○谷合正明君
公明党の谷合正明です。私も本日の委員会の質問が初めてでございます。初陣でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
早速ですが、担い手の対象について御質問させていただきます。
小泉総理はさきの所信表明演説の中で、農業問題について、農業の競争力強化のため、やる気と能力のある経営に支援を重点化するなど、農政改革に取り組むと述べておられます。また、島村大臣は、やる気と能力のある農業経営に対する施策の集中化、重点化、担い手の経営に着目した経営安定対策への転換等を推進していくと抱負を述べられております。
先ほどの主濱議員と重複する質問ではございますが、この担い手の対象や経営安定対策の具体的内容について現在審議会において検討中とのことですが、農業団体等からは、この担い手の範囲が大幅に絞り込まれることによって食料生産の後退や自給率の向上が妨げられるのではないかという危惧する意見がございます。この懸念について大臣御自身の御所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(島村宜伸君)
ただいま谷合委員御指摘がありましたように、確かに農業の言わば担い手についての育成というのは言うべくしてなかなか難しい問題がございます。しかし、我々は、あくまでやる気と能力のある農業経営者に対しては施策を集中して、やっぱり農業をやっていることが言わば農業自身に取り組むその作業も楽しみであると同時に、やはり自分自身の生活の言わば糧としてもこれがある意味の裏付けを持てるという確信を持っていただくことが肝要だろうと思っています。
さらにはまた、農業を営むことで健康を維持しあるいは自然に親しむといった側面的なそのプラスもあるわけでありますから、例えば私の場合は東京が住まいであり選挙区でございますけれども、やっぱり東京の人たちにも最近は非常に市民農園に対して親しむ人が非常に増えてきておりますが、農業の持つ意義、そして楽しさ、そしてそこに得る実益等々をよく周知させる中で、私たちはこの農業の言わば担い手というものの育成を現実のものにしていきたいと、こんなふうに思っているわけであります。
そういう意味で、各種施策について、その対象を担い手に明確に絞った上で集中的、重点的に実施するということは別に他を排除するという意味ではございませんで、逆にそのこと自身に集中的にお取り組みをいただく方を積極的に支援していこうと、こういう意味でございますので、御理解をいただきたいと思います。
○谷合正明君
その担い手の対象ということで、とりわけ中山間地域でありますとか農家女性といった、そういった方々の声も最大限に配慮していただきながらの担い手育成を進めていただきたいと思います。
今、多面的機能の話がございましたが、都市農業の在り方について伺いたいと思います。
大臣の御出身である東京江戸川区ですが、コマツナを始めとする軟弱野菜の産地でございます。都内でも有数の都市農業地帯でありますが、この都市的地域には全国の農地面積の二三%に当たる約百十二万ヘクタールの農地が存在しております。ただ、この面積が都市開発等の影響によって減少傾向にあります。私も生まれ育ちは埼玉県の新座市でございますので、この問題よく分かります。
言うまでもなく、都市農業は生産者と消費者を結ぶ接点であると同時に、環境保全、先ほど言われましたようなゆとり、潤いの提供、農業学習、防災といった多面的な機能を持っております。また、相次ぐ台風被害によりまして、野菜の品不足、価格高騰を見ましても、都市住民に対しまして新鮮な食料の供給基地として都市農業を更に育成、みなしていくことが不可欠であると私は思います。また、とりわけ最近都市部の住民の間で食の安心、安全についての関心の高まりもございます。都市部の若い世代がIターンで農業に就こうという動きもございます。
こういった中、今後の農政の展開方向、経営力のある大規模農家への施策の重点化でありますが、こうした都市農業の展望、またあるいは農政における都市農業の位置付けについて、大臣の御見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(島村宜伸君)
