<今年最後の質問>
12月9日に、政府はイラクへの自衛隊派遣を1年間延長する基本計画を決定しました。その決定を受け、13日の月曜日に衆・参のイラク特別委員会が開かれました。参議院の委員会では、公明党を代表して私が質問に立ちました。
私に与えられた質問時間は20分(民主党が3人で100分、自民党が30分、共産・社民がそれぞれ10分)。今回は閣議決定後の大切な時期での質問になりますので、自分の関心事項もさることながら、まずは国民の抱く不安を代弁し、国民が納得できる答弁を政府から引き出すことが大事だと考えました。
今回質問したテーマは、派遣延長の根拠、日米同盟の重要性、イラク国民議会選挙、オランダ軍撤退、そして自衛隊の広報体制についてでした。その他、事前に質問通告していたけれど、時間の関係でできなかったものが、自衛隊の撤退時期とODAによる人道復興支援でした。
実際、20分という時間はあっという間に過ぎます。質問時間と答弁時間の割合はだいたい1:2が目安なので、今回の場合、全体で私が質問している時間が7分、閣僚の答弁が13分ぐらいです。5問質問していますので、1問あたり4分という短い時間で質問をし、回答を得ることになります。(質疑の全文については、今後、HPにアップしていく予定にしています。)
これまで、私のHPのもとには、安全確保の懸念から自衛隊の派遣延長に反対する声が寄せられていました。また反対しないまでも、慎重に判断して欲しい、派遣するからには安全確保に万全を期して欲しいという声が寄せられていました。
現時点で、私は派遣延長を支持しております。サマワは戦闘地域でないということと、自衛隊の安全確保がなされていること、その上復興のニーズが多く残されているという考えです。その立場で、治安情勢の判断を見誤らないこと、自衛隊の安全確保について万全を期すことを、政府に要求しています。今後も、イラク情勢・サマワ情勢の認識については、政府の丁寧な説明が必要です。そして、1月末に行われるイラクの国民選挙に対する我が国の外交努力、3月中旬からはじまるオランダ軍の撤退に伴う治安確保の問題、今後の自衛隊による支援内容、ODAによる経済協力への移行、あるいは政府広報のあり方などについては、もっと議論がなされてしかるべきであります。
<イラク委員会 vs 農林水産委員会>
ところで、私はイラク特別委員会と農林水産委員会に所属して、委員の質疑の違いを感じたことがあります。それは現場体験があるかどうかということでした。
農林水産委員会の各委員は、農業に従事してきたり、農政に携わってきた議員が多く、また今回の台風被害でも現場に足を運んできている議員ばかりであります。一方で、イラク特別委員会では、ほとんどの議員が海外での人道復興支援の現場経験をもたないので、観念的な質問や新聞情報に頼る質問がほとんどでありました。
今回、防衛庁長官がサマワを訪問しました。帰国後に、長官から報告を聞きましたが、長官の口から最初に出てきた言葉は、民生の安定を感じたということでした。衛生テレビ用のアンテナが次々に設置されている、レンガ作りの住宅建設ラッシュが進んでいるといったことを挙げて、民生の安定とイラクの治安回復が密接に関係していることを述べていました。多分、長官自身、イラクはもっと荒廃しているとの認識があったのだと思います。
イラク・サマワの現場の実態に一番近い形のものを伝えることができ、議論ができるのは、やはり現場に行ってきた人だけだと思います。
<イラクにローカルNGOがうまれた>
わが国では過激派による爆破テロや、戦闘場面が繰り返し報道されていますが、市民生活の復興が着実に進んでいることも事実です。むしろその方が実態に近いという指摘(前在イラク臨時大使)もあります。私は、サダム・フセインの独裁体制から解き放たれ、新たな国家建設に意欲を示すイラク国民の姿をこの目で見てまいりました。私が印象的だったのは、フセイン政権の崩壊後に、現地のイラク人医師が、国際機関や国際NGOによる支援とは別に、自ら被災地域でボランティア活動を立ち上げていたことです。フセイン政権下ではほとんど存在しなかった現地NGOが、今のイラクには2000余りあると聞いております。
私はこういう姿からイラクの民主化の動きを確信しました。これは、イラクが援助に依存せずに、自立的な復興を遂げるためには、大変重要なファクターだと私は考えています。
では、ODAやNGOによる支援に切り替えればいいではないかという批判もありますが、現状では厳しいと思います。それは、イラクでは外国人が、金品だけでなく命までも狙われるということ、特にソフトターゲットと言って、人道支援に従事するようなスタッフが狙われるということです。また比較的安全なサマワでさえ、そのサマワのプロジェクトサイトまでに行くまでの道のりが、危険だということです。人の動き、物資の動きが制限されると、人道支援活動というのはほとんど機能しなくなりますので、比較的安全なサマワでも、今はやはり自衛隊でないと活動は難しいのであります。
イラク国民議会選挙や憲法制定が予定されている2005年は、イラクにとって重要な年です。治安次第で、我が国のイラクへの人道復興支援も、自衛隊による支援から、徐々にODAやNGOなどによる支援にシフトされていくことになると思います。そういった一連の復興プロセスに的確な決断と実行が、いよいよ政治家に求められてくることを自覚し、今後のイラク特別委員会での論戦に臨んでまいります。
(谷あい)
【エッセー】私の見たイラク