉強になりました。鳥インフルエンザの発生を防ぐための取り組みや、中国から園芸技術を学びに来た人たちの話(北京五輪に向けて景観用の花のポットの需要が高まっている)を聞きました。また、その花の栽培農家では、園芸療法に近い環境を提供できるということで、従業員の半分を精神障害者で占めているとのことでした。
具体的な話以外に彼らの口からは、自分たち生産者の本当の声を国政に届けたいという強い思いを感じました。彼らの本音は資金繰りや設備投資といった問題よりも、農政の構造に対するものでした。日本の農業政策は長らく、農水省や農林族の議員で決められた方針に従い、現場の生産者がものをつくるというような、極端に言ってしまえばトップダウンの構造がありました。若い生産者の声が農政の意思決定者に届かない構造です。
私は今、社会の一線で活躍する方(もちろん農業にも造詣の深い方)にお会いするとき、必ず日本の農業の行方を聞いております。皆、日本の農業の可能性や将来性を非常に買っています。そして、やる気のある人が活躍できることが大事であるという共通認識をもっておりました。まったく同感です。日本各地に成功事例はたくさんあります。高い値段でもいいものは買いたいという消費者のニーズもあります。守る農業から攻める農業へ。そのためには、10年、20年後の農業の中心を担う今の若い後継者や新規就農者が活躍できる場を広げることが何より大切ではないでしょうか。
(谷あい)
【エッセー】農業後継者と懇談して