○谷合正明君
公明党の谷合正明でございます。
私は、NGO職員として実際にイラク戦争後に現場に行きまして、イラクに行って人道復興支援に携わってきた者であります。自衛隊による人道復興支援、これは民間のNGO、ODAによる支援と並んで必要だということも、私は議員になってからも各地で訴えてまいりました。しかしながら、そういった現場の状況を説明する、しますが、なかなか国民に正確に理解してもらうということが難しいということを私も実感しております。
このたび政府が自衛隊のイラク派遣の一年間延長を決定いたしましたが、小泉首相が国民の理解と協力を求めたいと閣議決定後の記者会見で述べられておりますが、まだまだ十分に理解が得られていないという状況であります。首相は決断後には迷いはないということでありますが、派遣延長に不安を持つ国民の声もたくさんあります。私は、そういう意味で、本日はそういった国民の声を代弁するような形で質問をさせていただきたい、そしてまた官房長官、外務大臣、防衛長官に答弁していただきたいと思います。
まず初めに、期間延長の判断について官房長官にお伺いいたします。
公明党は、かねてより、自衛隊が撤退すべきかどうかの判断をするときに四つの条件を挙げておりました。その一つが、人道復興支援の目的を達したとき、そして自衛隊派遣にイラク政府の同意が得られなくなったとき、自衛隊の派遣地域が非戦闘地域でなくなったとき、また自衛隊の安全確保ができなくなったとき、その四つのいずれの条件を満たせば自衛隊は撤退すべきであると見解を示してまいりました。
このたび、政府が一年間の派遣延長を決断するに当たりまして、今申し上げました四つの条件に照らしまして、派遣延長を決断した積極的な理由と、一方で迷い、懸念をどう乗り越えてきたのかについて、官房長官にお伺いいたします。
○国務大臣(細田博之君)
公明党からの自衛隊の撤退の四つのケースという御示唆を、そして御提案をいただきまして、非常に重く受け止めております。そして、その重く受け止めた結果を更に熟慮を重ねまして、この計画における四つの要素として盛り込んでおるわけでございます。
一つは、より具体的に申し上げれば、人道復興支援の目的については、イラクの復興は道半ばでありまして、引き続き現地においては支援の必要性が高く、活動を継続することが強く望まれている。自衛隊の活動は現地の人々の生活基盤を回復、充実させ、また雇用も生み出してきており、我が国にふさわしい分野において引き続き復興に積極的に貢献することが重要だと。
第二には、暫定政府からの同意については、自衛隊の活動の成果はイラク暫定政府からも高い評価を受けており、引き続き活動を継続するよう強い要請が寄せられている。
第三に、非戦闘地域の要件に関しては、これまでにサマワで発生した事案を総合的に判断すれば、イラク特措法に言う戦闘行為に該当するとは認識しておらず、自衛隊の活動するサマワ周辺については現時点で非戦闘地域の要件を満たさなくなったとは考えていない。
安全確保に関しては、自衛隊の活動に当たっては引き続き現地の治安情勢などの情報収集を徹底し、周辺の警戒や警備を強化するとともに、宿営地内の施設の防護の強化などの措置を講じて安全確保には万全を期する所存である。
今般の決定に当たりましては、このようなことを踏まえまして、公明党からの御要請、あるいは、もちろん国会におけるこれまでの御議論、そして国民世論の動向にも気を配りながら総合的に判断して、このように判断したものでございます。
したがって、総理も記者会見で語っておりましたように、熟慮に熟慮を重ねたと、やはり一〇〇%大丈夫かと言われれば、いろいろなケースが考えられるわけですから、その点を十分考えて、しかも隊員の安全を守らなければならないということでの決断であったということを本人からも言っておりましたけれども、正にそのような決断であると申し上げられると思います。
○谷合正明君
小泉総理は、閣議後の記者会見で、日米同盟と国際協調の方針を具体的に実施に移している今の日本の支援策は日本の国益にかなうと述べられております。日米同盟のためになぜイラクに派遣するのか、イラクに派遣しなければ日米同盟というものが壊れてしまうのかという声もあります。