御指摘をいただきましたように、私どもの地元は正に都市農業のメッカと言っても決して言い過ぎじゃない。特に、コマツナは私どもの土地の小松川というこの小松を取ったものでありますし、また非常に私どもの地域の農業従事者は勉強家でありまして、例えばセロリなどは日本一の言わば評価を受けたのが、何回も受けていると、こんなようなことで、製品の優秀さについても高い評価を受けているところであります。
また、私的にも、私たちの日常生活の中で、朝起きると取りたてのまだ露を含んだ野菜が山に積んであって頑張ってくれと、こんなようなお話もいただくわけで、都市農業の有り難さを味わっておりますが、この都市農業があることで、今いろいろ御指摘をいただきましたように、正にオープンスペースが確保され、緑が言わば現実のものとなり、言わば災害その他の際にも我々に非常に備えとしての効果を持たしてくださいますし、また同時に、まじめな営農者と都市住民とのお互いの協調といいましょうか、今我々の地域ではすっかりお互いがなじんでよくその理解が進んでいるところでありますから、あの地域における人たちは大体が、すべて親の後を継いで農業をやるという気概を持っている人がほとんどでありまして、我々は是非そういう人たちが更に希望を持って頑張っていただきたいと思うわけであります。
さはさりながら、やっぱり規模が極端に小さいところはどうしても限界があるわけでありまして、どうも泥仕事は嫌だという人もいないではないわけでありまして、これはむしろ増えるよりは減る傾向にあることは事実でありますから、これをできるだけ食い止める中にまた都市農業の妙味というものを育てることが非常に大事だと思います。
そういう意味で、私どもは言わば二十年ほど前になりましょうか、生産緑地制度等を設けまして、言わばその人たちの農地のバックアップをさせていただいたところであります。
○谷合正明君
ありがとうございます。 次に、昨今の台風、地震による風水害によります森林荒廃の問題について伺いたいと思います。
このたびの台風二十三号に、特に二十三号によりまして、杉やヒノキ林の大規模倒木被害というものが私の地元の岡山県の北部を中心にかつてない規模で広がっております。私も早速現地に視察に行きまして、現地の地元の方が、こんな風害は生まれて初めてだと、経験したと言っておられました。この森林が本当に根こそぎばさって倒されていると、そういう本当に悲惨な状況でございました。元に戻すことが多大な時間と経費を要することはだれの目に見ても明らかなんですが、かといってこのまま放置しておきますと、地すべりなどの二次災害を引き起こす可能性もありますし、このまま林業の放棄地という拡大にもつながってくると私は思います。
先ほど常田副大臣から林業の間伐の推進ということで言われましたけれども、今、間伐意欲の低下ということが指摘されております。現在、この風水害によりまして、間伐どころか倒木の処理、利用にも困っておりまして、今回の地震また風水害に、一連の災害におきまして、今後ライフラインなどの応急対策にも全力を挙げて取り組むのはもちろんなんですが、中長期的な災害対策も講ずるべきであります。
その意味で、再び水源涵養力のある山林の復興というものが非常に重要だと思います。一都道府県でできることには限られておると思います。政府として、今回の一連の災害によりまして荒廃した山林の復興についてどのような対策を講じようとしているのかお伺いいたします。
○副大臣(常田享詳君)
私も先般、台風の直後、京都府並びに兵庫県に視察で入りました。特に、京都府の福知山それから大江町等で、市長さん、また町長さんから、今、委員御指摘の同様の、治山事業また森林整備事業は国の責任を持ってやっていただきたいと、今後に大変不安を抱いているという御指摘をいただきました。
このたびの台風による森林風倒木被害につきましては、特に九月七日、八日に来襲した台風十八号、これで既に百九十億に上っております。また、十月十九日、二十日ですね、このたび私も視察しました台風二十三号、これは大変大きな、またそれを上回るような被害が発生しております。