この日米同盟の要するに重要性について分かりやすく説明していただけますでしょうか、官房長官。
○国務大臣(町村信孝君)
日米同盟というと、狭い意味に解するとこれは日米安保条約ということになってくるわけでございます。ただ、日米同盟というと、幅広いもう少し概念だかなと私は思います。それは、政治的なつながり、また安保以外の様々な国際貢献活動、これは先ほど累次の御答弁でも申し上げましたとおり、一九九〇年、湾岸戦争の言わば反省に立って、確かに一部掃海艇の派遣等がございましたが、基本的にはお金で行ったところ評価をされなかったということを反省しながら、我が国はPKO法というものをいろいろな議論の末通し、それに基づいてカンボジア、東ティモール、あるいはゴラン高原等々、あちこちに派遣をしてきた、そういう活動。それから、経済的なつながり、文化的なつながり、様々な人とのつながり、そうしたものが重層的に日米関係というものを形作り、これだけ複層的なつながりがある国は多分ほかにはないんだろうなと、かように思っております。
したがいまして、私は、今回このイラクに自衛隊を派遣しなかったから直ちにもう日米関係がそこで崩れてしまうとかいうことには、それはならないと思います。それほど単純な、単線的な浅いつながりではないと、こう思っております。
他方、やはりこうした一つ一つの行動の積み重ねというものが今日の安定的な日米関係を築いてきているということは当然のことだろうと思っておりまして、そういう意味で、必要条件か十分条件かみたいな議論をするつもりもありませんけれども、やはり日米関係というのはそういうものではないだろうかと。今回のイラク派遣というものによって国際社会の信認も増したし、また日米関係がこれによってある意味じゃより一層強化になって、強化されたということが言えるのではなかろうかと思います。
○谷合正明君
次に、来年の一月三十日に行われる国民議会選挙について外務大臣にお伺いします。
サマワは比較的安定しているとはいえ、予断を許さない状況であります。そうした中、一月三十日に選挙を迎えますが、イラクの現地では二百の政党が届出をしているという情報もありますが、一部の政党がまたボイコットをするという話も聞いております。限りあるイラク治安部隊の兵力を集中させるため、投票日を州ごとに変えて実施するという案も検討しているというような報道もありました。そんな中、スンニ派の動向も気になります。
十一月十日、本委員会で私が質問、この選挙について我が国の外交努力について質問させていただいた際に、外務大臣は以下のように答弁をされました。十一月下旬にエジプトでのG8とイラク周辺国が集まる会議に出席して、イラクの政治プロセス支援のためにその場で国際社会の連帯と協力を固めていきたいと言われました。
自衛隊の安全確保、イラクの安定のためにこの選挙を成功に導くことは必要ではありますが、報道では、この選挙支援が具体的に、具体策に乏しいと指摘されておりますが、外務大臣、この国際社会の連帯と協力についてどんなことを固め、そして外交努力、支援を具体的にどういうことを行おうとしているのか、お答えいただけますでしょうか。
○国務大臣(町村信孝君)
議員御指摘の先月十一月二十三日、エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催をされましたイラクに関するG8及び近隣国の会合、私も出席をしてまいりました。その中で、もう本当に、ある意味では全会一致といいましょうか、みんなでこのイラクの政治プロセス、なかんずく、一月三十日ということをその場でイラクが発表したわけでございますけれども、この選挙というものを成功させなければいけない、これがイラク再建の第一歩だということについての認識は、確かに、先ほど前の御質問の方にもあったように、ドイツあるいはフランス等のアメリカの武力行使についていろんな議論があった国々であっても今回のこの政治プロセスは成功させなければいけないということを異口同音に言っていた点が私は大きな成果であったと、かように思っております。
具体的にじゃどういうことが決まったか。まあ、日本は選挙支援として四千万ドルの資金拠出を行うということを発表したわけでございます。それぞれの国がそれぞれできることをやろうということでありまして、アメリカはそのための治安維持というものをしっかりやっていかなければならない。あるいは、周辺国は周辺国で自分たちの持っている影響力、これは宗教的な影響力もあると思いますし、また政治的な影響力もあると思います。余りこれはイラク国内への影響力を行使するというとイラクはイラクで余り面白くないことなのかもしれませんけれども、それでもいろいろな形で、外交努力を含めて選挙を成功させたいということでございまして、今それに向けて着々と作業が進んでいる。
ただ、委員御指摘のように、すべての政党、すべての宗教者が参加するかというと、それは必ずしもそうでもないかもしれない。成功することは大変イラクの政治にとっては大きな意味を持つだけに、逆に武装勢力はこれを必死になって妨害をしてこようという動きは当然に予想されるわけでありますので、そういったことを含めて、私どもとしては、また、国連のこの選挙への関与、選挙に関する指導というようなことも国連は国連でUNDPを通じてやっていたりというようなこともございます。そうした様々な努力の積み重ねではなかろうかな。
じゃ、完璧な形でこれが行えるかどうか。私どもはそれを期待をしておりますけれども、日本で考えるような、すべての全国津々浦々できちんと選挙が行えるかどうか、それは率直に言って、進んで、事態が進行してみないとなかなか分からないという面があろうかという懸念材料は率直に言ってあるわけでございます。
○谷合正明君
続きまして、オランダ軍の撤退時期につきまして伺います。
三月中旬にオランダ軍が撤退を開始していくということでありますが、その過程におきまして治安維持がなされるのかどうか、そこに国民の関心が非常に集まっております。治安確保に空白が生じないように万全の努力をしていただきたいと要望いたします。
町村大臣は、イギリスそれからイラク暫定政府を中心にして今後調整が行われていくものと見解を示されております。オランダ軍がサマワ、いや、まあムサンナ県から撤退する理由の一つが、イラク人警察部隊が養成されてきたということもあります。そうした中、イギリス軍が、ほかの地域と比べ比較的安定と言われるムサンナ県に治安部隊を優先的に回すことができるのか、八千五百人のイギリス軍が一千三百人いたオランダ軍の肩代わりをすべて持つことは難しいのではないかという声もあります。
いずれにしましても、派遣延長を決めたこの時期に、どういう形でどこの部隊がオランダ軍の後を引き継ぐのかということがはっきりしておりません。治安確保に切れ目が生じないようにするために、イギリス軍とまたイラク暫定政府のバランスなど、今どういう形に持っていこうと外交努力をしているのかについて伺います。
○国務大臣(町村信孝君)
これは、委員御指摘のとおり大変重要なポイントだと、私どももそう思っております。
イギリスのストロー外相あるいはアメリカのパウエル国務長官等とも私も電話で話をしたり、あるいは先ほどのシャルム・エル・シェイクでの会合等でも、もちろんその時点ではまだ私ども延長を決めたわけではございませんが、いろいろな頭の体操というか、議論は行ってきております。
その中で、例えばイギリス側からは、私どもの内閣の決定を受けた後こういう説明を、公式な発表をしておりまして、イラク南東部の多国籍軍を統括する責任を有するイギリス政府は、オランダ軍が撤退する際には、英国政府として、ムサンナ県の治安及び安定を確保するべく、責任を持って多国籍軍の中の調整を行うことを保証いたします。このために必要な部隊の配備の詳細については、多国籍軍参加国及びイラク当局との間で議論され、またそれは今後オランダ軍撤退までの事態の推移を踏まえて決めることといたしております。また、イギリス政府は、本件について引き続き日本政府と緊密に協議を行っていくことをお約束をいたしますと、こういうようなアナウンスを日本の閣議決定の直後に行っているところでございまして、こうした外交努力、さらにはイラク人による警察等の治安維持能力の強化といったようなものと相まって、力の空白が生じないような外交努力をしっかりとやっていきたいと、かように考えております。