そういった意味で、こういった被害に対する、早期に被害木を伐採、搬出し、跡地を造成、進めるということだけではなく、今後、今、委員御指摘のとおり、根本的な森林整備事業また治山事業等、併せて中長期的な計画も立てながら取り組んでいかなければならないと思っております。
大変、委員と同じ問題を共有しておりますし、兵庫県知事、京都府知事からも切実な大臣に対する要請をいただいて帰ってまいっておりますので、全力で取り組んでまいりたいと思います。
以上でございます。
○谷合正明君
前向きな御答弁ありがとうございます。
林野庁のみならず、国を挙げて、政府を挙げて総点検して、この森林の復旧というものに取り組んでいただきたいと思います。
関連しまして、鳥獣被害につきまして伺いたいと思います。
私もこの数か月間、岡山を中心に、鳥取、島根ですとか、また兵庫、滋賀、福井の中山間地域を回ってまいりました。現地の農家の方に伺いますと、BSEもあるけれども、身近な直近の問題として、鳥獣被害の、野生鳥獣の被害を訴える声が圧倒的に多かったわけであります。
農水省の調査によりますと、二〇〇二年度の全国の野生鳥獣類による農作物被害の面積が約十四万四千ヘクタール、被害額は二百十三億円に上っています。クマだけ、今クマの話題が出ておりますけれども、シカ、イノシシ、猿などの農作物被害です。せっかく苦労して作り、収穫を間近にした作物が食べられてしまうと。農家の方々にとっては非常に今つらい思いだと思います。このような事態が続けば、中山間地域、特に高齢化しているような地域では、もう農業はあきらめている、あきらめる、耕作放棄地の増加に拍車を掛けることになるのではないかと思います。
しかしながら、環境面から考えれば、やみくもに有害鳥獣を駆除すればよいというものでもないと。野生鳥獣と共生を図っていく、これもまた必要であります。しかし、被害が大きくなってきますと、地域住民の方々の理解、協力も得にくい状況になるものと思います。また、市町村におきましても、鳥獣保護法との関係に苦慮して、また対策費用も、負担も財政が逼迫する中で非常に厳しい状況でございます。
そこで、政府として現状をどのように認識しているのか、またこの問題は、農家、市町村、関係機関、そして農水省、環境省も含めて協力して対策を講じられなければならないと思いますけれども、どのような対策を講じ、また講じられようとしているのか、最後にお伺いいたします。
○大臣政務官(加治屋義人君)
谷合先生のお話を聞きながら、正にそのとおりだよねと感じていることがあるんですけれども。
私は、先般、鹿児島県の屋久島に行きました。屋久島というのは、耕地面積が非常に狭いこともあって、タンカン、ポンカン、これが主幹作物でして、屋久島というのは人よりも猿の数が多いよねと、人の数よりもシカの数が多いよねと、こういう中で、猿とシカとの主幹作物を守るための格闘がされておりまして、大変悩んでおります。また、最近は猿が家の中まで入ってきて冷蔵庫を開けるとかいう話まで聞かせていただいたんですけれども、そういう大変被害を受けているのは事実でございます。
野生鳥獣による農業の被害、今お話しされましたけれども、十四年度で見てみますと、被害面積が約十四万ヘクタール、被害額で約二百十三億になっております。やはり一番の大きいものはイノシシ、続いてシカ、猿、こういう順番になっているようでありまして、ほとんどが中山間地域での被害だと思っております。また、森林の被害面積が七千ヘクタールから九千ヘクタール、これはほとんどシカの被害が六割を占めているようでございます。
こういうことでこれからの、今取っている対策でありますが、農林水産省で被害防止対策技術の開発の試験研究を実施をさせていただいております。また、都道府県、市町村、農業者団体によって被害防止施設の整備それから普及啓発活動、生産者による追い払い活動、これを今国として支援を実施しているところでございます。またさらに、中央や地方段階で連絡協議会を組織しておりますので、農林水産省としては今後とも環境省を含めて積極的にこのことについては進めてまいりたいと、そういうふうに思っております。