○谷合正明君
時間が迫ってきましたので順番を変えますが、広報活動の充実につきまして伺います。
このたび、防衛庁長官自らがイラクに行かれました。五時間の視察で何が分かるかという批判もあるわけでありますが、私は、いや、百聞は一見にしかずだと思っております。責任者としての立場、また行ったことによりまして国民に、国民の関心もイラクに向けられると。その意味で、この数日間、イラク・サマワに実際に行ってきた人の声が、生の声が伝わってきたと思います。私、我が国では過激派による爆破テロあるいは戦闘場面が繰り返し報道されておりますけれども、イラク国内の経済、政治の復興が着実に進んでいるということから目をそらすべきではありません。
サダム・フセインの独裁体制から解き放たれて新たな国家建設に意欲を示すイラク国民の姿というものも私は見てまいりました。実際、私が戦争後にイラクに行って印象的だったのは、フセイン政権の崩壊後ですね、現地のイラク人医師が自らの意思で国際機関や国際NGOのその支援とは別に、支援をする前から被災地域に入りましてボランティア活動を立ち上げておりました。現在、イラク国内には二千余りのNGOができたというふうに、国内、現地NGOができたという分析もあるんですが、私はこういう姿からイラクの民主化の動きというものを知りました。イラク・サマワの現場の実態に一番近い形のものを伝えることができるというものは、やはり現場に行った人だけだと私は思っております。そういう意味で、現地からの、今サマワからの報道というのは、我が国のマスコミが現地のマスコミに委託する形で報道されていると思いますが、やはり派遣されている自衛隊隊員の生の声というものが国民は知りたいと思っているわけであります。
そこで、陸上自衛隊、航空自衛隊の広報体制はどうなっているのか、その辺り、ちょっと事実確認をさせていただきたいと思います。
○国務大臣(大野功統君)
広報体制、特に情報という観点から申し上げたいと思います。
○谷合正明君
今、日本に対するパブリケーション……
○国務大臣(大野功統君)
今、谷合先生、正におっしゃったとおり、私、このパブリケーションという意味じゃ本当に反省をいたしております。現場のいろいろな現象がありますけれども、例えばサマワで自衛隊の支持デモがある、ほとんど日本に伝わってきません。日本の自衛隊に対する反対デモがある、非常によく伝わってまいります。それから、イラク全体で見て、治安のいいとこ悪いとこ、様々でございます。これはもう先生御存じのとおりであると思います。
そういうことで、正確な情報を国民にお伝えしなきゃいけない、このことは本当に反省しておる次第でございます。また、正確な情報を取らなきゃいけない、このことも反省をいたしているところでございます。
そこで、広報活動でございますけれども、まず現時点で、現在の広報活動を申し上げますと、防衛庁長官や派遣部隊幹部等が新聞、テレビなどメディアに積極的に登場するという心構えを持つことが必要だなと。そして、今、原則週三回、月水木でありますけれども、陸幕において派遣部隊の活動状況についてブリーフィングを行っております。その際、現地で映しましたビデオ等の提供も行っているところでございます。部隊交代に伴う出発あるいは到着というような重要な節目におきましては、言わば一つの行事を行いまして皆様に是非とも見ていただく、このようなこともやっております。
また、衛星テレビ電話を使いまして、現地と東京を結んだ記者会見も行っておるところでございます。同様に、衛星テレビ電話を使用したりした現地隊員へのインタビューも随時行っております。
また、現地イラクにおいては、現地登録記者を対象に活動状況に関する一日一回の電子メールを配信いたしております。現地メディア及び現地雇用者等を対象に取材申請に基づく取材対応もいたしております。
今後とも、こういうような広報につきましては、私は十分に配慮して、そして国民の皆様に自衛隊というのはどういう活動をしているんだ、こういうことを的確にお伝えする努力をしてまいります。
○谷合正明君
終わります。